第一次世界大戦年表
オーストリア＝ハンガリー二重君主国による「最後通牒」（1914 年 7 月 23 日）再考 ─ F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ─

PART SIX 危機！

CHAPTER 29: オーストリア、既成事実化ならず

p175
7月16日、駐ウィーン・ロシア大使は政府に電信で次のように電報を送った。「オーストリア＝ハンガリー政府が調査終了後にベオグラードに対して一定の要求をするつもりであるという情報が私に届いた。・・・現時点では、この問題に関する最終決定を下す前に、オーストリアの内閣は、オーストリアがセルビアに対して国家の尊厳にとって容認できないような要求を提示しているという事実に対してロシアがどのような反応を示すかを調査すべきことが望ましい、と判断する。」

　このこと、およびオーストリアの計画に関する同様のほのめかしは、ロシアの外務大臣を動揺させた。

しかし、ウィーン大使は安心させるのに懸命だった。彼はロシア外相に対し、オーストリア＝ハンガリー両国は和平を望んでいる。だからロシアは何もしないでほしい、と語った。

　7月18日、セルビア首相パシッチは海外（ウィーン以外）のセルビア代表団に電報を送り、セルビアの主権を侵害するオーストリア・ハンガリー帝国によるいかなる要求も受け入れない決意であると伝えた。

　オーストリアとドイツの指導者たちが実行中だった隠された陰謀は、当時のバイエルン州政府にとって明確に、しかし秘密裏に概要が明らかにされていった。バイエルン王国は、プロイセン主導のドイツ帝国で最大かつ最も人口の多い州だった。ドイツへの加盟に際し、独立した外交サービス、軍事行政、郵便、電信、鉄道サービスなど「他の構成国よりも大きな主権独立を確保」していたのである。

p176
　7月18日、ベルリンで当局者から説明を受けたバイエルンの外交官ハンス・シェーンは、首相のゲオルク・ヘルトリング伯爵に対し、二重君主制の「平和志向」の見せかけと、オーストリアの最後通牒が 7月中旬までベオグラードへ提出できなかった理由について詳しく説明した。

最後通牒でなされるであろう要求を要約して、シェーンは次のように述べた。「セルビアが主権国家としての尊厳と相容れないそのような要求を受け入れることができないのは明白である。したがって、その結果は戦争になるでしょう。」

つまり、ウィーンが実際にその計画を実行すれば戦争が起こったのだ。それぞれドイツ外務省の第一位と第二位の役人であるヤーゴとツィンマーマンは疑問を抱いていた。彼らは「オーストリア＝ハンガリー帝国は、その優柔不断さとまとまりのなさのせいで、かつてのトルコと同じように、本当にヨーロッパの病人になってしまった、と声明を出した。」

　「セルビアに対する強力かつ成功した動きは、二重君主制を瀬戸際から立ち直らせるだろう」とツィマーマンは続けた。シェーンは、ドイツの指導者たちは「同じ意見だ・・・オーストリアは運命の時を迎えているのだ。」と報告した。それが、7月5日から6日にかけて「ロシアとの戦争の危険を冒してでも」オーストリア人に「全権限の白紙権限」を与えた理由だ、と彼らはシェーン氏に語った（訳注；実際には、ドイツ当局は、ロシアは干渉してこないと考えていた。Mc Meekin JULY1914　Count down to war p109参照）。彼らの見解では、オーストリアはそのような無条件の支援に驚いており、そうではなくて、自制するように言われていればもっと安心したかもしれない。

　シェーンは、ドイツはウィーンが何かをする前にそれほど長く待たなければ良かったと明言した。ドイツはオーストリアからのセルビアに対する最後通牒の提示を待っていた。その提示後に、ベルリンは紛争を局地化するための外交努力に乗り出すことになっただろう。

ドイツ側は、あらゆる勢力はそれに関与すべきではなく、オーストリア＝ハンガリーとセルビアが自力で解決するようにすべきだと言うつもりだった。 ドイツは、オーストリアが突きつける最後通牒について、他の誰よりもほとんど知らないと主張するつもりだった。彼らは、カイザーらが(わざとらしい）休暇中だった時のことであり、全くの驚きだったと言うつもりだったのだろう。

　シェーンは、「戦争を局地化する試みが成功するかどうかは、何よりもロシアの態度によって決まるだろう」と結論づけた。彼が報告したドイツの公式見解は、戦争はフランスにとってもイギリスにとっても「容認できない」という趣旨であった。

言い換えれば、ドイツ人は、ウィーンとベルリンがヨーロッパ戦争を引き起こすことなく彼らの陰謀を首尾よく遂行できるとまだ信じていたのだ。彼らはこのまま逃げられるだろうと思っていた。（夢遊病者たち　p766～参照）

これはドイツのもう一つの州であるザクセン州のベルリン代表によっても確認されており、「イギリスは絶対的に平和であり、フランスもロシアも同様に戦争に向かう気はないので、紛争の局地化が予想される」と述べた。

p177
ウィーンとベルリンで巨大な欺瞞の網が終結に向けて織り上げられていく中、二重君主制の最後通牒が密室で作成されていた。 オーストリア・ハンガリー外務省は7月10日にこの文書の作成に着手した。ドイツ側にはその進捗状況が常に知らされていた。このメモは 7 月 19 日に内部回覧の準備が整った。

　7月14日にティサが心変わりして以来（c.f.p165)、セルビアへの声明の目的については疑いの余地がなかった。それは拒否されるような形で起草されていた。ウィーンのドイツ大使は自国政府に対し、「声明は受理される可能性が”事実上排除されるように”作成されている」と報告した。

　別のドイツ大使館職員は、オーストリア・ハンガリー外相との会話の報告を続けて次のように述べた。「ベルヒトルト伯爵は、セルビアがオーストリア・ハンガリーの要求に応じないことを望んでいたようだ。単なる外交上の勝利では、この国は再び停滞したムードに陥るだろうから。」

二重君主制の外務省のオヨスはドイツ人の同僚に、「要求は本当に、自尊心と尊厳をまだ持っているどの国も受け入れることができないほどの性質のものだった」と語った。

　最終的な最後通牒は、7月19日日曜日の午後、閣僚評議会に提出された。（訳注；ティサが反対していた。c.f.Mc Meekin　The RUSSION ORIGINS of the First World War p44参照）　歴史家フレデリック・モートンの言葉を借りれば、閣僚らは会談のためベルヒトルトの宮殿のような私邸に「タクシーと自家用車」で到着した・・・車は間隔をあけて到着し、劇的な集中を避けた・・・その光景は週末の社交的な集まりを指しているようだった。通行人が注意して見ていても、公式リムジンを一台も見つけることはできなかっただろう。」それは偶然ではなかった。参加者は標識のない車で到着するよう命じられていたのだ（c.f. Mc Meekin JULY1914　Count down to war　p136　origin256）。

　評議会は、セルビアに対する最後通牒を承認した。翌日、急使がそれを田舎の宮殿にいる年老いた皇帝フランツ・ヨーゼフに届けた。フランツ・ヨーゼフは読み、承認した。同時に、この文書はベオグラードのハプスブルク公使に電送され、事前に決められた日にセルビア政府に提出する予定だった。

p178
　ベルヒトルトからの動議を受けて、評議会は「覚書は7月23日午後5時にセルビア王国政府に提出される」ことを全会一致で合意し、48時間の期限までに最後通牒は7月25日午後5時に期限切れとなる。次に、オーストリア・ハンガリー軍の動員は、7月25日から26日の土曜日/日曜日の夜に布告され、公表される可能性がある。

　ベルヒトルトは同僚らに対し、これ以上の遅延には反対だと語った。一つには、オーストリアの意図に関するニュースがローマに漏れ、奇襲要素が危険にさらされたことだ。さらに、「ベルリンが緊張し始めていた」。

「緊張」という言葉は、この件を過小評価しているのかもしれない。ドイツの文民指導者であるベートマンとヤーゴにとって、オーストリアは失望であり、実際に輝かしい勝利を奪っていた。

ハプスブルク帝国は、他のヨーロッパ諸国が反応する前に、今頃はもう、セルビアを壊滅させていたはずだった。襲撃は行われたはずだった。 既成事実（fait accompli)は作られたはずだった。

　しかし、そのどれもが行われていなかったし、あるいは行われようとしていたことさえなかった。 7月19日の時点で、オーストリアはセルビアに送る一連の要求書の作成を初めて始めた。その後文書を提出する必要があり、セルビアの返答が待たれた。

　したがって、ベートマンが想定していた奇襲侵攻を開始するにはもう遅すぎた。もしも、ヨーロッパ諸国がベルヒトルトが提案したような最後通牒を目にしていたら、そのとたん、彼らは驚愕したことだろう。（だが）彼らは、セルビアが（最後通牒を）拒否する可能性が高く、オーストリアが戦争をする可能性が高く、ドイツがオーストリアを支援する可能性があることをすでに知っていた。奇襲要素は失われていたのだった。

p179
＜意識的な新たな局地戦争の段階へ＞
　セルビアを懲罰するというオーストリアとドイツの計画の一段階は終了した。侵攻計画は7月6日に策定されていたが、実行されることはなかった。

7月19日までならば、オーストリアはヨーロッパ列強からの干渉なしにセルビアを粉砕できていた。（訳注；後述のように、7月19日の共通閣議で「最後通牒」の文面が承認されるとともに、その手交時間は訪露中のフランス首脳が帰路につく7月23日午後5時に設定された）ヨーロッパ列強が反応する前にそれが可能だったためである。

7 月 19 日以降、当初の計画どおりに実行するには遅すぎたため、変更する必要に迫られた。

当初の計画では、オーストリアの侵攻は、ヨーロッパの他の国々が事後に苦情の声明を送る以外なかったうちに完了するはずだったが、新しい構想では、欧州には反応する時間はあったが、（オーストリアを）説得にはすでに手遅れ状態となっていた。

「局地化」はドイツ人が使い続けるキーワードだった。 それは、大国がこれから何が起ころうとしているかを十分に認識していながらも、それは自分たちには関係ないという理由で介入しないようにすることを意味していた。

ドイツは、オーストリアとセルビアが意見の相違を自力で解決させるべきであると説得に努めていた（c.f. p176）。ここでもオーストリアには明らかにスピードが求められていた。なぜなら、小さな隣国を打ち破るのに時間がかかればかかるほど、特にロシアやフランスなどのセルビアの後援国の一つが、不平等な紛争を止めることを考え始める可能性（参戦の可能性）が高くなるからである。

7月19日。セルビアに対するオーストリアの最後通牒が最終形となった。 速攻ですべてが決まるというオーストリアとドイツの考え方の段階は終わった。 7月19日以降、ドイツ語圏の同盟国は全面的に前進することになる。

ドイツは第 2 段階、つまり新しい意味での局地化に移行した。この段階では、ドイツは、他のヨーロッパ諸国に（局地的な）戦争が起こることになるであろうことを事前に知らせることとなった。

　最後通牒が策定されると、ドイツ政府は直ちに他の大国に対し、これから始まる戦いに参加しないよう警告する一方、”なぜ”戦いが起ころうとしているのか、あるいはなぜ大国が戦闘に介入しようとするのかについて、説得力のない形ではあるが、その認識を改めさせようとした。

ヤーゴは7月19日、準公式出版物である北ドイツ官報に声明を掲載し、「オーストリア・ハンガリーとセルビアの間で生じる可能性のある相違の解決は、局所的なものにとどめるべきである」と他の人々に忠告した。これは、ドイツ政府が新たな戦術目標である意識的な（当然のではない）局地化を目指して開始した外交キャンペーンの始まりであった。

　駐ベルリン・フランス大使がヤーゴに「オーストリア声明の内容について」と尋ねたところ、ヤーゴは「それについては何も知らない」と断言した。当然のことながら、大使は「驚いた」。どうしてヤーゴが知ることができなかったのか？しかし、もちろん彼は知っていた。
　
　ドイツの局地化に関する詳細な声明は、7月21日にロシア、イギリス、フランスに送られた。ウィーン政府は、主要国の大使に対し、オーストリア＝ハンガリーの立場を完全に表明した。

p180
　オーストリア＝ハンガリー帝国が何をしようとしているのか、何を要求しているのかは何も知らないとドイツが主張し続けたことで、ヨーロッパの首都の間で不信感が広がった。

局地化を求めるヤーゴの嘆願を分析して、英国当局者はエドワード・グレイ卿に次のように語った。「我々は事実を知りませんが、ドイツ政府は明らかに知っています。彼らはオーストリア政府が何を要求しているかを知っています・・・そして、彼らはそれらの要求への承認を表明し、危険な合併症が起こった場合の支援を約束したとある程度の確信を持って言えると思います。」

しかし、この（英国）当局者は「ドイツ政府は戦争の本当の危険があるとは考えていない」と確信していた。ある情報筋によると、その役人はベルリン大使館のホレス・ランボルド卿だったというが、別の情報筋はエア・クロウ卿だったとのことだ。

ベルリンのオーストリア大使は、最後通牒の最終版のコピーをヤーゴに持参したが、ヤーゴは後に嘘をつき、それが発行される前にそれを見たことを否定した。 5

ヤーゴは計算を再確認し、オーストリア側が、最後通牒をフランス指導者たちがまだロシアにいる時間に提示する計画を立てていたことを見出した。それは1時間早すぎたのだった。ヤーゴの警告を受けてハプスブルク当局が慌てて対応した結果、最後通告の時刻は１時間後に延期された。（訳注；ロシアにいたポアンカレが、会議が終わった7月23日に確実にロシアから離れた後、を狙った。会議の最中に最後通牒が届けば、露仏の軍事干渉の可能性が高まることを危惧して。c.f.夢遊病者たちp639、675。なお、もともとはfait accompliのために、会議の”前”に最後通牒の回答期限が来るように設定されていたが、ティサ首相の反対で見送られた））

命令に従い、ドイツ軍指導者らはこれ見よがしに休暇を取り続け、ベートマン・ホルウェグ首相と外務省の高官であるヤーゴとツィンマーマンにすべてを任せ、外面的にはできる限り無関心な雰囲気を醸し出していた。

　しかし、彼らはさまざまな希望、恐れ、期待を持って出来事に対峙していた。ほんの一か月ほど前に、陰気で悲観的な参謀総長モルトケは、ドイツがまだ勝てる可能性があるうちに、近いうちに世界大戦を引き起こすようヤーゴに要請していた。モルトケによれば、2、3年では手遅れになるという。

　モルトケには、オーストリア軍の攻撃がもたらす限定的だが輝かしい勝利を受け入れる用意ができているように見えた――実際にウィーンが勇気を振り絞ってベートマンの計画を進め、それをやり遂げることができれば、だが。

もしも、戦争が局地化する可能性があり、ロシアは参戦しないだろうと考えたドイツの指導者たち（軍人も民間人も同様に）が間違っていたら（世界大戦化したら）、カイザーや民間人とは異なり、モルトケが幸せになったことだろう。―もしかしたらもっと幸せだったかもしれない―その結果も。

　オーストリア軍が戦略を実行に移す間、事態を統括する役割を担っていたベートマンは、最初から不安を抱えていた。「セルビアに対する行動は世界戦争につながる可能性がある」とベートマンは7月7日に腹心のクルト・リーツラーに語っていた。彼は「結果がどうであれ」そのような戦争が「存在するすべてをひっくり返す」ことになるのではないかと懸念した。予測不可能な結果を伴う世界的な紛争を引き起こすリスクは「闇の中のジャンプ（向こう見ずの行動）」なのだった。

p181
　しかし、ベートマンはドイツには選択の余地がないと感じていた。彼が自国の国際的立場を描いた肖像画には、危険が誇張され、暗く偏執的なビジョンさえ示されていた。彼自身の言葉を借りれば、それは「衝撃的な映像」だったという。

彼の目には、ドイツは「完全に麻痺」しており、そのライバルであるロシア、フランス、イギリスの連合国もそれを承知していた。「未来はロシアのものであり、ロシアはますます成長しており、我々にとってはますます悪夢になりつつある。」二重君主国ですら、勝者につくためにはロシアと同盟を結ぶだろう。ドイツは国際政治の世界で孤立し無力となるだろう。

ドイツ首相は、英国とロシアの間の秘密海軍会談に関する諜報報告に動揺した。ドイツの情報筋によると、これらはイギリス海軍がドイツ北東部に上陸する水陸両用作戦を想定していた可能性があるという。

　10年以上後に書かれた英国外務大臣サー・エドワード・グレイ（当時はファロドンのグレイ子爵）の回想録によれば、この会談は取るに足らないものであった。これらはロシアを安心させるためにフランスの要請で行われた。そこで会談が行われた。共同作戦は計画されていなかった。何も約束はされていない。実際に起きたのは情報交換だったようだ。

　ロシアは、イギリスとフランスが海軍会談を行い、その過程で戦争の際に自国の艦隊にどのような処置をする予定であるかをお互いに明らかにしたことを知っていた。それぞれが計画された処置を自由に変更することができた。ロシアは今や他の二国と同等に扱われること、つまり完全な同盟国になることを望んでいた。イギリスがフランスと会談を行った際、ロシアも同様の会談を行いたいと考えた。ロシアはフランスに自分たちの願望を伝えた。

　5月13日、アスキス内閣はそのような会談を行うことを認可した。英国艦隊の上級士官であるバッテンベルクのルイ王子は、数週間後にロシア側と会談するためにパリを訪れた。さらなる会談が検討されたが、戦争の勃発により中止された。

　そのニュースが漏れた。国会でも質疑が行われた。これに応えてエドワード・グレイ卿は、「ヨーロッパ列強間で戦争が起こった場合、イギリスが戦争に参加すべきか否かを決定する政府や議会の自由を制限したり妨げたりするような未発表の協定は存在しなかった。」という首相の以前の声明を繰り返した。

p182
　グレイは回想録の中で次のように書いている。「与えられた答えは完全に真実です。この本が受け入れられる批判は、それが私に与えられた質問に答えていないということです。それは否定できません。」しかし、政府当局者は軍隊に関する機密文書を完全に公開する習慣はない、とグレイは主張する。

　グレイによれば、ロシアは英国がフランスと行った会話の重要性を誇張していたという。彼の情報は、ロシアの情報筋からの3通の秘密書簡がドイツ当局によって入手されたというものだった。これらの手紙は、グレイが重要な情報を差し控えていたことを示唆していた。グレイの性格と誠実さの評判を考えると、もしこれらの傍受された手紙が正確であったならば、懐疑的なドイツ人の目から見た彼の率直さの欠如は真の警戒の源となったに違いない。どういうわけか、ドイツ人はそれらの会談について非常に心配していた。

　ベートマンの見方においては、あらゆる危険にもかかわらず、既成事実fait accompliを生み出すほど迅速にセルビアを攻撃する戦略は、他の大国がドイツとオーストリアに敵対する可能性がある状況から抜け出す唯一の妥当な道であった。そして、この戦略は採用されていなかった。オーストリア人はそれを試したことさえなかった。

　首相は（彼の腹心によれば）思い悩んだ。彼はビスマルク解任以来、ドイツが外交政策で犯した間違いを振り返った。ドイツはロシア、フランス、イギリスを疎外し、いずれも”弱体化させる”ことなくすべてを敵に回していた。

＜英国；内戦の危機と海外への楽観＞
英国では、外務大臣グレイが、オーストリアとセルビアの紛争については楽観的であったこと告白をした。おそらくエドワード・グレイ卿は、バルカン半島情勢が深刻であることを早期に認識し得た唯一の閣僚だったにもかかわらず。

彼は親英派の駐ロンドン・ドイツ大使リヒノフスキー王子から警告を受けていた。早くも7月6日、リヒノフスキーはグレイに対し、オーストリアはサラエボ問題で強硬姿勢を取るだろうし、そうする際には、オーストリアはドイツの祝福と支援が得られるだろう、と警告した。

p183
　グレイは、オーストリアを抑制するためにドイツと協力することを検討した。 その後彼は、オーストリアとロシアに対し、意見の相違を解決するための協議を行うよう促した。 (Mc Meekin JULY1914　Count down to war p205)　グレイは大きな懸念を示しておらず。外務省の懸念はさらに少なかった。

ロンドンのドイツ大使の報告によれば、グレイは「（オーストリアとセルビアの紛争では）平和的解決が達成されると信じていた」という。彼は節度を求め、オーストリアが（オーストリアによる）セルビアに対する非難が真実であることを証明することの重要性を強調した。

英国もまた、アイルランドをどうするかという問題をきっかけに、国内感情が湧いていた。 イギリス人は海外からの危険に気付かなかった。外部の脅威は消えつつあるように見えた。

「1914年の春と夏は、ヨーロッパでは例外的な静けさが特徴であった」とイギリス海軍省文官長だったウィンストン・チャーチルは後に回想した。 39歳の英国政界期待の政治家は、活動家であり、冒険家でさえあった海軍卿でありながら、穏やかな海を見据えていた。

　当時のチャーチルは、20世紀後半が尊敬するような印象的な人物ではなかった。彼は政界で急速に昇進していたが、閣僚の同僚のほとんど全員が10歳以上年上で、ある種の成り上がり者とみなされていた。彼は常に見出しや脚光を浴びているようであった。彼のエネルギーは無限で、周囲の人々を疲弊させるほどで、閣僚の中でもおしゃべりが止まらなかった。彼は子供じみたほどに熱心だった。しかし、彼の才能は否定できなかった。彼がまた天才性であったことがわかるのは、数十年後だった。

　1914 年、彼はアイルランドに関する一見絶望的な問題に自分の能力を応用していた。彼は後にこう書いている。「欧州情勢の異様な静けさは、国内の党派対立の激しさの激しさとは対照的だった。」

アイルランド自治法がついに制定されることが明らかになると、自由党と保守党はそれぞれの顧客であるアイルランド南部のカトリック教徒と北部のプロテスタントである北アイルランド人の血の争いに巻き込まれるようになった。双方とも民兵組織を募集し、訓練した。北アイルランド人はドイツから武器を大量に購入しており、ライバル民兵の戦争装備は海外から不法輸入されていると報告された。

p184
　事態に圧倒されたロンドンは、軍隊の増援と海軍の支援を命じた。当然のことながら、「軍司令官たちは、内戦の始まりとなり得る動きに直面していると見て、より深刻な性格の計画を研究し始めた。」

問題を複雑にしているのは、イギリス陸軍の士官部隊がプロテスタントの北アイルランド出身者が不釣り合いに多かったことであり、陸軍は少なくとも部分的にはアスキスの自由政府に対して北アイルランドと統一党を支持する可能性があると推測された。「これらの衝撃的な出来事は議会に前例のない怒りの爆発を引き起こし、国家を根底から揺るがした」とチャーチルは書いている。

「4月、5月、6月にかけて断続的に続いた議論を読むと、私たちの議会組織が彼らを揺さぶる激情に耐えるだけの十分な強さを持っていたことに疑問を抱かずにはいられません。イングランドは派閥によって麻痺し、内戦状態に陥っており、ヨーロッパ情勢の一要素として考慮する必要はない、とドイツの諜報員が報告し、ドイツの政治家が信じていたのは驚くべきことだったのだろうか?」

　7月20日、ジョージ5世は翌日バッキンガム宮殿に集まる全党会議を招集した。 21日、彼は短い声明で会議を開いた。彼は会議を招集するに至った危険性を指摘した。ジョージ国王は、「傾向は確実かつ着実に武力行使に向かって進んでおり、今日、南北戦争の叫びが我が国民の中で最も責任感があり冷静な人々の口から上がっている。」と語った。国王は党指導者らに対し、平和的な妥協点に到達するよう訴えた。

　会議では、確かにその差異は少ないことが示されたが、それでもなお、彼らは手に負えないものであった。会議は決裂し、会議出席者らは7月24日金曜日の朝に解散した。首相によると、ジョージ国王が「むしろ感情を込めてやって来て、二言でこう言った」という・・・さようなら、ごめんなさい、そしてありがとう。」

その日の午後、閣僚は集まり、自治領アイルランドと英領北アイルランドの間の国境定義案の作業に戻った。彼らが審議を終えると、エドワード・グレイ卿はセルビア危機に注意を向けた。

CHAPTER 30: 最後通牒を突きつける
p185
危機勃発以来、オーストリアとセルビアの間の通信は不気味な半中断状態にあった。実際のところ、両国はお互いに話し合いをしていないか、少なくとも多くの話し合いはしていなかった。 オーストリアによる殺人事件の捜査は秘密裏に行われ、プリィンツィプの仲間のメンバーは1人を除いて全員が速やかに拘留されたが、彼らに対する捜査は数日ではなく、数週間、あるいは実際には数か月単位で進められた。

　一方、（セルビア国家にも一部責任があるという共通の想定があったため）セルビアは、どんな罰が準備され、あるいは提案されようか、恐怖を感じながら待っていた。ロンドンの情報筋から、セルビア政府は7月17日、「大公暗殺につながった陰謀への共謀容疑」で「一種の告発が準備されている」と聞いた。 7月20日、オーストリアが戦争の準備をしているという噂がウィーンから伝わった。

　この点において、セルビア国民はセルビア政府にとっては逆に有益だった。彼らは一切の自責の念を示さなかったが、反対派のマスコミは殺害を喜んでいる様子を見せた。

　部外者の目には、セルビア政府が、殺人者を助けた者たちを少なくとも精力的に追跡する姿勢をしているふりをするのが賢明であるように見えた。確かに、主要な犯罪者二人はオーストリア人であった。 確かに、彼らはまだ結審していないオーストリアの司法手続きで裁判を受けていた。

しかし、セルビアが何もしなかった本当の理由は、政府が隠すべきことがたくさんあったためだったのかもしれない。 例えば、もしパシッチが暗殺計画を知っていて、その回避が可能であったことが知られれば――本当にそうだったとすれば――ウィーンに中途半端な警告をすれば、首相は黒手組によって、そしてオーストリアによって十分に効果的に警告しなかったとして、非難されたことだろう。

実際、もしパシッチが依頼または認可された捜査で真実を明らかにしていたら、黒手組によって彼は殺されていたかもしれない。

p186
　さらに、セルビアの選挙は8月14日に予定されており、パシッチは熱烈な国家主義者として選挙活動をしなければならなかった。セルビアはハプスブルク帝国に立ち向かう立場にはなかったが、もしパシッチが紛争を避けるために（オーストリアに対して）譲歩や妥協をする用意があることを有権者に知らしめれば、票を失う可能性が高かった。彼はどうにかして、同時に 2 つの反対方向に移動するという不可能な離れ業を実行しなければならなかったのだ。

オーストリア・ハンガリー帝国の駐セルビア公使ギースル・フォン・ギースリンゲン男爵は、7月23日木曜日の朝、儀礼としてセルビア外務省に電話した。彼はセルビア政府に対し、午後4時から5時の間に首相に重要なメッセージを伝える予定であることを警告したいと考えていた。

その後ギースルは、ヤーゴが気づいた間違いに関する電報を自国の政府から受け取った。それは、フランス指導者たちはまだサンクトペテルブルクを出ていないというものだった。彼は手交時間を午後6時に延期するよう命じられた。（c.f.p180）

ギースルがようやく到着すると、セルビア首相がベオグラードにいないことがわかった。首相は選挙の投票運動をしていて町を出ていた。あるいは少なくともそう言われていた。

セルビアのパクー財務大臣が首相不在時の代理を委任されていた。しかし、パクーは外交用語であるフランス語を話さなかった。したがって、ギースルが彼とコミュニケーションをとることは不可能であった。

　外務省のスラフコ・グルヴィッチ事務局長が通訳を務めた。しかし、パクーは自分に送られてきた、首相宛ての重要なメッセージを前にして、それを受け取ることを拒否した。ギースルはそれをテーブルの上に置き、パクーに好きにしてほしいと言って立ち去った。（夢遊病者たちｐ686）

p187
　ギースルが去ったとき、パクーと彼の同僚はパシッチと連絡を取ろうとした。約2時間かかった。その後、彼の仲間たちは電話で、ギースルが彼らに提出した文書の厳しい条件を首相に要約した。（オーストリアの最後通牒全文については付録1、307～12ページを参照。）　パシッチは直ちに電車で戻ることに決め、翌朝24日午前 5 時にベオグラードで閣議を招集した（訳注；.夢遊病者たちp688では、「その時間に首相と政務課長がベオグラードに到着した」となっている）。

セルビア人が一般的にそのアドバイスを頼りにしていたロシア特使Nicolai Hartwigは2週間前に死亡しており、まだ後任が決まっていなかった。セルビアは自分たち自身で事を運ばねばならなかった。

　閣僚たちは一日中、一晩中、そして次の日も会合を続けた。二重君主国の最後通牒には48時間以内の返答が求められていたため、彼らには緊急性が課せられていた。パシッチは他の諸政府に助言と援助を求めたが、そこでは時間はさらに短かった。ハプスブルク家の急使が覚書のコピーを諸列強に届けたのは、7月24日の朝になってからであったのだ。

　そして返答を待つ間もなく、7月23日、ハプスブルク軍はwaar bookを公開した。それは、敵対行為の開始時に発効する行政措置の概要と責任の指定であった。

<英国＞
このニュースは、失敗に終わったアイルランドに関するバッキンガム宮殿での会議の一部を取り上げることに専念していた閣議に間に合うようにロンドンに届いた。ウィンストン・チャーチルによれば、アイルランド南部のカトリック教徒と北部のプロテスタントである北アイルランド人の相違は、アイルランドのファーマナ郡とティロン郡の境界線の問題に帰着したという。しかし、この問題に関しては絶望的な行き詰まりがあり、内戦の恐れがあった。

　よく引用されるチャーチルのセリフに次のようなものがある。

議論は決着のつかない終わりに達し、内閣は喧嘩別れしようとしていた。その時、外務省からたった今持って来られた文書を読み上げるエドワード・グレイ卿の静かで重々しい声が聞こえた。それはオーストリアからセルビアへの声明だった。私がちょうど終わったばかりの退屈で当惑する議論から心を解放するまで、彼は数分間、読み上げ、しゃべっていた・・・この声明は明らかに最後通牒だった。しかしそれは現代では決して書かれたことのないような最後通牒だった。読み進めるにつれて、世界中のどの国もそれを受け入れることは絶対に不可能であるように思えたし、あるいはどんな受け入れをしたとしても、あまりに絶望的で、侵略者（オーストリア）を満足させることは不可能であるように思えた。ファーマナとティロンの教区はアイルランドの霧とスコールの中に消えていき、奇妙な光が輝きが・・・ヨーロッパの地図に落ち始めた。

p188
　同月、内閣が外交政策について言及したのはこれが初めてだった。チャーチルは、会議前にグレイから警告を受けた首相以外のわずか2人の閣僚のうちの1人だった。

　会談中、いつものように、アスキス首相は腹心のヴェネチア・スタンレーに手紙を書いた。彼は彼女に、ヨーロッパの状況は「考えられる限り最悪だ」と語った。オーストリアはセルビアに対し、いじめと屈辱に満ちた最後通牒を送り、セルビアはそれに従うはずもなく、オーストリアは48時間以内の回答を要求したが、セルビアが応じられなければ戦争に向かうすることになる。これは、ほぼ必然的に、ロシアがセルビアを守り、オーストリアに反抗して登場することを意味する。もしそうなら、ドイツもフランスもどちらか一方に手を貸すことを控えることは困難である。そのため、私たちは現実の世界最終戦争からつかず離れずの距離にいます。」

　しかし彼は最後に、「幸いなことに、私たちがただの観客以上であるべき理由はないようだ」と心強い言葉で締めくくった。

　会談の終わりに、チャーチルは妻に次のように書いた。「ヨーロッパは全面戦争の瀬戸際に震えている。セルビアに対するオーストリアの最後通告は、これまで考案されたこの種の文書の中で最も不遜なものである。」

しかし、彼もまた、来たるべき紛争においてイギリスが果たすべき役割を予見しておらず、主に週末に家族とビーチに行くと言う内容の手紙を書いた。

　一方、グレイ氏はまず48時間という期限に焦点を当てた。「ある国家が別の独立国家に対してこれほど恐るべき性格の文書を演説するのを私はこれまで見たことがなかった」と彼はオーストリア政府に語った。そして、紛争のメリットが何であれ、最初になすべきことは期限を延期または廃止することであった。

　グレイの要請で、駐英ドイツ大使のリヒノフスキーが彼に会いにやって来た。リヒノフスキーは、グレイが「オーストリアの声明に大きな影響を受けたが、彼の見解によれば、この声明はこれまでに見たものを超えていた」と報告している。彼は、「そのような条件を受け入れた国は、本当に独立国家として数えられなくなるだろう」と信じていた。（（オーストリアがセルビアにきびしくするのは）「非常に望ましいことだ。これはヨーロッパ的意味合いでの国家ではなく、強盗団だ！」とカイザー・ヴィルヘルムはリヒノフスキーの報告書を読みながらコメントした。）

p189
3 人の政治家の個人的なコメントは、会話のように読めば、彼らの意見の溝が広がっていることが明らかになる。

リヒノフスキー: 「ヨーロッパの文明国と同じ基準でバルカン半島の人々を測ることはできません・・・」

カイザー：「そうです、彼らは文明国ではないのだ！」

リヒノフスキー: 「したがって、彼らに対しては別の種類の言語を使用する必要がありました。」

グレイ: 「たとえこの意見を（ヨーロッパで）共有できたとしても、ロシアでは受け入れられないだろう。」

カイザー: 「それなら、ロシア人自身もそれほど優れているわけではない、ということになる。」

　グレイは、ドイツが（最後通牒の）期限延長のサポートをするよう求め、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアが紛争を調停すべきだと提案したが「余計なことだ」とカイザーはコメントした。

「グレイには他に提案できることは何もなかった。」しかし、ドイツの統治者は、リヒノフスキーの報告書の余白に、オーストリアが彼に要請した場合に限り、彼自身が紛争を調停するだろうと書き記した。

サゾノフ・ロシア外相はサンクトペテルブルクから関係国に回覧公電を送り、(最後通牒の）期限の延期を得るために協力するよう求めた（c.f Mc Meekin JULY1914　Count down to war p183）。サゾノフはまた、オーストリアに対し、サラエボ殺人事件に関する公式調査の結果を求めた。その調査書を他国が利用できるようにするという、ウィーンの初期の約束に沿ったものだった。

　7月24日にウィーンで、ベルヒトルトはロシア臨時代理公使クダシェフ伯爵と面会し、「セルビアに屈辱を与えたいという願望ほど我々の考えからかけ離れたものはない」と心安らぐようなメッセージを伝えた。そして二重君主制は「領土の獲得を目的としたのではなく、単に(セルビアとの）現状維持(status quo)を目的としたものだった」。

　文字通りには、ベルヒトルトは真実を語っていた。ウィーンはセルビアを併合するつもりはなかった。（オーストリアは）すでにあまりにも多くのスラブ人を支配していた。しかし、ベルヒトルトは意図的に誤解を招くような発言をした。ベルヒトルトの外務省首席補佐官によれば、オーストリア・ハンガリー帝国はセルビアを分割するつもりだったが、セルビアの一部を自国の領土にするつもりはなかったという。

　ロシア臨時代理公使クダシェフは、セルビアの返答がベルヒトルト政権に受け入れられなかったらどうなるのか尋ねた。ベルヒトルトの答えは、ベオグラードのオーストリア公使は公使館を閉鎖し、スタッフとともに去るするだろうというものだった。「それでは戦争ではないか」とクダシェフは叫んだ。

p190
　翌朝、クダシェフはオーストリアが設定した期限の延長を求めに戻った。オーストリア政府は拒否した。その後、クダシェフは皇帝との会談に向かう途中だったベルヒトルトに電報を送り、延長の要請を繰り返した。ベルヒトルトは拒否した。（c.f. 夢遊病者たちｐ700）

＜フランス＞
ウィーンとベルリンが計算していたように、パリはオーストリアの声明に対して有意義な反応を示すことができなかった。 ポアンカレ大統領、ルネ・ヴィヴィアーニ首相兼外相、外務省高官ブルーノ・ジャカン・ド・マルジェリーはまだ海上にいた。法務大臣で暫定政府首席のジャン＝バティスト・ビアンヴニュー＝マルタンは、外務省ナンバー２の役人フィリップ・ベルトローの援助にもかかわらず、強い方針を取ることができないか、あるいはいかなる方針も採る気はないようだった。。

　フランスの声が届かなかったため、ドイツとオーストリアの特使は、フランスが今後数日間は脇にいるかもしれないと信じて励まされたと感じたようだ。その代わりに、ビアンヴニュ＝マルタンが少なくとも一部の急送を出張中の大統領に送って対処しており、ポアンカレは即時パリに戻ることを決定した。

<ロシア＞
オーストリアの最後通牒の知らせがサンクトペテルブルクに届いたとき、サゾノフは「C’est la guerre européenne」（これはヨーロッパ戦争だ）と声を上げた（c.f. Mc Meekin JULY1914　Count down to war p176）。オーストリア大使と会ったとき、彼は率直にこう言った。「それが何なのかはわかっています。（オーストリアは）セルビアに戦争を仕掛けるつもりだ・・・あなたはヨーロッパに火をつけようとしています・・・なぜセルビアには発言の機会が与えられず、なぜ最後通牒という形になったのか? ・・・事実は、あなたは戦争を意図しており、架け橋を燃やしたということです・・・あなたがいかに平和を愛しているかがわかります。（訳注；最後は皮肉なのだろう）」

　ロシア閣僚評議会は会合を開き、7月25日の（最後通牒の）期限を延長するようオーストリアを説得することを決定した（c.f Mc Meekin JULY1914　Count down to war p183）。また、オーストリアの合意に対する抵抗は最小限にするようセルビアに勧告することも決定した(c.f. Mc Meekin JULY1914　Count down to war p184)。最後に、国軍の部分的な動員に少なくとも原則として同意するようツァーリに求めることを決定した。

詳細には立ち入らないが（歴史家たちはそれ以来ずっとそうしてきたが）、「部分動員」は多くの措置で構成されており、実行可能なものもあれば実行不可能なものもあったが、そのどれもがロシアを守るのに大きく役立つものではなく、そのほとんどがロシアを以前より不利な立場に追い込むものだった。

それは本質的に政治的な概念で、混濁していて不明瞭で、ロシアは必要に応じて行動する決意があるが、総動員、つまり本当の動員のようにドイツやオーストリアを警戒させたり挑発したりするつもりはなかったというメッセージを伝えることを目的としていた。

p191
ロシアは、これまでよくあったことだが、1914 年当時、ヨーロッパ世界にとっては謎の存在だった。その巨大な規模と、一見東洋的な異質さは恐ろしいものだった。この国は最大の国であり、その人口の規模 (1 億 7,000 万人) は恐ろしいものでした。しかし、閣僚たちは1914年7月にロシアが脆弱であるとみなした。

　工業化のペース、鉄道網の成長、近代的な再軍備計画は、大部分がフランスの資金提供を受けて始まったが、ロシアがはるかに遅れて始まったため、進歩は以前よりもはるかに大きいように見えた。

西ヨーロッパ、特にドイツでは、将来のロシアの脅威が大きく迫っていた。 1914年の春、英国の駐ロシア大使はロンドンに対し、「ロシアは急速に非常に強力になりつつあるので、我々はどんな犠牲を払ってでも友好関係を維持しなければならない」と進言した。

しかし、歴史家のD・W・スプリングが私たちに思い出させているように、「1913年から1914年にかけて、ロシア政府と国民は世界における自分たちの立場をこのように見ていたわけではない」。

彼らは、自分たちの国が「世界の人口の半分を擁する10の州」に囲まれており、そのうち「3～4か国が直接敵対している」と考えていた。ロシアの政府はほとんど無能だった。ほとんどの場合、この国は後進的なままであり、百年ほど時代から遅れた農民経済であった。

こうした国での工業化は、社会紛争を伴うものとなった。 1914 年 7 月にサンクトペテルブルクで、「合計 242,000 人のうち 180,000 人の産業労働者がストライキに参加した」。大衆は外交政策の意思決定に何の役割も果たしていないが、たとえ弱いとはいえ、ある種の世論があり、それが7月24日の閣僚評議会で表明された。

それは、数少ない一致の瞬間であった。マスコミも政府閣僚も国民も皆同じ考えのようだった。 ロシアはセルビアに対して、あらゆる必要な限りの譲歩を求めた。ロシア人は平和を望んでいたが、戦争の準備ができていないことを知っていた。

その一方で、ロシアには、過去に和平の利益のためにドイツ語圏諸国に譲歩してきたが、そのような譲歩はベルリンとウィーンにさらなる要求を促すだけであることが判明したというコンセンサスがあった。

1914 年の夏はロシアにとって、（譲歩ではない）反対のアプローチを実験するのに良い時期であるように見えた。 今回は、挑発的ではない形で、ロシアの閣僚は毅然とした態度をとるつもりだった。

p192
　しかし、皇帝ニコライ 2 世の優柔不断さによって、意思決定に不安定な要素が 1 つ持ち込まれた。ロシア君主は、王位を継ぐ準備が不十分な気弱な人物であり、その代償を伴う過ち、特に日本に対する悲惨な戦争については十分承知していた。彼は専制的な権力を継承していたが、自らの地位を半ば憲法上の皇帝の地位であると宣言することを余儀なくされていた。※
※訳注；当時はまさに、君主制国家群から民主主義国家群への端境期だったのだろう。制度としては、特にロシアは、絶対君主制が残ってはいたが、ニコライ二世にその任に堪える能力はなかった。制度と実体がかけ離れていたからこそ、国家の意思決定があいまいになり、ロシアとドイツは戦争状態になり、当時すでに民主主義国家であった英国とフランスが巻き添えを食らったということだろう。

　ニコライの人生の心の中心は自宅だった。彼が愛した妻と娘たち、そして1914年7月時点でまだ10歳にもなっていなかった息子アレクセイは、血友病が君主制に剣のように懸かっていた。

ニコライは、同じスラブ人としてのセルビア人に対する感情が何であれ、国王殺しに対して強い感情を抱くに違いなかった。農奴を解放した彼の祖父アレクサンドル2世は、致命的な暗殺未遂に至るまでに6回以上の暗殺未遂にさらされていた。

さらに、ニコライはカイザーヴィルヘルムの影響下で治世を始めた。ニコライは 1895 年に 26 歳で戴冠した。 9歳年上のヴィルヘルムは6年長くドイツ王位に就いていた。「ウィリー」は10年間にわたって「ニッキー」に影響を与え、危険なほど悪いアドバイスを与え、極東の征服に意識を向けさせ、それが大国としてのロシアの崩壊寸前をもたらした悲惨な日本との戦争（1904年から1905年）につながった。それは 1905 年の革命で最高潮に達した。

　1905年末、ヴィルヘルムの影響を受けて皇帝は、もう一人の危険な人物、農民の宗教治療家グレゴリー・ラスプーチンの呪縛に陥った。ラスプーチンは血友病の後継者候補アレクセイの治療に希望を与えた。

信頼しやすく傷つきやすい皇帝夫妻、ニコライとその妻アレクサンドラは、何よりも息子の命を気にかけていたが、皇太子の運命を、深い声と催眠術のような瞳、そして心地よい手触りを持つラスプーチンの手に委ねているように見えた。肉体的に強力なラスプーチンは、ほとんど飽くことのない欲望によって動かされていた。スキャンダル屋たちは彼の征服者のリストに女性の名前を追加するのに忙しく、その中には皇后アレクサンドラとその娘の一人も含まれていたと言われている。 4人の子供たちとともにシベリアの家に残された僧侶の妻は、それを誇りに思っていました。「彼はすべての人に対する十分な力量を持っています」と彼女は自慢した。

　1914 年の 7 月危機が近づくにつれて、この詐欺的で邪悪な魔術師が王室に対して行使した支配力は、君主制自体の評判を落とした。国民の少なくとも一部が、1914 年以降のロシアの運命の悲劇的な変化についてラスプーチンの影響を非難することは予測できた。

p193
　実際には、ラスプーチンは一貫して平和を主張していた。 1908年のバルカン戦争危機の際、彼は「バルカン半島のために戦う価値はない」と述べた。 1914年、暗殺未遂から農民の村で回復した彼は、すでに敵対行為が始まっていた後、電報を打って皇帝を怒らせた。「Papaに戦争を計画させないでください。戦争でロシアもあなたたちも終わりが来るから、あなた方は最後の一人に至るまで負けるでしょう」

7月24日、ロンドンでロシア大使はドイツ大使に対し、「オーストリアの家臣のレベルにでも落ち込まない限り、ロシアがセルビア政府に『最後通牒』を受け入れるよう勧告することは「ほとんど不可能」であると「極秘」に語った。彼は言った。「ロシアの世論はそんなことを容認しないだろう」

ウィーンの意図は今や明らかだった。（駐英ロシア大使はリヒノフスキー王子に対し警告した）。「このような声明(最後通牒）を書くことができるのは、戦争を望んでいる政府だけであろう。」

＜ドイツ＞
　最後通牒はドイツによるものであるという噂がベルリンに届いた。 （ドイツ）外務省からは否定の声が流れてきた（Fischer, Fritz Germany’s Aims in the First World War p64）。パリ、ロンドン、サンクトペテルブルクのドイツ特使に対し、告発を否定するよう電信で指示された。「私たちは声明の内容に関していかなる影響力も行使しませんでした。」

それにもかかわらず、（最後通牒の）撤回はオーストリア・ハンガリー帝国の威信を失うことになるため、ベルリンは「ウィーンに（最後通牒の）撤回をするよう助言できなかった」。

　ドイツはウィーンの大使から、ベルヒトルトがスムーズな話し合いのためにロシア特使を呼んだことを知ったが、その席でオーストリア外相ベルヒトルトは、（オーストリアは）力の均衡を崩したり、ロシアを混乱させたりする意図はまったくない、と否定した。 ベルヒトルトは「リボルバーと爆弾で行われたセルビアの政策」から生じる共通の危険に対してヨーロッパの君主たちの統一戦線を訴えた。

　この記録を読んで、カイザーヴィルヘルムは、不支持であることを表明した。ベルヒトルトがロシアに対する善意を表明していることについて、彼は次のようにコメントした。「絶対に余計だ！弱さの印象と謝罪の印象を与えるであろう。」

ベルヒトルトを「くそ野郎！」と呼んで、カイザーは次のように述べた。「オーストリアは、小さな国々と比べられて、そしてロシアの犠牲で、バルカン半島で優勢にならなければならない。そうでなければ平和はない。」

<フランス＞
フランスの外交政策指導者たちは、何が起こっているのかをほとんど知らなかった。オーストリアの計画により、危機が勃発したとき、大統領、外相も務めた首相、そして外交政策の首席補佐官は、は船上にいたのだから。彼らは、メッセージが伝わっていないことに気づいたが、ドイツに妨害されていたことには気づいていなかった。

p194
　フランスの指導者らの会話は皇帝やロシア政府との会話を通してのものである。何が言われたのかはほとんど知られていない。しかし、ポアンカレの政策は当初から、ロシアがドイツを刺激するような行動をとらないようにすることであった。ポアンカレ大統領は、フランスが戦争をする軍事的立場にないことを痛感していた。彼がロシア滞在中に何か違うことを言ったと信じる理由はない。

　しかし、フランス指導者たちが（会談後にサンクトペテルブルクを）去った後、サンクトペテルブルクに残ったフランスの報道官が、ある種の悪党大使の役割を担った。

彼の名はモーリス・パレオローグ。彼はわずか5か月前に駐ロシア・フランス大使となっていたのだが、独自の人格で、独自の外交政策を追求する傾向があった。

彼は、フランスが無条件でロシアを支持するという印象をロシア政府に残した。 M.B.ヘインによる戦前のフランス外交に関する最近の研究によると、パレオローグは他とは異なり、フランス軍とロシア軍が絶頂期にあると信じていたことが分かる。ドイツがヨーロッパ戦争を強行する意図があると仮定して、彼はできるだけ早く戦争を起こすことを主張した。その点において、彼は一種のモルトケだった。 ロシア指導者らは彼を信頼していなかったので、彼がロシア指導者たちの決定にどれほど影響を与えたかは明らかではない。

＜ウィーンからベルリンへ＞
7月22日付けのウィーンからベルリンへの問い合わせは24日に届いた。ハプスブルク帝国はセルビアとの関係を断絶しようとしていた。オーストリア当局者は誰一人残っていなかった。では、二重君主制はどうやってセルビアに宣戦布告するのか？実際に宣戦布告を行うのは誰か? ドイツがオーストリアに代わってそれを行うのだろうか？

　外務省からは、ヤーゴは、ドイツがオーストリアに代わって宣戦布告を行うは得策ではないと答え、「セルビアとの争いはオーストリア＝ハンガリーの内政問題であるというのが我々ドイツの立場である」と述べた。ベルリンとウィーンは、オーストリアの最後通牒が発せられる前から宣戦布告のあり方について議論していたが、満足のいく返答は得られなかった。

p195
CHAPTER 31: SERBIA MORE OR LESS ACCEPTS

カイザーは船上で海軍内閣長官フォン・ミュラー提督に「かなり強い声明だ」と述べた。皇帝はオーストリアの最後通牒については知っていたのだ。しかし、「それは戦争を意味します」と提督は答えた。いや、セルビアは決して危険を冒さないだろう、とヴィルヘルムは言った。

（以下、Mc Meekin JULY1914　Count down to war p197～参照）
セルビア摂政のアレクサンダル王子は、「オーストリアの最後通牒、（彼がその尊厳を少しも考えていない国家（オーストリア）に対しては絶対に不可能であると考えている）服従に対する絶望を表明するために」7月23日から24日の夜、ベオグラードのロシア公使館を訪れた。

彼の希望はツァーリに託されており、「ツァーリの力強い言葉だけがセルビアを救うことができる」と彼は語った。パシッチ首相も、その後、24日午前5時からの閣僚会議に向かう途中でロシア公使館に立ち寄った。

　しかし、ロシアは精神的な支援しか提供しなかった。サンクトペテルブルクからサゾノフは、自分のことだけを話して、祖国は援助を提供すると述べたが、その援助がどのような形になるかは明らかにしなかった。

結局、ロシア皇帝政府はセルビアに対し、もし抵抗が絶望的であれば、抵抗するのではなく引き下がり、問題を正すためにヨーロッパの正義感に頼るべきだと提案した。ロシアも同盟国フランスも、特にセルビアに対しては戦う準備ができていなかったのだ。

　セルビア政府は当初、反抗的な態度を取る傾向にあったが、閣僚らがのたうち回るにつれて、より現実的なムードに陥った。

p196
　セルビアの指導者らの間では、二重君主制との戦争で自国は壊滅するだろうという共通認識があった。彼らを救えるのはロシア、あるいは中立国の組み合わせだけだった。いずれにせよ、そのような支援を得るのは難しいだろうし、時間があまりにも少なかったのでなおさらだった。

セルビア側の対応は7月25日午後6時に予定されていた。パシッチと彼の同僚は、最後通牒を無条件に受け入れるか、（そうすることで後にウィーンの厳格な要件の下から抜け出すことができるようになる）条件や制限を加えたいという誘惑の間で揺れながら仕事を続けた。

　言葉が追加され、変更され、取り消し線が引かれるにつれて、テキストはますます読みにくくなっていった。ただし、翻訳者が仕事を遂行できるように、十分に読みやすくする必要があった。何度も修正して打ち直したが、締め切りが近づいても雑なままであった。タイピストは経験が浅かった。タイプライターが壊れた。残り 2 時間を切ったところで、再び手書きでのスタートが試みられた。

　最終的な文書は最初の草稿に似ており、単語に取り消し線が引かれたり、インクのしみなどが見られた。他の誰もそれを運ぶことを志願しなかったため、パシッチは自らそれを運び、締め切りの午後6時前にセルビアの返答をセルビア駐在オーストリア大使ギースルに手渡すためにオーストリア公使館に急いだ。彼は少し遅刻したかもしれない。

ギースルは立ち上がってそれを素早く読んだ。彼はすでに書類を破り、荷物をまとめていた。自動車が彼を鉄道駅まで送って行こうとしていた。彼は簡単な外交関係断絶の手続きを経て、電車に乗るために出発した。（c.f.夢遊病者たちp698）

　最後通牒に対する反応は、オーストリア・ハンガリー国外では、1つの項目（第6項目）を除いて、（セルビアは）すべての条件を受け入れるだろうと考えられていた（夢遊病者たちp696）。実際、それには多くの留保事項が含まれていた。 (付録 2、313 ～ 16 ページを参照。) 二重君主制は単に形式にこだわっているだけだったため、そうした留保はほとんど問題ではなかった。

　ドイツの海運王のアルバート・バリンは後に、セルビアが（最後通牒を）受け入れたという知らせが届いた時にはドイツ外務省は「失望」したが、その後、セルビアが完全には受け入れていなかったという訂正を受け取った時は「大きな喜び」になったことを思い出した。

カイザーには知らせるべきであろうか？否、バリンの外務省の情報源は言った。「むしろ、彼が平和主義の考えで物事に干渉しないようにあらゆることをしなければならない」。

p197
ベルヒトルトは、期限が切れても自動的に宣戦布告が行われるわけではないため、セルビアへの書簡は最後通牒ではないとの立場をとっていた。 ベルヒトルトは7月25日までに、オーストリアとセルビアとの関係断絶は必ずしも戦争につながるわけではなく、「我々の要求は平和的解決をもたらす可能性がある」とロシア側に語っていた。（c.f.夢遊病者たちp699）

　しかしその後、ベルリンの大使から電報が届き、ドイツが、オーストリアが敵対行為を開始することを期待していることを彼に思い起こさせた。「ここでは、戦争作戦の開始が遅れることはすべて、外国勢力が干渉するかもしれない危険性を示しているとみなされる。我々は、遅滞なく（戦争準備を）進めるするよう（ドイツから）助言された。」

中立国の会議を招集すれば戦争の勃発を防ぐことができるのか? エドワード・グレイ卿はその疑問について意見を求めた。 1913年にグレイがロンドンで招集した会議は、一時的ではあったがバルカン半島に平和をもたらした。柳の下に2匹目のドジョウがいるかもしれない。しかし、そのような提案を提出するのに適切な時期なのか？今のところ、この争いはオーストリアとセルビアのみに関係していた。まだオーストリアとロシアの間には（争いは）存在していなかったのだ。

　グレイが驚いたことに、ロシア大使は、彼の国の政府が（中立国）会議開催に同意しないだろうと推測した。もしドイツ、イタリア、フランス、英国がオーストリアとロシアの間を仲介すれば、フランスと英国が、同盟国であるロシアから決別したかのように見えるだろうから、とロシア大使は述べた。しかし、サンクトペテルブルクに問題が提起されたとき、サゾノフはそのような難しいことはしなかった（訳注；サゾノフは四カ国会議開催には反対しなかった）。

グレイは7月25日にサンクトペテルブルクの大使に自身の立場を概説するメモを送った。同氏は次のように書いている。「世論がここで、セルビア紛争を理由に戦争をすることを容認するだろう、あるいは容認すべきだとするのは問題ではない。しかし、もし戦争が起こってしまったら、他の問題の進展によって私たちが戦争に巻き込まれる可能性があるので、私はそれを阻止したいと切望しています。」

オーストリアの行動を考慮すると、オーストリアとロシアはほぼ必然的に相互に動員するだろうとグレイは書いた。そしてそのときこそ、４カ国による調停が好機となるかもしれない。（Fischer, Fritz Germany’s Aims in the First World War p65）

　それは25日土曜日だった。グレイは、戦争の脅威は田舎にいたところで問題はなかろう、と感じた。彼は問題を助手に任せて町を去った。（c.f. Mc Meekin JULY1914　Count down to war　p205～6）

ベオグラードのドイツ特使からの電報には、オーストリアの最後通牒に対処する際のセルビア政府の混乱と狼狽ぶりが記載されていた。カイザー・ヴィルヘルムは大喜びした。「ブラボー！ウィーン人なら信じられないでしょう！・・・セルビアの権力全体がどれほど空虚であることが証明されつつあるのか。したがって、それはすべてのスラブ諸国に当てはまることがわかります。あの暴徒の後を追ってしっかりと踏ん張ってください！」

7 月 25 日。サンクトペテルブルク。 夕方。ロシア軍参謀本部は「戦争準備期間」を開始したが、これはさらなる措置が講じられれば動員につながる可能性がある道の第一歩であった。

パリ。 フランス代理政府は最初の軍事準備措置を講じた。秘密裏に、7月25日に司令官を任務に召還した。 7月26日には将校と軍隊の休暇を取りやめた。そしてモロッコ占領軍の大部分に7月27日にフランスへ帰国するよう命じた。

ベルリン。 ヤーゴ外相はドイツ人ジャーナリスト、テオドール・ヴォルフに対し、「ロンドンもパリもサンクトペテルブルクも戦争を望んでいない」と語った。

トップページへ戻る	初期多声音楽
Leoninのページへ	中世楽のページへ
ペロタン（Alleluja Nativitas)	ペロタン　vvlausulaのページ
前ページへ	次ページへ