オーストリア＝ハンガリー二重君主国による「最後通牒」（1914 年 7 月 23 日）再考─ F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ─
7月の危機 July Crisis: 最新の百科事典、ニュース、レビュー、研究 (academic-accelerator.com)
Russian occupation of Eastern Galicia (1914–1915)
July Crisis - Wikipedia
| p64 7月20日、the Directors General of the Hapag and the Norddeutscher Lloyd は、カイザーの提案と首相の同意を得て、外国での自国の船舶を保護するための措置を講じるよう、差し迫った最後通牒についてヤーゴから警告を受けた。同日、カイザーは艦隊の集中を命じた2。 1914年7月23日午後6時であっても 、駐セルビア・オーストリア公使ギースル男爵が最後通牒を突きつけたとき、戦争の到来が想定された。 7月18日、ホヨス伯爵は、「[最後通牒に含まれる]要求は、自尊心と尊厳を備えた国家がそれを受け入れることを実際には不可能にするほどのものだった。」と保証して、シュトルベルグ公爵を「ねぎらった」。[3]。 したがって、セルビアの最後通牒の無条件受諾だけが戦争を回避させたのあり、7月22日には、ウィーンはベルリンに、宣戦布告がどのように行われるかを尋ねた。なぜならオーストリアは、国交断絶と大臣の召還からなる受諾拒否への独自回答を望んでいたからである。 オーストリアは、ドイツが宣戦布告を伝達する可能性があると示唆したが、ヤーゴは、「我々がオーストリアに戦争を起こさせるようそそのかしているように見えすぎる」と言って拒否した。4 The 'No' to British Mediation オーストリア・ハンガリー帝国がセルビアに対して最後通牒を発表したことは、ドイツを除いて世界的な衝撃を引き起こしたが、ドイツではそれは概ね承認されていた。ドイツがオーストリアの行動の背後にいる、あるいはその背後にいるのではないかという疑惑がしばしば表明された。（Fromkin, David. Europe's Last Summer p193） この疑惑はドイツの文書が証明しているとおりだが、ツィマーマンはパリ、ロンドン、サンクトペテルブルクのドイツ大使館に24日に送った電報で、予定通り（そのことを）否定した。ツィマーマンは、ドイツは「最後通牒の内容に対して何の影響力も行使しなかった」し、「公開前に最後通牒に対していかなる態度を取る機会も他のどの国と同様になかった」と主張した５。 p65 その前日の23日、ヤーゴは、グレイが初めて調停を試み、ロシアがセルビアに影響を与えるよう、ドイツがオーストリア・ハンガリー帝国に影響を与えるよう、英国が動くべきであることをリヒノフスキーに提案したと、カイザーに伝えていた。１ （Mc Meekin JULY1914 Count down to war p204) (Mc Meekin JULY1914 Count down to war p216）  ヤーゴがカイザーに転送したリヒノフスキーの派遣についてカイザーが記した議事録には、カイザーが何を望んでいたのかがはっきりと示されている。英国の「見下すような命令」は拒否されるべきであり、ウィーンはいかなる「不可能な要求（最後通牒）」も引っ込ませるべきであるというグレイの提案にも同様に、彼の鬱積した怒りが爆発した。 「余がそんなことをするのか？ そんなことは考えられないだろう！ 彼の言う「不可能」とはどういう意味なのか？ こいつら（セルビア人）は陰謀を企て、殺人を行っているので、高慢の鼻をへし折らねばならない。」 カイザーは（しかし）、ヤーゴが「あなたがたの話の指導のために」リヒノフスキーに送った外務省からの指示を強く支持した。 これらは、1914 年 7 月のドイツ政策の一貫性と目的性を改めて示している。リヒノフスキー大使は（ヤーゴから）、「オーストリアが何を要求しているのかは分からなかったが、この問題はオーストリア・ハンガリーの内政問題であり、我々には介入する資格がないと考えている」と言われた。（（Fromkin, David. Europe's Last Summer p194）） サゾノフが予言したように、ロンドンに対する最後通牒の影響は「完全に壊滅的」だった。リヒノフスキーは、イギリスは、ドイツが無罪を主張してきたにもかかわらず、少なくとも「道徳的には（オーストリアの）共犯者」であると信じている、と（ドイツに）報告した。 リヒノフスキーは続けて警告した。もし我々が調停に参加しなければ、ここでの我々の信頼と平和への愛は最終的に打ち砕かれることになるだろう。」2 しかしドイツは、英国が現在始めている精力的な調停行動を支持するという口実をとっただけだった。実際、調停の可能性を防ぐために、ドイツは実際に、7月24日から宣戦布告（28日）までの間にイギリスが提出した提案を妨害した（訳注23日の最初のグレイの提案には、ドイツは基本的に賛成した。なお、世界強国への道I p76 では、”24日”ではなく”23日”になっている）。ドイツの行動と動機は、その至急報において、日ごとに明らかになっていった。 早くも7月24日、オーストリアの最後通牒の挑発的な口調と期限の短さに警戒したグレイは、再びリヒノフスキーに対し、オーストリアがセルビア国境を越境したら、「ヨーロッパの四か国戦争」（つまりロシア、オーストリア＝ハンガリー、ドイツ、フランス）が勃発する危険性について警告していた。 同時にグレイは、「ロシアとオーストリアの間で危険な事態が発生した場合」に、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの直接影響を及ぼさない4カ国による調停を提案した（2回目）。３ しかしヤーゴは、（最後通牒の）期限延長を求めるグレイの要求を無視したため、その話がウィーンに届いたのは最後通牒の期限が切れた後であった。 p66 さらに、彼はそれをコメントなしで通過させた（pass it on)が、これは外交用語で言えば、それを拒否すべきであるとしたのと同じだった。 グレイは7月25日、セルビアの回答は（オーストリアにとって）満足のいくものであったと言わせるために、ベルリンがウィーンに介入すべきだという以前の提案の蒸し返しで、二度目の調停（訳注；「世界強国への道」p76では三度目）。この２回の調停の間に４ヵ国調停案があるのでそれを入れると３回目ということになる））の試みを開始した１。再びこの提案はコメントなしでヤーゴを通過した（pass on≒拒否)が、25日、リヒノフスキーはドイツに勧告する3つの緊急メッセージを送った。それは、オーストリア＝ハンガリーにドイツが一言言ってほしいという要望であった。 これは驚くべきことではない。ドイツ首脳は、24日にロシア代理公使と会見したベルヒトルトに激怒した。カイザーはコメントした。 「まったく余計なことだ」「それは、弱々しい印象を与えるだろう。 オーストリアは・・・一歩を踏み出したが、今となっては後から再検討することはできない。」 一方、サンクトペテルブルクは公式声明で、オーストリアがセルビア領土を併合した場合には、「無関心」でいることはできないと発表した。 フランスとロシアの大使たちは、個人的な意見として、ロンドンでの四大国調停というグレイの（第２回）調停提案は受け入れられない、なぜなら（調停の）最初のステップはオーストリア＝ハンガリーとセルビアの間を調停し、それによって局地戦争を防ぐことでなければならないからである、と述べた[2]。 ドイツは、局地戦争を防ぐという提案は受け入れたが、それは少なくとも、特にイギリス、フランス、ロシアがまだ一体として機能していない時期に、「イギリスとの満足のいく路線」が断たれるのを防ぐためであった。（訳注；グレイは、イギリスはまだフランスやロシアと協調して取り組んでいないと付け加え、そのことがイギリスを三国協商から切り離し、中立とさせるというドイツの期待を高めた。しかし、ポアンカレやサゾノフが主張したように、より早期から英国が仏露と提携をしていれば、ドイツが参戦することを抑えられた可能性はある） グレイは、オーストリア・セルビア間の紛争とオーストリア・ロシア間の紛争を「明確に」区別しており、オーストリア・セルビア間の紛争には干渉したくないと強調していた。 したがって、イギリスの提案は、ドイツの希望通り、紛争を「局所化」することを意味しており、したがって、25日夜遅くにヤーゴによって肯定的に回答された[3]。 しかし26日、ベートマン・ホルウェグは同意は取り消さなかったものの、ロシア予備兵の召集疑惑の報道が確認されればドイツは動員すると脅迫した4。 しかし、ドイツの合意と、再びカイザーによって発表された「紛争の局地化」というドイツの政策のより深い理由は、外務省とベルリン駐在オーストリア大使館の文書で見つけることができる。 ドイツの疑いのない目的は、ロシアをはるか後方に押し込むことであった。 チルシキーは24日、オーストリアは「バルカン半島における既存の力関係を変えないこと」を望んでいると報告した[5]。 p67 皇帝はこの報告書を「弱い」とし、その報告書に関する彼のメモは、セルビア問題でドイツが追求していた目的が何であったかを明らかにし、バルカン半島の力関係の変化は必ず訪れると彼は書いた。 オーストリアはバルカン半島で優勢にならなければならない。ロシアの費用で。セジェーニは、ドイツの政策が「紛争の局地化」であることを確認したが、ドイツは局地化が不可能であることが判明する可能性があることは承知しており、その結果を危険にさらすようにしている。 「ここで」と彼は報告した、「もしセルビアが我々の要求を拒否すれば、我々は即座に開戦を宣言し、軍事作戦を開始することは当然のことと考えられている。我々は ・・・fait amompliでもって世界と対峙するよう勧告をを受けている。１ ティサもフランツ・ヨーゼフと謁見し、ドイツの圧力を全面的に支持した。 躊躇することは「敵味方両方の目から見て、君主制のエネルギーと行動力に対する信頼を大きく損なう」だろう。 グレイと次官のニコルソンとティレルは、この手順が「全面戦争を回避する唯一の可能性」であると考えた。しかしながら、「会議の成功と平和維持の絶対条件」は「いかなる軍事的措置も行わないこと」であった2。 リヒノフスキーは、セルビアの領土が侵害された場合、「世界戦争は避けられない」と報告した。ドイツが踏襲している路線に対する英国の不承認も同様に明白だった。 「ベルリンが望んでいた紛争の局地化は全く問題外であり、現実的な政治とは考えられない。」 リヒノフスキーは（ドイツ）外務省に対し、「得るものは何もなく、すべてを失うような闘争をドイツ国民がやめるように我々の政策を決定するよう」緊急に勧告した。 これらの警告にもかかわらず、ベルリンの英国大使ゴシェンが正式に（四大国大使）会議の提案を提示したとき、ヤーゴはそれを拒否した。 p68 これ以前にも、ベートマン・ホルウェグは、ドイツが「オーストリアとセルビアの取引をヨーロッパの法廷に持ち込むことはできない」という理由で、書面で正式な拒否を示していた１。 ベートマン・ホルウェグ首相にはリヒノフスキーの言い分に耳を傾ける用意もなかったし、英国の方針の変更（それはオーストリア・セルビア紛争とオーストリア・ロシア紛争の区別の撤廃を意味していた c.f.p66）に従う用意もなかった。 ロンドンへのベートマン・ホルウェグ首相の返答は、唯一の根拠として、紛争を局所化するための英国の提案を取り続けていた。同時に、彼が出した回章は、この紛争はオーストリア＝ハンガリーとセルビアのみに関係するものであるというドイツの態度を再確認した。 前日、ベルヒトルトはオーストリアの代表に対し、（ドイツと）同様の方針を取るよう伝えていて、局地化が不可能と判明した場合、オーストリア・ハンガリーはドイツが「別の敵（ロシア）との闘争が強制された場合には我々を支援してくれるだろう」と「感謝の気持ちを込めて」期待していると付け加えた。 26日には、モルトケはベルギーに対し、フランスとロシアとの戦争が差し迫った場合にドイツ軍の通行を許可するよう要求する草案を作成しており２、それゆえにこのことは、ドイツが、オーストリアとロシアの間の戦争が即座にヨーロッパ戦争を引き起こすことを知っていたことを明白に証明した。（訳注；それはドイツに限ってのことではないだろうに）。 最後に27日、グレイはベルリンに対し、ウィーンへの影響力を利用して、セルビアの回答を満足のいくものとして受け入れるようベルリンに、5回目（世界強国への道 p80）の緊急訴えを送った。なぜなら、そうすることでのみ、ロンドンはペテルブルクに対して穏健な影響力を行使できたからである。３  リヒノフスキーは、これでも結局戦争が勃発した場合、「イギリスの同情やイギリスの支援を当てにすることはもはや不可能だろう」と報告した。グレイは、事態の鍵はベルリンにある、とはっきり言った。 もしベルリンが平和を心から望んでいれば、オーストリアが「無謀な政策」をすることを阻止できるだろう。４（Mc Meekin JULY1914 Count down to war p233～4） 3時間後、リヒノフスキーは、グレイが平和の維持はベルリンにかかっていると確信している、と必死に繰り返した。ロンドンでは「セルビア問題全体が三国同盟と三国協商の間の力試しに発展している」という印象が着実に高まっていた。 p69 もしオーストリア＝ハンガリー帝国がセルビアを倒して服従させようとすれば、イギリスは「間違いなくフランスとロシアの側につくだろう」とリヒノフスキーは述べた（この電報の内容はチルシキーにもカイザーにも見せられなかった）。 ロシアからは、サゾノフが「より融和的」であり、「オーストリアの要求を・・・満たす・・・橋渡しを見つけようとしている」との報告が入った。1 しかしプルタレスは、バルカン半島のパワーバランスの維持はロシアにとって極めて重要な利益であると報告した。ローマもイギリスの調停案を報告し2、フォン・シェーンはパリから、フランスが交渉の用意があると電報で伝えた。3 もしドイツが「セルビアがほぼすべての要求を満たしたので、ウィーンに自制を保つよう助言する」準備ができていれば、オルセー通り（フランス外務省）はおそらくペテルブルクでその影響力を行使する用意ができていたことだろう。 The Austro-Huagarian Declaration of War on Serbia （だが）これらすべての訴えや警告にもかかわらず、ベルリンは、ウィーンに圧力をかけて、局地紛争を回避するようには取り計らわなかった（c.f.．世界強国への道 p81～）。それどころか、同じ日、7月27日に、ドイツからの要請を受けて、ベルヒトルトは署名を求めてフランツ・ヨーゼフの前に宣戦布告書を置いた。 ベルヒトルトは、セルビアの応対によっては、「宣戦布告によって明確な状況が生み出されなければ」協商側は、調停提案を採択させることにまだ成功する見込みがあるかもしれないと説明したが、駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーはベルリンに対し、「主に（協商国側の）介入の可能性を排除するために」7月28日、遅くとも29日にベオグラードに宣戦布告が行われると報告した4。 このメッセージは、7 月危機におけるドイツ政策の別の特徴を明らかにしている。ドイツは、紛争を「局地化」することを意図していない調停の試みを一貫して拒否していただけでなく、グレイとサゾノフが時間を稼ごうとしている間に、ドイツはオーストリアに迅速に行動するよう圧力をかけていた。（訳注；実際にはオーストリアが勝手に行動するように”見せかけていた”） ウィーンは7月14日には、取り返しのつかない事態に達する前に阻止したいとほのめかしていた。ベルヒトルトとフランツ・ヨーゼフの目には、最後通牒は必ずしも戦争を意味していたわけではなく、駐英オーストリア大使メンズドルフ伯爵は、グレイの調停の申し出を受け入れることに抵抗はなかったようだ。 しかしドイツは、7月25日に表明expressis verbisしたように、他国の介入を防ぐための既成事実fait accompliを要求した（訳注；ヤーゴはオーストリア人にセルビアへの宣戦布告を急ぐよう促す別のメッセージをウィーンに送っていたFromkin, David. Europe's Last Summer p219）。 駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーの報告（オーストリアの宣戦布告）を受けたとき、ヴィルヘルム通りはその目標が（やっと）達成されたことを確認した。そのおかげで、ベートマン首相は英国の圧力に対して控えめな態度をとり、オーストリアに迅速かつ明白な圧力をかける傾向を示さなかった。 彼が27日の午後にロンドンから受け取った電報類をウィーンに伝えたのは、真夜中の少し前だった。 p７０ そして、それらが引き継がれる前に、ヤーゴは駐ドイツ・オーストリア大使ラースロー・セジェーニとの別の会話で下地を整えていた。再び、7月18日に彼がウィーンはドイツの明らかな変化をどのように解釈すべきかを説明したように、彼はドイツの政策の一貫性と目的性を改めて確認した。セジェーニ は、「誤解を避けるために」ヤーゴが次のことを二度強調したと報告した。 ドイツ政府は、オーストリアに対し、ドイツ政府によってまもなく閣下に通知される可能性のある提案[以下、イギリスの提案]に自分たちは一切関与しないことを最も拘束力のある方法で保証した。それどころか、（ドイツ政府は）それらの検討に断固として反対しており、英国の要求を尊重してそれらを見送っている（pass on）だけである。 ヤーゴ国務長官自身は「英国の要望を考慮することには絶対に反対」だった。しかし同時に、英国の意向を尊重することが、見かけ上の受け入れの口実として与えられた。自分の見解を説明するとき、ヤーゴはさらに明確にこう言った。 ドイツ政府の見解は、英国がロシアやフランスと共通の大義を立てるのを阻止することが今最も重要である、というものであった。したがって我々は、これまでうまく機能してきたドイツとイギリスとの間の境界線を断ち切るような行動は避けなければならない。 ベートマン・ホルウェグは、２7日夜遅く、グレイとのインタビューに関するリヒノフスキーの電報をチルシキーに伝えた際に、ヤーゴの見解を確認した。 私たちはすでに英国の会議開催提案を拒否しており、この主張は絶対的に拒否することは不可能である。もし私たちがあらゆる調停の試みを拒否したら、全世界が私たちに大火事の責任を負わせ、私たちを本当の戦争屋だと言い張るだろう。 そうなると、あたかも戦争が押し付けられたかのように見せなければならないここドイツでの我々の立場も不可能になるだろう。セルビアが広範囲にわたって譲歩したようであるため、我々の立場はより困難である。 したがって我々は、(独自の）調停役の役割を拒否することはできない。すなわち、特に特にロンドンとパリがサンクトペテルブルクに対する影響力を継続的に行使していることを考慮すると、我々は、ウィーンに対する英国の提案を通さざるざる（pass on)を得ない。2(Fromkin, David. Europe's Last Summer p213) p71 ベートマン・ホルウェグとヤーゴの視点は、なぜ英国からの電報がこれほど遅れてウィーンに伝えられたのか、そしてなぜ（グレイのメッセージの）最後の文「また、ここにいる全世界が確信しており、状況の鍵はベルリンにあり、もしベルリンが本気で平和を望むなら、ウィーンが無謀な政策に従うのを阻止できるだろうと同僚から聞いている」が特徴的に隠されたのかを説明している。おそらくそれは、オーストリア政府にもう11時間のドイツの支配力からの脱出のチャンスを与えたのかもしれない。 しかしロンドンには、「我々はエドワード・グレイ卿の望む意味での、直ちにウィーンでの調停を開始した」という全く虚偽のメッセージが送られた。１ 英国の重大警告に関してベートマン・ホルウェグ首相が示したこのような二枚舌は、 7 月の27夜から８日にかけて、ベートマン・ホルウェグ首相がもはや大陸戦争を回避しようとしていたのではなく、ドイツを可能な限り最も有利な立場に誘導しようとしていただけだったということを証明している。（Mc Meekin JULY1914 Count down to war p237） ＜棚上げにされたカイザー＞ もしもドイツの政策のこうした側面が、リヒノフスキーの電報をチルシキーに転送した際のベートマン・ホルウェグのコメントの中で、英独間の話し合いについてpass onされた判断からは十分に明確に現れていなかったとしても２、それは、ベートマン・ホルウェグ首相が同時に英国の提案文を皇帝に送付し、ウィーンに行ったときと同じドイツの態度を暴露したという事実から、さらに明らかになる。 彼は英国の提案を伝達する際に「カイザーの命令に従って」いたと書いているが、実際にはグレイの提案の扱いにおいて、、カイザーの意図を歪曲していた（Fromkin, David. Europe's Last Summer p218）。 7月27日の午後、北海クルーズから戻り、ドイツが大使会議を拒否したというベートマン・ホルウェグの報告を読んだとき（グレイの最新の提案は、午後1時に皇帝がポツダムに戻ってから3時間半後の午後4時37分に外務省に届いた）、ヴィルヘルムはグレイの次の提案は受け入れるよう命令を出した。つまりウィーンへ直接的な影響力を与えるために。3 カイザーが最後通牒に対するセルビアの回答を読んだのは、やっと28日になってからのことだった。セルビアの代理公使は27日の正午にそれを外務省に手渡していたのだが4 。 カイザーのコメントはドイツの政策を改めて確認したもので、「なんと、これで戦争の理由はすべてなくなるではないか」と彼は述べた（c.f.夢遊病者たち p777 Fromkin, David. Europe's Last Summer p218）。 ヴィルヘルムは（両当事国の妥協策として）「ベオグラードでの停止'halt in Belgrade' 」を発案し、それは、グレイの同様の提案とは独立して発令された。 しかし、ベートマン・ホルウェグ首相とは異なり、カイザーはオーストリアのセルビアに対する宣戦布告が差し迫っていることを知らなかったため、それほど急ぐことなくこの提案をヤーゴに伝えた。 p72 カイザーの意見は次のとおりだった。「私の考えでは、セルビアが特定の点に関して行ったいくつかの留保事項は、交渉によって確実に解消できる。（Mc Meekin JULY1914 Count down to war p254） これは外務省と軍が恐れていた瞬間であり、1906年と1911年のように、戦争が確実になる前の最後の瞬間に、君主の弱い神経がくじけるかもしれない危険な瞬間だった。 したがって、カイザーは熟慮の末に騙されたこととなった。ベートマン首相がこの（カイザーの）新たな提案を、遅まきながら、緊急性もなく、歪んだ形見送ったという事実については、他に説明の余地がない。 カイザーが「ベオグラードでの停止 'halt in Belgrade' 」において定めた唯一の条件は、オーストリアが「約束が履行されるという保証をしなければならない」というものだった。 カイザーは、これが「セルビアの一部の一時的占領」に見い出されるのではないかと考えた。これに反して、ベートマン・ホルウェグはチルシキーに対し、占領は「セルビア政府によるオーストリアの要求への完全な遂行」を強制する手段でなければならないと強調した（c.f.p80)。 しかし、カイザーの提案の実際の歪曲は、駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーへのベートマン・ホルウェグの、以下のはっきりした主張にあった。 私たちがオーストリアを引き留めようとしているという印象を与えることは最も慎重に避けなければならない（訳注；p78 電報174号 夢遊病者たち p777）。 私たちが関心を持っているのは、同時に世界大戦を引き起こすことなく、オーストリア・ハンガリー帝国の目的を実現することを可能にする手段を見つけることだけであり、そして、世界大戦忌避が結局避けられないことが判明した場合には、それが行われる条件を可能な限り改善する（ロシアのせいにする）必要がある。１（ Id., II, No. 323, Chancellor to Tschirschky ） The War Guilt is Russia's' 7 月28日のこの補遺は、一方ではドイツの行動の背後にある動機を明らかにし、他方では世界戦争に対するベートマン首相の意識的なリスクを明らかにしている。 なぜなら、彼自身がその意味を説明したからである。第一に、ロシアが戦争勃発の責任があるように見せかけなければならず、第二に、英国は中立を保たなければならない。 ベートマン・ホルウェグは、この問題の鍵は「局地化政策」にあると、自身で信じ込んでいた。早くも7月26日には、彼はドイツの統治思想をカイザー、プルタレス、リヒノフスキー、シェーンへの言葉で非常に明確に説明していた。すなわち、「ベルヒトルト伯爵が、オーストリアはセルビアにおける領土拡張を目指していないということをロシアに保証して以来・・・ヨーロッパの平和の維持はもっぱらロシアにかかっている。」２ ドイツの態度は「冷静」でなければならない。なぜなら、攻撃された場合にのみ、ドイツはイギリスの中立をあてにすることができ、国内の世論を味方につけることができるからである。主に必要なのは、社会民主党の戦争支持を得ることである。 p73 この時点から、「紛争の拡大とヨーロッパの平和の混乱に対してロシアのみが責任を負う」という考えがドイツの文書に頻繁に現れるようになった。 ヤーゴは、ドイツとイギリスの両国は「紛争を局地化させる」ために絶えず苦労しており、戦争を開始できるのはロシアだけであると主張することで、大火が起きた場合のイタリア、ルーマニア、ブルガリアの態度に影響を与えようとした。１ ベートマン首相は、7月28日にプロイセン首相としてドイツ宮廷のプロイセン公使館に送ったランダムなメモの中で、再びこの路線を取り上げた。 再び彼はオーストリアの行為を擁護し、紛争を局所化するという（やや矛盾した）政策を強調した。 例えば、ヤーゴが7月26日にブカレストに宛てた書簡で、ロシアがオーストリアに反対する行動をとった場合の「明らかな結果」についてほのめかしていたように、ベートマン・ホルウェグは覚書を次の一節で締めくくった。 一方で、我々の期待に反して、ロシアの介入により戦火が拡大した場合、我々は同盟のもと、帝国の総力をもって隣人を支援する義務を負うべきである。我々が剣に頼るのは強制された場合だけであるが、もしそうなれば、戦争がヨーロッパの人々にもたらすかもしれない苦しみについて、私たちが無罪であることを冷静に確信できるであろう。・・・もしもヨーロッパで戦争が勃発した場合、ロシアだけが責任を負うべきである2。 最後に、ベートマン首相はカイザーからツァーリに宛てた電報を起草したが、その内容は、「ヨーロッパの大火災」を口実にロシアを苦しめようとする彼の意図をより明確に明らかにしていた。「もし」「結局戦争が起こるとしたら、そのような電報がロシアの罪を明らかに明らかにするだろう」と彼はカイザーに語った。 ＜英国の中立をめぐる思惑＞ 7月28日午前11時、オーストリアはセルビアに対して宣戦布告を行った。 カイザーの「ベオグラードでの（戦争）停止要求（オーストリアの意向を無視した絶対的局在化要求）」を持って駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーが姿を現したのは午後になってからだった。 ベルヒトルトはいかなる介入も遅すぎるとして拒否した。4 しかし同時に、ウィーンとベルリンの間に緊張が生じていた。 7月27日には、ヤーゴはオーストリアが8月12日まで「実際に」戦闘を開始できないことを認識していた。 p74 ドイツ政府はこの遅れを遺憾に感じ、上で引用した7月28日のチルシキーへの電報（174号）でベートマン・ホルウェグはドイツの政策の動機を以下のように説明した。ドイツの政策の動機は、欧州戦争を防ぐことよりも、オーストリアが弱体化と（バイエルンの外交官レルヘンフェルトがミュンヘンに報告したように）政治的愚かさから、自分が戦争を引き起こしたという見栄で自分自身を追い詰めるのを避けるためだった。すなわち・・・ このようにして帝国政府は、その間に他国の調停や会議の提案にさらされるという極めて困難な立場に置かれており、もし帝国政府がそのような提案に対して従来の留保を維持し続けるならば、世界戦争を引き起こしたという不名誉が、 結局、ドイツ国民の目から見ても、跳ね返ってくることだろう。。 しかし、3 つの戦線 (つまり、セルビア、ロシア、フランス) での戦争の成功は、そのような基盤では開始および継続することはできない。直接関係のない列強らへの紛争の拡大に対する責任は、いかなる状況においてもロシア単独に負わされるべきであることが肝要である。1（ Id., No. 323, cf. n. 72 on Jagow, OcU,YllI, No. 10792, Szcigyeny to Vienna, July ２7）Mc Meekin JULY1914 Count down to war p252 首相は、紛争の「局地化」という方針を揺るぎなく堅持した。 それが不可能であることが判明した場合、イギリスの中立を確保するために、ロシアは侵略者の烙印を押されなければならない。 第一の目的は達成された。すなわち、戦争の勃発から現在に至るまで、戦争に対する主な責任はロシアにあったということだ。だが（第二の目的である）イギリスの中立という希望は、大きな幻想であったことが判明した。 リヒノフスキーのあらゆる警告にもかかわらず、ドイツ政府はヨーロッパ紛争におけるイギリスの中立を自信を持って頼り続けた。またイタリアもルーマニアも、ドイツに対して積極的に介入できないことを望んでいた。 しかし、オーストリア＝ハンガリーの（セルビアへの）宣戦布告により、（その出来事がドイツ外交の自信に満ちた態度とドイツの「薄暗い所で弱いながらもきらりと見える微光」の脅威を示す時となるであっただろう）重要な段階に達した外交上の駆け引きは、1908年から1909年のように、再び紛争のバランスと安全性を崩してしまった。 局地化が可能かどうかという問題は、7月28日の午後、コンラッドがセルビアに対してのみ動員を行うのか、それともロシアに対しても動員を行うのかを尋ねた際に提起された。というのは、彼は動員5日目までにどちらが前線になるのか、あるいはすべての兵力列車がセルビアに向けて送られるのかを知る必要があったからだ。 「戦争マシンの自動的なオペレーション」は、今やオーストリア・ハンガリー帝国だけでなく、ドイツでもその効果を発揮し始めた（世界大戦への危険性）。 同時に、ロシアに対する圧力を求めるコンラッドの要求をもたらした駐ドイツ・オーストリア大使ラースロー・セジェーニ伯爵からの要求があり（ベルヒトルトはすでにオーストリアとドイツ両国がロシアの部分的動員に応じることが不可欠であると考えていた）、ベートマン首相はモルトケ参謀総長からの覚書を受け取ったが、その中でモルトケは動員と同盟の仕組みを明確に分析し、それらは必然的に世界戦争につながるに違いないと説明した。 p75 モルトケは、ロシアの部分動員からオーストリア、ロシア、ドイツの総動員（それは必然的にドイツの軍事戦略の第一目標をフランスに向けることになる）を誘発させるようなセルビアに対するオーストリアの介入に結びつくような偶発的な関連を特に強調した。 参謀本部の軍事的立場の評価を受けて、外務省はロシアの部分動員の重要性についての見解を修正することになった（ヤーゴは、前日にはこれをドイツの動員の原因とはみなしていなかった）。２ この時点まで、ベートマン・ホルウェグはオーストリアからの広範な軍事的対抗措置の要請を時期尚早として拒否していたが、モルトケとコンラートからの圧力を受けて、ほぼ最後通牒のような言葉でペテルブルクに報告した。とはいえ、前日に駐露ドイツ大使フリードリッヒ・プルタレスは、サゾノフに対して、オーストリアの立場に応えるために、（そうすれば外交的緊張のある程度の緩和が可能になるだろうという）驚くほどの譲歩をする（戦争回避のためのオーストリア側の要求のほとんどに同意するようセルビアに圧力をかける）用意が完全に整っていると報告していた。3。交渉の見通しはベートマン・ホルウェグによって即座に拒否された。 厳密に言えば、軍がロシアの態度を明確に把握する必要があったのだが、ベートマン・ホルウェグの鋭い口調は、7月危機中のドイツ外交全体と明らかに一致していた。英国が中立である限りは―そして「ロシアによる宣戦布告がこれを確実にするだろう」と期待されていた―ベートマン・ホルウェグ首相は三国同盟を欧州戦争の試練にさらすことを少しも恐れなかった。 ベートマン・ホルウェグは、ロシアに対する強い姿勢を取りながら、英国の目には平和を求める熱心な探求者として映るようあらゆる努力を払った。 ファルケンハインとモルトケとのさらに2回の会見で、7月29日の朝と夕方、それぞれイギリス大使と会う前に、彼は緊急事態宣言を発令することに成功した。それは、プロイセン陸軍大臣は、ロシアが総動員を開始するまでドイツは待たなければならないと主張し、延期を迫っていたものだった。なぜなら、「全体的混乱」の責任をロシアに押し付けることができない限り、イギリスの中立を望むのは無理だったからである。（ロシアが戦争犯罪を負えば、イギリスは中立することになるので、これは、イギリスの中立を確実にする最良の方法だった）。 もしロシアが戦争の罪を背負ったとしたら、イギリスはロシアの側に立つことはできなかったことだろう。 p76 それにもかかわらず、将軍たちは依然として帝国の「停止命令」に拘束されていたにもかかわらず、ドイツ軍のベルギー通過を許可する要求（7月26日起草）をブリュッセルのドイツ公使に送ることを決定した。 7月29日のこの日の駐独イギリス大使ゴシェンとの朝の会話の中で、ベートマン・ホルウェグは再びドイツの平和への意志を強調し、ウィーンへのカイザーのメモ（ベオグラードでの（戦争）停止要求）を極秘でゴシェン大使に伝え、再び自分がウィーンに急ブレーキをかけているという印象を与えようとした。 だが、これまで見てきたように、実際にはそうではなかったのだ。（訳注；世界強国への道 p88参照。この版では、反ドイツ意識が大幅に薄められている） ＜カイザー、呼ぶ Fromkin, David. Europe's Last Summer p224＞  29日午後、カイザーは、首相ベートマン・ホルヴェーク、陸軍大臣フォン・ファルケンハイン、参謀総長フォン・モルトケ、軍事内閣長官フォン・リンカー（午後4時40分）、ヘンリー王子提督（カイザーの弟；午後 6 時）、海軍国務長官フォン ティルピッツ、海軍参謀長フォン ポール、海軍内閣長官フォン ミュラー（午後 7 時15分）らと相次いで協議をした。 この会話は、ヘンリー王子が、ジョージ 5 世 (「ジョージ」) は中立を保つだろうと報告できた（c.f. 夢遊病者たち p78４-5)ことから、イギリスの中立に対するドイツの希望を裏付けるものであるように見えた。フォン・ティルピッツが疑問を抱きながらも、カイザーが受け入れた（英国は中立を保つだろうという）国王の言葉は、フランス、ベルギー、オランダへと、話題を広げた。 カイザーは、ドイツがフランスとの領土や併合を望んでいないことを強調したが、その理由は暗黙の最初の戦争目的（局地的な戦争）を反映していた。つまりドイツは、さらなる戦争を「防ぐ」ことを可能にする保証だけを望んでいた。 ヴィルヘルムは（実際にはあいまいだった）報道されたジョージ王の言葉に大きく基づいており、（ティルピッツの強力な支持を得て）ジョージ王が明らかに自国の中立を約束した以上、ドイツは英国に何も提供する必要はないと述べて、イギリスとの海軍協定を結ぶというベートマン・ホルウェグの提案（彼はこの提案を、イギリスの中立に対するある種の褒美とすることを望んでいた）を拒否してしまった(c.f.Fromkin, David. Europe's Last Summer p224)。 フォン・ファルケンハインおよびフォン・モルトケとの夕方の会話の中で首相は、ロシアが総動員を発令するかオーストリアを攻撃するまでドイツは待たなければならないと再度主張した。 というのは、部分的動員は戦争を引き起こすものではなく、必ずしも戦争を伴うものではなかったからだ。 ドイツは（ロシアの）総動員を待たなければならない。なぜなら、ドイツとイギリスの世論が「差し迫ったロシアとフランスとの戦争」におけるドイツの態度を支持するのはその後になってからだから（ベルギーに対する最後通牒がすでに述べていたように）。 ＜ベートマン・ホルウェグと駐独・英国大使エドワード・ゴシェン卿との29日深夜の会話＞ ドイツは、ハルデーン使節団の際にすでに試みていたように、英国の中立の約束を契約上実現させることにこれまで以上の希望を集中させた。 p77 7月29日から30日にかけての深夜に行われたベートマン・ホルウェグと駐独・英国大使のエドワード・ゴシェン卿との有名な会話では１※、ベートマン・ホルウェグ首相は中立に関する大筋合意の見通しを持ち続けることで英国を縛ろうとしていた。（ベートマン・ホルウェグは、ドイツが間もなくフランスとロシアと戦争を始めるだろうと述べ、ドイツがフランス大都市圏の一部を併合しないことをゴシェンに約束することでイギリスの中立を確保しようとした） ※1原注；ヤーゴからののゴシェンへの宣言草案には当初、問題となっている危機における英国の中立性の保証と引き換えに海軍協定を結ぶという内容が含まれていたが、この申し出は皇帝の反対によりキャンセルされてしまった。c.f. p76) ベートマン・ホルウェグはゴシェンに次のように断言した。「我々はたとえ戦争が勝利した場合でも、我々はフランスを犠牲にしてヨーロッパのいかなる領土的利益も求めないと英国内閣（我々がその中立性を確信しているならばだが）に保証できる。だがゴシェンからの指摘を受けて、その約束はしかし、フランスの植民地にまでは適用されない、とベートマンは述べた。（c.f. 「夢遊病者たち p740」、.Fromkin, David. Europe's Last Summer p228) さらに彼は、ドイツの敵が同じように振る舞うのであれば、オランダの中立性と誠実性を尊重する用意があると宣言した。 しかし、ベルギーについて語る際には、彼は、ベルギーの統合（主権については言及しなかった）は「ベルギーが我々に敵対する側に立たなければ」つまりベルギーがドイツによる自国の領土への不法侵害に抵抗しなかった限りは戦後損なわれることはないという曖昧な保証を与えるだけで（最後通牒にも逐語的に同意した）あった。彼はベルギーの中立侵犯については（そのつもりがなかった）ドイツの意図を裏切ったのである。 グレイはこの会話の決定的な重要性をすぐに理解した。今や、グレイは、たとえ欧州戦争の危険を冒してでも、セルビア紛争から最大限の政治的利点を引き出すというドイツの意図を初めて認識した。 何よりも、ドイツがベルギーを通って行進するのを提案したことを、ベートマン・ホルウェグがすでに認めていた。グレイはドイツのオファーを「破廉恥な申し出」と呼んだ。2 同様に、外務省のグレイの右腕であったエア・クロウは、ドイツが実質的に「戦争をする」ことを決意したと結論付けた。 これまでドイツを引き留めていた恐怖は、イギリスがフランスとベルギーを支援するだろうということだった。しかし同時に、この会話はドイツの意図を明らかにした。すなわち、それらは、これまでのようにまとめられていたが、戦争勃発直後に赤裸々に明らかになったドイツの戦争目標の第一段階として単に認識することができただろう。 フランスの植民地は、1911年の第二次モロッコ危機での政策からのつながりだった。フランス自身に関しては、ドイツが自らを拘束するのは、イギリスが大陸戦争で中立を保つ場合（ドイツがこの犠牲を払う場合）のみであった。 その場合、ドイツはフランスを犠牲にする併合を放棄するだろう（c.f. 「夢遊病者たち p740」）。しかし、この遵守事項の暗黙の逆、イギリスが戦争に参戦した場合、勝利したドイツは、フランス領土を併合するフリーハンドを主張するということであった。 p78 ベルギーに関しても同様の留保がなされていた。ベルギーが抵抗したため、その後ドイツはそこでもフリーハンドを主張したが、この留保はすでにベートマン・ホルウェグの言葉に暗黙のうちに含まれていたのだ。 立場が明確になった。ドイツは英国に対し、政治的解決に向けた両国の試みが実を結ぶことを期待して自身の目的を明らかにしていた。（ドイツの政策は、イギリスの中立を確保する声明が得られることを期待して、イギリスに戦争目的を明らかにさせることであったが、むしろ、ドイツが平和に興味がないことがロンドンにとって明らかだったため、ベートマン・ホルウェグの動きは逆効果となった） この会話はまた、ドイツの「局地化政策」の 水位標を示すものだった。ゴシェンが会話を報告した通信文には、言葉の正確性を評定直後に首相に確認させたが、口調にも内容にも妥協の兆候は見られなかった。 ＜リヒノスキーからの衝撃的電報；英国→ドイツ 29日深夜＞ Mc Meekin JULY1914 Count down to war p279 ベートマン・ホルウェグがリヒノフスキーからの電報（少し前に届いていたが、今解読されたばかりだった）を受け取ったのは1（ DD, II, No. 368 Lichnowsky to Foreign Ministry,July 29.）、英国大使ゴシェンが部屋を出て行った後であった。彼は驚きを抑えることができなかったが、何の異議も唱えなかった。 その内容は、イギリスの中立という希望をその基礎としていたベートマン・ホルウェグ外交の構造全体を初めて揺るがすものであった。 |