9 War Council in Vienna (II)
SUNDAY, 19 JULY
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14日火曜日にティザが戦争党派に転向した後、オーストリアの外務大臣ベルヒトルトは、計画が実行に移されるまで苦悶の５日間待たされることになった。これほど重大な秘密を守り続けることは、ベルヒトルトのような社交的な男にとって、容易なことではなかった。

彼は、旧友リュッツォがイギリス大使に（そして彼を介してロシアに）対して、彼を裏切ったことに気付かなかった。 19日日曜日の朝に目覚めたベルヒトルトが知っていた限りでは、オーストリアは他の大国、ドイツにさえも完全に秘密にしていたが、7月14日火曜日にベルヒトルトがチルシキー大使にティサの転向を報告して以来、それ以上のことは何も知らされていなかった。

ティサが約束を忠実に守り続ける限り、閣僚評議会は19日日曜日に最終的にセルビアに対する48時間の最後通牒の草案を作成することができ、その背後では帝国政府が団結することになるはずだった。この最後通牒は、封印されている限り、今後4日間いつでもベオグラードのオーストリア公使館に送付される可能性があり、7月23日木曜日までは開封しないよう厳重に指示されていた。

　これまでのところは成功しているように見えたのだが、ベルヒトルトは19日日曜日には（漏洩の）機会ををつかんでいなかった。集会を外国大使に秘密にするため、外相は入念な安全対策を命じていた。

ハンガリー国会がブダペストでまだ開会中、ベルヒトルトはウィーンにおけるティサの存在を説明するカバーストーリーを考案した。報道陣は、ハンガリー首相ティサがバルカン半島の最新動向についてより多くの情報を得るという国会の任務を負っていると伝えられたが、それはありえないシナリオではなかった。

南チロルで休暇中だったコンラッド参謀長は18日土曜日の夕方遅くに戻ってきたが、尋ねる人には誰にでも、病気で寝たきりの息子を訪ねるように告げた。他の大臣、ビリンスキー、クロバチン、シュテュルクは全員ウィーンに拠点を置いていたため、彼らがウィーンにいることについては説明の必要なかった。

さらに疑惑を和らげるために、会談はボール広場ではなく、ウィーンにあるベルヒトルトの私邸、シュトゥルーデルホーフで開催された。まさにマントと短剣のスタイルで、近隣住民に密告しないように、全員が標識のない車で到着した（c.f.Fromkin, David. Europe's Last Summer p177　origin256）。1

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　午前10時、シュトルーデル邸で極秘の軍議が始まった。議長を務めるベルヒトルトは、基本的なスケジュールを説明してセッションを開始した。 48時間の最後通牒は、専門的には「期限付き文書」（befristete Démarche）と呼ばれるもので、ポアンカレがサンクトペテルブルクを出発する夜、7月23日木曜日の午後5時までに発送される予定だった。他の勢力には金曜日の朝にそのことが知らされることになる。理論的には、フランス代表団が23日木曜の夜にサンクトペテルブルクを出発する前に最後通牒のことを知る可能性はあったが、ベルヒトルトはその可能性は低いと考えた（軍首脳部は午後5時ちょうどを主張していた）。セルビアが拒否した場合、最後通牒はその25日土曜日と同時に失効し、7月25日から26日の土曜日から日曜日の深夜までに動員を開始できることになる。（ティサからの）このスケジュールに対する反対の可能性を先取りするために、ベルヒトルトは大臣たちに「ドイツ人は緊張し始めている」と伝え、これ以上の延期に対して軍事的に反対した2。

　予想どおり、軍首脳たちはベルヒトルトの計画に全面的に賛成し、事態がさらに早く進むことだけを望んでいた。コンラッドは、「軍事的観点からは、可能な限り迅速な動員開始が望ましい」という見解を、何千回目とも思われたが、繰り返し述べた。

警告に対する彼の唯一の譲歩は、セルビアに対する作戦が開始されるボスニア・ヘルツェゴビナであっても、動員が正式に開始されるまではオーストリア・ハンガリーのどこにも戒厳令を布告しないことを許容することであった。

クロバチン陸軍大臣は、週末までにすべての準備が整うよう、7月22日水曜日に動員命令の作成を開始すると約束した。これらの事実上の論争から判断すると、セルビアとの戦争は基本的に合意が成立しており、土曜日に最後通告が切れ次第開始されることになる。

クロバチン陸軍大臣は、週末までにすべての準備が整うよう、7月22日水曜日に動員命令の作成を開始すると約束した。これらの事実上の報告から判断すると、セルビアとの戦争は基本的にすでに決まったことであり、土曜日に最後通告が切れ次第開始されることになっていたのである。

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　もちろん、ティサは物事をそのようには見ていなかった。彼は14日火曜日に、結局のところ、戦争党派側に靡いたが、依然として消極的な転向者であり、疑念に悩まされていた。

ハンガリーの観点からすれば、バルカン半島の戦争における最大の危険は、トランシルヴァニア・アルプスを越えるルーマニアから来ることだっただろう。ブカレストは、中世にサクソン人が定住した Hungarian-Transylvanian Siebenbürgen（「七都市」）の中で最初にして最大の都市、クロンシュタット（今日のブラショフ）からわずか100マイルしか離れていないところにあった。

　トランシルヴァニアアルプスにあるルーマニアの夏の首都シナイアは、クロンシュタットからわずか 30 マイル、ハンガリー国境にさらに近い場所にあった。その国境を越えてルーマニアが侵攻すれば、繁栄していたSiebenbürgenが直ちに脅かされ、それによってトランシルヴァニアに対するハンガリーの支配が脅かされることになる。

ティサはすでにハンガリー首相として、七都市の地元憲兵隊を強化するために可能な限りの措置を講じていたが、これではルーマニアの侵略を阻止するのに十分ではなかった。最終的な最後通牒の計画に同意する前に、ティサはコンラッドにトランシルヴァニアを守るために何が行われているか説明して欲しかった。

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　コンラッドはまさにこの質問を予想していて、すでに答えを用意していた。彼は、動員が開始され次第、トランシルヴァニアに戒厳令が布告されるだろうとティサに約束した。セルビア侵攻計画の要求と、ロシアの介入の可能性からガリツィアを守る必要がある一方で、軍がルーマニアに対して兵力を集中してしまわないように、コンラッドはSiebenbürgenのために特別なラントシュトゥルム大隊を創設した。それは、実際の軍将校の指揮下にある一種の拡大民兵組織だった。

確かに、ブカレストと戦争になった場合、これらの不規則な布陣では十分ではないが、その目立つ配置はルーマニアの侵略を抑止阻止するのに十分であるはずである、と彼はティサに告白した。追加の予防措置として、コンラッドはトランシルヴァニアの編隊には「ほんの少数のルーマニア国民しか」が含まれていないことを確認した。

　ティサはコンラッドの保証に満足していると宣言したが、それでもまだ十分ではなかった。他に悪魔の代弁者を演じている人がいなかったため、ティサは、それがハンガリーに直接影響を与えるか否かにかかわらず、いつものように自らあらゆる異議を唱えた。イタリアはどうか？彼は次に質問し、オーストリアの名目上の同盟国はトリエステと南チロルを切望しており、セルビアとの戦争を利用して侵攻すれば、たとえロシアとルーマニアが参加しなかったとしてもオーストリアは二正面戦に直面することになるだろうと同僚閣僚に想起させた。ベルヒトルトはイタリアの介入は「ありそうにない」そして、それに対抗するためにあらゆる外交手段を講じると即座に約束した。

　ティサはやっと納得した。ベルヒトルトは、オーストリアの名目上の同盟国であるイタリアの中立性を確保するには外交上の巧みさが必要であることを認め、ティサはセルビアへの最後通牒の送付に同意するにあたり、非交渉的条件を示した。

イタリア、ルーマニア、ロシアなどの大国の支持、あるいは少なくとも無関心を確実にするために、ティサは閣僚らが「（二重）君主制による征服計画はセルビアに対する行動と無関係であり、戦略的理由から必要な国境の修正を除いて、オーストリアは何一つ併合することを望まないことに満場一致で同意すること」を主張した。これに失敗した場合、ティサは48時間の最後通牒の送付に対する支持を撤回することになっただろう。

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　ベルヒトルトは、「ある程度の余裕があれば」ティサの状態を受け入れることはできる、とティサに語った。

ベルヒトルトは、オーストリア＝ハンガリー帝国自身が領土を併合すべきではないことには同意しながらも、依然として、「セルビアは「セルビア領土の可能な限り多くの部分をブルガリア、ギリシャ、アルバニア、そしておそらくルーマニアにも譲渡することによって、セルビアがもはや危険ではなくなるように、[セルビアの]規模を縮小するよう努めるべきである。」と断固考えていた。

ベルヒトルトが実際に、オーストリアがセルビアを征服し、その利益を貪欲なバルカン半島諸国に引き渡すことを望んでいたかどうかにかかわらず、ティサはベルヒトルトにそうする（オーストリアは何一つ併合することを望まない）ように言わせたのだ。

オーストリア首相シュテュルク伯爵は、たとえセルビアの領土一体性が尊重されたとしても、「王朝の宣誓供述書、軍事会議、およびその他の適切な措置」によってセルビアは依然としてウィーンへの依存関係に置かれるべきと主張した。クロバチン陸相はさらに明白で、「辺境の是正」にはセルビアのサバチ地区にあるサヴァ川の橋頭堡の管理が含まれなければならないと宣言した（origin ｐ257）。彼が付け加える必要はなかったが、ガブリロ・プリンチプとサラエボの暗殺者たちはセルビアのサバチ地区を越えてボスニア・ヘルツェゴビナに渡っていたのだった。

　それでもティサは毅然としていた。彼の説明によれば、セルビア解体に対する彼の反対は、「単に国内政治を理由としたものではなく、もしオーストリアがセルビアの完全な殲滅を主張すれば、ロシアが”過剰に”反応するだろうと個人的に確信していたからであった。」

ティサは閣僚の言葉を信用しておらず、併合不可の誓約を全会一致で受け入れるだけでなく、それを公表するよう主張した。

閣僚評議会の最終決議では結局次のように定めらた。「ハンガリー首相の提案に基づいて」、「戦争勃発となっても、オーストリア・ハンガリー帝国は直ちに征服のための戦争を行っているというわけではなく、（セルビア）王国を編入するつもりはないという旨が諸外国に宣言される」

それでも、他の閣僚は（この部分は公表されなかったが）、「この票決は当然、戦略的に必要な辺境の是正や、他国の利益のためのセルビアの縮小、あるいは最終的には必要となるかもしれないセルビアの一部の一時的占領を妨げるものではない。」と主張した。

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　7月7日の先の閣僚評議会と同様に、ティサと他の閣僚との間の政策の相違は、何も解決しない「全会一致」決議によって取り繕われた。

最初の条項は、セルビアを解体しないという公の誓いを義務付けるものだったが、第二条は、結局のところセルビアは解体されるだろうということを暗示している（ただし、オーストリア＝ハンガリー帝国自身によるものではないとされているが）と、あからさまに矛盾している。

他の閣僚たちがティサとの約束を皮肉った態度は、シュトルーデルホーフを去る際にコンラッドがクロバチンに言った一言の中にうまく表現されていた。「まあ、見てみましょうや。バルカン戦争の前には、列強は現状維持status quo について話していたが、戦後になってみれば、誰もそんなことを気にしなくなっていただろ。」（訳注；うーん、現代にも通じる一種の名言である）3

　今日、議事録を読んで見て、7月19日の閣僚評議会（ティサの主張により、セルビアの最後通牒の最終条件を確定するために召集された）で最も印象的なことは、最後通牒の条件について議論がなかったということである。

ベルヒトルトはティサに相談せずに自分でこの文章を書いたが、ティサは19日そのものにその内容を見せられたようだ。また、ベルヒトルトは7月14日火曜日に、それを（セルビアに）送り出す前に駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーがそれを実行すると明確に約束したにもかかわらず（c.f.p120)、駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーは7月19日の日曜日も20日月曜日も21日火曜日もそれを見ることを許されなかった。 皇帝フランツ・ヨーゼフ1世も最後通牒を吟味することを許されなかった。

この文書の歴史的重要性を考慮すると、驚くべきことに、オーストリア・ハンガリー帝国政府の大臣も、その主権者( 皇帝フランツ・ヨーゼフ1世)も、オーストリアの唯一の真の同盟国ドイツの大使も、ベルヒトルトが7月20日月曜日にベオグラードのギースル大臣に封印して送る前に、この文書に署名した者は一人もいなかった。

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　ベルヒトルトの秘密主義の理由を理解するのは難しくない。この最後通牒は非常に厳格だったので、ドイツ人がそれを承認した可能性は低い（訳注；この記述は、同じくMcmeekinのThe RUSSION ORIGINS of the First World War p51と矛盾するが・・・むしろFromkinの方が、ドイツと相談したことを認めている。Fromkin, David. Europe's Last Summer p155参照）。

確かに、条項の中には、オーストリア領土への武器や爆発物の密輸の抑制などの問題を扱った、合理的で驚くべきものではなかったもの（大８項）もあった。

しかし、ほとんど意図的に侮辱している人もいた。ベルヒトルトとオーストリア人にはよく知られていたように、その政府の大部分が会費を払っている協会の会員で構成されているという事実にもかかわらず、セルビア政府は「『ナロドナ・オドブラナ』と称する協会を直ちに解散する」ことになっていた。セルビアのパシッチ首相はまた、「オーストリア＝ハンガリー君主制に対するプロパガンダの罪」でセルビア軍将校と政府関係者全員を解雇するよう求められ、ウィーン自身も違反者のリストを作っていた。

最も厄介だったのは第5項と第6項であった（第5項：セルビア国内におけるオーストリアの領土保全を脅かす活動の取り締まりへのオーストリア側の参加。第6項：セルビア国内にいるサライェヴォ事件に関与した人物への司法捜査、ならびにその捜査活動へのオーストリア側の参画）。

この条項は、セルビアに「二重君主制の領土の一体性に対抗した破壊運動の鎮圧のために、セルビアがオーストリア・ハンガリー政府の代表者の協力を受け入れる」ことを強制したものだった。そしてオーストリア当局に「それに関連する捜査に参加」するよう要求していた 4。

いかなる主権国家も、自国の警察や司法制度の運営を外部（そして敵対的な）権力の代表者に引き渡すようなことは、理屈としては是認しない。もっとも、確かに自国の役人の多くが犯罪幇助と教唆で有罪判決を受ける可能性がある場合には、そうではないだろうが。

これらの厳格な条項により、ゲームは終わった。ベルヒトルトは最後通牒の拒否を欲していた。。　

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　ドイツ側は、早くも7月10日にチルシキー大使から、ボール広場側がベオグラード側に条件を拒否させる意図があることを知っていたことを考えると、最後通牒の妥協のない条件には、ベルリンの誰も驚かなかったはずだ。

それにもかかわらず、ベルヒトルトの「期限付き最後通牒」の非常に厳しい口調は、ドイツが望んでいたものとは程遠いものであった。ベルヒトルト自身も、7月21日火曜日にバート・イシュルで最終的に皇帝に文書を見せた後、暗にこのことを認めた。彼はボール広場に電報を打って、チルシキー大使に「まだ修正が必要なため、明日（7月22日水曜日）の早朝までメモを渡すことはできない」と伝えるよう指示した5。

最後通牒の最終文がすでに20日月曜日に封印されて送付されていることを考えると、ベルヒトルトが「まだ修正が・・・必要です。」とあからさまに嘘をついていたことは明らかである。

ベルヒトルトは、チルシキーがこの文書を承認しないのではないかと疑い、23日木曜日にセルビアに文書が提出される直前まで、チルシキーに見せるのを遅らせようとしていたが、その時点ではドイツ側は何もすることができず、手遅れになってしまったことだろう。

　ドイツの外務大臣ヤーゴも駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーと同じくらい不満の原因を抱えていた。閣僚評議会の数日前に、ヤーゴはベルヒトルトに対し、最後通牒を提出する前にイタリアと折り合いをつけるよう、そして必要であれば中立と引き換えにローマに領土補償を提供することさえも明言していた。

さらにドイツの外務大臣ヤーゴは、ローマと協商諸国の首都における外交上の反対を無力化するために、ベオグラードに最後通牒が送られる前に、サラエボ暴動へのセルビアの共謀を概説する覚書（「ロシア政府に供される書類一式（Dossier))を公表すべきだと規定していた6。

これらはすべて賢明なアドバイスだった。ベルヒトルトはそれを一言も従わなかった。イタリアとはいかなる種類の合意にも達しておらず、サラエボに関する待望の覚書（Dossier)は未完成のままだった。

その代わりに、ベルヒトルトは外交官らに対し、7月24日金曜日に、そのような覚書（Dossier)が後日公開されるということを列強らに知らせるよう、指示をした（オーストリア＝ハンガリー二重君主国による「最後通牒」（1914 年 7 月 23 日）再考─ F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ─参照）。.7

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　もちろん、ドイツ軍が「大胆かつ断固とした」行動方針を繰り返し主張していたことを考慮すれば、ベルヒトルトは自身の高圧的なやり方を容易に正当化できただろう。

それでも、ベルリンは7月初旬にスピードを要求しており、当時はサラエボ殺人事件への報復としてオーストリアがセルビアに侵攻することが期待されていたが、これは理想的には軍事的既成事実 fait accompli であり、大国が反応する時間がないほど迅速なものだった。

ティサの反対（そして収穫休暇プログラム）のためドイツ側にこれを提案することができず、代わりにベルヒトルトは3週間待ってからベルリンに「取るか放置するか」の外交的既成事実 fait accompli を与えた。

その結果生じた政策は、ドイツの殴り込みの最悪の側面（鋭い口調と厳格な期限）とオーストリアの不利な状況を組み合わせた外交上の大惨事となった（最後通牒はサラエボからほぼ４週間後に発送され、セルビアの共謀を概説する覚書はまだ完全ではなかった）。

愚かなことに、皇帝ヴィルヘルム二世とベートマンは、戦争の日程やヨーロッパに対して戦争が正当化される条件を制御することができなかったにもかかわらず、オーストリアとセルビアの戦争のための白紙小切手を切った。オーストリアのしめ縄はドイツ人自身によって、つまりドイツ人自身によって仕掛けられ、ドイツの首にゆっくりと締め付けられていた。

10 Poincaré Meets the Tsar
MONDAY, 20 JULY

7月20日月曜日午後2時、戦艦フランス号は護衛の弩級戦艦ジャン・バール号を伴い、サンクトペテルブルクへの進入路を守るフィンランド湾のロシア海軍基地クロンシュタットに入錨した。乗船していたフランス大統領レイモン・ポアンカレと首相兼外相ルネ・ヴィヴィアーニは、15日木曜の夜明けにダンケルクから出航した。

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　それは決して幸せな経過ではなかった。 4日半の航海中、海は比較的穏やかな状態を保っていたが、政治的な雰囲気はさらに荒れていた。社会主義者の偉大な雄弁家ジャン・ジョレスは、議会で旅行資金提供に反対する投票を行った。パリの反戦派の人々は、特に新たなバルカン危機が欧州の均衡を脅かしている今、仏露同盟を強化しようとするポアンカレの取り組みは危険な挑発的であるとみなした。ヴィヴィアーニはしぶしぶ、新事務所の任務の一環としてポアンカレに同行することに同意したが、行かない方が良かったと明言した。

航海中ずっと、ポアンカレは、フランスの3年間の兵役法の重要性、ドイツに対して「非常に毅然とした態度で」いる必要性、そしてロシアとの同盟の極めて重要な戦略的重要性について、準平和主義者の元教育大臣に口論し続けた。

大統領が驚いたことに、ヴィヴィアーニはほとんど聞いていないようだった。ポアンカレは、ヴィヴィアーニが「外交問題に極めて無知で、彼にはまったく興味がなく、理解しているようにも見えない」と指摘したが、残念なことに、ヴィヴィアーニは月曜日に開廷予定のカイヨー夫人の次期裁判に完全に気を取られていたのだった。

7月20日 – 彼らが皇帝に会うためにロシアに到着するまさにその日。その日の午後、フランス代表団がクロンシュタットに入港したとき、ヴィヴィアーニは「殺人的な暑さ」が彼らを襲っているのを感じて驚いた。彼は北の国に旅行しているつもりだったが、実際には気候が「熱帯アフリカ」よりも悪いことに気づいた。明らかに落ち着かず、フランス首相が側近に「我々はここで何をしているのか？」と尋ねているのが聞こえた。’1

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　対照的に、ポアンカレは使命を持った男であった。ポアンカレは、サラエボ暴動以前の最後のヨーロッパにおける深刻な戦争恐怖であるリマン・フォン・サンダース危機の真っ最中の1914年1月にサミットを設定していた。同月、ポアンカレはまた、ロシア同盟の重要性について自身の見解を共有したモーリス・パレオローグという新しい大使をサンクトペテルブルクに派遣していた。フランス当局者が深刻な国際危機における自らの目的の堅固さをサンクトペテルブルクに納得させた場合にのみ、ツァーリの軍隊がドイツに対抗するフランスを支援していると信頼できるだろう。

あるいは、当時の首相ガストン・ドゥメルグがロシアへ出発する前にパレオローグに指示していたように、『戦争はある日から翌日に勃発する可能性がある・・・私たち[ロシアの]同盟国は私たちの救援に急行しなければなりません。フランスの安全は、フランスを戦いに駆り立てる方法を我々が知るエネルギーと迅速さにかかっています。」.’2

　ポアンカレもドゥメルグと同様に、ロシアに中央同盟国に対して毅然とした態度をとらせるためには、多少の「押し込み」が必要であると長い間信じていた。ヴィヴィアーニに対する彼の疑念は、サゾノフについて抱いていた疑念と一致していた。 Hartwigや他のロシア民族主義者と同様に、フランス大統領はバルカン戦争中のロシア外相サゾノフの従順な態度を厳しく批判していた。サゾノフを鼓吹することは、サミットでのポアンカレの重要な目標の一つであった。

　ツァーリもまた、フランス人にとっては謎のような存在であった。ニコライ2世は、フランスのような「無神論的」共和国とロシアの同盟に対して、少なくとも公の場で嫌悪感を表明したことは一度もなかったし、首脳会談で、革命的不敬罪の血も凍るような名曲である自国国歌「ラ・マルセイエーズ」を聴くように強要されたときも文句を言ったことはなかった。

繰り返しになるが、彼は露仏同盟に対して特別な情熱を示したこともなかった。ツァーリは確かにフランス語が堪能であったが、ドイツ人の妻アリックスはロシア語をほとんど話せなかったので、英語を話すことが多かった（そして英語を書いた。「親愛なる友人ウィリー」皇帝ヴィルヘルム2世に宛てた有名な手紙のように）。

これらすべてよりも重要なのは、ツァーリの意志、あるいは意志の欠如の問題であった。理論的には、長いロマノフ家の伝統に基づく独裁者であり、1906年に下院が初選出された直後から下院を政策立案から外したニコライ2世は、パリの多くの人が恐れていたように、部下に簡単に操られる意志の弱い男だった。
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　ロシア国外では誰が帝国政府の物事を動かしているかを正確に知っている人は誰もいなかったということが真実だった。サンクトペテルブルクで最も影響力のある政策立案者はゴレミキン閣僚会議議長ではなく農業大臣のクリヴォシェインであるとフランス人は信じていたが、クリヴォシェインは政府内で最も熱烈なドイツ嫌いだったため、これは推測、つまり楽観的なものだった。ロシア人の立場を知る確実な方法は、直接サンクトペテルブルクに行くことだったのである。

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フランス代表団がクロンシュタットに到着したとき、皇帝ニコラス2世は皇帝のヨット、アレクサンドリア号でサゾノフとパレオローグと昼食をとっていた。昼食会には、駐フランス・ロシア大使のアレクサンダー・イズヴォルスキーと駐ロシア・フランス武官ピエール・ド・ラギーシュ将軍も出席した。会話の主題は、来たる首脳会談、特に議題の中で最も厄介な問題、つまり1907年の英露条約で英国とロシアに与えられた影響力地域をめぐってロンドンとサンクトペテルブルクの間で増大する緊張をどのように鎮めるかということであった。

詳細について話し合った結果、ツァーリはロンドンに勝利することの重要性について同意した。「完全に正気を失っていない限り、ドイツはロシア、フランス、イギリスを合わせて攻撃することは決してないだろう」と彼はパレオローグに語った。フランス大統領の到着を知らせる合図が聞こえたとき、ちょうどコーヒーが出されたばかりだった。「数分間、港には途方もない騒擾があった」とパレオローグは劇的な場面について書いている。「船の砲音と海岸砲台の発砲音、乗組員の歓声、マルセイエーズ川のロシア国歌斉唱、サンクトペテルブルクからプレジャーボートでやって来た何千人もの観客の歓声。」

　フランスの国家元首に敬意を表し、アレクサンドリア号がフランス号に会いに出かけた。ペテルゴフ宮殿へ向けて出航する前に、ロシア帝国のヨットにポアンカレを乗せるために皇帝自らタラップに乗って出迎えた。「船尾に座っていた」とパレオローグは観察した、「ツァーリと大統領はすぐに会話を始めた。おそらく議論と言うべきだろう。彼らが仕事の話をし、互いに質問を投げかけ、議論しているのは明らかだったからである。」当然のことながら、主導権を握ったのはポアンカレだった。やがて彼がすべての話を終えると、ツァーリはただ黙ってうなずいた.’3

　二人の国家元首のうち、フランス大統領の方が強い個性を持っていた。しかし、カードを握ったのはロシアだった。バルカン半島の危機が発生した場合、中央同盟国に対する軍事措置はフランスではなくロシアによって開始されるだろう。

理由は単純な地理であった。ロシアとフランスは両国ともドイツと国境を接しているが、実際、これがそもそも両国が提携した理由であるが、フランスはオーストリア＝ハンガリーと国境を接していない。また、ドイツはオーストリアとは異なり、バルカン諸国と国境を接していなかった。

したがって、バルカン半島の問題には主にオーストリアとロシアが関与するわけで、ヨーロッパ戦争はオーストリアおよび/またはロシアの動員で始まり、その後ドイツがロシアの動員に応じ、フランスがロシアとドイツ（の動員）に応じるという形になる（その後協商国はイギリスの参戦を望んでいた）。

誰もがロシアの動員が諸大国の中で最も遅く、ドイツが最も早い（そして（シュリーフェンプランにしたがって）西部戦線に集中すると予想されていた）と予想していたため、バルカン半島問題をめぐって戦争が勃発すれば、逆説的にフランスがドイツ攻撃の最前線に置かれることになる。これが、前フランス首相ドゥメルグ（1924年より大統領）が「フランスの安全」はいかに早く「（ロシアを）戦いに追い込むことができるか」にかかっていると述べたときの意味である。.’4　

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　もちろん、バルカン半島で大国同士が衝突するかどうかはまだ誰も分からなかった。オーストリアのセルビアに対する最後通牒に関するボール広場からのリークがロシアのシェベコ、そしてサゾノフの耳に届いたとき、ポアンカレは海上にいた。ポアンカレは好戦的なことで知られていたため、オーストリア軍が何をしようとしているかを知ったとき、彼がどのように反応するかを予測するのは難しくなかった。

ただし、これはすべて21日朝まで待たなければならなかった。 20日月曜日の夜のメインイベントは歓迎晩餐会であった。アレクサンドリア号が午後３時にペテルゴフに停泊したとき、フランス代表団は「大公の一行」に出迎えられ、その後皇帝の側近とともに馬車で宮殿の庭園を通る短いジグザグの旅を終えたとポアンカレは回想した。ポアンカレはこの公園にはあまり感銘を受けず、「ベルサイユのかなり色褪せたレプリカ」だと感じた。彼の「ぎっしりと金箔が貼られた」白いサテンの裏地が施されたスイートも、「過度に装飾されたギャラリーや大酒場とどこか似ていて、その豪華さがむしろ暴れているように見える」やりすぎであると彼は感じた。

　ポアンカレは、賑やかなディナーが開催されたホールにより印象を受けた。それは「十数個の豪華なクリスタルの燭台で照らされていた」と彼は回想した。「蝋燭は、まだ設置されていない電灯よりも限りなく進化しつつあった。」パレオローグもまた、何ヶ月もサンクトペテルブルクに住んでいたにもかかわらず、「制服の輝き、素晴らしいトイレット」に圧倒されずにはいられなかった。、精巧なカラーリング、壮麗な調度品や調度品、一言で言えば華やかさと権力の総体であり、その光景は世界中のどの宮廷にも匹敵するものはなかった」。宴会のテーブルを見回したとき、彼の目には「ダイヤモンド、真珠、ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ、ベリルの素晴らしいシャワー、つまり炎と炎の輝き」が印象に残った。「この妖精の環境では」ポアンカレの「黒いコートは単調な印象だった」と大使は述べた。.’5

　もちろん、フランス大統領は大公妃たちに好印象を与えたり、お世辞を言ったりするためにサンクトペテルブルクを訪れたわけではない。その夜の話題は、仏露同盟を強固にするために彼とニコライ２世が乾杯を交わすことであった。

ツァーリはまずフランス大統領に対し、「ほぼ四半世紀」同盟国として結ばれている両国国民の「相互の共感と共通の利益」のおかげで、フランス大統領はロシアで「最も温かい歓迎」を受けるだろうと保証した。ニコライ2世は「ヨーロッパの均衡と平和」を守るために働いてきたと宣言し、「我々を結びつける絆がますます緊密になる」という希望を表明し、ロシア皇帝はフランス大統領の健康と「フランスの栄光と繁栄」に杯を上げた。.’6

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　ポアンカレは返答の中で皇帝の感情を支持したが、さらに踏み込んだ。率直な物言いの評判通り、フランス大統領は、この同盟は「利益共同体」、つまりドイツへの恐怖に基づいており、「互いを知り、評価し合う陸と海の軍隊によって支えられている」と述べた。

「ご安心ください陛下」。ポアンカレはニコライ二世皇帝に約束した。「フランスは将来も、これまでと同様、同盟国との誠実かつ日々の協力のもと、平和と文明の取り組みを追求するでしょう。」

それからポアンカレは「皇帝、皇后陛下、皇帝陛下の母、王位継承者陛下、そして皇族全員に向かってグラスを上げた。ヴィヴィアーニもグラスを上げたが、熱意はほとんどなかった。.7

11 サゾノフの脅迫
TUESDAY, 21 JULY

21日火曜日の朝午前10時、皇帝ニコライ2世はペテルゴフの自室にあるポアンカレを訪ねた。彼らはすぐにビジネスに取り掛かりました。最初の議題は英露関係であった。英国の外交官らはポアンカレに対し、「ペルシャの数人のロシア領事が1907年の英露条約の条件を破り、あたかも征服された国にいるかのように振る舞った」と報告していた。

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喜ばしいことに、ポアンカレが回想録に記録したように、皇帝は「率直に言って、英国の訴えは完全に正当であると認め、非常に残念な事件は二度と繰り返さないと私に保証してくれた」と認めた。英露海軍軍縮会議が目前に迫っているが、これはドイツとの紛争でロンドンに取り残されることに対するフランスの懸念を和らげるのに役立つだろうから、ツァーリは「事態を早める」と約束した。

「大事なことは、イギリスとロシアの良好な関係を危うくするような問題が生じてはならないということです。私もあなたと同じようにそれを強く望んでいます。」と彼はポアンカレに断言した。

　ロシアの君主にはイギリスとの関係を改善する十分な理由があった。ポアンカレはオーストリアの意図を知らなかったが、ニコライ２世はサゾーノフがウィーンからの駐ウィーン・ロシア大使のニコライ・シェベコの電報を見せたとき、週末にセルビアに最後通告を出すというベルヒトルトの計画を知っていた。

彼が文書の余白に書いたように、彼の結論は、オーストリアはセルビアと戦争するつもりだというものだった。したがって、欧州戦争が近い将来に迫っている可能性があり、仏露の大義にはイギリスの参戦が不可欠であった。

21日の朝、ポアンカレが述べたように、「ツァーリの最も熱心な関心はオーストリアにあった。彼はサラエボでの暗殺に対してオーストリアが何を準備しているのか知りたかった。」。

ニコライ2世は何を恐れていたのかは詳しく述べず、「現在の状況では、両国政府間の完全な合意がこれまで以上に必要です」と確信を持ってポアンカレに語った。

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　その後ツァーリは休憩を取り、ポアンカレは旅行に備えて町へ行き、そこで冬宮殿で外交官たちから正式に歓迎を受けることになった。

ニコライ2世は大統領に対し、旅行に帝国のヨットを使用することを申し出たが、サンクトペテルブルクには同行しなかった。ポアンカレはその理由について当惑した。「ベルサイユ宮殿で戴冠式をし、その人を一人でパリに行かせるなんて」と彼は思った。「彼は恐れているのだろうか」とポアンカレは考えた、「それとも群衆を避けているのだろうか?」1

パレオローグ大使の回想録は、それについての可能な説明を提供している。つまり、20日月曜日に一連の産業ストライキが町中で勃発し、「いくつかの地点で警察と衝突」があった。

いずれにせよ、ポアンカレとヴィヴィアーニ首相は（少なくとも町に到着するまでは）皇帝のヨットで安全に航行していた。皇帝がその日のプログラムを中止していたら、サミットに重大な支障をきたしただろう。

21日午後1時半頃、パレオローグはニコラ橋近くの岸壁に降り立つポアンカレと出会った。「古いスラブの儀式に従って」と大使は回想した。「首都市長のイワン・トルストイ伯爵は彼にパンと塩を差し出した。」

大統領はその後、近くの聖ペテロ・聖パウロ要塞を案内され、仏露同盟の父を讃えて皇帝アレクサンドル3世の墓に花輪を捧げた。

その後一行はコサックの儀仗兵に護衛され、ネヴァ川の岸沿いを馬車でフランス大使館まで移動した。

そこでポアンカレは正式に「サンクトペテルブルクとロシア全土のフランス人コロニー（祖国との関係を維持しつつ、遠くの土地へと移住し開発する人々）の代表団を迎えた」。遠くはオデッサ、キエフ、ティフリスからも来ていた。

これまでのところ、街頭には労働暴動の兆候はなく、群衆から多くの歓声が上がっていたが、パレオローグが気づいたように、群衆の多くは「警官の見守る中で大声で歓声を上げた」「哀れな奴ら」であった。’2

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　21日午後4時、フランス代表団は外交界と会うため冬宮殿に到着した。それは厳格なプロトコルに従って正装で行われた。駐露フランス大使パレオローグは各大使を順番にフランス大統領に紹介して一対一の会話をすることになっており、ヴィヴィアーニはポアンカレの左側に付き添った（ただし会話には参加しなかった）。

外交団の指導者として、駐露ドイツ大使フリードリッヒ・プルタレスが最初に出発した。彼の国とポアンカレ大統領の間のほとんど隠されていない敵意を考慮すると、これは気まずい聴衆だったかもしれないが、それはそうではなかった。駐露ドイツ大使プルタレスはフランス人の血を引いており、言語を完璧に話せた。彼は夏の終わりにプロヴァンスを巡るロードトリップを計画しており、そこでカステラーヌの親戚を訪問する予定だった。二人の男はその地域とその名所について話し合った。ポアンカレは、ドイツプルタレス大使を「言い逃れのフレーズや的を射た褒め言葉を巧みに操る、感じの良い人」だと評価した。

＜ブキャナンからポアンカレへの打ち明け話＞
　さらに重要なのは、駐露英国大使サー・ジョージ・ブキャナンとの出会いであった。当時、フランスとイギリスの関係はかなり友好的であったが、ロンドンとサンクトペテルブルクの間の関係はペルシアをめぐる緊張をはらんでいて、フランスの夢の三国協商が戦場で合体する前に破壊される恐れがあった。

やっかいなペルシャ問題について議論している間、ブキャナンは「少々冷たくても絶妙に礼儀正しかった」とポアンカレは後に回想し、この問題に対する英国人の不安を指摘した。ブキャナンは、1907年の英露条約を現場の新たな状況に合わせて修正する必要があると考え、ロシア側が協力することを期待した。ポアンカレは、ちょうどその朝にツァーリが誠意を持って意図を表明したことを報告することができた。ブキャナンはそれを聞いて「とてもうれしかった」。

　この時点までの事態は、礼儀正しく訓練されたプロの外交官による正式な儀式にふさわしい、かなり日常的なものであった。

しかしその後、ブキャナンはポアンカレを警戒させる打ち明け話を漏らした。英国大使ブキャナンは同僚のデ・ブンゼン氏の報告書をウィーンから受け取ってはいなかったが（驚くべきことに、グレイ外務大臣は報告書をペテルブルクに転送していなかった）、サゾノフが25日土曜日に予想されるオーストリアのセルビアに対する最後通告について話し合っているのを聞いていた。

21日火曜日の初め、ブキャナンはセルビアの大臣と会談し、オーストリアが「ロシアに恩恵をもたらす何らかの事件を起こすこと・・・ [セルビア]を攻撃する口実を期待している」と伝えた。

これらの情報の断片を総合して、英国大使ブキャナンは暗い絵を描いた。「情報は集まった」とポアンカレは回想し、「セルビアの大臣から、暴力的なオーストリアの声明がベオグラードに送られるかもしれないと聞いた」。’3

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　このプロトコールは今や不気味な意味を帯びるようになった。ブキャナンがオーストリアの意図についてポアンカレを警戒させた直後、ポアンカレ大統領は駐露・ハプスブルク大使フリードリヒ・ザパリ伯爵を迎えた。サンクトペテルブルクにいるベルヒトルトのmanを引き出そうと、フランス大統領は即座に「セルビアから何かニュースはあるのか？」と尋ねたが、ザパリは冷たく「司法捜査は進んでいる」とだけ答えた。

ポアンカレが、これまでのこの種の捜査によって常にバルカン半島の緊張が高まっていたと指摘すると、ザパリはさらに冷たくこう反論した。「大統領閣下、外国政府が我が国の主権に対する残忍な攻撃をその領土内で準備することを許すわけにはいきません。」

これに対しポアンカレは、「ヨーロッパの国民感情の現状では、どの政府も通常の2倍慎重になるべきです」とハンガリー人ザパリにやんわりと警告した。

大統領は少し態度を変えて、「このセルビアの事象」はまだ「少しの善意があれば」解決できるだろうと述べた。しかし、ポアンカレは抵抗できず、議論の最後の言葉に踏み込んだ。ポアンカレはザパリに警告した。「セルビアには、ロシア国民という非常に温かい友人がいる。そしてロシアには同盟国であるフランスがいる。心配すべき合併症はたくさんあります!」’4

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　獲物を一瞬だけ垣間見たハンターのように、ポアンカレ大統領と駐露・ハプスブルク大使フリードリヒ・ザパリ伯爵はこの出会いを終えてエネルギーに満ち溢れ、戦いに向けて準備を整えた。

ザパリは鋭い口調でウィーンに会話を報告した。フランス大統領は「無礼」だった、と。ザパリ大使は、ポアンカレの攻撃的な行動と、18日土曜日にサゾノフがとった「控えめで慎重な態度」（ロシア外務大臣サゾノフがザパリを「子羊のように従順」だと判断したとき；McMeekin The RUSSION ORIGINS of the First World War p52参照）とを対比させた・・・全体として、冬宮殿での不愉快な出会いは、ザパリの「ここではポアンカレが心を落ち着かせる効果以外の何物でもないという期待」を裏付けた。５

　ザパリはポアンカレを完璧に読んでいた。「私はこの会話に満足していない」とフランス大統領はザパリとの会談直後にパレオローグに語った。「大使は明らかに何も言わないよう指示されている。。。。オーストリアは我々のためにクーデターを用意している。サゾノフは毅然とした態度をとらなければならないし、我々は彼をバックアップしなければならない。」6

　大統領はヴィヴィアーニとパレオローグを伴い、午後6時に冬宮殿を出てフランスの病院を訪れ、その後別の晩餐会のためにフランス大使館に到着した。外見上はすべて順調に見え、プログラムは順調に進んでいた。

しかし、ポアンカレもパレオローグも（サミットで夢遊病を続けていたヴィヴィアーニはそうではないにしても）心の中では、ある種のルビコン川が冬宮殿で渡られたことを知っていた。

「暴力的なオーストリアの声明」がベオグラードに送付される予定であるというブキャナンの暴露に加え、ポアンカレはその日中、駐セルビア・フランス公使レオン・デスコがフランス代表団がダンケルクから出航する約1週間前の7月15日水曜日、精神異常をきたしたとの報告を受けた。

それ自体は重要ではないが、デスコスの精神崩壊崩壊は、パリがセルビアに関する最新の報告を持たないことを意味した。したがって、ブキャナンの暴露はさらに際立ったものとなった。フランス政府が1週間以上にわたって受け取ったセルビア情勢に関する最初のニュースは、セルビアが間もなくオーストリアに攻撃されると予想しているというものだった。

ポアンカレの視察に同行していたサンクトペテルブルクのフランス大使館武官ルイ・ド・ロビアンは、7月22日水曜日朝の日記に、「すでに議論の中で、一夜にして雰囲気が変わったのを感じた」と書いている。私たちはほんの数日前まで誰も想像もしていなかった戦争について公然と話していました。」７

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　しかし、21日火曜午後の、冬宮殿でのポアンカレとザパリの衝突の最も重要な結果は、大統領がそのことをサゾノフに伝えた後に何が起こったかだった。

駐ウィーン・ロシア大使のニコライ・シェベコとその首席補佐官から聞いて、ロシアの外務大臣サゾノフは、オーストリア人が何をしようとしているのかをすでに多かれ少なかれ知っていた。

今や、フランスの支援とポアンカレの堅実さの模範によって気を引き締めたサゾノフは、いよいよ本番に向けて準備を整えた。しかし、深刻な外交危機を引き起こしたくなかったので、彼は駐露・ハプスブルク大使ザパリと直接対決することを避け、代わりに駐露ドイツ大使フリードリッヒ・プルタレスに怒りをぶつけた。

　サゾノフは、サラエボの暴動に対するロシアの立場を駐露ドイツ大使フリードリッヒ・プルタレスに思い起こさせるためにも、21日火曜夜の謁見を始め、以下のように述べた。

サラエボの暴動は「少数の個人」による孤立した行為であり、「国家全体」であるセルビアが「責任を負うことはできない」。非常に多くのロシア革命家がベオグラードに避難しているため、オーストリア人がベオグラードに賠償を要求することは、ロシアがスウェーデンを脅迫しているのと同じだ。

ベオグラードから発せられる「大セルビア」のプロパガンダさえ、セルビアを悪政したオーストリア自身のせいだとサゾノフは主張した。

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　駐露ドイツ大使フリードリッヒ・プルタレスは、こうした挑発的な議論にできる限り慎重に答えたが、サゾノフの勢いを抑えることはほとんどできなかった。

明らかにロシア人サゾノフはオーストリアの意図を察知しており、彼はサラエボ殺人事件の責任問題だけでなく、ウィーンに期待する行動についても話していたからだ。「オーストリア＝ハンガリー帝国が和平を破る決意をしているのであれば、今度はヨーロッパ中を考慮しなければならないことを同国は認識すべきだ」とサゾノフはプルタレスに警告した。

（この一節の反対側に、約一週間後にこの文章を読んだ皇帝ヴィルヘルム二世が走り書きした。「ノーだが、ロシアについてならイエスだ」）。

サゾノフは続けて、「ロシアは、セルビアに屈辱を与えることを目的としたベオグラードでのいかなる措置についても、無関心で対応することはできなかった」と述べた。プルタレスは、ロシアの恐怖を静めようとして、セルビアの権利が尊重されることを約束した。

サゾノフはさらに続けて、「ロシアは、セルビアに屈辱を与えることを目的としたベオグラードでのいかなる措置も無関心とは見なすことができなかった」と述べた。

駐露ドイツ大使フリードリッヒ・プルタレスは、ロシアの恐怖心を静めようとして、次のように約束した。セルビアの権利は尊重されるだろう。ベオグラードの「屈辱」(Erniedrigung) は存在しないだろう。

サゾノフは平気で、「もしオーストリア・ハンガリー帝国がセルビアに対して脅迫的な言葉を発したり、（セルビアに対して）軍事措置を講じたりすれば、ロシアは耐えられないだろう」と警告した。

ロシアの政策は「平和的だが消極的ではなかった」と彼は宣言した。プルタレス、そして彼を通じてベルリンとウィーンにそのメッセージを確実に届けるために、サゾノフは今度はウィーンに対し、「何が起ころうと最後通牒の話をしてはならない」と,彼自身の脅しを発した。8

　ロシアの外務大臣サゾノフは砂の上に線を引き、ベルヒトルトにそれを越えるよう大胆に指示した。計画によれば、ベルヒトルトはちょうど 2 日後の23日に、そうすること（最後通牒を発する）になっていた。

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