第一次世界大戦年表
オーストリア＝ハンガリー二重君主国による「最後通牒」（1914 年 7 月 23 日）再考 ─ F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ─

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CHAPTER 40: AUGUST 2

＜英国＞
異例的に日曜日に会合を行った英国内閣は、進行中の危機に関与する方向に若干の動きを見せた。午前11時から午後2時まで開会したが、午後6時半に再び召集された。

　午前の会議で閣僚らは艦隊動員に関するチャーチルの命令を批准した。数年前の英仏軍参謀の秘密会談で構想されていたが、閣僚のほとんどが知らされていなかったように、大陸への遠征軍派遣が検討したが、当面は拒否された。

　午前と夕方のセッションの合間に、グレイはフランス大使に対し、ドイツ海軍が無防備なフランス大西洋岸を攻撃した場合には、イギリス海軍がフランスの保護を提供するだろうと進言した。

　夜の会議で、英国内閣はドイツがルクセンブルクの中立を侵害したことを知った。英国政府は、ルクセンブルクに対する政府の責任は集団的なものである、つまり、他の保証国も同様に行動する場合にのみ行動する義務があるとの見解をとっていたが、ベルギーは別だった。中立の保証はおそらく個別のものであり、グレイはすでにこの問題に関するイギリスの立場をドイツ大使に警告していた。しかし、ドイツのルクセンブルク侵攻は、ベルギーへの侵攻と占領の前触れでもあった。実際、内閣が6時半に再招集されたとき、ブリュッセルではドイツからの最後通牒が受け取られていた。アスキスは軍の動員を命じた。

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　この日の政治的感情の変化は顕著だった。その朝、アスキスは個人的な手紙の中で、ヨーロッパ情勢についての彼自身の見解を述べていた。

私たちはフランスにもロシアにも、軍事的または海軍的な援助を与えるいかなる種類の義務もありません。

現時点でフランスを支援するために遠征軍を派遣することは問題外であり、何の目的も果たしません。

私たちはフランスとの長年にわたる親密な友情によって築かれた絆を忘れてはなりません。

フランスが大国として拒否されれば、それは英国の利益に反する。

私たちはドイツが海峡を敵対基地として使用することを許すことはできません。

私たちはベルギーに対して、同国がドイツに利用され、吸収されるのを防ぐ義務があります。

　ヨーロッパ（大陸）の嵐が押し寄せる中での首相の公的政策目標のこの策定は、ほぼ総合的なものとみなされるかもしれない。しかし、それは彼の個人的な見解を表しているだけであり、彼の自由党はそれを共有していなかったのだ。アスキスは、下院の「我が党の3/4程度が、いかなる場合でも、絶対的な不干渉を支持している」と考えた。（c.f.夢遊病者たち p804）

　朝の閣議の前に、アスキスは、フランスを支援する政策について保守党指導部からは断固とした支持を受けるという確約を得ていた。このためアスキスは、主に政敵たちから外交政策を支持されるという特異な立場に置かれた。彼の最優先の政治目標は、内閣が最終的に下す決定の背後で自由党の団結を維持しつつ、内閣を彼自身とグレイの視点に近づけようとすることであった。

＜ドイツ＞
モルトケは「軍事的・政治的な性質」のいくつかの提案を外務省に送り、それが「軍事的観点から何らかの価値がある」と考えた。 もしイギリスが戦争に参戦した場合、ドイツは南アフリカ、エジプト、インドでイギリスに対する反乱を扇動すべきであり、それによってヨーロッパの戦争は世界戦争に変わることをモルトケは示した。 締結されたばかりのドイツとトルコの秘密同盟は公表されるべきである。そしてイタリアは同盟国のドイツとオーストリアを支持するかどうかを表明すべきだ。スウェーデンとノルウェーはロシアに対して動員を促し、圧力をかけるべきである。日本はアジアでロシアに対抗するよう促されるべきである。スイスはすでに動員を開始していた。そしてモルトケは、スイス参謀総長が、もしも承認されれば、スイス軍をドイツの指揮下に置く文書を秘密裏に起草していたと打ち明けた。

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　（ドイツ）外務省は、フランスとロシアがすでに交戦を開始したと発表したが、これは真実ではないことが判明した。

＜イタリア＞
ドイツ大使はイタリアの外務大臣サン・ジュリアーノ侯爵から、ローマが中立を維持することを決定したことを知った。サン・ジュリアーノ氏は、ドイツおよびオーストリアとの同盟条約により、イタリアはドイツまたはオーストリアが攻撃された場合にのみ救援に来ることが義務付けられていると説明した。しかし、1914年の夏に彼らが参加した紛争は、彼らにとっては「侵略戦争」でした。したがって、イタリアは脇に立つだろう。このインタビューの後の説明で、サン・ジュリアーノは次のように述べた。「オーストリアが行った戦争は・・・ドイツ人大使自身の言葉によれば、攻撃的な目的を持っていた。」

イタリア軍司令官は、軍服が十分でないため、いかなる場合でもイタリアは戦争をすることはできないと述べた。

＜スイス＞
ドイツ情報筋はベルリンに対し、スイス当局がドイツ軍の移動に関する報告を持ち、フランスに伝書鳩を送り込んでいたフランス工作員を逮捕したと報じた。

＜ルクセンブルク＞
ルクセンブルク大公妃マリー・アデレードはカイザーに電報で「現在、大公国はドイツ軍に占領されている」と伝えた。彼女は抗議し、ヴィルヘルムに対しルクセンブルクの権利を尊重するよう求めた。これに対しドイツ首相は、「ルクセンブルクにおける我が国の軍事措置は、ルクセンブルクに対する敵対行為を示すものではなく、単にフランス軍の攻撃から我が国の管理下にある鉄道を守るための措置である」と主張した。彼は全額補償すると約束した。

＜英国＞
ドイツ大使は自国政府に対し、「フランスとの戦争でベルギーの領土を侵犯するかどうかという問題は、イギリスの中立を決定する上で決定的に重要かもしれない」と助言した。

実際、その夜の英国閣僚会議までに、問題はベルギーにあるということで大方の合意が得られていた。法的状況は完全には明らかではなかった。たとえ他の保証国がどこも行動しなかったとしても、ベルギーの中立性を保証する 1 つの保証国は行動しなければならなかったのか?　（英国）内閣は、もしベルギーの中立侵害が重大であり、ベルギー自身が侵略者に対して反撃するのであれば、英国は必ず援助に来るだろうと考えた。

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＜ベルギー＞
ドイツのルクセンブルク侵攻に警戒したベルギー外相は、ドイツ駐在大臣に再保障を要求するよう呼びかけた（訳注；ドイツは、英国らとともに、ベルギーの永世中立を認める1839年のロンドン条約に署名していたが、それはベルギーのためというよりは、各国の思惑のためだった）。グレイはすでにフランスとドイツに対し、ベルギーの中立を守る条約上の義務を継続的に支援することを約束するよう要請していた。フランスはその誓約を行った。ドイツはそうではなかった。さっそく、ドイツ人大臣Below Saleskeは言い逃れをした。

　ドイツは、ベルギーの中立を守る条約上の義務を果たす誓約ができなかった。ドイツ人大臣Below Saleskeは、7月29日に使者が彼に届けた、指示されるまで開封しないようにという命令を含む封印された指示書に何が含まれているかをまだ知らなかった。彼は8月2日にそれを開封するように言われた。ドイツ人大臣Below Saleskeは金庫から指示書を取り出し、封印を解いた。中にはベルギー政府へ渡すことを命じられた最後通牒が入っており、その夜彼はそれを正式にベルギー政府に提出した。ベルギーには返答までに12時間の猶予が与えられた。それは7月26日に起草されていたが、書かれたばかりであるとされたドイツの声明は、完全にイメージ上のフランス軍の移動について不満を述べ、ベルギーに対し、フランスと交戦するためにドイツ軍が自国領土を通過することを許可するよう要求した。（c.f.夢遊病者たち p814）

＜英国＞
その夜の会合で英国閣僚は、ドイツがルクセンブルクに侵攻し、ベルギーに侵攻する準備ができているようであることを知った。首相は軍に出動を命じた。

CHAPTER 41: AUGUST 3
p247
＜ベルギー＞
月曜早朝、ベルギーのアルバート国王はドイツの最後通牒を拒否した。自国の比較的小規模な軍隊の指揮を引き受けた彼は、ドイツ軍が侵攻に使用すると予想される橋やトンネルの破壊を命じた。. International law documents, neutrality, breaking of diplomatic relations, war, with notes 1917 (usnwc.edu)

＜ルクセンブルク＞
ドイツ侵攻軍がルクセンブルク市内に回覧した宣言文には、「フランスはルクセンブルクの中立性を無視して、ルクセンブルク領土からドイツに対して敵対行為を開始したため、ドイツ軍も同様の行動をとった」と発表されていた。ルクセンブルク政府首相はドイツ政府担当者を呼んで、以下のように抗議した。「この声明は誤りに基づいている。ルクセンブルク領土にはフランス兵は一人もいない。」

＜英国＞（c.f. 夢遊病者たち p805)
内閣は午前の会議でドイツからベルギーに対する最後通牒について知らされた。アスキスは、「オーストリア並みに粗野なドイツ人が」ベルギーに対して動いたと個人的に指摘した。

（この最後通牒による）閣僚の意見の変動は劇的だった。ベルギーが話題になっていた。その前の週では、内閣は介入に圧倒的に反対していた。当時、彼らは大陸の戦争に巻き込まれたくなかったからである。ロイド・ジョージは以前は平和支持者だったが、率先して戦争支持を主張した。内閣内の意見はほぼ一致した。そのために、アスキスとグレイは投票を求めたり受け取ったりすることなく決定を下し続けた。

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　３日の午後、グレイは下院で演説した（c.f.夢遊病者たち p807）。ロンドンは行楽客でいっぱいだった。その日は月曜日の休日で、イギリス人には銀行の休日として知られていた。議会自体は議員と訪問者でいっぱいであった。バーバラ・タッチマンによれば、下院に「1893年にグラッドストーンが自治法案を提出して以来、初めて全員が出席した」という。「グレイは最も注目に値する演説を行った。長さは約1時間で、ほとんど会話のような口調だった」とアスキスは書いている。グレイには事前に演説内容を書き出しておく時間がなかったのだ。彼は危機の歴史を語ったが、ベルギーの問題になると、下院が介入に賛成して圧倒的に支持していることは明らかだった。

　ほんの1週間前、イギリスはアイルランド問題で内戦寸前に陥っていた。 今や、グレイが演説を終えた後、アイルランド民族主義者の主要指導者であるジョン・レドモンドが立ち上がって政府に対し、「明日、アイルランドから全軍を撤退させるかもしれない」と断言した。なぜなら「アイルランド南部の武装した国家主義者のカトリック教徒は、英国の海岸を守るために北部の武装したプロテスタントのアルスターマンとともに喜んで武装するだろう。」から。

　次は何が起こるだろうか？バイオレット・アスキス（チャーチルに振られて自殺未遂を起こした）は父親に質問し、ウィンストン・チャーチルは独立してグレイに同じ質問をした。首相も外務大臣も、最後通牒を突きつけるという同じ答えをした。実際、下院会期後に招集された閣議でそのことが決定された。

CHAPTER 42: AUGUST 4
p249
＜英国＞
午前9時30分、グレイはドイツに電報を送り、ドイツのベルギーに対する最後通牒に抗議し、その撤回を要求した。（訳注；ドイツはむしろ、英国を参戦させないために、ベルギーに最後通牒を通告したのであるが、逆効果になった。c.f.夢遊病者たち p814参照）。

　ドイツのベルギー侵攻の意図を確認するニュースが届くと、グレイは午後2時に、同日深夜24時までに、ベルギーが中立順守をすることを確認するように要求する最後通牒をベルリンに送った。電報は駐独英国大使に送られたが、大使が届けることができたのは午後7時だった。ある時点でグレイは、最後通牒の有効期限がイギリス時間か大陸時間のどちらであるか指定されていないことに気づき、大陸時間であるべきであると決定され、ドイツに返信までに5時間を与えた。

　ドイツは返答しなかった。ドイツのベルギー侵攻によりイギリスも参戦し、大陸戦争であったものが世界戦争に変わった。大英帝国は地球のあらゆる地域にまで広がっていたため、今や、世界中で戦闘行為が起こることになった。モルトケが8月2日にドイツ外務省に宛てたメモは、ドイツ政府がそのことを理解していたことを明らかにしている（c.f. 244）。

　英国の決定が最も重要であったことを考えると、民主主義以前の時代にどのようにしてこの決定が下されたのかはなおさら注目に値する。議会は（ほぼ全会一致だったので議員の）投票をしなかった。内閣はほとんど役割を果たしていなかったことになる。

p250
A・J・P・テイラーが語るところによれば、ジョージ5世は8月4日の夜、「バッキンガム宮殿で枢密院を開催」し、「大臣1名と宮廷職員2名のみが出席」し、「戦争状態の布告を承認」した。現代の目で見るとさらに驚くべきことは、「自治領の政府や議会には相談がなかった」ということである。その代わりに、「インド副王が行ったように、各総督は自らの権限で王室布告を発布した」。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、インド（当時はパキスタンとバングラデシュも含まれていた）、そしてアフリカの大部分は、事前に尋ねられることもなく戦争に巻き込まれた。

　別の意味で奇妙なのは、ロシア、フランス、イギリス、ルクセンブルク、ベルギーと戦っているドイツの状況だった（8月1日ドイツ、ロシアに宣戦布告; 8月3日ドイツ、フランスおよびベルギーに宣戦布告;　8月4日イギリス、ドイツに宣戦布告）。これらはすべて、オーストリアを支援するためだったとされているが、8月4日の時点では、オーストリアはまだこうした国々すべてと和平を保っていた。ドイツはセルビアとは交戦状態ではなかったし（セルビアがドイツに宣戦布告したのは8月6日）、セルビアとまだ実際に戦闘をしてはいなかった。セルビアはオーストリアと交戦していた唯一の国であったが（オーストリアは7月28日にセルビアに宣戦布告）、ウィーンからすれば、セルビアの方こそが、オーストリアの存在に脅威を与えている国だった。

　のちに、歴史家のHartmut Pogge von Strandmannは、ドイツ軍が同盟国なしで単独で前進を続けたため、「ベルリンはパニックに陥っていた」と語った。モルトケは8月5日、ティルピッツに対し、もしオーストリアが（宣戦布告を）躊躇し続ければ、ドイツは宣戦布告からわずか数日で、可能な限り最良の条件で和平を求めた訴えを起こさなければならなかっただろうと語った。

　8月6日、ウィーンは不本意ながら、ロシアに対して宣戦布告した。

　交戦国らがまず初めに、自国民と他国の国民に以下のことを説明する義務があると感じたのも不思議ではない。なぜ彼らは戦場に連れていかれてしまったのか、特にオーストリアにとっては、なぜ間違った戦場（ロシア）に連れていかれてしまったのかという、混乱したように見える論理を。

CHAPTER 43: SHREDDING THE EVIDENCE
p251
軍事史家のMichael Howardは1914年について次のように書いている。「おそらく世界の歴史の中で、大公が暗殺された6月28日から英国が（ドイツに）宣戦布告した8月4日までの日ほど精査にさらされた日々はないであろう。」

しかし、記録にはいまだ空白が残っている。疑い深い歴史家は探偵となって、そのギャップが何を意味するのかを尋ねるに違いない。なぜなら、証拠の隠滅や破壊自体が（何かのための）証拠作りとなるのであり、
（隠滅や破壊された証拠を）発見する挑戦することが大事となる。なぜ隠滅はなされたのか？

　その好例は、6月28日の朝から始まった週である。オーストリア＝ハンガリーは、推定後継者の暗殺にどう対処するかを決めていた。その後の事態の主要な意思決定者であった外務大臣フォン・ベルヒトルト伯爵は、私たちがその私文書をぜひとも参照したいと思う最初の人物である。それは、第一次世界大戦中のオーストリアとドイツに関する権威ある作品の著者であるHolger Herwigから私たちが学んだことから教わるだろう。「外務省にあるベルヒトルトの公式日記には、1914年6月27日から7月5日までの期間の記載が著しく欠けていることに注目するのは興味深い。」

1週間の空白期間があるのだ。それは、6月27日からの1週間に、ベルヒトルトが、そのうちには抹殺したいと考えていたことがらがあったことを示唆している。

興味深いのは、オーストリアの諜報機関がウィーンの戦争記録保管所に保管しており、6月28日に停止し、丸1年間再開されなかった記録が含まれていることだ。（ドイツがロシアに）宣戦布告をした2日後の8月3日にドイツが文書を公表することで自らを正当化したとき、「30の文書のうち半分はあからさまな偽造だった」。

p252
　第一次世界大戦中、双方とも自分たちが戦争を始めたのではないことを証明しようとした。その後、誰もが「戦争罪」を避けたいと考えたが、特にドイツは休戦後の1919年のベルサイユ条約で正式に「戦争罪」を定められた。ドイツ当局はモルトケ論文の関連部分の隠蔽を扇動した（c.f.p202)。

　その結果、戦後数十年間でさえ、証拠は回収されずに破壊される傾向があり、たとえ回収されたとしても書き換えられたり、再構成されたりする傾向があった。さらに、ナチス政府に至るまでのドイツの歴代政権下の当局は大規模な偽情報キャンペーンを実施しており、これについてHolger Herwigはエッセイ“Clio Deceived.”で詳しく説明している。

　ドイツ首相ベートマンの私設秘書クルト・リーツラーの日記は、研究者たちが直面する困難を物語っている。リーツラーは日記を破棄するよう指示を残して亡くなった。ベートマンの個人文書は10～20年前に削除または破棄されていた。多くの策略と議論の末、リーツラー論文は救出された。しかし調査の結果、1914年の夏の前後の日記は小さな練習帳に書かれていたが、重要な7月と8月は代わりにばら紙に別の方法で記録されていたことが判明し、これらの中心に関連する部分が書き直されたことが強く示唆された。 —そしてオリジナルと置き換えられていた。

皇帝の海軍内閣長官ミュラーの文書は生き残ったものの、抹消された。記録を破棄したり改ざんしたりしたのはドイツ人だけではなかった。 1914年の戦争の最初の数週間、フランス外務省は自らの行ったことすべてを正当化するイエローブックを発行し、1940年代にアルベルティーニはその著作を次のように書くことになっていた。「159 の文書が集められており、その多くは改ざん、切断されています。」

サンクトペテルブルクによる同様のことがらについて、アルベルティーニは、ロシアのオレンジブックには「79件の文書が掲載されており、中にはかなり偽造された文書も含まれている」と書いている。そしてセルビアのアーカイブは半世紀にわたり閉鎖されていた。 1914年のセルビア閣僚会議の議事録は残されていなかった。

p256
　しかし、その後数十年間にわたってのドイツほど広範に記録や日記などの弾圧や破壊が行われた国はなかった。したがって、問題の期間における電話での会話の記録やその他の口頭でのコミュニケーションのメモはすべてドイツ外務省から紛失している。

ドイツ側にとって、2つの重要な転換点は、「白紙小切手」をもたらした7月5日のオーストリア側との会談と、開戦の決定につながった7月27日の週のドイツ指導者間の会談である。両者の記録はすべて外務省から失われている。また、この分野の第一人者であり（フィッシャーの弟子である）Imanuel Geissによると、7月中の皇帝と軍および政治指導者との会話の記録はすべて紛失しているという。さらに言えば、ベルリンにおけるドイツと外国勢力との会話の記録は存在しない。

適切なことに、1960 年代の勇敢なフリッツ・フィッシャーをはじめとするドイツの学者たちが、記録の断片の発見や復元に率先して取り組み、しばしば進取的で想像力豊かなフィールドワークを通じてそれを行ってきた。

こうして、1970年代初頭、ドイツのヴィルヘルム時代研究の第一人者であるJohn Röhlは、「ヴュルテンベルクのヘンミンゲン城の地下室のチェストと、ヘルテフェルト邸宅の屋根裏部屋の洗濯かごの中で発見された」という2つの非常に重要な文書を出版した。オランダ国境に近いドイツ西部で」と彼は書いている、「手紙を探していたとき」。 2つの文書は半世紀にわたって隠されていた。

全体として、私たちは、破棄または隠蔽された文書はおそらく恥ずべきこと、または有罪となるものであり、記録を隠蔽または改ざんする努力は戦争責任を否定するために行われたという明白かつ常識的な結論を導き出さなければならない。しかし、これからわかるように、現代の学問は、大規模な証拠の破壊と改ざんにもかかわらず、実際に何が起こったのかについての真実の多くを明らかにすることを可能にしてきたのである。

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