・最後通牒
１帝国政府の君主制に対する憎悪・軽蔑を扇動するすべての出版を禁止すること。

２ナーロドナ・オドブラナ（セルビア国家主義者組織）と称する組織を解散させ宣伝その他の手段を没収し、帝国政府に対するプロパガンダを行う他の組織も同様にすること。

３帝国政府に対するプロパガンダを助長しているもしくは助長する恐れのある全てを（教師も教材も含めて）セルビアの公教育から遅滞なく削除すること。

４帝国政府に対するプロパガンダを行った罪で、帝国政府が一覧にした全ての軍関係者と政府職員を解雇すること。

５領土保全に反する破壊分子の運動の抑圧のために、帝国政府の一機関との協力を受け入れること。

６セルビア領で見つけられる可能性のある、サラエヴォ事件の共犯者を法廷尋問するとともに、帝国政府の一機関をこの手続きに参加させること。

７帝国政府が行った予備捜査によって浮かび上がった2人の指名手配犯を直ちに逮捕すること。

８武器と爆発物の違法売買の流通を効果的な方法によって防ぐこと。

９国内国外を問わず、帝国政府に敵意を示したセルビア政府高官の陳述書を届けること。

１０全てについて実行する手段を、遅滞なく帝国政府に知らせること。

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1. The Council of Joint Ministers on 19 July approves the text of the ultimatum on conditions laid down by Tisza
　私たちは、コンラッドがセルビアに対する動員と即時敵対を主張した6月29日の最初の瞬間に、ベルヒトルトがそのような措置を講じる表向きの機会はなく、世論がまず準備される必要があると反対したことを見てきた。1（Conrad, IV, pp. 33-4）

表向きの事として、彼はセルビアに対し、特定の団体の解散と警察大臣の解任を求める明確な要求を提示することを構想していた。

セルビアに対する最後通牒の考えは最初からベルヒトルトに浮かんではいたが、どのように切り出せばよいか分からずじまいだった。彼は、すぐに行動を起こして既成事実fait accompliを持ってヨーロッパと対峙することを次に考えたが、それはティサの反対に合うだろうし、時間と手段が必要だったため、結局、最初の最後通牒の考えに立ち返った。

7月7日に共同閣僚理事会で行われた議論では、7つの論点が提起され、そのうち最後通牒に盛り込まれたのは3つだけだった。ナロドナ・オブラナの解散についてはまだ発表されていなかったが、ベオグラードの雑誌「ピエモント」に対する訴訟についての言及があった。そしてそこには、最後通牒の第 5 項と第 6 項にある最も厳しい要求の兆候は、なんらなかった。

セルビアに対して、オーストリア政府代表をベオグラードに迎えるよう求めるという考えは、セルビアが最後通牒を受け入れられないようにする方法を考えていたときに、ベルヒトルトとその顧問らの心の中に浮かんだに違いない。

p255
7月10日、ベルヒトルトはチルシキーとの会話の中で、セルビアに対して求められる要求の中には、ベオグラードにて、汎セルビア主義の陰謀を監視するオーストリア政府組織の受け入れ要求も含まれるかもしれないと初めて言及した。それにはおそらく、特定の団体の解散と、関与した一部の陸軍将校の解雇も含まれるだろう。 1（DD. I, 29）

7月11日、チルシキーからの手紙でヤーゴは、ベオグラードが、セルビア国王による公式な宣言と、この事業の履行を監督するオーストリア政府組織の設立を求められることを伝えた。 2（See p. 260）

7月13日、ベートマンは、殺人事件の捜査に、オーストリア高官の参加が求められる、と知らされた。セルビア政府の共謀を示すオーストリアの要求を裏付ける証拠を収集するために、ヴィーズナー博士がサラエボに派遣されたが、彼は手ぶらで帰国した（オーストリア＝ハンガリー二重君主国による「最後通牒」（1914 年 7 月 23 日）再考─ F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ─）。

ティサの変心後、最後通告起草の任務は、ボールプラッツの高官でバルカン半島の専門家であるMusullnに託され、そしてその結果は、ベルヒトルトとフォルガッハによって修正された。

草案作成が最も困難だったのは第 6 項だった。すでに第５項では、ベオグラードが、君主制の一体性に対する破壊運動の弾圧において、セルビアにおけるオーストリア・ハンガリー政府機関の協力を受け入れるよう要求していた。

現在、私Albertiniはウィーン国立公文書館で、最後通牒の最終草案となった議事録を調べることを許された。それらは、Musullnの草案では第 6 項が次のように規定されていたことを示している。

　現在セルビア領土にいる6月28日の陰謀に関与した者たちに対する司法捜査を開始し、サラエボで逮捕された、共謀者の一致した証言で有罪とされたセルビア軍のヴォジャ・タンコシッチ少佐とセルビア鉄道従業員シガノビッチを起訴する略式手続きを行うこと。

　このフォーミュラでは、セルビアにとって、この点についてならば、受け入れられたかもしれない。それを修正する作業はベルヒトルトによって実行され、ベルヒトルトは自ら主導してMusullnのテキストを書き換えた。

　帝国警察と王立警察の職員がセルビア当局と協力して、セルビア領土にいる6月28日の陰謀の共犯者の捜索を進め、法廷で示される有罪者に対する司法捜査を開始できるようにする。帝国および王立政府は、この捜索の結果として、彼らに対して略式訴訟を起こす予定である。

　Musulin は Berchtold の提案を受け入れ、その要点を次のように示した。

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　 6月28日の陰謀に関与したセルビア領内にいる人々に対して司法捜査を開始し、これに関連する捜査に君主国の警察職員がセルビア当局に参加することを許可する。ヴォヤ・タンコシッチ少佐と、サラエボでの予備捜査の結果により有罪とされたセルビア国家職員シガノビッチという人物に対する刑事手続きの開始を直ちに開始すること。

　最終改訂は Forgach によって行われた。最終文章に示されているように、第 6 項は 2 つの部分に分割され、より強制的なトーンとなった。

　セルビア領土にいる6月28日の陰謀の共犯者に対する公式捜査を開始すること。帝国政府および王立政府から委任された機関は、それに関連する捜査に参加する。

　ベルヒトルトのもう一つの関心は、疑惑を引き起こすようなことが起こらないようにオーストリアの意図を隠蔽し、最大限の秘密を守ることであった。コンラッドとクロバチン陸軍大臣は休暇中で不在であり、7月16日に駐独オーストリア大使セジェーニがウィーンから電報で伝えたように、このことは「状況に非常に動揺していた」イタリア大使Bollatiにとって心強い兆候とみなされていた（責任者が休暇なら心配ないのだろう）。 1（Oe-U. VIII, 10296.）

7月18日にサンクトペテルブルクの任務に戻ると、駐露オーストリア大使ザパリは、サゾノフに最も穏やかな保証を与えた。

秘密を守るためのベルヒトルトのあらゆる予防策にも関わらず、最後通牒の文言を話し合って可決するための7月19日の合同閣僚会議がベルヒトルトの私邸で開催され、閣僚は公用車ではなく単独で到着していたにもかかわらず。7月16日以降、オーストリアの計画に関するニュースが列強諸国の首相に漏れた。（Mc Meekin JULY1914　Count down to war p136　Fromkin, David. Europe's Last Summer p178）

　ベルヒトルトは閣僚らに対し、48時間の制限時間が25日土曜日午後5時に満了するよう、声明は7月23日午後5時にセルビア政府に手渡され、そして動員命令は土曜から日曜の夜に出される、と伝えた。

　外交上の理由から、ベルリンではすでに緊張感が漂い始めており、我々の意図がローマにも伝わったため、ベルヒトルトはさらなる延期には断固として反対を表明せざるを得なかった。

　ティサは、ハンガリー王立政府の同意は、閣僚理事会による決議案の全会一致での受け入れが条件でなければならないと繰り返した。

君主制による征服計画は、セルビアに対する行動とは無関係であり、軍事的理由による辺境是正を除いて、セルビア領土は一インチも我が国に併合されないのである。

　ベルヒトルトは、一定の留保を付けてのみ、ティサの立場は受け入れることができる、と答えた。

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すなわち、もしオーストリアがセルビアとの戦争に勝った場合には、オーストリア自身は併合はしないだろうが、ブルガリア、ギリシャ、アルバニア、そして最終的にはルーマニアへに対して可能な限り最大の領土割譲をセルビアに強いることによって、セルビアをもはや脅威にならない程度に小さくしようとするだろう、ということだった。 1

しかし、バルカン情勢は変わることだろう。ロシアが既存のソフィアの内閣を崩壊させ、君主制に敵対する政権を政権に就かせることも不可能ではなかった。アルバニアもまた、信頼できるとは言い難かった。

　外交政策の責任者である彼は、もし我が国の辺境に現在よりも良い条件を作り出すつもりなら、戦争末期の状況によっては、併合をしないわけにはいかなくなることを考慮しなければならない。

　ティサは頑固なままでこう言った。

　彼がこの要求をしたのは、国内政策だけを理由にしているのではなく、セルビアの完全な殲滅を主張すれば、ロシアは抵抗を強いられるだろうと個人的に確信していたからである。

　オーストリアのシュテュルク首相はこう指摘した。

たとえ君主制によるセルビア領土の獲得が排除されたとしても、王朝の宣誓供述書、軍事会議、およびその他の適切な措置によって、セルビアを君主制への依存関係に置くことは依然として可能であるはずである。さらに、閣僚理事会によって可決された決議は、必要とされる戦略的辺境の是正を不可能にするようなものであってはなりません。（Mc Meekin JULY1914　Count down to war p140）

　クロバチン陸軍大臣は言った。

辺境の是正に加え、サバツ地区などセーブ川の向こう岸にある橋頭堡の永久占領を排除しないことを条件に、この決議を支持する。

　そこで、以下の決議が全会一致で可決された。

　合同閣僚評議会は、戦争勃発直後、外国勢力は、君主国が征服戦争を行っておらず、王国を併合する目的ではないという声明を受け取るべきであるという王立ハンガリー首相の提案に同意する。

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戦略的に必要な辺境の是正や、最終的に必要となる可能性のあるセルビア領土の一時的占領は、必ずしも妨げられるわけではない。

　会議の終わりにクロバチンに宛てたコンラッドの言葉ほど、領土的無関心の投票の意味を明らかにするものはない。

　でもまあ、見てください。バルカン戦争前、列強は現状維持status quo について話していたが、戦後は誰もそれを気にしなくなっただろ（Mc Meekin JULY1914　Count down to war p141）。 1（Conrad, IV, p. 92）

　ティサを除いて他の閣僚は皆、コンラッドと同様、領土放棄の誓約は形骸化しており、いざとなったらひっくり返せる、と確信していた。

実際、スラブ人を君主制に併合することで南スラブ問題を完全に解決することなく、もし成功したとて、何も得るものもないことがわかっていて、これほどひどい冒険――オーストリアの存亡を賭けた冒険――に突入する価値はあっただろうか。

しかしこの政策は、ハンガリーがその優位性を持っていた（オーストリア＝ハンガリーの）二重政治の終焉を意味していたであろうに、ティサはそのことを聞く耳を持たなかった。

こうして、健全で合理的な新秩序の計画を持たない陰謀家たちによって、ヨーロッパは大混乱に陥ることになった。

当時のベルヒトルトは、なんとかティサの拒否権を回避できると考えており、後述するように、オーストリアの領土放棄をイタリアには約束しないように注意を払っていた。そして7月28日になって初めて、彼はロシアに対してその（領土放棄）約束をした。

(2) The Kaiser in favour of the reoccupation of the Sanjak of Novibaｚar; German impatience and dissatisfaction with Austrian delays .
　7月20日、セルビアへの声明はベオグラードのオーストリア公使、大国の大使、小国の公使に送られた。ベオグラードのオーストリア公使は午後5時にセルビア政府にこの文書を提出する予定だった。 7月23日に他の参加者は24日の朝に発表することになっていた。この声明はフランシス・ヨーゼフ皇帝が読む前に発送された。ベルヒトルトがイシュルでそれを彼の前に置いたのは、21日の朝になってからだった。しかし、皇帝はすでに同意しており、許可を与えていた。これを受け取ったイシュルのベルヒトルトはマッキオに電報を送り、まだ修正すべき点がいくつかあるため翌日提出することをチルシキーに伝えた。だがこの声明が 20 日にさまざまな首都すべてに発送されたことを考えると、修正すべき点があるというのは、は真実ではなかった。

　なぜこのような虚偽が？ドイツはその結果を（オーストリアと一緒に）背負うよう求められていたにもかかわらず、声明の本文をまだ知らなかったのだろうか？

カイザーとその部下がどのように事の成り行きをたどったかを調べてみよう。ヴィルヘルムは7月6日にクルーズに出発していたが、毎日電報が送られてきており、ウィーンの遅さにイライラしていた。

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7月10日にチルシキーは、ベルヒトルトから、先日の謁見で、フランシス・ヨーゼフがヴィルヘルムに感謝の意を表し、次のように述べた、と報告した。

彼は今や、セルビアに関する耐え難い状況に終止符を打つ決定が下されなければならないという我々の意見に完全に同意していた。

　カイザーは「今や」と「決定」という 2 つの言葉に下線を引き、彼の欄外コメントは次のとおりであった。「非常に長い時間がかかっている。」　

彼もチルシキーも、フランシス・ヨーゼフが自分の決断をドイツに帰したことに対しては何の抗議もしなかった。 7月10日のチルシキーの電報に示されているとおり、彼らは声明の一般的な性質も例外としなかった。

　ここでベルヒトルト大臣は、セルビアに対して取られる最初の措置に関して検討されている二つの方法について皇帝に伝えた。陛下は、（ベルヒトルトとティサの間の）この違いはおそらく埋めることができるだろうとの見解を表明された。

全体として、陛下は、セルビアに対して具体的な要求をしなければならない、という考えに傾いていた。彼は、そのような過程の利点を過小評価していません。

それは、君主制が陥ることになる、不意にセルビアを攻撃するという不名誉が回避され、セルビアが不利益を被ることを意味するだろう。

さらに、この過程は、ルーマニアと英国双方の少なくとも中立的な態度をかなり促進するだろう。セルビアに対する適切な要求の形成が現時点での最大の懸案事項となっており（セルビアにはそのための十分な時間があった）、ベルヒトルト伯爵は、ベルリンがそれについてどう考えているか知りたいと述べている。

彼は、要求の一つは、ベオグラードにオーストリア・ハンガリー政府の機関を設置して、ベオグラードでの汎セルビア人の扇動を監視すること、そしておそらく結社の解散や有罪となった軍将校の一部の解雇を監視することかもしれない、と考えている。

（声明への）返信のタイムリミットはできるだけ短くする必要があり、おそらく 48 時間以内に設定する必要があります。確かに、ベオグラードがサンクトペテルブルクからの指示を得るには、この短い制限でも十分でしょう。

もしセルビア人がすべての（オーストリアからの）要求を受け入れてしまったら、それは彼の考えとは異なる結果になってしまうだろうから、セルビアの受け入れを絶対に不可能にするような要求がどのようなものか、彼は頭の中で考えている。 1 （ DD. I, 29.）

　カイザーはある提案を用意していた。彼の余白のコメントは次のとおりである。

　彼らに、サンジャクから出て行け！と伝えてください（origin434）。 Then the row will he on at once ! オーストリアは、セルビアとモンテネグロの合併とセルビアの海洋へのアクセスを阻止するために、間違いなく再びそこを取り戻さなければならない。（1878年のベルリン会議によってオーストリア＝ハンガリー帝国軍のサンジャクへの駐留が認められ、1909年まで続いたが、1912年10月、バルカン戦争においてセルビアおよびモンテネグロの軍に制圧され、セルビアとモンテネグロによって分割された）。

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　わずか 4 か月前には、このような連合は、カイザー側によって避けられない、とみなされていた。今や、彼の焦りは、ポアンカレがサンクトペテルブルクを離れる23日よりも早くは最後通牒を出すことはできないと、14日にウィーンが電報を打った時、とてつもなく大きくなった。彼は欄外にこう書いたほどである。「何と残念な」 1（DD. I, 50）

　カイザーの心境は閣僚たちも同じだった。すでに述べたように、セジェーニ駐ドイツ・オーストリア大使は7月9日にウィーンに電報を打ち、ヤーゴから「彼の意見においても、予定されているセルビアに対する行動は遅滞なく実行されるべきである」と強く保証されたと伝えた。 2 （Qe-U. VIII, 10154. See p. 175）

しかし、この行動は何だったのか? ベルリンはオーストリアが何の苦もなくセルビアを攻撃し、ホヨスによって口頭で説明されたベルヒトルトの当初の計画に沿ってセルビアを分割することを期待していたのだろうか、それとも以前の（1913年の第二次バルカン戦争時の）最後通牒の手順を好んだのだろうか？

　我々は、7月10日にチルシキーが、セルビアに対する要求についてベルヒトルトがベルリンの考えを知りたいと電報を打ったのを見たばかりである。7月11日、ヤーゴは次のように答えた。

あ
あ

(3) The belated communication of the ultimatum to the Wilhelmstrasse; the implausible statements of Jagow and Bethmann Hollweg {p. 264).
(4) The efforts of those directing German policy to wear a face of innocence (p. 268).
(5) The Serbian Government’s inaction after the Sarajevo outrage (p, 270).
(6) Paste’s memorandum to the Great Powers [p. 274).
(7) Hartwig’s sudden death at the Austrian Legation in Belgrade (p. 276).
(8) The first news in Belgrade of what Austria was planning; Pas id goes off on an electioneering campaign (p. 280).
(9) The delivery of the ultimatum at Belgrade; the text of the Austrian note to Serbia (p. 284).

　ロン

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