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Russia and the Balkan League
　5 世紀にわたるトルコからの抑圧と 19 世紀に高まったナショナリズムの波が、バルカン半島のキリスト教徒に、民族的一体性と独立への情熱を抱かせた。1911 年までに、オスマン帝国の衰退が進んだため、彼らの熱烈な希望の実現に向けて長い道のりがすでに歩み始めていた。

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ギリシャ、セルビア、ブルガリア（1908年）、ルーマニア（1881年）は独立王国として構成されていた。しかし、マケドニア人やアルバニア人はもちろん、ギリシャ人、セルビア人、ブルガリア人、ルーマニア人など多くの人々が、いまだにトルコやオーストリアの外国支配下で暮らしていた。

彼らもまた、解放され、独立王国の同胞と団結することを切望していた。トルコのいわゆる民主革命と、1908年のオーストリアによるボスニア・ヘルツェゴビナ併合は、この2つの国が復興の兆しを見せ、スラブ解放の日は遅れそうだと一瞬思われた。

しかし、青年トルコ人党の非現実的な理想や、彼らの愚かな,伝統的権利への無関心と偏見は、非トルコ人分子との敵対をさらに深め、アブドゥル・ハミドの技能と冷酷な手段でなんとか維持してきた衰退しつつある帝国をさらに弱体化させる結果にしかならなかった。

イタリア・トルコ戦争の初期の数か月間、さまざまなロシア代表が3つのまったく異なるバルカン政策（①イズヴォルスキー　②チャリコフ　③Hartwig）を追求していた。これはロシア外交の統一性と規律の欠如の顕著な例である。

ロシア人は皆、イタリアと戦うトルコの困難さを利用してバルカン半島とヨーロッパにおけるロシアの立場を強化したいと考えていたが、それをどのように行うべきかについてはまったく異なる考えを持っていた。

イズヴォルスキーはネラトフとチャリコフの協力を得て、海峡をロシアの軍艦に開通させようとしたが失敗した。一方チャリコフは、独自の発意で、トルコが加盟すべき（！）バルカン同盟の設立に向けた努力を再開していた。

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チャリコフは、サイード・パシャとハシム・ベイに「斡旋」を申し出て、コンスタンティノープル（オスマン帝国）、ソフィア（ブルガリア）、ベオグラード（セルビア）間の緊密な関係を実現しようとした。そのような同盟は、バルカン半島のstatus quoとオーストリアとの戦争におけるロシアの支援に利用されるかもしれなかった。トルコはバルカン諸国からの保護をロシアに頼ることになるので、それはトルコをロシアの属国のようなものにしてしまうだろう。131

しかし、チャリコフのこの奇抜なアイデアが実現する可能性は微塵もなかった。それは、バルカン諸国をトルコに対抗させるというロシアの伝統的な政策とは正反対のものだった。トルコからは疑いの目で見られ、バルカン半島のスラブ人にとっては忌み嫌われるものだった。132
132　Hartwig to Neratov, Oct. 23/Nov. 5, 1911, Krasnyi Arkhiv, 1925, VIII, 45 tT.:「オスマン帝国の支配下にある有名なバルカン連邦の問題が再び浮上しています。トルコが外部のトラブルに見舞われるたびに、この政治的連合が検討対象に上がります。トルコの再生を今でも信じている少数のヨーロッパの外交官、政治家、広報担当者の間で。しかし、バルカン諸国自身の態度はどうなっているのかという疑問を提起するのは興味深いことです。

　「スラブ人にとってトルコとの同盟が重要であるという熱烈な説教は、彼らにはほとんど説得力がないようです。一定の条件、特にロシアからの圧力の下では、彼らはこの道を歩み始めることを拒否しないかもしれないが、それはトルコとの友好関係から大きな利益を期待しているからではなく、バルカン半島で慢性的に高まっている紛争から一息ついて時間を稼ぎ、徐々に力をつけて、好機が訪れたときに古くからの敵と決着をつけるためだけである。スラブ人は連邦について、この他の見方をすることはできない。

　「私の意見では、ロシアは2つの明確で明確な最終目標を追求すべきである。(1) ロシアによって独立した存在に招かれたスラブ諸国が、彼らの神聖な理想の達成を容易にすること、つまりバルカン半島のトルコ領土すべてを友好的に分割すること。(2) ロシア自身の100年来の課題、つまり「ロシアの湖」への入り口であるボスポラス海峡の岸にしっかりと足場を築くこと。 . . .

　「セルビア政府は、トルコ駐在セルビア大使にホフマイスター・チャリコフが勧めたような同盟の申し出を今トルコに持ちかけるのは、極めて危険だと考えている。コンスタンティノープルにおけるセルビア人のあらゆる恩恵を求める行動は、必然的にソフィアへの不信感をかき立て、政治的重要性によってスラブ人の歴史に新たな時代を開くことになるセルビア・ブルガリア協定の見通しを損なうことになるだろう。」

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1912 年 3 月、チャリコフが解任され、まったく異なる種類のバルカン同盟が実際に調印されようとしていたまさにその瞬間に、この計画は終わった。

　イズヴォルスキーとチャリコフの政策が失敗に終わる一方で、ベオグラードとソフィアでHartwigとネクリュードフが熱心に推進した第 3 の政策が成功へと成熟した。

彼らは、名目上はstatus quoではあるが、トルコやオーストリアに向けられる可能性のある、ロシアの後援によるバルカン・スラブ同盟の結成を目指していた。

ロシアは青年トルコ革命と 1908 年のオーストリアによるボスニア併合以来、このような同盟を結成するための積極的な取り組みをときどき行ってきた。133

しかし、セルビアとブルガリアがお互いに対して抱いていた根深い憎悪と嫉妬、そしてブルガリアの狡猾な王が、大臣たちさえも含め、誰からも不信感を持たれていたことなどから、すべて失敗に終わった。

スラブ・バルカン同盟の構想は、1911 年 9 月のイタリア対トルコ戦争のニュースによって再び活気を取り戻した。

　当時のブルガリア首相兼外務大臣であった M. ゲショフは、自身の役割について、ドラマチックで真実味のある物語を語っている。ヴィシーでトリポリ戦争のニュースを聞き、パリとウィーンを経由してソフィアに急ぎ帰り、ド・セルヴスとエーレンタールと会談し、ウィーンに戻ってフェルディナンド国王およびセルビアのミロヴァノヴィッチと秘密会談し、最後に、駅と駅との間の鉄道車両の中で、 3 時間にわたってミロヴァノヴィッチにバルカン協定の概要を伝えた。

この会談の途中で、マケドニアの将来の分離という厄介な問題に触れた後、セルビア首相は次のように叫んだ。

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　ああ！そうだ！もしトルコの清算と同時にオーストリアの崩壊が起これば、解決法は大幅に簡素化されるだろう。セルビアはボスニア・ヘルツェゴビナを手に入れ、ルーマニアはトランシルヴァニアを手に入れ、トルコとの戦争にルーマニアが介入するのを恐れる必要はないだろう。135

　しかし、M. ゲショフの語りは、その後の長く困難な交渉でロシアが果たした役割についてはほとんど語っていない。これは現在、サンクトペテルブルク在のネラトフとHartwig、ネクリュードフの書簡で詳細にたどることができる。136

ベオグラード在とソフィア在のこの 2 人のロシア大臣（Hartwig、ネクリュードフ）は、セルビアとブルガリアの大臣がお互いに対して抱く嫉妬と疑念を和らげ、トルコから奪取する戦利品の分配について合意に達するというほぼ超人的な仕事で彼らを助けようと、精力的に働いた。同時に、彼らはネラトフに交渉の進展を逐一報告した。最終的に、1912 年 3 月 13 日、セルビアとブルガリアは条約に合意し、署名した（夢遊病者たち p399)。

＜セルビア・ブルガリア条約とロシア（オーストリア＝ハンガリーとバルカン戦争　ｐ175）＞
　1912 年 3 月 13 日のこの条約により、セルビアとブルガリアは互いの領土と独立を保証し、大国がバルカン半島の領土を一時的にでも武力で獲得しようとした場合には、互いに支援し合うことに合意した。これにより、オーストリアがノヴィバザールのサンジャクを再占領したり、セルビアが切望するマケドニアとアルバニアの一部を奪取しようとする（オーストリアの）試みからセルビアが保護された。セルビアは初期の交渉で、同盟が主にオーストリアに向けられることを期待していた。

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しかしブルガリアは、セルビアがボスニア・ヘルツェゴビナや他のハプスブルク家の領土を獲得することには、ほとんど関心がなかった。フェルディナンド王の目は主にマケドニア、トラキア、そしておそらくコンスタンティノープルに向けられていたため、ブルガリアのフェルディナンド王は、新しい同盟がトルコに向けられることを望んでいた。

したがって、秘密の付属書には、トルコで騒乱が勃発し、バルカン半島のstatus quoが脅かされた場合、セルビアとブルガリアは共同軍事行動について意見交換を行うと規定されていた。

ロシアが彼らの行動計画に異議を唱えない場合、ブルガリア、ギリシャの2つのバルカン同盟国は、合意どおりに軍事作戦を遂行する。生じる可能性のある紛争はすべてツァーリに仲裁を依頼し、その決定は拘束力を持つものとされた。詳細な声明には、トルコからマケドニアで獲得する戦利品の分配が示され、とりわけ、セルビアはゴレム山からオフリド湖までの線より南のサロニカ方面の領土を主張しないという規定があった。137

　1912 年初頭に外務省の責任者に再び就任したサゾノフは、セルビア・ブルガリア条約が完成に向かっていることに気付いた。不在中に交渉され、厳重な秘密保持条項が含まれていたため、サゾノフは三国協商の他の加盟国にこの条約を知らせるべきかどうかわからなかった。

status quoを公言し、ロシアに戦争の拒否権のようなものを与える (少なくともサゾノフはそう言っていた) ものの、バルカン諸国が戦争に陥りやすく、ロシアとその同盟国フランスが巻き込まれる可能性があることにサゾノフは気付いていたようだ。1912 年 2 月、サゾノフはバルカン問題の新たな側面についてフランスと十分に話し合うことをしばらく考えたようだ。

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彼は議論の土台として想定問答集を作成した。トルコ国内の革命、オーストリアによるアルバニアまたはサンジャクへの攻撃、あるいはトルコとバルカン諸国の 1 つとの戦争勃発の場合、フランスとロシアはどうすべきか。彼はそれをジョルジュ・ルイに見せた。しかしフランス大使ジョルジュ・ルイは再び非常に用心深く、大きな危険が待ち受けていると感じた。「これらはロシアがその同盟国と対峙できる最大の問題である」と彼はポアンカレに書いた。

（Louis to Poincare, Feb. 15 and 21, 1912）
「ロシアの行動について議論することも、我々の条件を提示することもできないまま、事態の急速さに引きずり込まれる危険を冒すよりは、学術的な会話でこれらの問題を議論することに同意する方がよいだろう。…サゾノフ氏にとってもイズボルスキ氏にとっても、ロシアが現在主要な政治的努力を向けるのは中国でもペルシャでもなく、バルカン半島である。」 138

　ジョルジュ・ルイの極度の遠慮と、イズヴォルスキーがフランスに海峡開放を支持するよう説得できなかったことを知ったサゾノフは、引き下がって、フランスとイギリスにセルビア・ブルガリア条約の存在を知らせるだけで満足したが、その詳細と潜在的な攻撃的性格については知らせなかった。139

彼は想定問答集を再び議論に持ち出さず、彼が考えていたことを引き出そうとするフランス側のあらゆる試みをかわした。140

　1912 年 8 月にサンクトペテルブルクを訪れたポアンカレは、初めてセルビア・ブルガリア条約の全文を知り、驚いて叫んだ。"Mais c'est Ia une convention de guerre!," これはまさに、ネクリュードフがサンクトペテルブルクに文書を送付する際に使った表現であった。

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ポアンカレは、バルカン半島での戦争につながる可能性があり、ロシアの支援の下で取り決められた条約の詳細が、同盟国フランスによって長い間隠されていたことに憤慨していた。彼は当時次のように述べている。

　私は、ロシアがなぜこれらの文書をフランスに伝えなかったのか、自分自身ではうまく説明できないことを、彼（サゾノフ氏）に隠さなかった。…この条約には、トルコに対する戦争だけでなく、オーストリアに対する戦争の芽も含まれている。ロシアがすべての問題の仲裁者となるため、この条約はスラブ王国に対するロシアの覇権をさらに確立する。私はサゾノフ氏に、この条約は私に与えられた定義とはまったく一致していないと述べた。それは厳密に言えば戦争のための条約であり、セルビア人とブルガリア人の心理的懸念を明らかにしているだけでなく、彼らの希望がロシアによって奨励されているように思われ、最終的な（オスマン帝国の）分割が彼らの貪欲さの囮となってしまうのではないかとも懸念すべきである。141

　セルビア・ブルガリア条約を最もよく表しているのは、バルカン戦争勃発の1週間後にフランス首相自身が述べた次の言葉である。

　ロシアは[セルビア・ブルガリア条約]についてすべて知っていたことは確かであり、それに抗議するどころか、この外交文書をバルカン半島における覇権を保証する手段と見ていた。ロシアは今日、自らが呼び起こした運動を一掃するには遅すぎると認識しており、私がサゾノフ氏とイズボルスキ氏に述べたように、ロシアはブレーキをかけようとしているがしかし、エンジンをかけたのはロシア自身である。142

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THE BALKAN DANGER AND THE POWERS IN 1912
　ポアンカレは、その持ち前の迅速さと的確な判断力で、セルビア・ブルガリア条約に潜む危険について全く正しい見解を示していたが、彼とサゾノフはバルカン半島での戦争勃発を回避するために列強と協議する措置を直ちに講じることはなかった。

ポアンカレはサゾノフに、ドイツの介入がない限り、フランス政府が純粋にバルカン半島の問題でロシアのために武装することは、フランスの世論では許されないだろうと伝えただけだった。ドイツの介入がある場合なら、ロシアは同盟国としての「厳格かつ完全な義務を遂行するフランスをあてにしてよい」。

ポアンカレはサゾノフに、イギリスとフランスの「秘密の口頭協定」について内密に伝えた。この協定により、イギリスはドイツが攻撃してきた場合、海軍と陸軍のすべてを投入してフランスを支援する用意があると宣言した。

ポアンカレは新しいフランス・ロシア海軍条約について議論し、ロシア海軍とイギリス海軍の協力行動について、エドワード・グレイ卿と同じような条約を結ぶようサゾノフに促した。

実際、セルビア・ブルガリア条約の条項を聞いたときの短い警告コメントとオーストリアの和平提案についての若干の議論を除けば、1912年8月9日から16日までのロシア滞在中のポアンカレの会話のほとんどすべては、三国協商の絆を強化し、フランス、ロシア、イギリス間の行動の団結を確保することに費やされた。143

　フランスに戻った後、バルカン半島での戦争の差し迫った危険を十分に認識していたにもかかわらず、ポアンカレは1912年9月22日まで戦争を回避する提案をしなかった。その時でさえ、彼は三国協商の他の2カ国とのみ協議し、三国同盟諸国に承認または拒否を通知することの提案への協商の団結を維持し、合意を得ることに常に熱心だった。144

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　これにより、大国が 2 つの敵対グループに分裂する傾向が強まったが、ドイツ、そしてエドワードグレイ卿とサゾノフは、大部分において、三国協商と三国同盟の間の衝突の可能性を防ぐために、大国が共同で協調して行動することを望むという、より広範で賢明な立場を取った。

　確かに、ポアンカレは、ヨーロッパの共同行動に対する配慮を表明することもあった。例えば、8 月 28 日、彼はドイツの臨時代理大使に、「彼の政策は、三国同盟と三国協商が対立する立場に立つのではなく、ヨーロッパ協調の確立に向けて努力することを目指している」と語った。145

これは良いように聞こえた。しかし、彼の行動は言葉と一致していただろうか。同じ 8 月 28 日、彼はロンドンに電報で「フランス、イギリス、ロシアの間で協商が成立し、完全に調和のとれた助言が、オスマン帝国で与えられるのが望ましいように思われる」と伝えた。146

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2 日後、彼はロンドンとサンクトペテルブルクの両方で次のように強調した。「すべての集団行動には 3 か国の協商列強の協調が必要であることは今も理解されている」147

　ポアンカレの「協商連帯」政策とは対照的に、ベルヒトルト伯爵は 8 月 13 日に、トルコから改革を確保し、バルカン諸国が status quoを乱さないようにするために、すべての大国が集団で協議に参加することを提案した。148

ベルヒトルト伯爵は、トルコとバルカン諸国の間の緊張が高まる中、ヨーロッパの集団行動を提案した最初のヨーロッパ外交官であったが、サゾノフやポアンカレほどには、秘密のバルカン条約に隠された爆発物について明確な知識はなかった。彼は同盟国に相談することなく行動し、一見すると、ヨーロッパ協調による平和維持に賛成する政治家らしい立場を取ったとして彼を賞賛したくなる。149

しかし、彼の提案は主に「重要人物になりたい」という願望、怠惰な無為なやり方に対する新聞の批判を相殺したいという願望、そしてサゾーノフとポアンカレがサンクトペテルブルクから何かを発表する前にバルカン問題で主導権を握っているように見せたいという願望によって決定されたようだ。150

さらに、ベルヒトルトの提案は、その言葉遣いと彼自身の考えの両方において非常に曖昧であったため、どの列強にとっても好ましいものではなく、後にポアンカレがベルヒトルト伯爵の手から主導権を奪ったときに却下された。

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　夏の半ば、サゾノフは非常に楽観的だった。バルカン条約によって与えられた拒否権をおそらく過信しすぎていたとサゾノフは言う。彼は、おそらくこの時点では避けたかった戦争から自分の保護者たちを遠ざけることができると考えていた。

しかし、9 月 17 日までに、トルコの残虐行為とブルガリアの戦争興奮のニュースがあまりにも恐ろしいものとなり、彼は突然恐怖を感じた。そこで彼は、ベルヒトルトの提案に対抗するのではなく、補足する行動として、列強諸国はトルコにマケドニアで直ちに改革を行うよう助言すべきであると、すべての列強諸国に提案した。151

ブルガリア人がマケドニアで独断的な行動を取るのを防ぐには、迅速な行動が急務と思われたため、サゾノフは協商国の友人からの連絡を待たずに、すぐにトルコに助言した。しかし、彼の提案はいくつかの理由で効果的な結果をもたらさなかった。エドワードグレイ卿はトルコに圧力をかけたくなかった。ポアンカレはイギリスと共同作業をする以外の行動したくなかった。ドイツは過去の経験から、トルコがマケドニアで改革を成功させるという確信がほとんどなかった。152

　最終的に、9 月 22 日、ポアンカレが主導権を握り、バルカン諸国を抑制するための方策をイギリスとフランスに提案した。この方策は三国協商が合意し、ドイツとオーストリアに承認を求めるものだった。イズヴォルスキーは、この方法はサゾノフやイギリスの同意を得られず、「ヨーロッパを 2 つのグループに分割することを強調する」ことになると彼に伝えた。

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　ポアンカレは秘密にできると答え153、イギリスとロシアを喜ばせるためにいくつかの修正を加えた後、両国との協定を取り付けた。すなわち、協商国はドイツとオーストリアに、バルカン諸国に平和を乱さないよう勧告し、たとえ平和を破ったとしても領土獲得は許されないと警告することに合意するよう求めるというものだった。

9月28日、ジュール・カンボンはベルリンのキダーレン・ヴェヒターにこの問題を持ち出し、心のこもった歓迎を受けた。残る問題は、バルカン諸国に発表するというありがたくない役目を誰が引き受けるかということだけだった。キダーレン・ヴェヒターは、ロシアとオーストリアが列強の名の下に行動すべきだと提案し、彼の提案は採用された。しかし、ロシアとイギリスの反対により、さらに遅れが生じた。

10 月 7 日、すべての列強の同意がようやく得られ、翌日、ロシアとオーストリアは、（列強から）合意された警告を、今や非常に興奮していたバルカン諸国に発した。154

しかし、遅すぎた。まさにこの日、10 月 8 日、モンテネグロはトルコに宣戦布告し、他のバルカン同盟国もすぐにこれに加わった。

1912-1913 年のバルカン戦争
　1907 年から 1914 年までのバルカン問題の概要では、大国間およびバルカン諸国間で生じた複雑で万華鏡のような問題のすべてについて説明することは明らかに不可能です。それらの問題を適切に扱おうとすれば、それだけで 1 冊の本が書けてしまいます。したがって、ここではバルカン戦争についてごく簡単に触れるしかありません。

　1912 年 10 月、ブルガリア、セルビア、ギリシャがモンテネグロに加わってトルコと戦争をすると、彼らはその迅速さと完全さで自分たち自身と世界を驚かせた。

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ギリシャ軍はサロニカを占領し、ブルガリア軍はコンスタンティノープル郊外の防衛要塞に勝利を収めて進軍し、セルビア軍はヴァルダル川上流域全体、ノヴィ・バザールのサンジャク、アルバニア北部を制圧した。これによりセルビア軍はついにアドリア海への出口を手に入れた。アドリアノープル、ヤニナ、スクタリのトルコの要塞だけが、勝利した同盟軍に抵抗した。

　セルビア軍は領土を倍増させたこれらの征服に大いに意気揚々とし、オーストリアの犠牲のもとで「大セルビア」の野望が早期に実現する可能性を予感させた。ベオグラード駐在のロシア大使Hartwigはセルビア軍を積極的に激励した。Hartwigはルーマニアの同僚に対し、セルビアがアドリア海への出口を放棄することはあり得ないと明言したと言われている。

セルビアはバルカン半島におけるスラヴ人の前哨地となり、ボスニア、ヘルツェゴビナ、ハンガリーの南スラヴ地域を併合しなければならない。ルーマニアも同様に自国の利益に配慮し、トランシルヴァニアを併合したほうがよい、と彼はほのめかした。

このことがサゾノフの注意を引くと、彼はHartwigがそのような発言をしたはずはないと強く否定したが、少し後に「Hartwigはスラヴの大義に非常に共感しており、情熱的な性格で、おそらく時折スラヴ愛好の共感に流されてしまうことがある」と認めた。155 （オーストリア＝ハンガリーとバルカン戦争　p73）。
155 G.P., XXXIII, 319, 388, 439。Hartwigは汎スラヴ主義に熱心だったため、おそらく彼に帰せられるこうした発言をしたのだろう。彼はしばしば指示を逸脱し、危険なほど無分別だったという兆候がある。Cj. Nekliudov, 外交回想録, pp. 47 ff.

イズヴォルスキーでさえ、今では「ここ [パリ] ではロンドンと同様に、Hartwigがベオグラードで受けた指示に反して行動しているという確信が根付いている。... ベオグラードで大きな影響力を得る方法を知っているHartwigが、セルビア人を賢明かつ冷静にするために、その影響力をまったく利用していないことをポアンカレが固く確信していることを、あなたに隠し通せない」と不満を漏らしている。イズヴォルスキーからサソノフへの手紙、1912 年 11 月 21 日; L.N., I, 351-352。

ジョルジュ・ルイは、Hartwigがオーストリアに対抗してセルビアを励ましていることに疑いを持っていなかった。11月18日、彼はバルカン半島での勝利に関するHartwigの別の発言を報告した。それは、「トルコの問題は決着した。今度はオーストリアの番だ」というものだった。『ユデット』200-201ページ。

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しかし、ロシアが北アルバニアとアドリア海の港に対するセルビアの主張を精力的に支持していたことは疑いようがなかった。サンクトペテルブルクからは、汎スラヴ主義で軍国主義的な大公が平和を愛するツァーリに圧力をかけ、必要であればセルビアのために戦争に訴えるよう迫っているという報告があった。15６

　オーストリアとイタリア、そしてアルバニア人自身にとって、セルビアの予想外の驚くべき勝利は、非常に歓迎できないものだった。人口が200万人に満たないアルバニア人は、文明がまだ比較的原始的な状態にあり、ローマカトリック、ギリシャ正教、イスラム教などさまざまな宗教的所属を持つ敵対的な争い合うグループに分かれていたが、彼らはセルビア人の支配下に入るという考えを探っていたが、トルコをセルビアのくびきと交換する気はなかった。157

アルバニアは、ペリクレス時代のギリシャや中世後期のセルビアやブルガリアのような偉大な歴史的過去を振り返ることはできないが、より賢明なアルバニアの首長たちは、独立した、あるいは少なくとも自治権を持つアルバニア国家を望んでいた。

セルビアとギリシャの軍隊が彼らの領土を侵略し、独立を脅かしたとき、イスマイル・ケマリは急いでアルバニア全土の首長の代表者を集めた集会を招集し、事態を救った。

1912年11月28日、血のように赤い地に黒いスカンデルベグの双頭の鷲を描いた国旗がヴァロナに掲げられ、アルバニアの独立と中立が宣言された。これはオーストリアとイタリアの承認を得て行われた。

　オーストリアとイタリアは、異なる形態と異なる理由ではあったが、アルバニア国家の設立を強く求めた。同盟国でありながらライバル関係にあった両国は、両国が支配を狙っていたアドリア海からセルビアを排除する手段としてアルバニアの創設を支持していた。

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しかし、両国は互いに非常に嫉妬し、疑念を抱いていた。両国は、アルバニアにおける他のすべての影響力を排除するために、ロシアに秘密裏に支援を求めていた。

オーストリアは、1897年にゴルホフスキとムラヴィウとの覚書の交換により、イタリアは、前述のように、1909年10月の秘密のラッコニージ協定により、支援を求めていた。しかし、嫉妬深いこの2つの国は、望ましいアルバニア公国の詳細については意見が分かれていた。

オーストリアは、現地の首長の支配下、またはオーストリアが多少なりとも支配し、影響を与えることができる他の統治者の支配下のいずれかで、完全に独立したアルバニアを望んでいた。オーストリアは、新たに創設されたアルバニアに、東のセルビアに対する同盟国、西のイタリアに対する牽制を見出すことを期待していた。したがって、オーストリアは、新しい国家が可能な限り強力であり、イペク、ジャコヴォ、ディブラ、プリズレン、およびスクタリとヤニナを含むことを望んだ。「スクタリ、ヤニナ、プリズレンのないアルバニアは、心も体もない組織だ」158

オーストリアが望んだような規模と強さのアルバニアは、セルビアから予想外の勝利の成果の一部を奪い、また将来的に危険な「大セルビア」運動を阻止する傾向があった。

　一方、イタリアは、政治的、商業的、軍事的野心を持つアルバニアが強大になることを望んでいなかった。イタリアは、ヴァロナの港を支配し、山を越えてサロニカまで鉄道を敷設し、ギリシャの影響の北進を阻止したかった。アドリア海の一方の岸にあるブリンディジを支配し、もう一方の岸にあるアルバニアの海岸を支配したイタリアは、事実上アドリア海をイタリアの湖に封じ込めようとした。イタリアは、セルビア人を海岸から締め出すだけで満足だった。イタリアは、アルバニアに広い国境とオーストリアの影響下にある可能性のある君主を与えるよりも、この地域を名目上のトルコの宗主権下に置き、列強によって任命された総督と、スウェーデン、スペイン、スイス、またはベルギーの将校の指揮下にある憲兵隊gendarmerieの支援を受けることを選んだ。

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イタリアは、オーストリアの影響下にある強力な独立アルバニアよりも、列強の共同指揮下にある弱いアルバニアのほうがイタリアの利益にはるかに有利であると予見し、それが事実であることが証明された。バルカン問題では、列強のグループ分けはオーストリアに対して4対2、あるいは5対1になる傾向があったからだ。

ラッコニージ協定後、イタリアはますます協商国側に傾き、ドイツは、オーストリアのバルカン政策が危険なほど攻撃的であると判断したときは、しばしば協商国側についた。

　1912年11月末までに、このアルバニア問題は、バルカン戦争によって強調された他のすべての対立と疑念とともに、ヨーロッパの平和を深刻に脅かし始めた。

ロシアは、サゾーノフの側にいくらか動揺があったにもかかわらず、北アルバニアを実際に所有しているセルビア人を支持する傾向があり、オーストリアとイタリアはセルビアに対抗するアルバニアの首長たちを支援することを決意した。ロシアはオーストリアに対して軍の一部を動員し始めた。オーストリアはすでにセルビアとの戦争の準備を整えており、ロシアに対してガリツィアで3軍団を動員したと考えられていた。

1912年12月7日、オーストリア軍国主義グループの長であるコンラッドは、参謀長として以前の地位に再任された。しかし、戦争の危険が差し迫ると、ロシアは撤退した。

バルカン同盟国が大勝利を収める前にロシアを訪問した際に、セルビアへの支援は危険すぎるとロシアに警告していたポアンカレは、今度はロシアに、（セルビアに対して）強く支援する態度を取るよう促した。彼は、新しいバルカン同盟国が実質的に大国に匹敵する力を持っていると見ていた。ロシアの側にこの同盟国がいれば、オーストリアがロシアを攻撃し、フランスとドイツを全面戦争に巻き込む場合、フランスのrevancheの見通しは非常に有利であった。

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ポアンカレは三国同盟へのイタリアの疑わしい忠誠を計算してはいたが、ロンドンでポール・カンボンとサー・エドワード・グレイの間で交わされたばかりの覚書を踏まえて、イギリスが三国協商に武力支援してくれることを、期待した。

　しかし、大国間の平和は、主にイギリス政府とドイツ政府の努力のおかげで維持されていた。すべての側で譲歩がなされた。12月16日、ロンドン大使会議はサー・エドワード・グレイの妥協案、つまりアルバニアの独立と国境の決定を後日行う案を承認した。

　ほとんどの妥協案と同様、この妥協案は、この不幸な小国の運命に最も直接的な関心を持つ2つの国のどちらも満足させなかった。

セルビアは（第一次バルカン戦争の）勝利の果実、つまり長い間待ち望んでいたアドリア海の経済的な出口を得られなかったことに、非常に苦々しい思いを抱いていた。

セルビアは、この指針で獲得できると期待していた領土を列強に阻まれたため、当然ながら、ブルガリアにセルビア・ブルガリア条約（p431）の条項を改訂し、ゴレム山からオフリド湖までの線より南のマケドニアの一部を譲るよう求める権利があると感じた。ブルガリアはこれを拒否した。これが最終的に第二次バルカン戦争につながり、1913 年 6 月末にブルガリアはセルビアに対して突然の裏切り攻撃を行った。

　オーストリアもまた、エドワードグレイ卿の（妥協）案が採択されてから数か月の間にアルバニアに関連して起こったほとんどすべてのことがオーストリアの意に反し、オーストリアの利益を害するものであると激しく不満を述べた。これは、ロンドン大使会議の多数派がセルビア、ロシア、イタリアを支持してオーストリアに反対したためであり、あるいは、セルビア人とモンテネグロ人が列強の決定を無視して、ロンドン大使会議前のfaits accomplis を重視するように行動したためであった。会議はそれを是正する意志も能力もなかった。

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この種の最も悪名高く奇怪な事例は、モンテネグロのニコライ王が列強とその国際艦隊に反抗し、ロンドン大使会議ではアルバニア領とされていたスクタリの包囲を続行したやり方である。

一方、イペク、ジャコヴァ、ディブラ、プリズレンは新国家の境界内に含まれなかった。オーストリアの主張によれば、これはアルバニアの自然な地理的境界を構成する分水嶺内に密集した集団を形成する約 50 万人のアルバニア人が、セルビアとモンテネグロの軍隊の慈悲に委ねられることを意味した。

南部では、ギリシャが、ギリシャ正教徒のアルバニア人がギリシャに割り当てられるように境界を引くよう、要求した。オーストリアの参謀長コンラッドは、外交的行動またはオーストリアとイタリアの共同の武力示威によって、ギリシャに南アルバニアに対するこれらの主張を放棄させたいと考えていた。しかしここでオーストリアは同盟国からの反対に遭った。

　アルバニア人の妥協により、大国間の即時戦争の危険は回避されたものの、そうした危険は、世界大戦勃発とともに相対的に重要ではなくなるまで、バルカン政治において非常に不穏な要因であり続けた。それは間接的に1913年6月のセルビアとブルガリアの兄弟殺し（第二次バルカン戦争）の紛争の原因となり、続く11月にはオーストリアとセルビアの新たな危機を招いた。

　ブルガリアは、マケドニアをめぐる争いで突然セルビアを攻撃し、第二次バルカン戦争（1913年6月30日～8月10日）が開始されると、オーストリアは急速に打ち負かされた。

ルーマニアとギリシャはセルビアと手を組むことでオーストリアに対する不満を解消する好機を捉えた。トルコでさえ、失ったばかりのトラキア領土を取り戻すために再び攻撃に出た。四方から攻撃を受け、第一次バルカン戦争での努力ですでに疲弊していたブルガリアは、すぐに和平を懇願し、ブカレスト条約に署名せざるを得なくなった。

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これにより、ブルガリアはトルコから最近獲得した領土の大部分と、ルーマニアに割譲された自国の旧領土の一部を奪われた。これにより、ブルガリアのバルカン諸国のライバル勢力が拡大し、ブルガリアは孤立し、苦々しい思いを抱くことになった。

それ以降、ブルガリアは、ブカレスト条約を覆す可能性が最も高かったオーストリアかロシアの支援を熱望した。しかし、同国はどこからも信頼を失った。ロシアはセルビアを敵に回すことを恐れてブルガリアとの同盟を躊躇し、オーストリアも同様にルーマニアを怒らせることを恐れて躊躇した。

　セルビアはバルカン戦争から力と威信を大いに高め、新たな自信と決意で「大セルビア」の野望を実現しようと奮起した。セルビアは領土をほぼ倍増し、人口は300万人から450万人近くに増加した。

ただ、マケドニアで新たに獲得した地域はブルガリア的な性格が強く、したがってセルビアにとっての将来の最初の課題として、民族同化と管理という困難な問題を提示する結果となった。

しかし、ノヴィ・バザールの一部とヴァルダル渓谷上部を獲得し、モンテネグロとの国境を延長することで、セルビアはオーストリアのサロニカへの進出を効果的に阻止できることとなった。

これら 2 つのスラブ国家は、オーストリア領のボスニア・ヘルツェゴビナを部分的に包囲していた。すぐにセルビアとモンテネグロが合併し、「大セルビア」形成の第一歩となるかもしれないという噂が広まった。

次のステップは、オーストリア＝ハンガリー帝国に属するボスニア、ヘルツェゴビナ、ダルマチア、その他の南スラブ地域を獲得することだった。

　こうした危険で無謀な領土的野心は、セルビア人全員、さらには彼らの最も偉大な指導者であり首相であったパシッチにさえ、ますます強く根を下ろしつつあったが、それは、ブカレスト講和会議で第二次バルカン戦争の戦利品の分配を終えたパシッチがギリシャ人の同僚ポリティスに述べた次の言葉に反映されている。「第一ラウンドは勝利した。今度はオーストリアに対する第二ラウンドを準備しなければならない。」159

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パシッチの誇大妄想をさらによく表しているのは、数日後にマリエンバートで会ったベルリンのセルビア臨時代理大使に言った彼の発言である。

　すでに第一次バルカン戦争において、ボスニア・ヘルツェゴビナを獲得するためにヨーロッパ戦争に持ち込むこともできた。しかし、その場合、マケドニアにおいて、ブルガリアに対して大幅な譲歩を強いられたので、まずセルビアのためにマケドニアを占領できるようにし、その後でボスニア獲得に進みたいと思った。160

　しかし、パシッチがオーストリアに対する「第2ラウンド」を直ちに計画していたと考えるのは間違いだろう。

冷静に考えてみると、それに進む前に、マケドニアでの獲物を確かなものとし、ロシアの支援をより確実にする必要があることが彼はわかっていた。そのため、1914 年 1 月に彼はロシアを訪れ、セルビアの皇太子とツァーリの娘との婚姻関係を要請し、また「12 万丁の銃と弾薬、およびいくつかの大砲、特に榴弾砲」を要求した。181

パシッチは好機を待つつもりだったが、多くの民族主義的なセルビアの若者、特に秘密結社の「黒手組」のセルビア軍将校たちは、そうは思わなかった。彼らは最近の勝利に大いに意気揚々としており、ロシアがたびたび約束していた日、すなわち北の偉大なスラブ帝国が、スラブ王国とドイツ王国の間の「避けられない」闘争、そしてハプスブルク帝国を犠牲にして最終的に「大セルビア」を創設するのを援助する用意がある日を、ますます熱心に、そして焦りながら待ち望んでいた。162
162　1913 年 5 月 6 日、サゾノフはベオグラードのHartwigに宛てて次のように書いている (Dculsch-land Schuldig？、99 ページ)。「セルビアの約束の地は、現在のオーストリア=ハンガリー帝国の領土にあり、セルビア人が現在住んでいる場所やブルガリア人がいる場所にはありません。このような状況下では、一方ではブルガリアとの同盟を維持し、他方では着実かつ忍耐強い努力によって将来の避けられない闘争に必要な準備を整えることがセルビアにとって極めて重要です。時間はセルビアの味方となり、すでに衰退の兆候が見られるセルビアの敵を破滅させる方向に進んでいます。このすべてをセルビア人に説明してください。ベオグラードで十分な効果を発揮できる声があるとすれば、それはあなた方の声だと、あらゆる方面から聞いています。」1 月 20 日/2 月 27 日のツァーリとパシッチとの長く心強い会見について。 2、1914年、同書、130-136ページおよびボギチェヴィッチ、170-180ページを参照。ハートヴィヒの態度については、上記注155を参照。

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　セルビアが意気揚々と強くなるにつれ、オーストリアはバルカン戦争の結果に落胆し、力と威信が弱まったと感じた。オーストリアは戦争に参加せず、領土も失っていなかったが、その立場は深刻に損なわれた。オーストリアの属国はますます落ち着きを失い、破壊的なプロパガンダにかかりやすくなった。ルーマニアは頼りない同盟国になり、セルビアはより確実で活発な敵になった。

イタリアとオーストリアの間には常に存在する摩擦と不信が増大し、オーストリアがいつかイタリア、セルビア、ルーマニア、ロシアの 4 つの戦線で戦争をしなければならないという危険がさらに脅威となっていた。

これらの危険の増大を認識したウィーンの軍国主義派は、オーストリアは大セルビアの危険に直ちに対処すべきではないか、と再び真剣に検討した。163

Germany's warning to Austria, july, 1913

　1913 年 6 月末にブルガリアが裏切りによりセルビアを攻撃し、短期間ではあったが悲惨であった第二次バルカン戦争が始まったとき164、ベルヒトルトは当初、自身のためらいがちな性格とドイツとイタリアの意向に一致して、控えめな「様子見」の姿勢をとった。165
164　オーストリアがブルガリアに、セルビア攻撃を仕掛けるようけしかけたという、よく繰り返される主張については、現在公開されている膨大な文書のすべてにおいて、明確で確実な裏付けは見当たらない。1913 年5 月 6 日には早くも、ブルガリアからの報告やブルガリアの将校との会談から、コンラッドはセルビアとブルガリアの早期戦争は避けられないと確信し、ベルヒトルトにその機会を利用する決心をするよう促したが、ベルヒトルトは躊躇した (Conrad, III, 302-316)。

5 月 26 日、コンラッドは、ソフィアのオーストリアの武官から、ブルガリアがロシアの覚醒を促さないのであれば、ベルヒトルトがブルガリアを支援し、領土の喪失から守り、資金を貸すと申し出たと聞いた、と述べている (Conrad, III, 330)。

しかし、この時期およびその後数週間のコンラッド自身の書簡やベルヒトルトとの頻繁なインタビューには、この疑わしい報告を裏付けるものは何も含まれていない。『Die Grosse Politik』にも、7 月 2 日のチルシキーの漠然とした表現、つまりベルヒトルトが「彼が呼んだブルガリアの霊を恐れ始めたようだ」という表現以外は、この疑わしい報告を裏付けるものは何も含まれていない (G.P.、XXXV、147 注記)。後者の編集者は次のように述べている (G.P.、XXXV、52 注記)。「ブルガリア政府がオーストリア=ハンガリー帝国に煽られて最終的な強硬姿勢を取ったというロシアの仮定は、ドイツの文書にもオーストリアの資料にも何ら裏付けがない」。

確かに、argumcntum ex silentio は否定的ではあるが、決定的ではない。ロシアの支援を受けて結成されたバルカン同盟の崩壊の見通しにベルヒトルトが歓喜したことは疑いようがないが、それでも彼は三国協商の陰謀とルーマニアのブルガリアに対する領土補償要求が、同盟の再結成を引き起こすかもしれないという幻想的な悪夢に悩まされていた（G.P., XXXV, 7, 40, 68 f）。

また、1913年6月にロシアが提案した、列強がバルカン諸国に即時に武装解除するよう呼びかけるという示威運動.の支持をベレヒトルトが拒否したことも疑いようがない（G.P., XXXV, 26, 41, 240; Affaires Balkaniques, II, 209 ff.）。彼は、大セルビアに対する共通の反対において「オーストリアとブルガリアの利益の平行性」を認識していた（G.P.、XXXIV、822; XXXV、117以降320、329以降、346以降）。また、彼は「ブルガリア愛好家」で、ブルガリアにあまり大きな領土譲歩をせずにルーマニアとブルガリアの間に平和的取り決めをもたらそうとした（G.P.、XXXIV、577 ff.、843、873 ff.、XXXV、17、56、01 f、66IT、77、115 ff.）。

しかし、彼がブルガリアに、セルビアに対する自殺的な攻撃を積極的に煽動したかどうかは証明されていないようだ。もしそうしていたなら、ドイツはおそらくそれを知っていただろうし、ドイツの文書、特にカイザーとドイツ当局者がベルヒトルトの外交に関して頻繁に述べた不快な発言の中に、それに関する何らかの言及が見つかっていたはずだ（G.P. XXXV、40、54、116、147 注釈、148 注釈、365、378、XXXVI、28-30、32 を参照）。

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しかし、ウィーン駐在のドイツ大使の穏健な助言にもかかわらず、ベルヒトルトはセルビア領土のさらなる大幅な拡大を容認するつもりはなかった。1913 年 7 月 1 日のドイツ大使の電報によると（Tschirschky to F.O, July 1, 1913）、

　もしロシアが、ブルガリアが決定的な勝利を収めた場合にセルビアに有利なように介入するなら、彼らはここでそれに反対するだろう [カイザーの傍注: 「信じられない」]。どのようにそれを実行するかという私の質問に対して、ベルヒトルト伯爵は、サンクトペテルブルクで直接行動するか、あるいはベオグラードを占領するかのいずれかであると考えていた [カイザー「まったく狂っている。そうなれば戦争だ!」]。

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ロシアの挑発なしにオーストリア=ハンガリーが介入する必要があるのは、セルビアが決定的な勝利を収め、「大セルビア」が出現する恐れがある場合のみである。・・・私は大臣に、ロシアがセルビアのために介入すればオーストリア＝ハンガリー帝国の反撃を招くかもしれないのと同じように、オーストリアがセルビアに対して介入すればロシアの反撃を招くかもしれないという事実に注意を促した。ベルヒトルトは「おそらくそうだ」と述べた。166

　2 日後、ベルヒトルトは再びドイツ大使に不安を表明し、大使はベルリンに次のように報告した。

（Tschirschky to Bethmann, July 3. 191）
　ベルヒトルト伯爵は私に、今日訪ねるよう頼んだ。ベルヒトルト大臣は、君主国（オーストリア）の重要性についてドイツ政府に知らせないことが自分の義務だと考えていると述べた。南スラヴ問題、つまり南スラヴ人が居住する地域の平穏な領有は、君主国（オーストリア）にとっても三国同盟にとっても極めて重要な問題である。セルビアが強大になりすぎれば、君主国（オーストリア）は南スラヴ地域を保持できない。この点については、ここにいる有能者の意見はすべて一致している。

したがって、セルビアがルーマニアとギリシャと連携したブルガリアに大打撃を与え、旧セルビアの領土を超える地域、またはそれに近い地域を併合した場合、君主国（ロシア）が介入せざるを得なくなる可能性がある。いずれにせよ、セルビアにモナスティールを領有させておくことはできない。

　いつ、どのように介入するつもりかという私の質問に対して、ベルヒトルト大臣は、心理的な機会を見つけることは間違いなく可能だと答えた。もちろん、手続きの方法については今は何も言えない。それは状況次第だ。ベルヒトルト大臣は、ベオグラードでの外交交渉から始めなければならないと考えている。それが結論に至らなければ、軍事的圧力によって支えられなければならない。その後、ロシアが参戦すれば、サンクトペテルブルクが行動の場となるだろう。

　ベルヒトルト大臣は再び、ベルリンで君主国（オーストリア）の困難な立場が理解されることを期待すると表明した。

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冒険的な政策を追求したいとか、征服に固執したいとかいうのではなく、オーストリアの唯一の目的は、もちろんトリエステを含む南スラブの領土を守ることだった。当然、この問題の最も受け入れやすい解決策は、敵に打ち負かされた小セルビアであることであり、彼は君主国（オーストリア）によるセルビア占領の可能性よりも、このような状況を望んでいる。しかし、最初の選択肢が失敗した場合、君主国（オーストリア）は領土を守るために行動を取らざるを得なくなるだろう。君主国（オーストリア）の国境に軍事的要素として重きを置く大セルビアの「ピエモンテ（p358）」の危険性については、誤解の余地はない。167
　
　この電報がベルリンに到着したのは、ベートマン・ホルヴェークとドイツ国務長官ヤーゴが、カイザーの毎年恒例のヨットフェスティバルに出席するためにキールにいただったときだった。このフェスティバルには、イタリア国王と王妃、そして外務大臣サン・ジュリアーノも出席していた。ベルリンの次官ツィマールマンが、以下のドイツ語のコメントを添えて、この電報をキールに転送した。

（ツィマーマン→カイザー）
　今のところ、ウィーン側には特別な神経質になる理由はないようです。なぜなら、大セルビアの危険性についてはまだほとんど語れないからです。我々の使命は、ウィーンを鎮静化させる影響力を行使して、ウィーンが定期的にその意図を我々に伝え、そして、我々の言うことを聞かずに決定を下すことがないようにすることです。1６8

　その間、ベルヒトルトはますます神経質になっていた。彼は、ルーマニアがブルガリアに侵攻し、ブルガリアを弱体化させてセルビアが完全な勝利を収め、大セルビアの危機がかつてないほど大きくなることを恐れた。

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そこでベルヒトルトは、7 月 4 日にベルリンとローマのオーストリア大使に電報を送り、上で引用したドイツ大使との会話とほぼ同じ見解を表明し、特にオーストリアの 2 つの同盟国は「ブカレストで、ルーマニアがブルガリアに対してさらなる行動を取らないよう訴える」べきだと強く求めた。169

ベートマンはこれを拒否し、以前から何度も言っていたように、オーストリアがソフィア（ルーマニア）で精力的な圧力をかけて、ブルガリア・フェルディナンド王に対して、ルーマニア・カロル王の正当な領土補償要求を満足させるように説得することが、ルーマニアがブルガリアに襲いかかるのを防ぐ方法であると明らかにした。

ベルヒトルトへの啓蒙のために、ベートマンはさらに賢明な観察と効果的な警告を加えた。

（Bethmann to Szogyenyi, and Zimmermann to Tschirschky, Julv 6, 1913）
　オーストリア＝ハンガリーは当初から、現在のバルカン危機において領土獲得を目指しているわけではない、と宣言していた。オーストリア＝ハンガリーは、バルカン戦争の結果に関して、セルビアがアドリア海に到達しないようにし、アルバニアが存続できるようにしなければならないと決定した。

セルビアがアドリア海に到達しないことについては、オーストリア＝ハンガリーは順調に達成した。アルバニアの国境については、オーストリア＝ハンガリーはスクタリ問題で勝利し、イタリアとともに、海岸沿いのアルバニアの南の国境問題でも勝利した。まだ未解決の問題、すなわち、大陸の南の国境、憲法、統治者の選出などは、満足のいく形で解決されることが期待される。

いずれにせよ、ブルガリアとセルビア・ギリシャの間で現在勃発している敵対行為は、オーストリア・ハンガリーがこれまで辿ってきた政策の支配を今のところ少しも乱すものではない。それどころか、これらの敵対行為は、貿易と旅行にさらなる混乱を引き起こすことを除けば、特にオーストリア・ハンガリーの利益にとって望ましくないものではない。戦争が終わって、ブルガリアとセルビアが弱体で不和であれば、それは二重帝国に利益をもたらすだけです。オーストリアはそれによって、いかなる状況でも必要なセルビアとの共存関係を回復するための時間を稼ぐことができます。

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　ブルガリアとセルビアの現在の敵対関係がどのように終わるかは誰にも分かりません。しかし、どちらが勝っても、両者は弱体化し、お互いに憎しみで満ちるであろうことは確かです。

オーストリア＝ハンガリーは、この結果に干渉すべきではありません。たとえセルビアが勝ったとしても、大セルビアへの道はまだ遠いです。なぜなら、セルビアはアドリア海に到達することはなく、多少の土地の増減では、紛争への引火にはならないからです。

オーストリア＝ハンガリーが外交手段でセルビアを新たに獲得した領土から追い出そうとすれば、うまくいくはずもなく、セルビアで確実に激しい憎しみをかき立てるでしょう。

武力でこれを行おうとすれば、ヨーロッパ戦争を意味します。ドイツの重要な利益はそれによって非常に深刻な影響を受けるため、ベルヒトルト伯爵がそのような決定を下す前に、私たちに知らせてくれると想定しなければなりません。

　したがって、ウィーンの人々が大セルビアの悪夢に動揺せず、セルビア人とブルガリア人の戦場のさらなる展開を待つことを私は願うばかりである。セルビアを飲み込もうとする考えに対しては、私は強く警告するしかない。なぜなら、それはオーストリアを弱体化させるだけだからである。170

　7 月 6 日のドイツからのこの迅速で決定的な警告は、ベルヒトルトとコンラッドがヨーロッパの平和を危険にさらすような無謀な冒険に軽率に踏み出すことを効果的に阻止した。このエピソードを詳細に述べたのは、ドイツが 1914 年 7 月に同じことをしたかもしれないことを示唆するため、ベルリンとウィーンの見解の相違を説明するため、そしてジョリッティがこの事件に関して広め、協商国の著述家によって一般に受け入れられている誤った印象を正すためである。

　 1914年12月5日、イタリア議会で演説したジョリッティは、1913年の歴史的前例に基づいてイタリアの第一次世界大戦における中立を正当化しようとして、次のように述べた。

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（ジョリッティ）
　バルカン戦争中、8 月 9 日、つまり現在の戦争が勃発する約 1 年前、私がローマを留守にしていたとき、同僚のサンジュリアーノから次の電報を受け取りました。

　「オーストリアは、セルビアに対して行動を起こす意向を私たち（イタリア）とドイツに伝え、その行動を防衛的なものと定義し、三国同盟のcasus foederis を発動することを望んでいますが、私は逆に、そのcasus foederis は適用できないと考えています。(センセーション)

　「私は、オーストリアによるそのような行動を阻止するためにドイツとの共同努力を手配しようと努力していますが、そのような行動がとられたとしても、私たちはそれを防衛的なものとは考えておらず、したがってcasus foederis が生じるとは考えていないことを、明確に述べる必要があるかもしれません。

　「承認する場合は、ローマの私に電報を送ってください。」私はこう答えた。

　「オーストリアがセルビアに対抗して介入した場合、casus foederis が成立しないことは明らかです。オーストリアは自国でこの措置を講じています。なぜなら、誰もオーストリアを攻撃しようとは考えていないので、防衛上の問題はないからです。この旨の宣言をオーストリアに最も正式な方法で行う必要があり、ドイツ側がこの最も危険な冒険を思いとどまらせる行動をとることを期待しなければなりません。」

　この方針が採用され、我々の行動が2つの連合国との関係を少しも乱さなかったため、我々の解釈は支持され、適切であると認められた。したがって、現政府による中立宣言は、イタリアの政策の先例にあらゆる点で従っており、また、連合国がすでに受け入れている同盟条約の解釈にも従っている。

　私はこれを思い出したい。なぜなら、イタリアが公約の遵守に完全に忠実であり続けたと全ヨーロッパの目に映るのが正しいと思うからだ。（大拍手）171

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　ジョリッティは回想録の中でこの発言を繰り返しており、協商国の著述家全般がこれを盲目的にコピーしてきた。ポアンカレのような知識豊富で用心深い著述家でさえもだった。172 しかし、この発言は多くの点で間違っている。

　まず第一に、ジョリッティはこの事件を7月9日ではなく8月9日としている。つまり、第二次バルカン戦争の始まり頃ではなく終わり頃としている。セルビアがブルガリアから大きな利益を得た後、オーストリアがそれに応じた状況に不満を持った後にこの事件を位置づけることで、彼の記述にもっともっともらしい性格を与えている。

実際には、次のようなことが起こったようだ。 7月4日のベルヒトルトの電報は、ルーマニアに圧力をかけるよう求め、オーストリアはセルビアの勢力が著しく拡大するのを許すことはできないと述べており173、ジョリッティとサン・ジュリアーノがローマを留守にしていたときにローマに届いた。サン・ジュリアーノはキールにいた。

首相と外務大臣が不在だったため、ベルヒトルトの通信を受け取った外務省の下級職員は「生涯で経験したことのないほどの恐怖に襲われた」174。

しかし、ローマ駐在のドイツ大使から、ベルリンがウィーンに直ちに与えた厳しい警告をすぐに聞き、彼らは大いに安心した。サン・ジュリアーノはキールからローマに戻ったとき、部下たちを怖がらせたオーストリアの通信を見つけ、7月9日にジョリッティに電報で相談し、その後7月12日にオーストリア大使に返信し（ベートマンがベルヒトルトに警告を与えてからほぼ1週間後）、オーストリアがセルビアに対していかなる軍事行動も行わないよう抗議し、「必要なら、我々はあなた方を尻尾で引き留める」と付け加えた。175

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　ジョリッティは、ベルヒトルトの軽率な行動を阻止したのはドイツではなくイタリアだったと示唆しているが、これも誤りである。176

ウィーンで決定的な影響を与えたのは、サン・ジュリアーノの 7 月 12 日の返答ではなく、ベートマンの 7 月 6 日の迅速な警告であった。また、ドイツとオーストリアがこれまでに発行した文書には、この機会に三国同盟のcasus foederis が議論されたというジョリッティの主張を裏付けるものは何もない。

最後に、1914 年 12 月のイタリア政治家の正義の態度は、サン・ジュリアーノが 1913 年にキールから帰国後、ローマ駐在のドイツ大使に、自分がベルヒトルトの代わりに、ベルヒトルトがとろうとしていると思われる道、つまりセルビアに対する行動、おそらくはヨーロッパ戦争を伴う行動をとったであろうと打ち明けたとしても、それほど称賛に値する説得力のあるものではない。177