p３１２
The Tightening of the Triple Entente, 1912

　1905 年にドイツがデルカッセを凌駕し、パンター号を突然アガディールに派遣したことは、フランス人にとって「残忍な行為」、つまり外交上の勝利を確保するために、緑のテーブルを拳で叩くというドイツの習慣の表れとみなされた。

いずれにしても、フランスは、譲歩しなければ戦争を起こすというドイツの脅しに怯えていた。したがって、いずれにしても、フランスはドイツの挑戦に応じる用意がなかったため、屈辱的な譲歩だと感じたものを強いられた。

あるいは、ポアンカレの言葉を借りれば、「ドイツの政策は、1870 年の戦争以来、1875 年（ｐ58）と 1887 年の仏独事件（p96）を引き起こし、1905 年から 1911 年にかけてモロッコ情勢を絶えず悪化させてきた傲慢な精神に支配され続けた。タンジールの侮辱の後、アガディールの脅威が続いた。フランスは、これらの度重なる挑発に刺激されて行動を起こすどころか、平和を願うあまり179、アルヘシラス会議に同意し、モロッコでの行動の自由と引き換えにコンゴの領土譲歩に同意した」。

ドイツのこれらの行為、およびボスニア危機におけるロシアへの最後通牒とカイザーの好戦的な態度は、フランスの政治家の一団の中に徐々に新しい国民精神を呼び起こした。

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彼らはrevancheとアルザス＝ロレーヌの回復への欲求をよみがえらせた。彼らは、フランスはライン川の向こう側からのドイツの脅威に、長い間苦しめられてきたという感情を作り上げていた。将来、ドイツが新たな武力の脅威を及ぼした場合、新たな屈辱を受け入れるよりは戦争のリスクを冒す方がよいという決意が育まれた。

この新たな国民精神、決意、自信は、イギリスとの友好関係と、ドイツとの紛争の場合には、イギリスは艦隊でフランスを支援するだけでなく、北フランスのフランス軍の左翼を強化するためにイギリス軍を派遣するという確信の高まりによって大いに高まった。これは勝利の見込みを高め、勝利の果実は、失われた州の回復とドイツの脅威の悪夢の終焉となるだろう。

フランス指導者のほとんどは、フランス国民の大半と同様に、戦争を望んでいなかった。しかし、もしドイツが「ヨーロッパの覇権」を望み、外交的勝利を強要するために再び拳を振りかざそうとする試みが、新たな国際危機を招いたとしたら、後退するよりも戦った方がましだろう。

ドイツが新たな侵略を企てることに疑いの余地はほとんどなかったため、戦争は（誰からも望まれてはいなかったが）「不可避」となる。したがってフランスは、国内の陸軍と海軍を増強し、ドイツの反対側の同盟国や海峡を挟んだ友人との関係を強化することで、戦争に備えなければならない。

＜ポアンカレ内閣＞
　この新たな国民感情は、レイモンド・ポアンカレと、彼と親交の深かった少数の人たちに具現されていた。彼は国民感情の体現者だっただけではない。その決意、堅固さ、能力によって、他の誰よりも国民感情を強化し、刺激した。

それは、アガディール危機でドイツに屈しすぎたと非難されたカイヨー内閣の打倒と、1912年1月13日の「大内閣」または「国民内閣」の樹立に現れた。この内閣では、ポアンカレが首相兼外務大臣、ミレランが陸軍大臣、ドレアーヴが海軍大臣を務めた。

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ポアンカレは、その綱領を発表する際に、その第一の任務は、共和主義者のあらゆるグループを単一の国民感情で団結させ、モロッコに新しい保護領を組織し、ドイツと礼儀正しく率直な関係を維持することであると宣言し、次のように付け加えた。

我々は、常にそうであるように、同盟と友情に忠実であり続けるつもりである。フランスにとって非常に助けとなる財政力と、その軍事力および海軍力を、双子の収束力のように団結させることを我々の義務とする。しかしながら、我が国がいかに深く平和主義的であろうとも、あらゆる事態に対処できるわけではないが、その義務は果たすつもりである。陸軍と海軍は、我々の細心の配慮の対象である。180

　ロレーヌのバル・ル・デュックに生まれたレイモン・ポアンカレは、1870 年にドイツ軍がフランスを制圧し、祖国から家を奪ったとき 10 歳であった。著名な気象学者の息子、著名な物理学者の兄弟、そして著名な数学者の親戚であるポアンカレは、すぐに法曹界で才能を発揮し、27歳の若さで下院議員となり、6年後の1993年には教育大臣として内閣入りを果たした。その後、下院副議長、2度の財務大臣を経て、1912年に首相と外務大臣に就任しました。ビスマルクの時代以来、純粋な才能において彼に匹敵する者はいない。公職に就いた期間の長さ、並外れた活力と忍耐力、細部を習得して記憶する能力、目的の明確さとそれを達成するための決意、これらすべてが相まって、彼は近代の政治家の中でも最も注目すべき人物の1人となった。

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これらすべての生まれつきの資質と弁論術、法律教育が相まって、彼は下院で敵を簡単に打ち負かし、内閣で同僚や部下を支配することができた。

彼の目的を常に認めるわけではないかもしれないが、それを達成した彼の技能と能力には感心せざるを得ない。彼は自分が何を望んでいるのかを正確に理解しており、並外れた率直さと決意でそれを確保しようとした。彼の演説の簡潔さと簡潔さは、通常の外交官の回りくどい言い回しや冗長さとは対照的である。彼の生来の臆病さは、大胆なエネルギーによって十分に補われた。

1912年から1914年にかけて、主にフランスの外交政策を指揮し、統制したのはこのような人物だった。回想録の中で彼は、外務大臣として個人的な政策を追求したことや、1913年2月に共和国大統領に就任した後、後任の外務大臣に自分の希望を押し付けることで憲法上の地位を超えたことを、頻繁に否定している。

しかし、彼の能力、エネルギー、そして強い個性を考えると、彼が指導者となるのは必然だった。彼は否定しているが、我々は彼が攻撃的で危険な政策の方向に強い影響力を行使したと信じている。それは1912年から1914年にかけての真に平和を愛するフランス国民の大多数の希望を反映したものではなく、もし彼らがその政策とそれが導く大惨事を十分に認識していたなら、彼らはそれを承認しなかっただろう。181

　三国協商を強化する任務においてポアンカレに最も密接に協力したのは、パリ駐在のイズヴォルスキーロシア大使（1910年9月以降、同職）だった。イズヴォルスキーが虚栄心が強く、自惚れ屋で、陰謀を企てる傾向があり、常に信頼できるわけではなかったことは、今では明らかである。したがって、彼の報告は、まゆつばcum grano salisで受け止めなければならない。１８２

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それでも、以下の引用文におけるポアンカレの描写は、かなり正確であるように思われる。彼は、新外務大臣を「非常に強い個性」を持つ人物、その繊細な自尊心を「考慮に入れなければならない」人物、そして「しばしば無益な無礼さを見せ、理由もなく窓を壊すが、その誠実さを疑わせる理由を与えたことはない」人物と表現している。「情熱的で、まっすぐに突き進む人物」であり、その「エネルギーと決断力」を完全にロシアの側に置き、有利に転じることが重要だ。183

首相に選出された後、ポアンカレはイズヴォルスキーに、以下のように語った。「自分はさらに、フランスの外交政策に直接影響を与える十分な機会を持ち、ロシアとの緊密な同盟に基づく政策を確実に守るために、その機会を逃すことはないだろう。自身の意見では、バルカン問題で勃発するかもしれない戦争に参加するよう、フランス政府が事前に世論を準備することが最も重要である。このため、フランス政府は、（イズヴォルスキーが）フランスと事前に意見交換することなく、そのような戦争を引き起こすような個人的な行動をとらないよう要請する」と語った。184

それ以来、世界大戦まで、ロシアはポアンカレを「フランスとロシアの緊密な同盟と、国際政策の最も重要なすべての問題に関する両同盟国間の絶え間ない意見交換の熱心で確信に満ちた支持者」とみなした。 185

そして一般的に、バルカン半島の状況から見て、ドイツとの戦争の際にロシアを決して失望させることのない人物であった。186

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＜英仏関係の強化＞
　ポアンカレが「国民内閣」を結成した後、最初に取り組んだ仕事の 1 つは、イギリスとのより緊密な関係を固めることであった。

エドワードグレイ卿の保証にもかかわらず、ハルデン使節団と英独関係の和解の可能性は、彼にいくらか不安を与えた。そのため、彼はパリ駐在のイギリス大使、フランシスバーティ卿が取った興味深い措置を歓迎した。

グレイ卿はドイツを満足させるような譲歩はしなかったが、バーティ卿は、ドイツとの理解により熱心なロアバーン卿、ハーコート卿、その他の閣僚の影響で考えが変わるかもしれなかった。彼らは、6 年間も続いていたが何も知らされていなかった英仏の陸軍と海軍の「会談」について知ったら問題を起こすかもしれなかった。

それゆえバーティは、ポアンカレに、ドイツとの中立協定を結ぶことの危険性をグレイにはっきりと指摘した方がよいと、内々に非公式に提案した。その示唆は受け取ったが、どこから来たのかは明かさず、ポアンカレはポール・カンボンにこの趣旨の電報を送った。カンボンは3月29日にその内容をグレイに伝えた。187

この日、イギリス内閣はベートマンの中立方式に最終的に否定的な回答をすることに決め、ハルデン使節団に向けられていた希望を葬り去った。188

カンボンのインタヴューが内閣会議の前だったか後だったか、またそれがイギリスの行動に決定的な影響を与えたかどうかは明らかではない。ポアンカレが後にイズヴォルスキーに、ハルデン使節団を破滅させたと自慢した可能性は十分にある。189
189 イズヴォルスキーからサゾノフへの手紙、1912 年 12 月 5 日 (M.F.R.、p. 600; L.N.、I、365 f.; Stieve、II、377) : 「ポアンカレとパレオログとの会話の中で、私は非常に内密な方法で、ハルデン卿のベルリンへの有名な旅行に関して、… ポアンカレはイギリス政府に、フランスとイギリスの間に政治的性格を持つ書面による合意がない限り、ドイツとイギリスの間でそのような合意が締結されれば、既存の英仏関係は直ちに終了するだろうと伝えた、ということを知りました。彼の抗議は予想通りの効果をもたらし、ロンドン内閣はドイツの提案を拒否しました。」

ポアンカレがイズヴォルスキーにこれらの秘密を打ち明けたのは 1912 年 12 月で、ちょうどそのとき彼はロシアに三国協商の強さと結束を納得させようとし、その結果としてサゾノフに、セルビアを強く支援する姿勢を取るよう説得しようとしていたときだった。

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しかし、エドワード・グレイ卿が、独仏戦争の際にフランス側につく自由を制限するいかなる中立協定も最初から譲歩しないと明らかに決意していたこと、そして3月29日以前にハルデン交渉が事実上決裂していたことを考慮すると、ポアンカレの介入が、イズヴォルスキーが示唆するような決定的な効果をもたらしたかどうかは非常に疑わしいように思われる。もちろん、ポアンカレがグレイにこの件について、回想録で述べているよりも以前に提案していた可能性もある。グレイの回想録では、ポアンカレのこの介入については何も述べられていない。この点については、他の多くの点と同様、正確な真実を知るには英国の公文書館からの完全な出版を待たなければならない。

　しかしハルデン使節団は、ポアンカレに対し、英国から拘束力のある文書を確保するよう促した。ウィンストン・チャーチルが1912年3月18日の演説で予告した190、北海での対ドイツ戦力強化のためにイギリス艦艇を地中海から撤退させる計画は、イギリスとフランスの新聞で活発な議論を呼び起こした。両国間の海軍協力の時期が来たと言われるようになった。イギリスが地中海から海軍を撤退させ、ドイツ軍の攻撃の可能性からフランス北岸を守れば、フランスはブレストから艦隊を撤退させ、地中海におけるイギリスの利益と自国の利益を守ることができるわけだ。

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この議論に関連して、多くの英国の新聞は、英仏協商を通常の防衛同盟に確実に拡大すべきだと主張した。「戦争の絶え間ない脅威に対する唯一の代替策は、正確な同盟の新しいシステムである。」191 （いかにも正しそうなこの考えが、逆に第一次世界大戦を誘発した皮肉）

これは、ポアンカレの考えでもあった。彼からの指示により、ポール・カンボンは書面による協定を通じて英仏協商を強化する必要性について、アーサー・ニコルソン卿に語った。

　「ポアンカレの立場には弱点があるのはご存じのとおりです。彼は誰よりもイギリスとの協商を支持していますが、重要な政治家、内閣の同僚、彼に疑問を呈するフランス世論のリーダーたちに対して、我々の間には同情以外の絆があることを理解させることができません。相互の意図を確信している2つの政府の間ではこれで十分なのですが、世論にとっては十分ではありません。

フランスにおけるイギリスの敵（数は少ないですが存在します）は、我々とあなた方との関係には何の安全もないと主張しています。したがって、私は、不安で疑念を抱く人々を安心させる方法を一緒に見つけられないか、と自問しました。英国政府には議会の許可なしに拘束力を持つ権利がないことは承知しているが、2通の合意書や、作成され署名された条約は必要ない。我々は宣言書の交換で満足できる。もしデルカッセの辞任で会談が中断されなければ、1905年にランズダウン卿とそうしていただろう。」192

　アーサー・ニコルソン卿は個人的にそのような合意を結ぶことには賛成だったが、それはポアンカレによれば協商から同盟への転換のさらなる一歩となるはずだった。193

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しかし、議会でモロッコとペルシャにおけるフランスとロシアの帝国主義の跡を追う卑屈さですでに厳しく批判されていたエドワード・グレイ卿は、内閣全体の了解なしにこのような重大な措置を取る気はなかった。彼らの大半は、1906 年以来続いていた軍事「会談」についてさえまだ知らされていなかった。したがって、カンボンの提案は当面成果をあげなかった。一方、ポアンカレはロシアとの海軍協定によって三国協商と地中海におけるフランスの海軍の立場を強化した。194

　1912 年 5 月、ウィンストン・チャーチルはアスキスを伴ってマルタ島を訪れ、エジプトの状況と地中海における英国の立場について、キッチナー将軍と協議した。帰国後、チャーチルは 7 月 22 日に議会で、地中海から艦船を撤退させて北海に集中させるという海軍本部の計画をより明確に発表した。

同時に、彼はフランス武官にイギリスとフランスの艦隊の協力に関する計画案を提案した。しかし、フランスはそれを受け入れるのを躊躇した。なぜなら、その慎重な序文には、どちらの当事者の行動の自由も損なうものではない（中立の保持）、と書かれていたからである。このため、フランスにとってその計画の価値は失われていた。195

　しかし、グレイとチャーチルは、拘束力のある書面による義務で自らの手を縛りたくはなかった。イギリスが地中海艦隊を北海に撤退させ、フランスがブレスト艦隊をトゥーロンに移すという海軍協定でさえ、グレイが7月にカンボンとの会談で集めたように、イギリス側に対して、フランス北部の海岸を守る義務を生じさせる危険があった。196

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　チャーチルもこの危険性をよく理解していた。1906 年のキャンベル・バナーマン 197 や 1911 年のアスキス 198 と同様に、彼は、フランスはイギリスの援助を当てにするようになるだろう、と認識していた。これは事実上、義務を生み出し、イギリスの行動の自由を制限することになろう。
198 アスキスからグレイへの1911年9月5日の手紙を参照（グレイ、I、92）：「ジョッフル将軍とフェアホルム大佐の間の会話は、私にとってはむしろ危険に思えます。特にイギリスの援助の可能性について言及している部分は危険です。現在の状況では、フランスはこのような仮定に基づいて計画を立てるべきではありません。」

チャーチルはグレイに、次のように指摘した。「フランスが、我々との海軍の約束を期待して大西洋沿岸を裸にし、（艦隊を）地中海に集中したとなれば、自由は著しく損なわれるだろう。[チャーチルは、フランスがそのような発言をすることは真実ではないと考えていた。なぜなら、そのような艦隊の配分は、いずれにせよ両政府にとって最善の政策だったからだ。]

もしもフランスが「貴国の海軍当局の助言と取り決めにより、我々は北岸を無防備なままにした」と言ったならば、我々の介入を強いるフランスが持つ武器がいかに強力になるかを考えてみよ。

事実を知る者なら誰でも、我々は、利点も、そして何よりも正確な定義もないままに同盟の義務を負っていると感じているはずだ」199

　英仏交渉が進行中で決定が下される前に、デルカッセの部下の一人の不注意により、ブレスト艦隊が地中海に移動する時期尚早な発表があった。ポアンカレによると、このニュースは大きな騒動を引き起こし、英仏海軍協定が確実に締結されたことを示す兆候として報道機関に解釈された。200

ｐ３２２
この出来事は交渉に新たな刺激を与えた。ポアンカレは再びカンボンに対して、グレイに、書面による合意を求めるよう指示した。グレイは最終的に合意書の交付に同意した。

しかし、このような重要なステップを踏む前に、彼はそれが内閣全体に知らされ承認されるべきであると正しく考え、そしてついに内閣の全員に、1906年以来続いていた英仏間の「対話」が知らされた。

彼はまた、それが正式な外交文書の形ではなく、自分とカンボンとの個人的な書簡の形をとるべきだと主張した。201

そのため、彼は11月22日、内閣が承認した手紙をカンボンに手渡し、翌日、同様の文面の手紙を受け取った。グレイの慎重に表現された手紙は次の通りだった。

（グレイ→カンボン書簡）
Foreign Office, My dear Ambassador, / November 22, 1912
　近年、フランスとイギリスの海軍および軍事の専門家は、時折協議を行っています。このような協議は、いずれの政府も将来、武力で相手国を支援するかどうかを決定する自由を制限しないものと常に理解されています。専門家間の協議は、発生していない、または今後も発生しない可能性のある不測の事態において、いずれかの政府に行動を義務付ける約束ではなく、またそう見なすべきではないという点で合意しています。たとえば、現時点でのフランスとイギリスの艦隊の配置は、戦争で協力するという約束に基づくものではありません。

　ただし、いずれかの政府が第三国によるいわれのない攻撃を予期する重大な理由がある場合、その場合に相手国の武力支援に頼ることができるかどうかを知ることが不可欠になる可能性があると、あなたは指摘しています。

　いずれかの政府が第三国によるいわれのない攻撃や、平和全体を脅かす事態を予想する重大な理由がある場合、両政府が侵略を防ぎ平和を維持するために協力すべきかどうか、また協力するのであれば、どのような措置を共同で講じる用意があるかについて、直ちに他方の政府と協議すべきであることに、私は同意する。これらの措置が行動を伴う場合、参謀本部の計画は直ちに考慮され、その後、政府はその計画にどのような効果を与えるべきかを決定する。

Yours, &c. E. Grey.202　

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　こうしたグレイ→カンボン書簡は、書面による声明に関する限り、戦争勃発までフランスとイギリスの内閣の関係を固定した。

エドワード・グレイ卿は、自分はまだ「自由」であるという幻想を抱き続けた。そして、書簡の文言に関する限りは、これは真実だった。しかし、キャンベル・バナーマンとアスキスが指摘したように、軍事的対話は、フランスを激励する点で危険であった。

そして、ウィンストン・チャーチルが警告したように、1912 年秋に行われたイギリスとフランスの海軍の新しい取り決めは、イギリスとフランスをさらに緊密に結びつけた。

それは、フランスとドイツの間で戦争が起こった場合にフランス沿岸を守るという、つまり戦争がどのように起ころうとフランス側に参加するという、逃れることのできない道義的義務をイギリスにもたらした。

確かに、ポアンカレは、グレイが「いわれなき攻撃」を予想する理由がある場合、両政府が協力するかどうかを「協議」すると慎重に述べたことを知っていた。彼は、グレイが、英国内閣と英国国民の中には、強力な平和主義者がいることを考慮に入れなければならないことを知っていた。彼らと組めば、戦争の勃発の仕方は大きく変わるだろう。そのため、1914年7月の危機に関連して明らかになるが、ポアンカレはオーストリアとドイツが侵略者であるように見せることに非常に注意を払った。

p324
フランス軍当局もまた、「プラン XVII」（その改良形が、フランス軍が 1914 年に使用した作戦計画となった）を策定する際に、英国陸軍の協力を確実に期待できないことを認識していたが、英国海軍に頼れることには疑いを持っていなかった。

　しかし、海上では英国艦隊の効果的な支援をリスクなく期待できる。陸上では、両国の参謀本部の間で合意が成立し、12 万人の英国軍を我々の最左翼に配置することになっている。 [しかし、この支援は疑わしいままである。] したがって我々は、これらのイギリス軍を（フランスの）作戦計画には考慮しない、という慎重な行動をとるべきである。」 203

　しかし、これはジョッフル将軍がイギリスの軍事援助を期待していなかったという意味ではなく、フランスの動員計画がイギリス軍の協力に完全に依存すべきではないという意味に過ぎない。

「プラン XVII」のさらなる詳細は、イギリス派遣軍が期待されていただけでなく、その輸送とベルギー国境への集中のために綿密な準備がなされていたことを示している。204

　政治的な観点から重要なのは、イギリス海軍を当てにできるというフランスの確信である。なぜなら、これにはイギリスの戦争参加が伴い、イギリスの優れた海軍力によってドイツを封鎖し、ドイツから食料と軍需品を遮断することでフランスとロシアにもたらされるすべての利点が得られるからである。また、イギリス帝国が仏露同盟の側で積極的に関与することによる大きな道徳的効果は言うまでもない。

＜露仏関係の進展＞
　これらの英仏海軍協定と密接に関係していたのが、1912 年 7 月 16 日の露仏海軍協定であった。ロシアは、黒海の海軍による絶対的な支配権を握ることを望んでいた。

p325
ロシアはまた、海峡とコンスタンティノープルを支配したいと長い間望んでいた。この方向への第一歩は、ボスポラス海峡とダーダネルス海峡を自国の軍艦が自由に通れるようにすることである。イズヴォルスキは何度かこの試みをしたが、成功しなかった。205

トリポリ戦争中のイタリアの海軍活動とダーダネルス海峡の封鎖により、ロシアは再び海峡問題の重要性に敏感になった。ロシアは、同盟国フランスがオーストリアやイタリアの海軍の海峡通過を阻止することで、ロシア艦隊が黒海での優位性を維持できるよう支援できるし、そうすべきだと信じていた。

欧州戦争が起こった場合、これでロシア軍の左翼が守られ、他の戦場では三国協商に有利になる。ロシアはまた、バルチック艦隊の一部を移して黒海艦隊を増強し、地中海に海軍基地を持てるようにしたいと考えていた。これは、フランスが北アフリカのビゼルタ港を開発し、ロシアに使用を許可すれば実現できる。ロシアがフランスとのより緊密な海軍協定を望んだのは、こうした理由からである。フランス側は、両国間の行動の連帯を強化するため、ロシアの希望を可能な限りすべて満たすことを喜んでいた。208

　1894 年のフランス・ロシア軍事条約には、両国の海軍の協力に関する条項は何も含まれていなかった。これは、陸軍参謀部とは別に海軍参謀部が比較的遅く設立されたためであり、フランス海軍参謀部は 1902 年に、ロシア海軍参謀部は 1908 年に設立された。

p326
しかし、1911 年までに両国は、軍事条約に類似した海軍条約によって同盟を拡大することが望ましいことを認識していた。

1912 年の春、ロシアの提案により、両国の陸軍と海軍の将校の間でこれを保証するための交渉がパリで行われた。その結果、7 月 16 日にオーバール提督とリーヴェン提督、および海軍大臣のデルカッセとグリゴロヴィッチによって署名された秘密の海軍条約が締結され、1 か月後のロシア訪問時にサゾノフとポアンカレの間で交換された覚書によって確認された。

条約では、「フランスとロシアの海軍は、同盟が想定し、陸軍の共同行動を規定するすべての事態に協力する」と宣言されている。また、平時には両国の海軍参謀の間で定期的に会議を開催してこの協力を準備することも規定されていた。その後の会議の議事録はフランスの黄書には掲載されていないが、その内容は最近ロシアのアーカイブから公開された。議事録には、ビゼルタをフランスとロシアの艦隊の海軍基地として発展させること、無線電信によるセバストーポリとの連絡、海軍の秘密暗号についてが記載されていた。一般的に、地中海ではフランス、北海ではイギリス、バルト海と黒海ではロシアが海軍の支配権を確保することが合意された。

　ポアンカレが1912年8月にロシアを訪問した際、サゾノフとの会話の主な話題の1つは、三国協商の海軍の、より緊密な協力であった。サゾノフがツァーリに提出した報告書によると、ポアンカレはサゾノフに次のように打ち明けた。「フランスとイギリスの間には文書による条約は存在しないが、両国の陸軍と海軍の参謀は緊密に連絡を取り合っている。この絶え間ない意見交換の結果、フランス政府とイギリス政府の間で口頭協定が締結され、これによりイギリスはドイツによる攻撃があった場合、陸軍と海軍でフランスを支援する用意があると宣言した。」207

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彼はサゾノフに「この情報に関しては絶対的な秘密を守り」、イギリス人自身に彼がその情報を知らされたと疑わせる理由を与えないように懇願した。また、彼はサゾノフに、イギリスへの訪問の機会を利用して、ドイツとの紛争の際に三国協商国 3 ヶ国の海軍協力が完了する可能性のある英露海軍協定について話し合うよう促した。208

　サゾノフはポアンカレの提案に従った。9 月にバルモラルを訪問した際、彼はグレイに新しい仏露海軍協定の内容を伝え、フランスはオーストリア艦隊が黒海に侵入するのを阻止することで、南部戦域におけるロシアの利益を保護するよう努めると述べた。そして、イギリスが北方でドイツ艦隊をバルト海から遠ざけることでロシアのために同じ役割を果たすかどうかを尋ねた。

サゾノフがツァーリに提出した報告書によると、グレイは、熟慮された状況が起こった場合、イギリスはドイツ海軍力に最も致命的な打撃を与えるためにあらゆる努力をすると宣言した。

（サゾノフ→ツァーリ）
　軍事作戦の問題については、関係当局間ですでに交渉が行われているが、この協議で、イギリス艦隊はバルト海に容易に侵入できるが、そこに留まることは非常に危険であるという結論に達したと述べた。ドイツがデンマークを捕らえてバルト海からの出口を塞ぐことに成功したと仮定すると、イギリス艦隊はネズミ捕りに捕まることになる。したがって、イギリスは北海での作戦に限定しなければならないだろう。

p328
　グレイは、その後、自らの意思で、私がポアンカレを通じてすでに知っていたことを私に確認してくれた。フランスとイギリスの間には協定があり、ドイツとの戦争が起こった場合、イギリスは海だけでなく大陸に軍隊を上陸させて陸でもフランスを支援する義務を負うというものだ。

　国王は私との会話の中で同じ問題に触れ、大臣よりもさらに強い口調で語った。私が動揺しているのを察して、ドイツが海軍力をイギリスと同等にしようとしていると述べたとき、国王は、いかなる紛争もドイツ海軍だけでなくドイツの海外貿易にも悲惨な結果をもたらすだろうと叫んだ。「我々は捕らえたドイツの商船を一隻残らず沈める」と。

　これらの言葉は、陛下の個人的な感情だけでなく、イギリスでのドイツに対する支配的な国民感情をも表しているように私には思われた。209

　サゾノフがポアンカレとグレイが彼に言ったことを正確に報告したかどうかは非常に疑わしい。210

しかし、彼がツァーリにそのような発言をしたという事実は、フランスとロシア、特にロシアが、英仏の軍事および海軍の「会談」の存在にどれほど勇気づけられ、それをヨーロッパ全体の戦争の場合のイギリスの支援の約束として解釈する傾向があったかを示している。

この海軍条約はまた、協商国側のあいまいな発言を招き、当然のことながらドイツは彼らの攻撃的意図に対する疑念を強めた。

フランスまたはロシア外務省の何らかの「リーク」により、フランスの報道機関はすぐに仏露海軍条約の存在を示唆した。これがドイツによる調査につながった。

サンクトペテルブルクでココフツェフはそのような条約が締結されたことを否定したが、当然ながら、公の声明でその否定を確認することを拒否した。「なぜなら、そのすべての言葉が曲解され、抗議がさらに大きくなるからだ。」211

p329
他のロシアとフランスの当局者は、協定は締結されていないが、フランスとロシアは同盟国であるため、両国の陸軍と海軍の参謀は時折協議しなければならないという、曖昧な回答をした。212

同様に、グレイ・カンボン書簡の交換後、アスキスとエドワード・グレイ卿は、イギリスが大陸戦争に参加することを義務付ける秘密協定を結んでいたことを議会で厳粛に否定し続けたが、前述のように、フランスとロシアはこれを確信していた。

1914 年春までにドイツ政府は何らかの秘密の方法でグレイ・カンボン書簡について知らされていたため213、これらの否定は、すべてドイツに不安を引き起こした。これは特に、戦争直前の英露海軍協定交渉に関連してそうであった。

　グレイ＝カンボン書簡は、モロッコ危機の間ずっとイギリスがフランスに与えてきた一貫した外交的支援に続くもので、フランス政府とイギリス政府の間に相互信頼の非常に満足のいく基盤を築いた。

この信頼と調和は、ドイツに対する共通の不信、エドワード・グレイ卿とポール・カンボン卿の親密な個人的関係、イギリスがフランスの利益と衝突する攻撃的な目的を持っていなかったという事実、そしてポアンカレがエドワード・グレイ卿の希望を検討し、フランスの政策を可能な限りそれに従わせようとした配慮など、多くの要因によって強化された。フランスとイギリスは「友人」に過ぎなかったが、実際には、同盟国であったフランスとロシアの間よりも、フランスとイギリスの間にはより多くの調和と相互信頼があった。

p330
それは、しっかりと確立された友情は、同盟よりも優れているという事実の顕著な例であった。しかし、多くの著述家、特に「修正主義者」やポアンカレの批評家は、パリとサンクトペテルブルクの間にも完全な統一があったと主張している。

ポアンカレとイズヴォルスキーは手を携えて調和して働いていたが、フランス人がロシアの手先だったのか、それともその逆なのかについては意見が一致していない。

彼らの主張は、主にイズヴォルスキーの書簡と彼らの確信（イズヴォルスキーとポアンカレはどちらも戦争のために動いており、一方はコンスタンチノープルと海峡を奪取し、他方はアルザス＝ロレーヌを奪還しようとしていた）に基づいている。、

しかし、イズヴォルスキーの書簡、M. サゾノフの性格と方法、およびM. ポアンカレの回想録を詳しく調べれば、しばしば、想定されてきたような仏露両同盟国間の完全な統一は決してなかったことがわかるだろう。

　第 2 章で指摘したように、フランスとロシアの同盟は、その発端において、その文言と目的が本質的に防衛的なものであった。ほぼ 20 年間、それはそのままであった。それは、バルカン半島と極東におけるロシアの野望、あるいは北アフリカとライン川沿いの失われた諸州におけるフランスの野望をカバーするものとは解釈されなかった。ロシアは、1905 年のアルヘシラス、およびアガディール危機において、フランスに生ぬるい支援しか与えなかった。フランスの否定的な態度はブーフラウ取引（p251）の後に、イズヴォルスキーが海峡を開通できなかった理由の 1 つであった。そして、1911 年にも、フランスは、チャリコフ事件でイズヴォルスキーが海峡を開通させようとする別の試みを「固く」支持することを拒否した。214

しかし、1912 年、ポアンカレ首相の下で、同盟の性格は変化し始めた。フランスは、ロシアのバルカン半島における侵略政策をより積極的に支持し始め、ロシアがオーストリアやドイツとの戦争に巻き込まれる場合には、フランスが軍事支援を行うことを約束した。この変化の最初の兆候と原因の 1 つは、ジョルジュルイに対する陰謀に関連して見出すことができる。215

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　外交官として訓練を受けたジョルジュ・ルイは、1904年から1909年までフランス外務省の政治局長を務め、その後1913年2月に召還されるまでロシア大使を務めた。彼はその影響力を利用して、フランス・ロシア同盟の本来の防衛的性格の適用を制限した。彼は、ロシアの企みとは対照的に、オスマン帝国の統一を維持するという英仏の政策を支持した。彼は、ロシアのバルカン半島への野望がフランスを戦争に巻き込むことを恐れ、イズヴォルスキーの目的と陰謀を疑っていた。1911年秋、パリの政治局長の空席を一時的に埋めたとき、彼は、ロシアの軍艦に海峡を開く計画を支持するという書面による合意に「フランスを釘付けにする」イズヴォルスキーの努力を阻止した。216

これによって、彼はイズヴォルスキーとサゾノフの不興を買った。彼らはまた、大使として彼がロシア外務大臣の意見をパリに正確に伝えなかったと不満を述べた。もしこれが事実なら、それはもちろん大使のせいだけではないが、サゾノフが自分の意見を率直に述べなかったこと、また彼が意見を突然変えることが多々あったことにも一部起因している。

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例えば、サゾノフは1912年2月14日にジョルジュ・ルイに質問票を作成して見せていた。これはイタリアのトリポリ戦争から生じたバルカン半島に関する一連の根本的な疑問を提起し、サゾノフがフランスの同意を得たいと考えている重要な行動を考えていることを示唆しているように思われた。「これらはロシアが同盟国に提起できる最も深刻な問題である」とルイは翌日ポアンカレに書いた。217

しかし、サゾーノフはその後、突然考えを変えたようで、ルイがquestionnaireとその背後にある意図について話し合うよう何度も説得しようとしたが、サゾノフは曖昧な返答しかしなかった。ポツダム交渉（（p225、233））の場合のように、他の多くの機会にサゾーノフは重要な措置を講じたり、ジョルジュ・ルイに事前に知らせずにドイツと協議したりしていた。フランスとロシアの結束の欠如は、ポアンカレを非常に苛立たせた。彼の大きな目標は、三国協商が三国同盟に対して堅固な外交的姿勢を示すようにすることだった。

　サゾノフは、ジョルジュ・ルイに対しても個人的な恨みを募らせていた。これは、同盟国同士では考えられないような奇妙な事実から生じた。サゾノフのエージェントがフランスの秘密外交暗号の解読方法を発見し、ジョルジュ・ルイとフランス政府との間の電報をスパイしていたのだ。ルイはこれを疑い、暗号はもっと頻繁に変更すべきだとポアンカレに何度も警告した。1912年4月、ジョルジュ・ルイの解読された電報の1つで、サゾノフは、ルイが中国からの融資に関して自分を遅らせていると非難していたことを発見したと思った。218

そこで、彼はイズヴォルスキーに、ジョルジュ・ルイを呼び戻し、別の人物をサンクトペテルブルクのフランス大使に派遣するよう指示した。イズヴォルスキーは喜んでその任務を引き受けたが、それは非常にデリケートで厄介な仕事だった。

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ポアンカレは直ちにその要請に応じ、1912年5月8日、新政治部長のパレオログにジョルジュ・ルイ宛てに次の電報を送らせた。

　残念であると同時に驚きであるが、ココフツェフ評議会議長は、ロシア政府がフランスを、政治的機能と社交関係でより積極的な大使に代表してもらいたいと公式に通知された。...

　現在パリとサンクトペテルブルクの間で協議されている外交問題は深刻すぎるため、サゾノフがあなたとは連絡が取れないと表明したからといって、我々の努力がすぐに麻痺するわけにはいかない。...

　したがって、ポアンカレは、できるだけ早くあなたに別の場所を見つけるつもりで、あなたの愛国心に訴えて大使館を辞任してもらいたい。私も彼と同様に、あなたの代わりを手配することが絶対に必要であることを認識せざるを得ません。219

　この手紙を受け取ったジョルジュ・ルイは、最初は呆然とした。その後、サゾノフとイズヴォルスキーが彼に対して陰謀を企てているのではないかと疑い、ロシア評議会議長のココフツェフから、ロシア政府は彼の召還要請については何も知らないことが確かめられたため、彼はポアンカレに電報を送り、決定を遅らせるよう懇願し、パリに急ぎ、ポアンカレに直接疑惑を伝えた。

内閣で最も影響力のあるメンバーの一人、レオン・ブルジョワは、大使の解任を求めるイズヴォルスキーの要請に応じることに反対し、他の友人たちは彼の支持に集まった。その間に、事件の一部が漏れ、いくつかの新聞が、イズヴォルスキーのフランス問題への不当な干渉に対して大騒ぎを起こした。この事件はスキャンダルとなり、フランスとロシアの関係に深刻な問題を引き起こす恐れがあった。

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そのためポアンカレは、ジョルジュ・ルイの召還要請はなかった、と全面的に否定する方が賢明だと考え、抗議が収まり、解任にもっとふさわしい機会が訪れるまで、大使は職務に戻ることを許された。220

　このジョルジュ・ルイ事件は、イズヴォルスキーに対するポアンカレの不信感を強め、サゾノフとのより緊密な関係を築き、フランスの同盟国の政策をより強固に維持したいという思いを一層強めた点で重要である。サゾーノフの信頼と、2つの連合国による行動の連帯を維持するという忠実な協力を確保することが、それ以降のポアンカレの大きな目標であった。

ポアンカレは、1912年8月と1914年7月にロシアを訪問し、戦争の場合にはフランスがロシアを支援する用意があることを繰り返し述べ、ロシアのバルカン政策をより積極的に支援するなど、さまざまな方法でこれを達成しようとした。ドイツに対するロシアの軍事準備のためにフランスの借款を手配し、フランス自身の軍備を強化し、最終的にジョルジュ・ルイを排除することで。

　1912 年 8 月のロシア訪問で、ポアンカレは 2 つの同盟国の絆を強めるために多大な貢献をした。彼は、バルチック港でカイザーと会談した最近のロシア皇帝の会談の影響を打ち消し、ロシアがポツダム協定のような形でドイツとこれ以上の別個の協定を結ばないようにしようとした。221

また、ジョルジュ・ルイ事件を解決し、円滑に解決したいとも考えた。彼は、サゾノフ、ココフツェフ、そしてロシア皇帝と、フランスとロシアが共通の関心を持つすべての主要な問題、つまり小アジア、中国への融資、トルコ・イタリア戦争、最近の海軍条約、イギリスの協力の見通し、ドイツとの戦争に備えてフランスとロシアの参謀が準備していることについて議論した。

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彼は特に、ロシア軍をドイツに急速な集中をさせるため、西方への戦略的鉄道を発展させるようロシアに強く勧めた。これらすべての点において、両者は実質的に一致していた。

しかし、最も重要な問題において、ポアンカレはサゾノフの率直さの欠如を示すもう一つの恐ろしい証拠を発見した。それは、前年の冬にロシアの支援を受けて作成された秘密のバルカン同盟の条項を彼が明らかにしていなかったということである。

この協定は 1912 年 3 月 13 日に調印されたが、サゾノフはその内容と、それがバルカン半島で戦争を引き起こす可能性があるという事実について、何の示唆も与えなかった。彼がフランス人の客にそれを読み上げたとき、ポアンカレはその危険な性質を鋭く察知し、「これは戦争の道具だ」と叫んだ。222

彼は、ロシア、ひいてはフランスが戦争に巻き込まれる可能性がある問題について、長い間知らされていなかったことについて、サゾノフに正当に抗議した。彼は、お互いに自分の意図について十分に知らせておくべきだと強く勧めた。彼は同盟を当初の防衛的な形で定義したが、すぐにサゾノフに、危機の際にはロシアはフランスを頼りにできると信じるようになるような言葉を付け加えた。サゾノフはツァーリに、特に、次のように報告した。

（サゾノフ→ツァーリ）
　バルカン半島の出来事を警戒して見守り、この問題に関するニュースや意見を絶えず交換するという相互の意図を確認した後、我々はポアンカレ氏と、状況に応じて、事態の悪化を外交手段で防止するための共同行動をとることで新たに合意しました。

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　ポアンカレ氏は、ドイツが参加せず、自発的にcasus foederisの適用を誘発しない限り、フランス世論は、共和国政府が純粋にバルカン問題のために軍事行動を決定することを許さないだろうという点を強調することが自分の義務だと考えた。casus foederis（戦闘事由）があれば、フランスが私たちに対する義務を正確かつ完全に果たしてくれることは間違いないでしょう。

　私としては、フランス大使に対し、同盟関係で想定内のケースでは常にフランス側に立つ用意があるが、ヨーロッパにおけるフランスの重大な利益が損なわれない限り、ヨーロッパ外での植民地問題によって引き起こされる軍事行動に積極的に参加することは、ロシア世論に正当化できないと明言しました。...

私は、ポアンカレ氏と知り合い、個人的な関係を結ぶ機会を得られたことを大変嬉しく思います。彼と意見を交換したことにより、ロシアは彼という人物に、並外れた政治的才能と不屈の決意に恵まれた、確実で忠実な友人がいるという印象を受けたからです。国際関係に危機が生じた場合には、我々の同盟国が、ポアンカレ氏自身でなくとも、少なくとも現フランス首相と同等の決断力を持ち、責任を恐れない人物を首脳に据えることが非常に望ましいでしょう。223

　バルカン同盟というfait accompli とそれに伴う潜在的な危険に直面して、ポアンカレは他の列強とともに、バルカン諸国が実際に戦争に突入するのを阻止しようとした。しかし、それは遅すぎた。1912年から1913年のバルカン戦争により、フランスとロシアの関係、そして三国協商と三国同盟の関係の繊細さと重要性が増した。

バルカン戦争の最初の数週間、ポアンカレの政策はロシア訪問時と同じままであった。つまり、予備的な意見交換を主張することでサゾノフの軽率な行動を抑制した。同盟の義務に完全に忠実であるという保証を伴ったが。さらに、ロシアのバルカン半島での利害を、大国間の平和維持というより大きな問題に従属させた。また、三国協商国側の目的と行動の完全な一致の確立をした。ただし三国同盟側が過度な主張をしない限りは三国同盟と協力する意志も伴なっていたが。

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しかし戦争が進み、バルカン同盟国側が大勝利を収めるにつれ、フランス政策に対するポアンカレの指導に何らかの変化、あるいはむしろ重点の移行が生じた。この変化はしかしながら、多くの批評家が主張するほど大きくはなく、イズヴォルスキがサンクトペテルブルクへの電報で示そうとしたほど重大なものではなかった。

　ポアンカレは、サゾノフの目的が必ずしも明確で、容易に理解できるものではないことに気づいた。

サゾノフはフランスと常に意見を交換し、事前に合意していたわけではなかった。彼はフランスの提案に答えるのにぐずぐずしたり、曖昧な態度を取ったりしていた。戦争の初め、彼は汎スラヴ主義者らとともに、バルカン諸国がトルコに対して驚くべき軍事的勝利を収めたことを喜んだ。

しかし、キルク・キリセとルレ・ブルガスでの圧倒的な勝利、およびコンスタンティノープルに向けたフェルディナンドの軍隊の急速な進撃は、彼の熱意を不愉快に冷やした。

ブルガリアがトルコの首都を占領すれば、その地域におけるロシア自身の歴史的希望が永久に挫折する恐れがあった。そこに政治的、経済的利害関係を持つ列強が、ブルガリア人にその都市を占領させないようにしたとしても、彼ら列強はその機会を利用して、サー・エドワード・グレイの海峡の国際化の考えを実行するかもしれない。

したがって、ルレ・ブルガスの戦いがまだ進行中であったにもかかわらず、サゾノフはブルガリア人に対し「慎重さの必要性と適切なタイミングでの停止」を認識するよう促し、将来の外交的支援を約束することで、彼らに対して、理性に耳を傾けるよう努めた。

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同時に彼は、ロシアがバルカン同盟の結成に加担して引き起こした戦争において、勝利したスラヴ人を抑制するための調停を支持するソフィアとベオグラードへの介入を大いに歓迎する、とフランスとイギリスに伝えた。224

3日後、ポアンカレがロシアの望む方向にすでに主導権を握っていたにもかかわらず、何の警告も事前の協議もなく、サゾノフはすべての列強に即時介入の完全なプログラムを提示した。

それは、トラキアとアドリアノープルを含む防衛地域を持つコンスタンティノープルのスルタンの維持、アルバニアの自治権、中立を維持することに対するルーマニアへの補償、セルビアのアドリア海へのアクセス、新しいセルビア領土を通るオーストリアの商品の自由な通過、であった。225

　セルビアのアドリア海へのアクセスを除けば、このプログラム全体は三国同盟への譲歩という性質のものだった。コンスタンティノープルと比べて、サゾノフには「スラブの小さな姉妹たち」や三国協商の結束にはほとんど関心がなかった。

提案された譲歩に対するポアンカレの驚きから立ち直る暇も与えず、サゾノフは、ブルガリアがコンスタンティノープルを占領すれば、ロシアの黒海艦隊全体が「トルコの首都コンスタンティノープルの前に姿を現す」という、さらに驚くべき知らせを彼に送った。226

ロシア海軍本部の計画はさらに進んだ。「わが大使館とわが国の利益全般を守るためには、当然上陸が必要であり、海軍の乗組員を弱体化させないために、機関銃を持った部隊を派遣することが望まれる。ボスポラス海峡の占領はそれほど遠くまでは及ばないが、そうすればそこに永久に留まるのは容易になる。ボスポラス海峡をしっかり掌握できれば、厄介な海峡問題はすでに半分解決しているのだ。

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そのような前進のための好機が見つからないのなら、人為的に作り出さなければならない。なぜなら、海峡全体を掌握することが不可能であるならば、ボスポラス海峡が持つ莫大な政治的利点に目を向けるべきだからだ。」227

　しかし、フランスの世論はバルカン半島での（バルカン同盟の）勝利に安心し、ロシアのバルカン政策に新たな関心を抱き始めた。

ポアンカレがフランスのロシアへの忠誠を公に宣言したことは、大きな熱狂を呼び起こした。「いったん成功すると続いて成功するものだ」とイズヴォルスキーは報告した。「最近の出来事の影響で、バルカン諸国とロシアの視点において、好意的な感情へと顕著に変化していることに気付かれる」。そして、彼はこの新しい姿勢を強化するために、特に報道機関に影響を与えることによって、できる限りのことをするつもりだが、そのためにはもっと資金が必要だ、と付け加えた。228

ポアンカレは、ブルガリアとセルビアを敵に回すサゾノフの介入計画には熱心ではなかった。彼は、バルカン半島での勝利が、スラブの大義とヨーロッパの勢力均衡における三国協商に与えた新たな重みと影響力に印象づけられた。

彼はまた、ドイツの支援を受けたオーストリアが、この状況を利用して領土拡大を企てるのではないかと疑っており、ロシアとセルビアの利益のためだけでなく、フランスと三国協商の威信のためにも、これを阻止しようと決意していた。

彼は、コンスタンティノープルに対するサゾノフの不安よりも、オーストリアが何をするかについて、懸念を抱いていた。イズヴォルスキは11月7日に次のように報告している。「フランスはこれまで、いわば純粋にバルカン半島の局地的な出来事は、フランスに積極的な措置を取らせることはできないと宣言してきたが、フランス政府は今や、オーストリアがバルカン半島の領土を獲得すれば、ヨーロッパ全体の均衡、ひいてはヨーロッパの平和と安定に影響を及ぼすことを認めているようだ。…ポアンカレは、フランスがこのようにして戦争行為に巻き込まれる可能性があることを十分に認識している。

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もちろん、彼は今のところ、この問題を単に机上のものとして提起しているが、私との会話の中で、パレオログは、提案された協定が、何らかの積極的な措置につながる可能性があることをはっきりと認めた。」 229

　セルビアによる北アルバニアの占領とアドリア海沿岸の港湾に対する要望は、すぐに危険なほど深刻な問題となった。オーストリアは、これを阻止するために必要であれば武力行使すると脅し、独伊両同盟国の支持を得た。サゾノフは当然セルビアの要求を支持したが、戦争を起こすほどではなかった。彼は密かに、セルビアにアドリア海沿岸の鉄道の出口を与えるが、オーストリアとイタリアが特に反対した北アルバニアの一部を与えないなど、何らかの妥協案を見つけようとしていた。オーストリアによる積極的な介入が避けられない場合、フランスの態度はどうなるかと尋ねたところ、イズヴォルスキによれば、ポアンカレは次のように答えた。

　ロシアが最も関心のある問題で主導権を握るのはロシアの役割である。フランスの任務は、ロシアに最も効果的な支援を与えることである。フランス政府が主導権を握れば、同盟国の意図に及ばない、あるいは越えてしまう危険がある。... 要するに、ロシアが戦争をすれば、フランスも同じようにするだろう、なぜならこの問題でドイツがオーストリアの後ろに立つことは誰もが知っているからだ、とポアンカレ氏は付け加えた。230

　この発言は、陰謀を企むイズヴォルスキーがポアンカレに及ぼした勝利的な影響力を示すものとして、ポアンカレへの批判勢力によって頻繁に引用されてきたが、ポアンカレは回想録の中で、不正確であると厳しく批判している。実際、彼は再び、サゾノフが主導権を握って自分の望みをはっきり言うまでは約束はしたくないと主張していた。

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それからフランスは、自らの見解を表明をしたことだろう。戦争に関しては、彼は再び同盟の義務を、1912年8月にサゾノフに使ったのと同じ言葉で定義した（p336）。すなわち、フランスは、同盟で規定されたcasus foederisの特定のケース、すなわち「ロシアがドイツまたはドイツに支援されたオーストリアによって攻撃された場合」が満たされた場合、戦争に突入するだろう。だがそれまでは手を出さない。

数日後、彼はジョルジュ・ルイにイズヴォルスキーの誤った説明について注意を促し、それが引き起こしたかもしれない誤った印象を訂正するよう求めた。したがって、イズヴォルスキーの報告はポアンカレの言葉の表現としては間違いなく不正確であるが、パリ駐在のロシア大使からサゾノフに伝えられたポアンカレの見解の表現としては正確である。そしてそれは、ロシアが関心を持っているバルカン問題から生じる戦争の問題をポアンカレが今や真剣に検討する用意ができていることを示している。

しかし、1912年当時、ロシアは戦争の準備ができていなかった。列強のいずれも戦争は望まず、セルビア問題は解決のため、ロンドン大使会議に委ねられた。

　イズヴォルスキーのような、陰謀的で野心的で、完全には信頼できない人物がパリのロシア大使であったため、フランスにとって、海峡に関するロシアの野心の危険に警戒していたジョルジュ・ルイのような考えを持つ人物がサンクトペテルブルクに駐在することは、なおさら重要であった。

しかし、1913 年 2 月 17 日、ジョルジュ・ルイは突然、完全に解任され、デルカッセが後任に就くことを知らされた。ポアンカレは共和国大統領に就任したばかりであり、サンクトペテルブルクのフランス大使館の変更の責任は、厳密に言えば、ジョナールがポアンカレの後を継いで外務大臣となったブリアン内閣の肩に負わされることになった。231

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友人たちが「政治的に暗殺された」と呼んだように、ジョルジュ・ルイの解任により、彼の外交官としての経歴はなきものとなった。

彼には新たな地位は見つからなかった。彼は、回避しようとしていた戦争の最中、1917年に亡くなった。

ルイの虚弱な健康状態と、サゾノフやサンクトペテルブルクの有力者との親密な関係の欠如から、同盟国の結束のためには、サゾノフとそのバルカン政策にもっと心から協力してくれる人物が彼の後任となることが望ましい、というポアンカレの説明には、確かにある程度の真実がある。

ルイの後任が、ロシアに強力な支援を与えることで同盟の絆を強めることに強く賛成していたデルカッセ、次いでパレオログだったという事実は、パリとサンクトペテルブルクの内閣の調和を確かにもたらした。

それによって三国協商は強化される傾向があったが、それはまた、1914年の戦争の主因の一つであったセルビアへのサゾノフの支持とオーストリアとドイツに対する強硬な態度を助長した。