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＜第一次バルカン戦争-世界大戦化が未然に防がれた＞

　第一次バルカン戦争は、ロシアの戦争計画者らに、決定的に重要な演習機会を与えた。いくつかの点において、それは、1914年の7月危機におけるロシアの予め示された選択に対する危機精査に役立った。

進行中のイタリア・トルコ戦争に起因したオスマン帝国軍の分散を利用して、モンテネグロは 1912 年 10 月 8 日にトルコに宣戦布告し、9 日後にセルビア、ブルガリア、ギリシャが続いた。限界に追い込まれたポルト（コンスタンティノープルにあるオスマン帝国の宮廷）は、1912 年 10 月 15 日にイタリアとの休戦協定に署名することを余儀なくされた。ポルトは、増援をヨーロッパ内オスマン帝国に送ることができたかもしれないが、連合軍の前進の驚くべき速さにはかなわなかった。10 月 22/23 日、ブルガリア軍はキルクキリセを突破し、コンスタンティノープルからわずか 37 マイルのカタルカで、トラキアを越えてオスマン帝国の最後の防衛線への道を開いた。 10 月 24 日、セルビアはマケドニアでトルコを敗走させた。 11月8日、ギリシャはサロニカに入り、オスマン帝国支配下のヨーロッパを実質的にガリポリ半島、首都自体、および現在敵に囲まれているアドリアノープルアノープル（エディルネ）などのいくつかの要塞要塞に縮小した。

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　1912 年 11 月にバルカン半島の危機が深まると、ヨーロッパ全体の戦争の脅威が迫り始めた。ボスニア・ヘルツェゴビナとダルマチアのオーストリア・ハンガリー軍は「戦時体制」に置かれ、オーストリアもクラクフ、プシェミシル、ミシュル、レンベルク（リヴィウまたはリボフ）でロシアに面したガリシア守備隊を強化していた。多くの人は、ドイツ人がこうしたことに対してより強く反応し、表向きの保護国であるトルコが忘却の脅威にさらされると予想していた。（セルビア人やブルガリア人が配備したフランス製のクルーソー・ライフルや銃が、クルップやシュコダが作ったトルコ人の武器よりも明らかに性能が優れていたことは誰の目にも明らかだった。）

それでも、カイザーヴィルヘルム 2 世は、彼の有名なトルコびいきのために、オスマン帝国にやや不満を抱いていた。彼の友人であるスルタンアブドゥルハミド 2 世が 1909年に追放されたため（青年トルコ革命）である。彼はドイツの政策を「差別なく、自由に戦う」という緩和されたものであると宣言した。すなわち彼らは、戦いを単純に事由に任せるだろうと。

ベルリンからの必要な支援がなければ、ウィーンは、深刻な国益であると考えられていたアドリア海のオーストリアの支配を脅かしていた大敵であるセルビアの軍隊が 1912 年 11 月 15 日にアドリア海の海岸線に到達した後でさえも、バルカン戦争には参加しなかったことは間違いない。第一次バルカン戦争のこの重要な段階でのオーストリアの消極的な態度は、何よりも、その戦略的な無能をペテルスブルクの非常に多くの政策立案者に確信させたのである。

　第一次バルカン戦争中の（オーストリアと）ロシアの行動との対比は、これ以上ないほど印象的であった。ヨーロッパ内オスマン帝国における（バルカン）同盟軍の前進は、明らかに、Chorister's Bridge（ロシア）の勝利であった。

悪名高いロシア駐ベオグラード大使Nicholas Hartwigは、略奪的なバルカン同盟（訳注；１９１２年、ロシアに支援されたバルカン半島の諸国家が、オスマン帝国（トルコ）に対する共同防御を目的としてに結成した軍事同盟である。セルビア・モンテネグロ・ブルガリア・ギリシアの間で個別に結ばれた。また付属の秘密協定で、戦争勝利後の領土分配を取り決めていた。ロシアがこれを支援したのは、オーストリア＝ハンガリー帝国のバルカン進出を阻止するためであった）の首謀者であると広く信じられていた。

オスマン帝国の得意先が敗走しているにもかかわらず、ロシアの指導者たちは「自由な戦いに恩恵なし」というドイツ皇帝の政策に従うどころか、ハートヴィヒのロシア愛国連合がトルコを敗走させている間、ありえないことにヒステリーに近い反応を示した。

戦争が最初に勃発した 10 月にポーランドで危険な「試験的な動員」を既に認可していたロシア国防大臣スホムリーノフは、1912 年 11 月 22 日に、ワルシャワの軍事地区の全面的ではあるが「部分的な」動員の命令を準備した。(つまり、オーストリア領ガリシアを標的とするロシアのポーランド)、キエフ (ロシア領ウクライナ、同じ標的)、そして興味深いことに、オデッサ (そこからコンスタンティノープルでの水陸両用作戦が開始される可能性があった)。

1914 年 7 月に議論されたものとほぼ同じこうした発想は、ロシアがドイツを警戒させないように、「オーストリアに対してだけに」動員しているように見えるようなものであった。

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1912 年 11 月 23 日、「スホムリーノフにもう 1 日待つように頼んだ」後、皇帝ニコラス 2 世は、ヤコフジリンスキー陸軍参謀総長、サゾーノフ、クリヴォシェイン、大臣評議会議長のココフツェフを含む上級閣僚の緊急会議を召集し、陸軍大臣の「部分的動員」計画について話し合った。

保守派の委員長であるココフツェフが、そのような動員は、オーストリア全体の動員に容赦なくつながり、その後にドイツの動員が続き、したがってヨーロッパの戦争が起こるだろうと説明した後、 王室評議会はスホムリーノフの計画に拒否権を行使し、1912年の大戦勃発は、回避された。38（訳注；c.f.夢遊病者たちｐ408）

　1912 年 11 月から 12 月にかけてヨーロッパを戦争に突入させそうになったのは、オーストリアや (フィッシャーが示唆したように) ドイツではなく、なぜロシアだったのだろうか?　39
39. フリッツ・フィッシャーが『幻想戦争』(1969) で提唱した理論では、ドイツ軍は 1912 年 12 月 8 日に独自の「軍議」を開き、その際、海軍の準備がまだ整っていないとティルピッツ提督から警告された皇帝と将軍たちは、1914年のある時点まで戦争を延期することを決定した。すなわち、その明らかな意味は、1914 年の戦争が計画的であったということである。

これはフィッシャー理論の 1 つであり、フィッシャー批判者の手に渡って独り歩きしたように見え、後にフィッシャー自身が介入してこの理論の保持を否定した。フィッシャーは1988年に、「私は戦争が長い間計画されていたとは決して主張していない…1912年12月8日のヴィルヘルム2世の『軍事会議』によってさえも計画されていなかった」と書いている。Fischer, "Twenty-Five Years Later: Looking ing Back at the `Fischer Controversy' and its Consequences," pp. 214-215.

見かけとは裏腹に、バルカン軍のトラキア平原への進軍は、実際には、他のどの国よりもロシアにとって危険な利害であった。なぜなら、ブルガリアの自称「皇帝」フェルディナンドのような野心的な王征服者にとって、ビザンチウムのマントを継承することは、ロシアの政治家らが欲した一番後回しのことであったから。（実際、フェルディナンドは、まさにそのような機会のために、劇場の衣装係によって注文された、完全なビザンチン皇帝のレガリアをクローゼットに保管していた. ）

1833年にエジプトがアナトリア半島を襲ったとき、ロシアはトルコの招待で軍隊を派遣し、コンスタンティノープルをケディブ・ムハンマド・アリ（訳注；オスマン帝国の属州エジプトの支配者。エジプトのオスマン帝国からの事実上の独立を達成し、その後のエジプト発展の基礎を築いた。）の軍隊から守った。ブルガリア軍がヨーロッパ側から都市（コンスタンティノープル）に近づいたため、ロシアは再びそのようにすると脅した。

スホムリーノフが軍の行動準備を整えていたときでさえ、1912 年 10 月 26 日、ロシアの海軍大臣イワン K. グリゴレヴィッチは、コンスタンティノヴィッチの適切な愛称がある皇帝ニコライ 2 世に、黒海艦隊をロシアのポルテ駐在大使M. N. ギールスの指揮下に置くよう要請した。コンスタンティノープルにすぐに召喚できるようにするためである。.40

その危険は、単にブルガリアがロシアの援助なしで「ツァルグラード（コンスタンティノープル）」を征服すると脅したということではなく、敵軍が首都（コンスタンティノープル）の門に接近することが首都のキリスト教徒住民に危険をもたらすということであった。

サゾーノフは、大使スタッフの安全を恐れた米国、ベルギー、スウェーデンを含むさまざまな西側諸国政府とともに、ギリシャ正教の総主教からロシアからの保護の要請をすでに受けていた。この意味で、ブルガリアの前進は、危険ではあったが、海峡を武力で占領する口実となる機会をロシアに提供した。

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サゾーノフが 1912 年 11 月 12 日にココフツェフ、スホムリノフ、グリゴレヴィチに宛てた長い覚書の中で説明したように、コンスタンティノープルを征服すれば、ロシアは「2 世紀にわたる歴史の中での努力と犠牲の当然の冠である世界的地位」を手に入れることになった。

ロシアの外務大臣サゾーノフは、国家自由主義の最も壮大な流れである主義を訴えて言った。そのような最高の戦略的勝利において、「私たちの内的生活に癒しをもたらし、[そして]政府と社会にそれらの成果とそれらを団結させる熱意を与えるだろう. 議論の余地のない汎国家的に重要な問題のために。」41

　コンスタンティノープルへの劇的な襲撃というサゾーノフの構想は、汎スラヴ主義者や国家的自由主義者にとっては魅惑的ではあったが、1912 年にはまだ時期尚早だった。また、たとえ十分な数の艦船があったとしても、軍の司令官であるスホムリーノフとダニーロフは、適切な水陸両用攻撃を開始するために必要となるような、ヨーロッパ戦線からの軍隊の大規模な移転には反対することを明確にした。

両者ともコンスタンティノープルの征服に反対していたわけではなかった。むしろ、彼らはそれをどのように行うかについて別の考えを持っていた。ダニーロフが述べたように、国家的リベラルなネオスラブ主義の軍事版と呼ばれるかもしれないもの、それは「コンスタンティノープルへの最短で最も安全な作戦ルートは、（ポーランドではなくp21）ウィーンと・・・ベルリンを通っている.」ということなのである（c.f.p6 冒頭）。42

　それにもかかわらず、サゾーノフはロシアの海峡政策に重要な指標を設定した。1912 年 11 月に水陸両用上陸作戦のアイデアを真剣に持ちかけたが失敗におわり、1913年3月27日にアドリアノープルのオスマン軍駐屯地が陥落した後、もう一度提案した（再び失敗に終わった）。サゾーノフは、必要に応じてブルガリアへの侵入を拒否し、ロシアの黒海艦隊が即座に海峡に断固たる介入を行う準備をしなければならないと、その後数ヶ月にわたって陸・海・空軍参謀長らに繰り返し忠告した.43

　民族主義的なロシアの新聞が作成した汎スラブ連帯についての誇大宣伝のすべてに対して、海峡/ブルガリア問題は、それがほとんど空虚であることを示している。サゾーノフは間違いなく、ロシア政府における国家自由主義とその汎スラブ的テーマの主要な提唱者だったが、ロシアの国益が脅かされれば、彼はバルカン半島の仲間の「スラブ人」を船外に投げ出すことをいとわなかった。ブルガリアは、文字通り 1878 年にロシアの軍隊によって創設されたスラブの従属国であった。ブルガリアの参謀将校は、直近では 1912 年の夏まで、ロシアの参謀本部と共同でトルコ侵攻計画を練っていた[44]。

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＜第二次バルカン戦争～＞

1913 年 6 月に始まった第二次バルカン戦争中、ブルガリアはあっという間にギリシャ、ルーマニア、セルビア、トルコに圧倒され、それは全ヨーロッパに、ロシアの威信と汎スラヴ主義への非難をさせることとなった。

それでも、第二次バルカン戦争におけるブルガリアが受けたむくいは、 Chorister's Bridge（ロシア）では無関心に見えた。一方で、第一次バルカン戦争における海峡に対するブルガリアの脅威は、ペテルスブルクに真の戦争の恐怖をもたらしていたのだが。

1913 年 8 月に厳格なブカレスト条約（訳注；ここで領土を縮小したブルガリアはロシアから離れ、ドイツ・オーストリア陣営に接近する）が課された後、サゾーノフは、この条約でギリシャ、ルーマニア、セルビアに対して、失われた領土に対するソフィアの復讐の計画のために、事実上、ブルガリアが敵対的勢力であると考えた。そしてさらに重要なのは、ロシアの助けなしにコンスタンティノープルを征服したいというブルガリアの明確な願望であった[45]。

　1914 年 7 月のロシアの表向きの戦争事由となったセルビア自体でさえ、ロシアの外交政策にとっては、純粋にシンボル的な関心事であった。それはまさしく妥当だった。

もちろん、ロシアは、オーストリア・ハンガリーやブルガリアなどの敵対的な隣国によって「英雄的な小セルビア」が分割されるのを見たくはなかったが、セルビア自体が拡大されるのも見たくもなかった。1908年の最初のボスニア危機の間、セルビアは、オーストリアのボスニア・ヘルツェゴビナ併合を承認する代わりに、領土補償を要求したが、イズヴォルスキーは、ベオグラードを支持することを拒否した。46

ロシアが本当に「セルビアのために戦う」ことを望んでいたとしたら、その時は、第二次バルカン戦争の余波頃であった 1913 年 10 月であっただろう。その時オーストリアは、セルビアがアドリア海へアクセスするのを拒否する効果において、セルビア軍がアルバニアから撤退することを要求する気骨を示していた。ロシアは、セルビアがこれほどまでに強大化するのには関心がなく、尻目で見ていたので、サゾーノフはこのオーストリア策略にはそっと賛成した。ベオグラードが切望するアドリア海への港湾アクセスを事実上拒否することは、第二次バルカン戦争後のサゾーノフの主要な外交政策目標の 1 つとなり、セルビアを弱体化させるためにアルバニアをオスマン帝国の支配下に戻すことに関心を持った。47

1914 年の 7 月危機の(明らかな) 皮肉は、ペテルスブルクが、自国の外交官が何ヶ月も（戦争に）反対してロビー活動を行っていたまさにその国（セルビア）のために、戦争に突入したことなのである。

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　1914年にロシアが実際にセルビアに代わって戦争をおこなったと仮定するのは単純過ぎる。大国は通常、小従属国の領土保全を守るために何百万もの軍隊を動員することはないのだ。

現代から明らかな例を挙げると、米国主導の連合軍が、国際的に認められたクウェートの境界線を再構築するために第一次湾岸戦争を真剣に戦ったと信じるのは、戦略的想像力を駆り立てる。普遍的に神聖化された国境の「新世界秩序」は、ペルシャ湾の石油供給への秩序と予測可能性を回復し、窮状が彼らを混乱させるさらなる攻撃を抑止するという、あさましいことではあるが必要なビジネスを隠蔽するための有用な修辞的なイチジクの葉であった。

　同様に、1914年7月のロシアの真の関心は、「スラブの名誉とセルビア人」についての公の姿勢だったというのは幻想に過ぎなかったことだろう。サラエボ事件の前の数ヶ月間におけるロシアの外交的対応の広範な調査では、いかなる種類のセルビア問題に対する過度の懸念も明らかにならず、実際そうした懸念は、7月以降の数ヶ月で表明されたのである。(世界大戦勃発後のサゾーノフの最初の外交的動きの 1 つは、明らかに、ブルガリアにマケドニアの領土を割譲するよう、セルビアに圧力をかけることであった。)48

パニックに近い、海峡問題への広範な強迫観念があることが明らかであった。イタリア・トルコ戦争と2つのバルカン戦争に続いて、近隣諸国の好戦的な敵意に直面して、トルコは長くは続かないだろうということが、一般的には考えられていた。問題は、オスマン帝国の病人が切り分けられたとき、どの力が死体のどの部分を飲み込むかということであった。そしてサンクトペテルブルクにとって、問題はさらに深刻であった。

コンスタンティノープルと海峡を支配するのは誰になるのだろうか?

　正教会のキリスト教徒の夢の「第二のローマ」としての「帝都」に対するロシアの関心は何世紀も前からあったため、20世紀初頭のサゾーノフのようなロシアの政策立案者の海峡への執着は、ある時には誤ってロマンチックであると想定されてきた。

実際、ロシアが海峡で計画した標識は、バルカン半島での陰気な汎スラブ的主張とは異なり、冷淡で厳しい国益の問題であった。（セルビアの領土補償要求に対する名目上の支援さえ提供することはできなかったのだが）。ウィーンが、ロシアが望んでいた軍艦の地中海への通行権を支持するというエーレンタールの約束を破った後、イズヴォルスキーが最初のボスニア危機でサンクトペテルブルクを戦争に突入させそうになったのも不思議ではなかった。49

経済的な観点から言えば、ロシアにとって海峡の重要性は明白で真実であった。正確な数字については計算が異なっていたが、急成長しているロシアの輸出貿易の半分に近いものが、1914 年までに、黒海、ボスポラス海峡、ダーダネルス海峡を経由して世界市場に運ばれていた.50

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1912 年の夏、伊土戦争の最中に Porte が一時的に海峡を封鎖したとき、ロシアの脆弱性が痛々しいほど露呈した。7,700万ポンド（8,000万ルーブル近く）から5,700万ポンド（百万ルーブル未満）に30％下落した. ウクライナの重工業は、黒海経由で海峡を介して直接輸入された物資に依存しており、ほとんど停止していた。2 つのバルカン戦争の間、海峡は商売のために開かれたままだったが、貿易の一般的な混乱はすでに準備ができていたので、1913 年のロシアの輸出収入は 1911 年よりも 20 パーセント低かった。.51

この収入は、特にウクライナとロシア南部で、ロシアの産業がますます依存していた製造された部品の輸入に支払われたため、黒海の輸出貿易の蒸発は、1910 年には約 4億3000 万ルーブルの黒字が 1913 年には 2 億ルーブルに激減し、ロシアの最近の有利な貿易収支を壊滅させた。このペースでは、ロシアの国際収支の黒字は 1 年か 2 年以内に侵食される恐れがあり、それはロシアの工業化産業化の推進力を弱体化させ、それとともに大国であり続けるというロシアの目標を損なうことになる.52

　しかし、サンクトペテルブルクにとって海峡問題の決定的な重要性を理解するためには、数字を超える必要がある。

ロシアの黒海への主な輸出品は穀物であった。1911 年と 1912 年の両方で 2,000 万トン以上が出荷され、そのほぼ 20% がボスポラス海峡を経由して世界市場に輸出されていた。当時、ロシアの農業経済全体の健全性は、自由な海峡へのアクセスに依存していた。

さらに、穀物増産をすることは、アナーキーな社会革命に対する防波堤として機能するべく、成功した農民生産者の安定したクラスの創設を想定したストルイピンの社会改革の鍵であった。

1907 年以来 (特に 1911 年の Stolypin の死後)、これらの改革は Stolypin のスター的後継者であった農業大臣クリヴォシェインによって監督されていた。クリヴォシェインは、1914 年にペテルスブルクで最も強力な政策立案者であると広く信じられていた。1914年 2月、彼は、バルカン戦争に消極的だったためにロシア民族主義者のサンドバッグになっていた、より平和主義的なココフツェフを超えて、年配の傀儡のI. L. ゴレミーキンを評議会の議長として操った。

クリヴォシェインは悪名高いドイツ嫌いであった。フランス人は彼を愛していた。彼の最優先事項は、国内の穀物市場をドイツとの競争から守ることと、輸出のための海峡への無制限のアクセスを確保することの両方によって、ストルイピンの土地改革を保護することであった。53

p30
＜リマン事件の影響＞
　ロシアの増大する輸出経済の脆弱性と、大臣評議会における急成長中のドイツ人恐怖症を考慮すると、1913 年 11 月にリマンフォンサンダース (およびその他の 40 数名のドイツ軍将校) がオスマン海峡の防御を指揮するために間もなく任命されるという噂が、サンクトペテルブルクを雷鳴のように襲った理由を理解するのは難しくない。

恩知らずのブルガリア人がコンスタンティノープルでトルコの権威を奪わないように、すでに厳戒態勢を敷いていたロシアは、今、ロシアの最も強力な敵（ドイツ）が、海峡でロシアの輸出経済の首を絞めるという恐ろしい見通しに直面していた。

リマン事件の議論では、このニュースに対するサゾーノフの有名な挑発的な反応は、だまされたことに対する彼の個人的な怒りのために誇張されているとして無視されている（彼は直近に、ベルリンに赴任ばかりで、ベートマン・マン・ホルヴェークは近く発表予定だったリマンの任命について、彼に話していなかった)54（origin p540-50）。

実際、サゾーノフは 1913 年 11 月に正当に恐怖を感じていたが、それはドイツの将校がオスマン海峡の防御を強化し、おそらく奪取するために派遣されたという理由だけではなかった。その月のポルトからの一連の派遣で、ギールス大使はサゾーノフに、トルコが最近の戦場での損失を報復するために全力で武装していることを不吉に知らせた。

CUP（統一と進歩委員会※）のメンバーが支配する新政府は、おそらくボスポラス海峡とダーダネルス海峡の陸上に搭載されるであろう銃について、クルップとの新しい契約に署名したばかりであった。最近の敵対行為にもかかわらず、イタリア人は当時、大砲と 3 隻の小型軍艦をトルコに売っていた.55

訳注※統一と進歩委員会は、オスマン帝国の末期に活動した政治組織である。1908年の青年トルコ人革命の主体となり、また第一次世界大戦前後の1913年から1918年までは内閣を組閣、政権を握った。

最も懸念されるのは、イギリスの造船所でトルコ向けに建造された 2 隻の最新鋭の弩級戦艦であり、海軍参謀は 1912 年にサゾノフにはっきりと警告していたのだが、そのうちの 1 隻でも進水すれば、ロシアの黒海艦隊全体を時代遅れにすることになったことだろう。56

これらの弩級戦艦は、1913 年 11 月 27 日の緊急派遣で、1914 年 3 月か 4 月までに、コンスタンティノープルに到着することが期待されていた、とギルスはサゾ-ノフに通知した。

ボスポラス海峡の海岸防衛を指揮する経験豊富なドイツ人将校の見通しと相まったこうしたことすべては、海峡を占領するためのロシアの窓口が、間もなく完全に閉ざされるかもしれない、ということを意味した。

ギールスはサゾーノフに警告した。「遅かれ早かれトルコで発生するに違いない危機が発生した場合、[改良された]トルコ艦隊は私たちに決定的な打撃を与えることができるでしょう。この打撃は、我々の黒海艦隊を破壊するだけでなく、何世紀にもわたる計り知れない犠牲とロシアの血の流失を通じて獲得してきた近東における我々全体の地位や、かけがえのない権利をも破壊することだろう。」57.

p31
　リマンの任命のタイミングだけでも、ペテルスブルクでパニックを引き起こすのに十分であった。

直前の 18 か月間、ロシアは、イタリア・トルコ戦争中にトルコが海峡を船で閉鎖するのを目の当たりにしていた。すなわち、ロシアの反対を押し切って、コンスタンティノープルの視界内にあるマルマラ海の海岸に、２隻のブルガリア艦船の攻撃があったことや、、（ロシアによって想定されていた）ベルリンが資金提供した主要なトルコ海軍の輸入の駆動装置ことや、ボスポラス海峡の防御を含むオスマン軍を近代化するというドイツの任務などである。

サゾーノフが恐怖に陥り、ギールスの最近の派遣の悲惨な口調に明らかに影響された覚え書で、「海峡を所有する国家は、黒海と地中海の鍵だけでなく、小アジアへの侵入とバルカン半島での覇権の確実な手段も手にするだろう」と書いて、1913 年 12 月 6 日にツァーリに警告を発したことは、驚くに当たらない。
。58

サゾーノフが、1914 年 1 月 6 日の皇帝ニコライ 2 世への歴史的な覚書の中で、三国協商の勢力の間でトルコが共有されることになる海峡問題をめぐって、ヨーロッパの戦争が発生するという考えを初めて提起したのは、こうした多くの利害関係を念頭に置いての上であった。「わが国防大臣と海軍大臣が、もちろん、フランスが全軍で我々を支援することを決定し、イギリスが我々に十分な支援を提供した場合に、複雑な事態を招く可能性があると信じている場合、私たちは今日、この問題[オスマン帝国の占領と、可能な限りの分割]について、これら2つの大国と秘密裏に意見を交換することができます。」

イギリスがスミルナ (イズミル) に、フランスがベイルートに、ロシアがトラブゾンに上陸するという考えは、表向きはポルトに圧力をかけてリマンの任務を追放するというものだったが、実際には分割の前触れとしてだった。ロシアの公式草案補佐官がそれを不吉に表現したように、「私たちは要求が満たされるまでそこにとどまるだろう.」59

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　1 週間後（の1914年1月13日）に開催されたロシア大臣評議会の歴史的な会議（訳注；夢遊病者たちp520)で、サゾーノフ、スホムリーノフ陸軍大臣、グリゴレヴィチ海軍大臣、ジリンスキー陸軍参謀総長、ココフツェフ議長は、リマン事件をめぐるヨーロッパの大混乱を引き起こす可能性について公然と議論した。指導者の中で、今や悪名高くなってしまった平和主義者のココフツェフ（その後2月に解任された）だけが、ヨーロッパ戦争の可能性に反対して精力的に発言にし、それは「ロシアに降りかかる可能性のある最大の不幸」であると考えた。

ココフツェフが「ドイツとの戦争は望ましいものであり、ロシアはそれを行うことができるのか?」将軍たちに尋ねたとき、Sukhomlinov と Zhilinskii は、「断固として」、「ロシアはオーストリアとの戦いは言うまでもなく、ドイツとの戦いに向けて完全に準備はできている」と答えた。

Sukhomlinov にとって重要な点は、戦争を行う「準備は完璧にできている」が、実際にはロシアは単独で戦う必要はないということだった。戦争大臣を支持して、サゾーノフは、フランスの外務大臣テオフィル・デルカッセが、「フランスは、ロシアが望む限り行く」と彼に約束したことを、誰にでも知らせた。

ロシアが他の大国のほとんどすべてを含む敵対的な連合に直面したクリミア戦争の時とは異なり、当時の主要な敵であったフランスとイギリスは、今度はロシアの側に立つだろう。ただし、ロンドンが窮地に陥った場合は別だが（もっとも、そうなった場合、すべてが台無しになってしまうだろうが）。

サゾーノフ自身は、「ロシアとフランスの軍事作戦が後退した場合には」英国の介入が確実であると考えていたが、ココフツェフは、（フランスとイギリスの両方が共同措置に積極的に参加する）保証がなければ、ヨーロッパの大混乱を引き起こす危険を冒すつもりはなかった。結局、大臣評議会は、リマンの任命についてベルリンとの交渉を継続し、「フランスとイギリスの両方が共同措置に積極的に参加することが保証された場合にのみ戦争に訴えることを決定した。60

確かに、サゾノフとロシア人たちは最終的にリマン事件で後退し、1914 年 1 月 16 日にドイツ人（リマン）がオスマン帝国第 1 軍の監察官に昇進するというぎこちない妥協に同意した (彼は海峡防衛の責任者など、 1 つの軍団を指揮する資格を過剰に与えられた)。

しかし、このことから、ドイツの圧力に直面してロシアが再び屈服したと結論付けることは、残念ながらベルリンとウィーンの一部が推測したように、状況を完全に読み違えることであった。リマンの妥協に続く数週間は、多くのナショナリストがリマン事件で後退したと非難したココフツェフの失脚だけでなく、ロシアとドイツの間の有名な「報道戦争」も見られ、ベルリンとペテルスブルクのナショナリストの新聞は、指導者たちに戦争に飛び込むように促している.61.

p33
＜1914年2月8日国家特別会議＞
重要なこととして、2月（8日）にサンクトペテルブルクで、サゾーノフ外相が議長を務め、ロシアの黒海の海軍と水陸両用部隊を十分に強力にすることを目的とした、コンスタンチノープルの駐在大使であるギールスが出席した、歴史的な陸軍と海軍の合同計画会議があった。それは、ロシアの黒海海軍と水陸両用部隊を、恩知らずのブルガリア、ドイツとオスマン帝国の監察官、イギリスの弩級戦艦などでコンスタンティノープルを占領するのに十分なほど強力にすることを目的としていた。（訳注；夢遊病者たちｐ526。同書では、海峡作戦と全ヨーロッパ戦争の兼ね合いについてが述べられている）。

　1914 年 2 月 8/21 日にサンクトペテルブルクで開催された「特別会議」の基本的な結論は、ロシアの黒海艦隊の開発を加速するために 3 月に下院が 120 万ルーブルを充当し、今後数年間で海峡を占領するというものであったが、決して秘密ではなかった。62

サゾーノフは、彼の回想録「Fateful Years」の中で会談について議論しており、（ロシアの）指導者たちが「ヨーロッパの戦争が勃発した場合、コンスタンティノープルに対する攻撃は避けられないと考えていた」ことに同意していたことを公然と認めている。

（サゾーノフの主張によると）軍と海軍の参謀の間の議論の過程で浮かび上がった問題は、「我々は迅速かつ断固たる行動をとる手段を持っておらず、私たちが考えていた計画を実行するために何年もかかるだろうということであった。

サゾーノフの気持ちが「非常に落ち込んでいる」ことがこの啓示により、明らかになった。したがって、（戦後のドイツからの批評のような）いかなる種類の「オスマン帝国の威厳とヨーロッパの平和に対する脅威」の構成からも程遠く、1914 年 2 月に生まれたロシアの計画は、「全体的に防御的」で、「平和的な性格」を持っていたとサゾーノフは結論付けている。63。
63. Sazonov, Fateful Years, pp. 126-127。ロナルド・ボブロフが最近指摘したように、1914年2月の計画会議は当初1913年12月下旬、つまりリマン危機がまだ最高潮に達していた時期に予定されていたが、元長官A・A・リーヴェン提督の病気のため延期されただけだった。元長官A・A・リーヴェン提督は海軍参謀のメンバーで、2月にはまだ体調が悪く出席できなかった。

不思議なことに、D.C.B.Lievenは、海軍参謀長時代にロシアの海軍政策における彼の著名な祖先の役割に多大な注意を払っていたにも関わらず、『Russia and the Origins of the First World War』の中で、1914年2月の会議については全く言及していない。(Lievenはボリシェヴィキによって出版された2月の会議の記録を引用しているが、膨大な巻末注、184ページの111番の中で、それは引用された約12の情報源のうちの1つにすぎない。何らかの理由で、彼は明らかにこの会議が特別なコメントに値するとは思わなかったのだ）。

　不誠実で誤解を招くような第一次世界大戦の回想録という競争の激しい分野では、サゾーノフの「運命の年」におけるこの重要な一節は、リストのトップ近くにランクされなければなるまい。

サゾーノフは、1914 年 2 月の会議が 1 回限りのものであったと主張することで、海峡を占領するロシアの計画は、リーマンミッションという形でのドイツからの挑発に対応してのみ開始されたことを巧妙にほのめかしている。

「トルコの間近い崩壊の恐るべき兆候」、これを「ドイツは予見しており、ロシアを利用して、自国の安全を守るためにいつでも頼らなければならない可能性のある手段を検討する用意ができていた.」とサゾーノフは書いている。64
64. Sazonov, Fateful Years, pp. 126-127。ロシアの弱さに関するサゾーノフの発言に誤解された歴史家の顕著な例はGeyerであり、彼はロシア帝国主義の中で「近東における『歴史的使命』を達成するためにロシア政府の準備がいかに不十分だったかを強調している。「近東における『歴史的使命』を遂行する上で、ロシア政府の準備がいかに不十分だったか。オスマン帝国の内政に影響を与えるという点において、ロシアの弱さが最も明らかだった場所はない……サンクトペテルブルクには戦争を回避する十分な理由がまだあった。」

ロシアはフランスに財政的に依存していたため、「近東ではロシアが望む最善の策は、同盟国であるフランスの後ろに力なくついて行くことだった」とGeyerは主張する。このことは、ロシアの銀行シンジケートには当てはまったかもしれないが、 Geyerが近東政策におけるロシアの仲介をなくさせたことは、1914年までにフランスの政策とはまったく関係なくオスマン帝国征服の計画に熱心に取り組んでいた帝政ロシアの提督や将軍たちを驚かせたはずだ。

実際、サゾーノフ自身がわずか 2 か月前に極秘の電報で皇帝ニコライ 2 世に知らせていたように、コンスタンティノープルを武力で占領するというロシアの本格的な作戦計画は、1895 年から 1896 年にまでさかのぼる。アルメニア蜂起とその後の大虐殺の最初の大きな波への希望的反応に対して、ロシアが追い払われた時である。65
65. 実際、ボスポラス海峡占領計画の議論は 1885 年に遡り、当時の背景には、英国との「グレートゲーム」戦争の恐怖であった。しかし、最初の本格的な技術研究は 1890 年代半ばからやっと開始されたのだった。この意味では、サゾーノフは正しかったのである。

サゾーノフはツァーリに、軍艦と商船の形でのロシアの水陸両用輸送能力は十分ではない、と残念ながらに、伝えた.66

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その後18 年が経過しても、いまだに十分とは言えなかったのだが、（ロシアは）努力を怠っていたわけではなかった。1914 年 2 月の会議は、サゾーノフにとっては直接参加した最初の会議だったかもしれないが、海軍と参謀本部の将校にとっては、合同の海峡占領計画会議はありふれたものであった。

ちょうど 6 か月前、海軍参謀は、黒海艦隊が 127,500 人の兵士 (3,500 人の将校を含む)、44,000 頭の馬、288 門の銃、および 11,200 台の馬車をオデッサからコンスタンティノープルまで輸送するのに十分な輸送船を提供できると陸軍に約束していた。この偉業を達成するために、彼らはロシアの商船から 115 隻の民間船を迅速に徴用することによって、既存の艦隊に追加した。すべての黒海港の役人は、すでに海軍の指揮下にあった。確かに、すべての兵士と軍需物資がオスマン帝国の首都に到着するには 60 日かかりますが、最初の「梯団」は 1 つの軍団 (30,000 から 50,000 人) よりも少し多く、完全な師団の砲兵構成要素を含み、気象条件が許せば、15日目までに上陸することができた。67

1914 年 2 月までに、ロシアの最初の水陸両用上陸部隊がボスポラス海峡に上陸する日である「ゼロアワー」は、M + 10 （1904年）に加速されていた。68

コンスタンティノープルと海峡を占拠する計画は、おそらく第一次世界大戦前の過去 10 年間には、ロシア海軍参謀 (陸軍参謀ではなく) の最大の作戦上の優先事項であったが、サゾーノフの回想録での抵抗とは反対に、明らかに、「防衛」作戦ではなかった。69。
69. Airapetovは、『Sud'ba Bosforskoi ekspeditsii』(pp. 174-175) の中で、ダニーロフとジリンスキーは欧州軍戦線への影響を懸念してボスポラス海峡攻撃に反対し続けたと述べている。しかしAirapetovは、海軍参謀長グリゴレヴィチと同様に、ツァーリがサゾーノフと同意見であったことを認めている。

1914 年 2 月のロシアの意図は「平和的」だったというサゾーノフの主張は、ロシアがまだ戦争を行う準備ができていなかっためのもので、これは大きな遠吠えでもあった。ロシアの海軍大臣、グリゴレヴィチは、リマン事件における戦争の恐怖が頂点に達した1914 年 1 月 2 日に、サゾーノフに個人的な保証をした。それは、外務大臣が、「艦隊は戦時作戦の準備ができている」というツァーリへの自身の覚書で、戦争に行くという考えを最初に発議するわずか 4 日前であった。70.

しかも、翌月の会議は戦争計画会議だった。1914 年 2 月 8/21 日にロシアのトップ外交官、将軍、および海軍大将によって取り上げられた問題 - 陛下ニコライ 2 世の命令により、サゾーノフ自身の議長の下で招集された会議71 - は、元の写しによると、「近い将来、海峡問題が開かれる可能性が非常に高い」ということだった。

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理念的には、海峡「問題」は、ヨーロッパ全体の戦争とは無縁として回答されるべきであっただろう。しかしこの質問は、疑問の余地なく、すぐに回答させられることとなっただろう。つまり、戦争という回答である。。すべてのシナリオで与えられたものは以下であった。すなわち、ロシアの「敵」は、「何よりもまず、トルコ」だったのだ。

このため、海軍および陸軍参謀本部の最優先事項は、トルコに対する動員スケジュールを加速することであった。つまり、黒海沿岸で利用可能な水陸両用部隊を少なくとも 3 個軍団まで拡大することである。さらに、オデッサ地区での砲兵訓練の強化。M + 10からM + 5への最初の水陸両用「エシェロン」の着陸の加速。黒海艦隊への弩級戦艦の建造または突然の輸入。そしてコーカサス鉄道の延長線は、カルスとサリカミを経由して、トルコ国境のオルトゥまで伸びている。

サゾーノフと陸・海・空軍参謀長は、危機がロシアにコンスタンティノープルの占領を「強いる」までには「まだ何年もかかるだろう」という考えとは別に、彼らは、今直ちにのトルコとの戦争の準備を進めていた.72

　1914 年 2 月 8/21 日の戦争計画会議には、重要な観察事項がいくつかある。1つ目は、7月の危機前のロシア帝国の主要な文民および軍当局者の最後の計画会議で、セルビアについては言及されておらず、ドイツとオーストリア・ハンガリーに対する動員スケジュールへの言及だけしかなったことである。その日の戦略的問題は明確で明白であった。すなわち、コンスタンティノープルと海峡について、である。

2 つ目は、1913 年 10 月のロシア陸軍大計画と 1914 年 3 月の (まもなく発表される) 海軍計画についてのあらゆる感情と叫びにもかかわらず、どちらも早くても 1917 年までには完成しないということである。ロシアの指導者たちは、戦争前にこんなに長く待つことなど、あり得ななかったことだろう。確かに、建設中のロシアの 3 つの黒海弩級戦艦 (皇后キャサリン 2 世号、皇帝アレクサンドル 3 世号、皇后マリア号) のいずれもが、数年間は準備ができていなかったであろう。

しかし、黒海でこれらの近代的な軍艦の建造を完了する必要があること(および 4 隻目の皇帝ニコラス 1 世と 2 隻の軽巡洋艦の就役)が明白であることとは別に、2 月の会議で解決された 6 つの点のうち 5 つは、即時の短期的な動員措置に関するものであり、そして、６つの点すべては、オスマン帝国に関連していたのである。73。
73. 1914 年 2 月の計画会議を調査したほとんどの歴史家 (またはロシアの情報源を使用せずに海峡問題を分析したGeoffrey Millerのような歴史家) が、ロシアの意図の性質についてまったく異なる結論に達していることは注目に値する。

例えば、Alan Bodgerは"Russia and the End of the Ottoman Empire" (P. 95)の中で、「会議の雰囲気は完全に防御的だった」と書いているが、この主張の根拠として、サゾノフの全く信頼性の低い回想録を引用している。

Ronald Bobroffは、Alan Bodgerとは異なり、会議の記録の原本を閲覧しており、人員と砲兵の両方による水陸両用部隊の規模の拡大、黒海弩級戦艦の建設の加速、コーカサス鉄道の延長、などの措置がとられたことを指摘している。それでも、Ronald BobroffはAlan Bodgerと同様、2月の会議で概説された目標が長期的なシナリオ、つまりロシアの黒海弩級戦艦の準備が整うまで戦争を延期するというシナリオだけを想定したものだと確信している。 (Lievenも、『Russia and the Origins of the First World War』の107-109 ページで、一般論としてこの方針に同意しているが、2 月の計画会議についてはあまり言及していない。)

それが達成されるまで、ロシアは「大陸戦争を避け」、その間に「黒海の海軍力がトルコに有利になりすぎることを阻止しなければならない」とRonald Bobroffは書いている。

こうした分析は、これまでのところは合理的ではある。しかし、会議が当初招集された際の重要な危機ののっけからの問題、すなわち「近い将来に、おそらく海峡の問題が提出される」ことに留意することを怠ったことで、Ronald Bobroffはその切迫感を察知できなかった。また彼は、長期にわたる弩級建設の建設措置（これは決して新しいものではなかった）と、トルコに対する即時かつ短期の５つの動員措置（これらは新しいものであった）とを対比させていない。また、ボスポラス海峡に部隊が上陸する時間である「ゼロアワー」を M+10 から M+5 に短縮するという重要な点にも気づいていない。

　Airapetov（Sud'ba Bosforskoi ekspeditsii」での研究がこれまでで最も徹底的であり、会議の雰囲気をよりよく理解できる）は、水陸両用攻撃案に対するダニーロフとジリンスキーの反対（訳注；彼らはヨーロッパ戦線との関連を重視した）を指摘したが、最終的にはグリゴレヴィチ、サゾーノフ、ギールス、そしてツァーリに彼らが数で圧倒され、投票で負けた、と述べた。

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＜英露協商の危うさ＞
　なぜ急いでいたのか？ドイツからの挑発についてのサゾーノフの巧妙なほのめかしとは反対に、1914年2月の会議の背後にある本当の原動力はトルコから来た。

何年もの間、ロシアの参謀将校らは、オスマン帝国の海軍の発展を観察していた。1908年に発足し、手ごわいアーサー・リンパス提督が率いるトルコへの英国海軍ミッションは、リマンのドイツ陸軍ミッションと同じくらいロシアの感性に攻撃的であり、間違いなくかなり危険であった。早くも 1911 年に、ロシアの海軍武官は、英国の教官らがマルマラ海に到着するとすぐに、英国の弩級戦艦に搭乗するための「スケルトンクルー」が英国の教官によって訓練されていると報告していた。

ロシア語に翻訳され、外務省に送られたオスマン海軍の訓練マニュアルの 1 つは、憂慮すべきレベルの洗練度を示しており、トルコっぽい下士官は、競争力のあるチームスポーツをすることで、身体の熱狂を磨くよう奨励されていた（トルコ人は、ワーテルローが「イートンの競技場で」勝ったというウェリントンの言葉を心に留めていたようである）。全員が英語を学び、イギリスで少なくとも 2 ～ 3 年過ごすことを要求された。74

この種のことは大した問題ではなかったかもしれないが、2 つの重要な事実があった。１つは、1914 年 1 月までに、トルコが5 隻以上の弩級戦艦を注文していたこと。これら 5 隻の輸入弩級戦艦のうち 3 隻が発注済みであった。これら 5 隻のうち 3 隻はイギリスで建造された。レシャド V 号とリオデジャネイロ号はもともとブラジルと契約していたのだが、後者はすぐにスルタンオスマン一世号と改名された。そして、アルミラント・ラトーレ号は、もともとチリと契約していた。さらに 2 隻が米国で建設中であり (リヴァディア号とモレノ号、最初はアルゼンチンと契約)、トルコはこれらの上に別の 1 基をホッパーに搭載していると噂されていた。

2つ目には、1878 年のベルリン条約の条項により、イズヴォルスキーが 1908 年の不運な外交交渉の際にエーレンタールに思い出させたように、ロシアは海峡を介して軍艦を送ることを許可されず、平時であっても、黒海へと弩級戦艦を移入することはできなかったことである（訳注；1841年7月13日、イギリス、オーストリア、ロシア、プロイセン、フランス、トルコの間に結ばれたロンドン条約で、ダーダネルス、ボスポラス両海峡において、平時の外国軍艦の通過を禁止されていた）。

ロシアが建造した最初の黒海弩級戦艦、エンプレスマリア号の可能な限り早い進水は 1915 年末であった (非常に楽観的なシナリオ)。この時までに、グリゴレーヴィチは 1914 年 1 月 17 日の極秘の秘密メモでサゾーノフに警告した。トルコはこの時までに「弩級戦列艦の 4 隻ではないにしても、少なくとも 3 隻」を進水させていることだろうと。さらに、トルコの 3 隻の最新鋭の英国船はすべて 13 インチ半の砲を搭載していたため、スルタンオスマン一世号は、これまでのどの船よりも多くの砲を搭載していた。これは、トルコの弩級戦艦がより大きな砲弾を遠くに発射するだけでなく、より速く発射できることを意味していた。

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ここに、グリゴレヴィチが 1914 年 1 月 19 日にサゾーノフに書いたような、本当の「『東方問題』の危機」があった。レシャド 5 世号またはスルタンオスマン一世号がダーダネルス海峡を通過するや否や、「トルコ人は議論の余地なく黒海を支配しただろう」75

　もしもドイツが 1914 年に、ロシア軍の偉大な計画を先取りする機会の狭い窓を持っていたとしても、ロシア自身の窓はさらに狭かった。オスマン帝国の最初の英国製弩級戦艦の納入は、数週間以内に予定されていた。スルタンオスマン一世号は、実際にはすでに進水していた。すなわち、そのトルコへの派遣は、英国企業であるビッカースとArmstrong Whitworthによって建設されていたコンスタンティノープルの適切なドッキング施設の間近な完成を待っていた。.76

トルコの海軍拡張の推進力をペテルスブルクにとってさらに恐ろしいものにしたのは、コンスタンティノープルに物資を供給していた英国やアメリカの造船所だけではなく、コンスタンティノープルに供給していたのは、港を近代化していた英国企業だけではなく、港を近代化していた英国企業だけでもなかった。

1914 年に 3 隻の巡洋艦がイタリアの造船所に発注された。2隻の潜水艦がドイツから注文された。フランスのノーマン社でさえ、トルコのために 6 台の掃海艇を製造していた.77

ロシアの大きな戦略的傷に塩をこすりつけるかのように、1914 年 4 月 29 日に、Le Matin 紙は、アームストロング社が新たに 4 番目のトルコ弩級戦艦を契約したことを、注意深くアナウンスした。成長を続けるオスマン帝国海軍を飾るこの最新かつ史上最高の英国戦艦は、あたかもロシアのキリスト教徒の心に、メフメト2世（訳注；オスマン帝国のスルタン（在位１４５１～１４８１）で、コンスタンチノープルを征服してビザンツ帝国を滅ぼし、領土をバルカン半島、黒海北岸などに広げて「征服王（ファティーフ）」と言われた）の恐怖を与えるかのようなスタイルをしていたことだろう。７８

With friends like these, why did Russia need enemies?

　トルコと契約したイギリスの弩級戦艦の物語は、（その間にも、英国海軍ミッションはオスマン帝国海軍を近代化し、英国企業はコンスタンティノープルの海軍港施設をアップグレードしていた）ロンドンとペテルスブルクの間の戦略的「同盟」の鎖がいかに不安定であったかを、他に類を見ないほど示している。それはあたかも冷戦中、密接なアメリカの同盟国（例えば英国）が核兵器をソ連に売却し、ソ連の技術者に、核兵器を配備してターゲットにする最善の方法を示すためにアドバイザーチームを派遣することを決定したかのようであった。

ロシアの外交官たちがどのように抗議すればよいのかよくわからなかった極悪非道なアルビオン（英国）からの近年の侮辱は、限界を超えた。

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ニコライ 2 世が 1914 年 4 月 5 日にトルコを対象としたロシアの海軍拡大計画を批准する少し前に、ツァーリとサゾーノフは英国大使のジョージブキャナン卿と海軍の問題について話し合っていたが、それは社交辞令でのみであった。

トルコの海軍力の増大に対する自分たちの懸念をカモフラージュしようとするかのように、ツァーリと外務大臣サゾーノフの両者は、ロシア海峡へのアクセスに対するドイツ人の脅威を強調し、各々は情報源を特定せずに「秘密の軍事情報」を引用した。79

トルコの弩級戦艦に対する恐怖についてロシア人が好んで差し出したことへの唯一の手がかりは、グリゴレビッチによってブキャナンに提出されたリクエストであり、海軍大臣（グリゴレビッチ）は、もともとチリと契約していたアームストロング級弩級戦艦のうち 2 隻をロシアが購入することを許可することを求めた。

ブキャナンは 1914 年 4 月 16 日にこの要求を、はっきりとサーアーサーニコルソンに報告したが、問題の軍艦が実際にトルコと契約していることを知らなかったので、明らかな無知であった。英国大使は何かが進行中であることを知っていたが、グリゴレビッチの前例のない措置（彼はロンドンに「ロシアが戦艦を海外に発注するのはまったく新しい出発だ」と伝えた）の本当の根拠については何も知らなかった。

ロシア側が故意に誤った情報を伝えたのか、点と点をつなぐことができなかったのかはわからないが、ブキャナンは、ロシアの弩級戦艦の要求は「ロシアが国際情勢について真剣に考えていることを示している」と結論付けただけであった.80

　1914 年 5 月になってやっと、メフメト2世号に関するル・マタン紙の見事な見出しに続いて、サゾーノフはついに勇気を振り絞って、ロンドン駐在大使であるアレクサンダー・ベンケンドルフ伯爵に、イギリス政府に対し、なぜ彼らがロシアの戦略的地位全体を破壊することに熱心であるように見えるのかを尋ねるように指示するために神経を働かせた。驚くべきことに、サゾーノフは 1914 年 5 月 8 日付けのこの最初の正式な抗議で、弩級戦艦についてさえ言及しなかった。彼は不満をリンパス提督の任務に限定し、ベンケンドルフが（非常に丁寧に）英国外務長官のエドワード・グレイ卿に、何らかの将来の英露ロシア海軍協定の一部として思い出すよう説得することを望んだ。それでもサゾーノフは、リベラル派が独裁的なロシアを受け入れているというイギリスでの世間の疑惑に目を向けて主張したことはなく、ベンケンドルフは「合意」（soglashenie）というデリケートな言葉を使うことさえ許されていなかった。この 2 週間後までに、ベンケンドルフは最終的にグレイに、アームストロング級弩級戦艦の問題を打ち明け、海峡を介して弩級戦艦を移入することができない、ロシアの困難な戦略的位置を説明した。この時までに、ロシアは別のイギリスの会社 P. S. White が同じくトルコ向けに 1,500 トンの掃海艇を 2 隻建造する契約を結んだことを知っていた。ベンケンドルフの困難をさらに悪化させたのは、海軍本部の長官であるウィンストン・チャーチルが 5 月の大半を町から離れていたという事実であった。最後に、1914 年 6 月 12 日、グレイはチャーチルの返答を伝えた。予想通り、グレイとチャーチルは、英国政府が民間のビジネス契約に合法的に干渉することはできないと主張し、問題から手をひいた。81

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　ロシアは 1914 年 6 月のイギリスからのblow offにより最悪の事態に見舞われた。オスマン帝国の弩級戦艦の建造が進むだけでなく、リンパス提督自身がスルタンオスマン一世号をトルコへと護衛するために、7 月下旬にイギリスを訪れることとなった82。

一方、ベンケンドルフ、グレイ、チャーチル間の（実際にはまったく実を結ばなかった）交渉は、サラエボでフラン・フェディナンド大公が殺害される 2 日前の 6 月 26 日に、ベンケンドルフが不吉な派遣でサゾーノフに警告したように、ほとんど架空の英露海軍条約についてドイツ人に厳戒態勢をとらせた。

ベンケンドルフとグレイは、ロンドン駐在のドイツ大使であるリヒノフスキー候に辛抱強く説明したが、直近の交渉は、実際には英露間の海軍協定とはほとんど関係がなく、ましてや共同演習などほとんどない、ドイツの有力な新聞社主らはまさにこのように結論づけ、再び戦争の道を歩んでいった。83

　フリッツ・フィッシャーの本の 1 つに興味深い一節があり、その中で著者は「新しい海軍協定に向けた英露交渉の結果生じた『緊張した英独関係』」の（悪化の）重要性を軽視している。

フィッシャーが、「[英露] 海軍協定に関する交渉は、1914 年 6 月時点で、親ドイツ派の作家らが主張するほどには進んでいなかった」と指摘するのは正しい。それにもかかわらず、フィッシャーがここでドイツに対するイギリス海軍の脅威を強調しているのは、奇妙である。

ロシアは、自国の提督がバルト海で英国との海軍作戦を調整することに成功した（あるいは成功しなかったとしても）場合に限って、受動的で実体のないアクターとして、重要な役割を果たしていたにすぎない。.84

フィッシャーは、1914 年にドイツがロシアの実際の外交政策の懸念について無知だったのと同じくらい無知である。ロンドンとの海軍交渉におけるロシアの外交官の主な優先事項は、バルト海での行動を調整することではなく、むしろイギリスによるオスマン海軍の近代化によって引き起こされる近東におけるロシアの地位への脅威を食い止めることであったのだ。

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　ドイツの指導者たちが、ロシアの黒海艦隊を時代遅れにし、「海峡の窓」を永久に閉鎖しようとしていたトルコの弩級戦艦についてロシア人がどれほど心配しているかを知っていたら、彼らは当時のヒステリー的な報道を笑い飛ばしたかもしれない。（ドイツの指導者はロシアの心配性を知らなかったから、ロシアの恐ろしさを殊更に強調するヒステリー的報道を信じた）。

Bethmann Hollweg は、当時、1914 年 7 月の「ロシアの勢力拡大」についてそれほど偏執的ではなかったかもしれない。しかし、どうして彼はこれを知ることができたであろうか？（知る由もなかった）

イギリスでさえ、ロシアの方が本当に恐れていることを知らなかった。 1914 年 6 月 12 日、グレイはベンケンドルフに対し、奇妙に見えたところで、ロンドンはトルコ海軍がギリシア海軍よりも強力になることを望んでいないことを明確にして、安心させた。 85

ベンケンドルフが何週間にもわたって（ためらうように、非常に繊細に）これを強調していたにもかかわらず、ロシアがオスマン艦隊の成長をまっとうに恐れているということにグレイが考えもしなかったとしたら、リヒノフスキーまたはベートマン・ホルウェグは、ロシアの懸念を、彼ら自身、どのように考えたであろうか？

外交官、武官、諜報員、スパイは、敵対勢力の兵器、鉄道、船、動員スケジュールに関する膨大な量のデータを集めることができるが、人間の心の中をのぞき見ることはできない。

トルコの海軍力の成長に対するロシアの恐れ（それはドイツの利益に奉仕すると考えられていた）は、ロシアの力の成長に対するドイツの恐れ以上に合理的であったが、不合理でもあった。しかし、ロシアの（トルコに対する）恐怖は、ヨーロッパの脆弱な平和に対して、より脅威だったのかもしれない。なぜなら、彼らは自分たち以外の誰も見えなかったから。86

　政策立案者が敵と友人の両方に恨みを抱く国家は危険な動物であり、機会を捉えての恐怖や気まぐれを急襲する準備を整えているのである。

1914 年のロシアは失うものが多かったが、その年の 6 月か 7 月までに、行動を起こさなかった場合のリスクは、少なくとも行動を起こした場合と同じか、おそらくそれよりも大きかったと思われる。

言い換えれば、ロシアは、その国の統治者が、敵対的な国際環境でのその不安定な立場を改善するために、戦争をすることにしり込みしない国だったのである。

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