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私たちと戦っているオーストリア軍は、私たちが戦争ゲームで戦ったものよりも弱いようです。
-ニコライ・ヤヌシュケヴィチ将軍、1914年8月

CARL VON CLAUSEWITZ が、敵との最初の接触から生き残る戦闘計画はないと言ったのは正しかった。

しかし、最初の計画が国家の戦争の目的について多くのことを教えてくれることも同様に真実であり、これらは、戦闘計画にある突発的な出来事（クラウゼヴィッツが「摩擦」と呼んだ、予期せぬ障害の積み重ね、幸不幸のアクシデント、予想外の敵の策略の積み重ねによって、最高の者さえも圧倒するもの）によって大幅に変更される。

他の手がかりは、最初の主要な攻勢の戦略的目標、それらが成功するかどうか、および部隊の規模とそれらに割り当てられたリソースの数に見られる場合であろう。また、政府が同盟国や中立国との秘密の通信を調査することで、政府が念頭に置いている隠された目標を解読することもできる。逆説的に言えば、紛争の初期段階に特徴的な、しばしば妄想的な心の状態において、私たちは交戦国の真の目的を探さなければならない。理想的な戦争ゲームのシナリオにおいてのみ、クラウゼヴィッツが国の真の戦争目的と呼んだであろうものを描くことができる。

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　1914 年のロシアの戦争目的の場合、最初に戻ることは特に重要である。なぜなら、彼らは（ロシア）有名なタンネンベルクの戦いでのドイツの勝利によって徹底的に抑圧させられたからである。

第一次世界大戦に関する私たちの外交的理解の基本的なテンプレートは、最初の月のドイツの勝利（1914年8月のタンネンベルクの戦い）から直接生まれた。ドイツの拡張主義者らは、悪名高い「9月計画」※に示されているように、東部と西部の両方の戦線を目指していた。
※ドイツ政府が検討する政策のひとつとして、ポーランドの領土を併合してドイツ人を移住させ、東方への防壁とすることが提案されていた。まさに日本が満州に行ったことと同じである。

これらの戦いがもしも逆の方向に進んでいたら、つまりロシアが東プロイセンのヴィスワ川下流域に到達し（ドイツ第8軍司令官マクシミリアン・イアン・フォン・プリットヴィッツ将軍が弱気になって（訳注；プリットヴィッツは、グンビンネンでの敗退とロシア第2軍の南からの前進を見てヴィスワ川まで撤退し、東プロイセンを完全に見捨ててロシアに明け渡そうとした）解任される前に、ロシア軍がやろうとしていることを予測していたことは有名である）、ドイツの右翼がベルギーで足止めされていたとしても、あるいは、フランス軍がアルザス -ロレーヌの奥深くに突っ込んでいた場合、またはドイツの中央部が辺境の戦いで圧倒されていた場合、歴史家らは当時も今でも、、ベートマンホルヴェークと 9 月計画についてではなく、1914 年のフランスとロシアの拡張主義の目標について議論していただろう。（訳注；要は判官びいき、ということ）

戦争の最初の月（8月）のドイツの勝利が必然であったと仮定することは、最悪の種類の後知恵なのである（ドイツは本当はそんなに強いはずがなかったのだ）。それは、フランス最高司令部で当初よく知られていた国民的楽観主義（それは、ロシアのスタフカ(訳注；ロシア帝国末およびソビエト連邦における軍総司令部)のすべての将軍ではないが、一部の将軍によっても共有されていた）とそれに相応したモルトケのこれまた有名な悲観主義によった、誤った仮定である。だが事実は以下のようであった。すなわち、ドイツ軍は全軍、数で劣り、武器が多くなかった、だが評判においては恐るべきものであった。ただ。巨大なロシア軍は言うまでもなく、フランスよりも大隊数が少なく、劣勢であるとされるロシアよりも少ない大砲しか配備していなかった(6,004 対 6,700) 。2

　したがって、ロシアの将軍たちが1914 年 7 月に、ロシアは勝てるだろう、とツァーリに保証したことは、許容されてしかるべきだったろう。 1914 年の戦闘ブロックを、後のロシアの祖国大戦争における連合と比較すれば、サゾーノフは間違いなく、おそらくは18世紀以来のロシア最高の戦争シナリオで、敵の連合を見事にアレンジしていた。（1812年にロシアが勢力の頂点に達したナポレオン時代のフランスにプロイセンとオーストリアとの連合で対峙した時や、1853年にロシアがオスマントルコ、イギリス、フランスと対戦し、オーストリアも敵対的であった時と比較して）。

1914年の協商国と中央同盟国の戦略的ポテンシャルを比較するとかなりの差異があった。協商国の経済生産高は、中央同盟国の経済生産高を大幅に上回り、そしてかなりの程度で、ロンドンと（後に）ニューヨークの債券市場において、協商国が戦争信用への優れたアクセスを提供していた点でも大幅に上回っていた。3

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確かに、ロシアの指導者たちは、他の国々と同じように、1914 年に短期間の戦争が起こると予想していたが、以上のことがらが、彼らに楽観的な理由を与えていた。不可避であった英国の封鎖の緊張の下で、ドイツが数ヶ月以上持ちこたえられるとは思われなかった（c.f.p73)。.4

その間、ドイツの軍事力の矢面に立たされたのはロシアではなくフランスであり、ロシアは、オーストリアまたはドイツとの取引を、彼らが選んだ順序で事実上自由に行うことができていた。

　第一次世界大戦の理解を曇らせるあらゆる神話の中で、最も難解なものは、×ロシアが「フランスのためにその剣を振った」という考えであることに間違いはあるまい。多くの戦争の神話と同様に、タンネンベルクの暗い伝説と、それが指し示しているように見える1917 年のロシアの悲劇の中で生まれた、この使い古されたお決まり文句は、1914 年のロシアの戦争目的を理解すれば、もはや最終的には、終わらせなければならない。５
5. 伝説を生んだこの発言は、タンネンベルクの後にニコラ大公がフランス陸軍武官ラギーシュ将軍に対して発したとされている。

重要なのは、ウィンストン・チャーチルが『知られざる戦争』で「剣に落ちる」物語のエレガントなバージョンを提供したことである（p. 143）。そこでいつものように盛大に宣言し、「[西側で武力衝突が始まったのと]同時に、可能な限り最大の力で[ドイツに]侵攻するために、ロシア皇帝とその将軍たちが行った熱烈な忠実な努力は、歴史が認めることになるだろう」と述べた。

　ロシアの戦後の悲劇の後では、マルヌ川での連合軍の勝利に対するロシアの貢献（実際には最小限でしかなかった）に対する回顧的な感謝のムードがあまりにも圧倒的だったため、チャーチルのような作家はロシアの行動を全く説明できなかった。

もしロシアが西部戦線の圧力を軽減したいと本当に望んでいたならば、（実際にしたように）はるかに弱いオーストリア＝ハンガリー軍に対して2倍の兵力を送るのではなく、ドイツ軍に対して大部分の兵力を東プロイセンに送っていたことだろう（訳注；ロシア自身の攻撃計画はオーストリアに重点を置いたものであった）。

　Norman Stone's Eastern Front 1914-1917 (1975)でさえ、チャーチルの説明よりもはるかに深い研究に基づいているが、基本的なシナリオは（これまで通りの）所与条件で想定されている。

ストーンの重要な議論の一つは、1914年にロシアが戦争への「準備」をしていなかったと言われているのは「根本的には不運な話」、つまりそれが終わった後に見出されるタンネンベルクの（敗北の）言い訳だったということである。この誤った仮定は、1975 年までに第一次世界大戦に対する一般の理解の枠組みに深く根付いていたため、ストーンはそれがどこから来たのかをわざわざ説明しようとしなかった。

　より最近の研究により、たとえば、Hew Strachanの見事な傑作The First World Warで見るように、1914 年のスタフカにおける戦略的思考について、より微妙で豊かな理解がもたらされるようになった。

例えばHew Strachanは(p.308)、ロシアにとってフランスとの同盟の本当の意味は「（ロシアにとって必須の）オーストリア戦線に攻撃的選択肢を与える能力」であり、それについてフランスは「（それを）間違いなく懸念していた」と述べている。Hew Strachanはさらに、レドル大佐からの啓示もあり、ロシアはオーストリア人を「打ち負かせられる」と見ていた、と述べている。

しかし興味深いのは、ロシアの戦前の計画に関するBruce Menning and William Fullerの最近の研究の多くを組み込んだ彼の最新の参考文献（2001年頃）であっても、Hew Strachanは、戦争が始まって実際の戦闘の経過となると、依然としてチャーチルとストーンに頼らなければならない。see Strachan, The First World War, P. 316, fn. 69

ロシアの東プロイセン侵攻によって引き起こされた最初のパニックで、モルトケが西部戦線から 2 個軍団を撤退させたのは事実であるが、戦略的にはこれによりドイツの主な戦線の集中のバランスが、西部戦線において、ほぼ 10 対 1 から7 または 8 対 1 にまで減少した。

シュリーフェンプランの要点は、ロシアが動員をする前にフランスをノックアウトし、東プロイセンには形だけの部隊を残すことだった。アルフレッド・フォン・シュリーフェン伯爵のオリジナル設計の重要な右翼は、1914 年 8 月の攻勢の前と最中にモルトケによって微妙に弱体化はされたが、シュリーフェンプランはロシア軍への最大の贈り物となっていた。

基本的な事実はよく知られているが、より詳しく見てみよう。1914 年 8 月のフランスとベルギー（全7軍、150万人以上）に、ドイツ軍が 70 個師団以上を投じたときでさえ、総勢150万人以上のロシア軍は、動員の30日目までに東部戦線で98個の歩兵師団と37個の騎兵師団を行使し、200万人を超える部隊が、(オーストリア・ハンガリーの恐ろしくもない軍隊を加えて)たかだか1個のドイツ騎兵と11個のドイツ歩兵師団（それらは「[ドイツの]多くの]総力の約10分の1）」に直面していた。.

1913年2月に、モルトケがオーストリア人カウンターパートであるフランツ・コンラート・フォン・ホッツェンドルフ伯爵に警告したように、「ヨーロッパ戦争全体の重心、ひいてはオーストリアの運命は、ブク川ではなく、間違いなくセーヌ川で決まるだろう」6

もちろん、このように物事を整理したのはドイツ人であった。それでも、1914 年 8 月の戦略的状況を最もよく表している比喩は、明らかに○フランスがロシアのために剣を振るものであり、その逆ではない。（訳注；シュリーフェンプランの構造がそもそもこういう結果を生み出した）

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　これは偶然ではなかった。仏露同盟の初期の頃から、パリとペテルブルグの両方で、フランスがドイツに対する重労働の大部分を果たさなければならないとの期待があった。1892年に調印された最初で最終の軍事会議は、フランス軍がドイツに対して130万人を動員することを想定していた。ロシアでは、人口ベースがはるかに多いにもかかわらず、700,000 人または 8oo,ooo人しか貢献していない。

（露仏同盟の1892年の軍事）協定の署名者であるロシアの N. N. オブルチェフ将軍は、ヨーロッパの戦争がどのように始まるかが明確ではなかったため、オーストリアまたはドイツに対してロシアがその力の大部分を展開するための「絶対的な行動の自由」を保持することを皇帝アレクサンドル 3 世（ニコライ２世の前の皇帝）に主張した。 ( 条約は、フランスに対するドイツの攻撃の場合をカバーしたが、ウィーンがベルリンによって支持された場合、ロシアに対するオーストリアの動きの場合もカバーしていた)。

ジョージ・ケナンは、この主題に関する古典的研究の中で、「フランスとロシアの軍事協定の最終文書」は、「その大部分がロシアの手による、いくつかの奇妙で気がかりな特徴を持っていた。・・・大規模なヨーロッパ戦争を爆発させる力は、いつでもロシアの目的に沿うようになっている」と、結論付けている。。7

　フランスはその間の数年間、財政的、政治的、外交的に寛大な勧誘を行っていたが、ロシアに対して、彼ら（ロシア）の軍隊の大部分をドイツに対して集中させるよう説得することは決してなかった。

プラン19は、ロシア第4軍がワルシャワの鉄道ハブを経由して、北は東プロイセンに対して（バリアント「G」またはゲルマニア）、南はオーストリア領ガリツィアに対して（バリアント「A」またはオーストリア）展開できるという一種のピボットオプションを提供したが」、ロシアの将軍は、デフォルトまたは「自動」展開である南部のオプションを支持して、このゲームを大幅に不正操作した（つまり、「A」の動員とは異なり、「G」の動員は「特別にオーダー」する必要がある）。

ドイツが最初にロシアを攻撃することを選択したという非常にありそうもない出来事（-パリでもペテルスブルクでも、ほとんど誰も真剣に楽しまなかったシナリオ-）においてのみ、動員プラン9 の北部版が発効したことだろう。8
8. ダニーロフの後の回想によれば、ロシア軍参謀本部は1914年以前には少なくとも「ドイツ東部の選択肢の可能性に関心は持っていた」。それでも、これは真剣な作戦計画というよりも、考えられるすべてのシナリオをカバーするという程度の問題であったようだ。ロシア自身の攻撃計画はオーストリアに重点を置いたものであったため、そうした計画をやめるにはドイツの戦略ドクトリンの真に衝撃的な逆転が必要だったであろう。On all this see Fuller, Strategy and Power, pp. 441-443; Menning, Bayonets before Bullets, pp. 242-248; and Strachan, First World War, p.309 and passim.

スタフカが北西戦線よりも南西戦線を優遇した理由は、フランスの利益に損害を与えたのと同じくらい明白である。すなわち、ロシアは東プロイセンでの領土的軍事的野心を持っておらず、まっとうな戦いでドイツ人を打ち負かすことができるという合理的な期待もなかったのだ。

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対照的に、オーストリア領ガリツィアのロシアへの併合は、中央同盟国に対するロシアの軍事計画の最優先事項であり、（特にスタフカがレドル大佐によって売り渡されたオーストリアの動員計画を所有していたので）それほど困難なく達成されると予想された。

したがって、ロシアが 1914 年 8 月に利用可能な部隊の 3 分の 2 を南西部戦線に集中させたことは、誰にとっても驚くべきことではなかった。 (4 つの軍グループ、合わせて約 120 万人)。対照的に、ロシアは、第 1 軍と第 2 軍のみで構成されたこの規模のわずか半分の部隊で東プロイセンに侵攻した。

（1892年に）仏露軍事協定が最初に提案されてから 22 年後、ロシアはドイツに対向するために最初に提供した金額をほぼ正確に拠出した (ただし、1912 年から 1913 年にかけてロシアの将軍がフランスに約束したよりも 25 パーセント少ない金額であった)。およそ60万分部隊分である。これは、ヨーロッパの戦域で利用可能な戦力の 3 分の 1 にも満たず、ロシアの 4 分の 1 の規模の人口基盤から、フランスが共通の敵に対して戦場に投入していた軍隊の規模のわずかに 3 分の 1 を構成していた規模である９。
9　"At the staff conversations of 1912 and 1913," writes Fuller, 「ロシアは動員宣言後15日までに80万人でドイツを攻撃すると約束してフランスの歓心を買おうとした。」が、この約束が誠実であったかどうかに関係なく、1914 年 8 月には約束は果たされなかった。 Fuller, Strategy and Power in Russia, p. 439. See also Menning, Bayonets before Bullets, p. 245; and Stone, Eastern Front, p. 55•

　圧倒的なフランスと小さなベルギー (6 個師団のイギリスの小さな遠征歩兵部隊によってのみ強化された) がドイツの攻撃の矢面に立たされたにもかかわらず、ロシアがこうした攻撃を回避できたことは、仏露同盟におけるそれぞれの側の相対的な影響力について多くを語っている。

ロシアは基本的に東部戦線でやりたいことは何でもできたが、フランスはドイツに対して、ロシアが提供するどんな小さな援助も受け入れる義務があった。

開戦時にロシアは、ドイツ軍が侵攻する可能性さえ気にせず、ワルシャワの「ピボット」を利用して北方の東プロイセンに師団を多かれ少なかれ送ることができた。ロシアは急いでも、そうでなくとも、多そうすることができた。ロシアはまた、ワルシャワから西にそれらを展開することができた（フランスが望んでいたように）。ベルリンを直接のターゲットにして。つまりロシアの軍隊は、東プロイセンを全力で戦い抜くことができ、さもなければ、最初の深刻な抵抗に遭遇するとすぐにロシア国境に撤退することができた。

初期の戦いの混乱が落ち着いたら、ロシアは戦い続けるか、中央同盟国と別の和平を結ぶと脅迫する可能性があった。これらのいずれかが戦争を継続するかどうかの最終決定であり、ロシアはパリやロンドンとの巨大な交渉の影響力を享受した。

対照的に、フランスがロシアの同盟国に圧力をかけることができた唯一の方法は、大規模なドイツからの侵略に屈することであったが、もちろん、それはまったく選択肢とはなり得なかった。

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シュリーフェン・プランは、モルトケによって修正された極端ではないバージョンでさえ、すべての切り札をロシアの手に委ねていた。ロシアがそれらをどのように使用するかは、完全にダニーロフ、ヤヌシュケヴィッチ、スホムリーノフ、ニコラス大公に任されていた。

　バラノヴィチに設立されたロシアの本部であるスタフカの観点からすると、1914年8月の展開状況は、少なくともタンネンベルク（の敗戦）までは、現実と思うにはあまりに良すぎる状況だった。ドイツが東プロイセンを防衛するために残した象徴としてだけの部隊であるプリットヴィッツの第 8 軍は、予想通り小さく、攻撃を誘うように見えた。1914 年 8 月 1 日、ヤヌシュケヴィッチが北西戦線の指揮官であるジリンスキーに報告したように、最初の偵察で、ドイツ軍は東プロイセンに 4 つの歩兵軍団と、いくつかの予備師団しかないことが明らかになった.10.

これに対して、ドイツに直面している中途半端なロシア軍でさえ、十分な騎兵師団を含む9個の完全な軍団を展開した。それらの恐ろしい騎乗した「フン族」は、カイザーや他の妄想的なドイツ人を戦争前に夢中にさせた。歩兵師団で言えば、ロシアのアドバンテージは 29.5 対 11、騎兵では 10 対 1 であった。ロシアの各師団には 16 個大隊が含まれ、ドイツの対応する師団は 12 個であったため、ロシアの大隊の優位性はさらに大きく、約 48o 対 130 であった。砲兵では、内訳はさらに偏っていた: 5,800 門のロシア砲対774 門のドイツ砲である。.11"

こうした事実が明らかになりつつあったので、「ドイツのオオカミはすぐに追い払われることだろう。すべてはドイツに敵対しているのだから。」とスホムリーノフは1914 年 8 月 9 日の日記に書いた。12

　一方、コンラートはオーストリア・ハンガリー帝国の動員にひどく失敗したため、ロシアとの戦争の場合にガリツィア戦役の中心となるはずだったボーム・エルモリの第2軍の第4軍団は、8月末までにセルビアで行き詰まった。それはロシアにとっては喜びになった。ヤヌシュケヴィッチが 8 月 23 日、南西戦線の司令官であるニコライイワノフ将軍に、大規模な偵察により、「我々に対抗してきたオーストリア軍は、我々が戦ったものよりも弱い」ことがわかった、と喜んで報告したのも不思議ではない（本章冒頭参照）。13。

　オーストリアの動員の失敗の一部は、兵站の不手際によるものであった。列車はすべて「最大平行線図」(最悪の路線 (時速約 10 マイル) の最も遅い列車の最高速度) で移動するという、陸軍の鉄道コマンドによって採用された奇妙な原則により、最良の場合でも、シナリオ部隊は「まともな自転車よりも遅い速度で」前線に到達した。

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しかし、より根本的には、オーストリアの動員の有名な失敗は、コンラートの痛ましいジレンマの結果であった。.オーストリアの本当の戦略的目標はセルビアをノックアウトすることであったが、同盟国ドイツはオーストリアに、力をロシアに対して集中させることを望んでいた。.1914 年 8 月 16 日から 20 日にかけて激しい戦闘が繰り広げられていたセルビアで第 2 軍を交戦させておくというコンラートの要求は、ドイツの強い圧力の下で皇帝フランツヨーゼフによって却下された。オーストリア＝ハンガリー帝国の苦境に立たされた鉄道技術者にとって恐ろしいことに、第 2 軍のほとんど (すべてではない) が南方戦線で訓練を終えた後に、その大部分 (すべてではない) が、8 月 18 日、セルビア戦役の重要な段階にあったのに、段階的に北のガリツィアに向けて経路を変更した.14

　対照的に、フランスの将軍たちは、ロシア軍がベルリンに対して主攻撃をするよう懇願したが無駄だった。 その代わりに、ロシア軍はオーストリア戦線とドイツ戦線の間の顕著な危険を避けるために、ヴィスワ川西側のポーランド地域からの戦術的撤退を行ったが、この作戦は確かにパリの誰も喜ばなかった。

確かに、北西部戦線でのロシアの動員は、主にその有利なスタートにより、急速であり、予定よりも早かった。ジリンスキーは8月10日までに、第一軍と第二軍の両方が翌日までに戦闘準備が整うと報告した。それはロシアが（公式に宣言した）動員を開始してからわずか12日目であり、ロシアがフランスとの条約義務により東プロイセン侵攻を義務付けられるほぼ4日前だった（ただし、この発表は時期尚早であることがすぐに判明した）。15

しかし、北西戦線がオーストリア領ガリツィアよりもはるかに低い優先度しか与えられていなかったため、（この戦線における）ロシアの優位性は依然として以前よりもはるかに低かった。パベル・レネンカンプの第 1 軍と A. V. サムソノフの第 2 軍が別々に急速に東プロイセンに進軍し、前者はコヴノ近くのニーメン川から真西に向かい、後者は中央ポーランドから北西に向かい、ロシアはドイツ第 8 軍を挟み撃ちにすると脅した。

しかし、彼らが連絡を取り合うことができなければ（マズーリ湖の 50 マイルのバリアが、数日間、マズーリ湖の間に拡がることになるため、この見通しは非常に困難になった）、第 1 軍と第 2 軍はそれぞれ、ドイツ第 8 軍に対してわずかな優位性しか享受できなかったであろう。結局のところ、多くの第 2 線および予備師団は、スタフカの将軍たちから信頼されていなかったため、前線に取り残され、要塞を守備したり、補給線を守ったりするなど、「長く待たされて」取り残された。

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彼らが実際に接触するまでには、各ロシア軍はドイツ軍の第 8 軍よりも劣っていた。すなわち、レンネンカンプの第 1 軍は 6.5 個師団に減り、サムソノフの第 2 軍は 9.5 個師団に減っていた。だがもしも、ロシア第 4 軍のいくつかの軍団が東プロイセンに向かっていたとしたら、ロシアは第 1 軍または第 2 軍のいずれかで、プリットヴィッツの第 8 軍団に対して優勢を享受できたはずである。Zhilinskii は、「マズーリ湖」のギャップを埋めることができた可能性もあり、サムソノフとレネンカンプの間の永続的な亀裂（このために、ドイツが逐次攻撃することを可能にした）の危険を回避することもできた。

ヤヌシュケヴィチの 8 月 7 日の指令に従ってロシア内陸部から到着した部隊からワルシャワに集められた新しいロシア第 9 軍は、表面上はドイツの「深部」侵攻に備えて準備をしていたが（その任務は、ニコラス大公がパレオログに約束したことであり、「南軍が敵を「保持」し、「固定」することに成功したら、すぐにベルリンを攻撃する」ことであった）、8月下旬には、そうなることなく、南西戦線に送られた。

これまでのところ、ロシアの将軍たちは、「フランスのために剣を振るう」どころか、そうではなくて、オーストリアのガリツィアを攻撃することに熱心だったが、ドイツ軍の形だけの兵力よりも大きな軍隊を、東プロイセンに一軍も配備できなかった。」16
16. Stone, Eastern Front, PP. 55, 59, 84.興味深いことに、1914年8月15日、スホムリノフはパレオログに対し、北西部戦線でドイツと交戦中の第3軍（おそらくは、新たに編成された第9軍）が「すでにワルシャワから西へ向かって攻撃を行っている」と報告した。これはフランスにとって非常に良いニュースだったであろうが、もしもそれが本当であったならば、そんなことは起こっていなかっただろう。Paleologue,An Ambassador's Memoirs, v. 1, p. 83.

南西部戦線のロシア軍は対照的に、、オーストリアの敵に対して考えられるあらゆる優位性を享受していた。コンラートは、モルトケと同様だがヤヌシュケヴィッチとは異なり、二正面戦争に直面した。コンラートが第 5 軍と第 6 軍 (そして 8 月 18 日までに第 2 軍も) をセルビアに対して配備しなかったとしても、オーストリアハンガリー軍全体の有効な 40 個師団は、ロシア軍がガリツィアに侵攻に投入できた 50 個以上の師団よりも劣っていた。 8月末のセルビアからの第2軍の部分的再配置によって強化された後も、コンラートはまだガリツィア戦線に37個の歩兵師団と10個の騎兵師団しかなく、その多くは直近の再配置で疲れ果てており、比較的新しいロシア歩兵53個半師団と18個騎兵師団に直面していた。.17

　東プロイセンの勝ち目がロシアにわずかにでも有利であったら、ガリツィアではオーストリア人たちがかなり戦争に反対していたことだろう。確かに、前線の長さは 200 マイル近くあり、どちらの陣営も相手の展開に関する優れた情報を持っていなかった。

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このため、ヴィクトル・ダンクル将軍の指揮下にあるコンラートの第 1 軍は、8 月 23 日から 25 日のクラスニクの戦いで、ルブリンの南でロシアの第 4 軍とほぼ同等の戦力で戦うことができ、コンラートとヤヌシュケヴィッチに同様に印象づけた最初のオーストリア軍の勝利につながった。

しかし、衝突する両軍の側面で一連の紛らわしい操作を行った後、戦域 (特に、オーストリアの第 3 軍がロシアの第 3 軍と第 8 軍にほぼ単独で直面した東方)での圧倒的なロシアの優位性が明らかになり始めた。ハプスブルク家領ガリツィアの首都であるレンベルク（リヴィウ）は 9 月 2 日に陥落し、1914 年 9 月 11 日にオーストリア＝ハンガリー帝国のハンガリー軍の総撤退が始まった。これは西側戦線のマルヌ川からドイツ軍が撤退するのとほぼ同じ時期であった。南西部戦線での逆転は圧倒的だったので、クラスニクでの敗北後に混乱していると考えられていたロシアの第4軍が一般的な追跡に加わった。ヴィクトル・ダンクルには、「あたかも[ロシアの]死傷者が死からよみがえったかのように」見えたことだろう[18]。

　ボルドー（ドイツ軍が9月初旬にパリに接近したため、フランス政府が移転した場所）では、ロシア軍のガリツィア攻勢の成功に関するニュースは、あまり喜ばれずに受け取られた。フランスの視点から見ると、ガリツィアは余興であった。（フランスにとって）重要なのは（オーストリアではなく）ドイツ戦線（東プロイセン）だけでだったのだ。

東プロイセンでは（逆に）、ニュースは（ロシアにとって）悲惨なものであった。サムゾーノフは、その後伝説となったタンネンベルクでのドイツの勝利で、第 2 軍のほぼ全体を失い、エーリッヒルーデンドルフ将軍の評判を高め、さらに重要なことに、1933年にアドルフ・ヒトラーを首相に任命する大統領となったドイツ軍元帥パウルフォンヒンデンブルクブルク (プリトヴィッツの後継者) の評判を高めた。

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実際には、（ドイツの）勝利は偶然の「奇跡」のようなものであった（訳注；タンネンベルクの”奇跡”）。2つの第一線師団を指揮していたヘルマン・フォン・フランソワ将軍は、ルーデンドルフから、前進するサムソノフ軍の左翼を攻撃するよう命じられていた。彼の部下は東から移されたばかりで疲れ果てており、まだ銃を待っていたので、フランソワは最初これを拒否し、次に数日間の言い争いが起った。（ところが）フランソワの攻撃が遅れたため、彼の師団はサムソノフの後方に到達することができ、ロシア第 2 軍はカンネで包囲されることになった。.21

この戦闘の戦略的重要性は過大評価されていたが (ロシアはすぐにドイツ戦線での足場を取り戻し、9 月に再び東プロイセンに侵攻した)、フランスがタンネンベルクの戦いを、ロシアの見当違いの優先順位の証拠と見なした理由は容易に理解できる。

1914 年 9 月 12 日に、東ガリツィアからのオーストリア軍の追放を祝うニコライ大公からの公式の電報を受け取った後、ポアンカレ大統領は、次のように嘆いた。「これはすべて非常に順調であり、ロシアの勝利を温かく称賛することができようが、東プロイセンではドイツ人が再び自分たちのものを取り戻したようであり、ロシアは私たちの繰り返しの要求に反して、オーストリアに対して主な努力をしている。あたかも、オーストリアを打ち負かす最も確実な方法が、ドイツを放置していることであるかのように。」22

ロシアの妥協のない戦争目的が、勝利の嵐の中でも協商の成果を台無しにする恐れがあったのは、これが最後ではなかった。

＜東プロイセン＞
　ここで立ち止まって、占領したガリツィアへのロシアのアプローチを検討することは価値がある。なぜなら、ヨーロッパの戦争が 1914 年の秋に終わっていたら、戦後の世界がどのようになっていたかについての重要な窓を与えてくれるからである。

ここで取り上げた目的である「タンネンベルクの奇跡」はさておき、我々は代わりに、東プロイセンでの決定的ではなかった一連の戦いを提案するだけである。それは、ヴィスワ川下流域の背後へのドイツ第 8 軍の戦術的退却についてである。西部戦線でのマルヌ後の膠着状態と並んで、これはもしかしたら、たとえ一時的なものではあっても、何らかの妥協的停戦につながったかもしれない。

ここで提示されたシナリオ、圧倒的ではないが重要なオーストリア・ガリツィアでのロシアの勝利、東プロイセンの部分的なドイツ側の放棄（プリットヴィッツの第8軍は無傷であったが）、そして、フランスの一部をドイツの占領下に置いた西部での重要な（しかし圧倒的ではない）チュートンの勝利等は、実際、他のすべての条件が同じであれば、1914 年 8 月の動員陣容が最も可能性の高い結果として示唆するものと正確に一致する。もちろん、戦争では「他の要素」が平等になることはない。しかし繰り返しになるが、国の”真の”戦争目的を理解するには、実際の結果よりも論理的に予想される結果を使用する方が適切なのである。

＜ガリツィア＞
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Russian occupation of Eastern Galicia (1914–1915)

訳注；1914 年 8 月 18 日、ロシア帝国はオーストリアの王冠領ガリツィアに侵攻した。 8 月 19 日、ロシア帝国軍はオーストリアハンガリー軍を破り、オーストリアハンガリー領内に 280 ～ 300 キロメートル進出し、ガリツィア東部の大部分を占領した。主要都市レンベルク (現在のリヴィウ) は 9 月 3 日にロシアの手に落ちた。その後1915年6月22日に、独墺軍が奪回した（ゴルリツェ・タルヌフの戦い）。1916年6-9月のブルシーロフ攻勢で再度ロシア軍が占領したが同盟側の攻勢で奪回、ロシアではロシア革命が勃発し、1918年のブレスト＝リトフスク条約により東部戦線は終結した。

　オーストリア領ガリツィアの場合、1914 年 8 月と 9 月に実際に起こったことを大幅に歪曲する必要なしで、ロシアの望ましい戦後の状況を想像することができる。この土地に住んでいる民族の大部分がスラブ系ポーランド人とルテネス人 (または「ウクライナ人」) であるということは、戦争前と戦争中のロシアの汎スラブプロパガンダにとって都合の良い事実であったが、将軍たちにとっては（そのことは）ほとんど問題ではなかった。

純戦略的には、ガリツィアの「問題」はその解決策と同じくらい明白であった。ロシアは、カルパティア山脈の「自然の」フロンティアに到達することを単に目指していただけだった。これについては、ロシアは1914年9月中旬までにほぼ完了した。.350,000人ほどまでに（そのうち30,000人が囚人であった）削減されたコンラートの軍隊は、ガリツィア東部から約150マイル離れたサン川を渡って追い出された。

この「原初のロシアの土地」（ヤヌシュケヴィッチが大臣評議会の議長であるゴレミーキンに喜んで説明したように）は、今や、ロシアの占領下となった。占領は、1914 年 8 月 17/30 日にスタフカによって発行された「戦争の権利によって取得されたオーストリア-ハンガリー領の管理に関する一時的な指令」によって、法的な意味で確認された。部分的にしか征服されはしなかったが、オーストリア軍の総撤退により、残りもすぐにロシアの手に渡るという見通しが開かれた。

＜ポーランド”自治”＞
　ロシアが戦争の初めからガリツィアのすべてを奪取することを計画し、期待していたことは、ニコラス大公の名前でポーランド国民に発行された「最高司令官のアピール」から明らかである。それはポーランドの新聞に掲載され、1914 年 8 月 3/16 日に「ポーランド議会」の周りに掲げられた。外務省でサゾーノフの監督下で起草された大公の宣言は、ポーランドの自治国家が「ロシア皇帝の王笏の下で再統合される」ことを誓ったが、この国家が自治的であるのか独立であるのか(使用された言葉は samoupravlenie、文字通りでは「自治」であるが、さまざまな翻訳が可能であった)、そしてその将来の境界線はどこのなのか、明らかにされていない。24

p88
　そのあいまいさとツァーリの署名がなかったという事実の両方を考慮すると、有名なポーランドマニフェストの重要性を無視するのは簡単だろう。興味深いことに、1914 年 8 月 7 日から 8 日にかけて、ポーランドに対するドイツからのあいまいな布告は前線の背後ではっきりしなくなり、「モスクワのくびき」からの「自由と独立」を彼らに提供したが、同様に皇帝の署名はなかった。

ドイツもロシアも、戦時中のポーランド人との約束を完全に誠実に行ったことはなかったように感じる。ロシアは他のあいまいな「布告」をすべてツァーリではなく大公の名で、ハプスブルク家の他のスラブ系臣民、例えばルテネス/ウクライナ人 (具体的に名前を挙げた) や (暗示的にのみ) チェコ人とスロバキア人に発行した。

サゾーノフは、協商派の介入または継続的な中立の場合に備えて、ルーマニア（ハプスブルグ-ハンガリー、トランシルヴァニアが提供された）、セルビア（ボスニア-ヘルツェゴビナとダルマチアが提供された）、ギリシャ（南アルバニアgあに提供された）、ブルガリア（セルビア領マケドニアが提供されたが、このことは、セルビアの大義に対するロシアの支持がいかに空虚であったかを示している)などのバルカン諸国に対して、拘束力のない別の領土（提供）の約束をした。

.これらの多くは明らかにごまかしであった。ルーマニアまたはギリシャの介入は、大公のあいまいなスラブ連帯宣言によって引き起こされたハプスブルク軍内の推定上の士気の問題ほどには、1914年の東部戦線での戦闘に何の違いももたらさなかっただろう。

バルカン外交は、セルビア人自身がブルガリアに賄賂を渡してそこから離れることに同意した場合に、彼らを戦争に引き留めるためのサゾーノフの領土的な賄賂によって示されるように、悪意の悪名高いものであった。中央同盟国勢力もまた、バルカン中立国のすべてに対して同様の提案を行っており、同様に皮肉を込められていた。25

　ポーランド問題は、はるかに深刻な性質のものであった。ヴィルヘルム通り（ドイツ）やBallplatz（オーストリア）とは異なり、 Chorister's Bridge（ロシア）が開戦時に歴史的に重要なポーランドを「再統合」することを申し出ていたという事実は、ロシアの戦争の目的について多くのことを教えてくれよう。

非常に多くのポーランド人がオーストリア領ガリツィア、特に西ガリツィアに住んでいたため、大公の宣言は、戦争がもともと正当化されていたようなセルビアの単なる防衛やチュートンからの侵略に対する「スラブの名誉」ではなく、事実上、ロシアにオーストリア=ハンガリーを解体するという戦争の舞台を与えた。皇帝ニコラス 2 世自身が 1914 年 7 月 26 日と 8 月 8 日に国務院で自ら指摘したように、「私たちは自分たちの土地で名誉と尊厳を守るだけでなく、血と忠誠で結ばれた兄弟スラブ人のために戦っています。」26

p89
外交政策用語に翻訳すると、こうしたマニフェストは、ロシアが「ロシア領ポーランド」との境界線、つまりロシア自体の境界線をカルパチア山脈まで拡大することを意味していた。オーストリア領ガリツィアを占領することは、明らかにロシアの戦略的優先事項であったが、そのような併合計画はフランスとイギリスの政府によって承認されたことはなかったのだ。また、サゾーノフは、ポーランド周辺でプラカードが掲げられる直前に、パレオログに警告した (ただし、ブキャナンにはそれほど重要ではなかったが)が、大公の宣言自体はパリやロンドンでは承認されなかった。27

　フランスとポーランドとの歴史的な結びつきのために、フランス（パレオログ）が東ヨーロッパにおけるロシアの領土的野心に最初に警戒したことは驚くべきことではない（サー・ジョージ・ブキャナンは、いつものように、理解するのが遅かった.28）。
28. 特有の鈍感さで、ブキャナンは回想録の中でポーランド問題についてさえ言及していない。また、これから見るように、1914 年秋の彼の外交通信における抗議や過度の懸念の記録もない(ただし、ブキャナンはペルシャとトルコにおけるロシアの領土的野心には強い関心を持っていた)。

（ロシアに対しては）非常に友好的なパレオログでさえ、サゾーノフが彼に、ポーランド議会に「自治」を提供すると思われる政治マニフェストが、ツァーリニコラス 2 世ではなく、大公の署名である理由を知るよう要求し、何があったのかを言った時には、最初は少し懐疑的であった。.29

フランスについては、ポアンカレ大統領は、マニフェストについて事前に相談を受けていなかったことに激怒した。そのマニフェストは「ロシアと私たちの間で何の合意も結ばれていないベールに包まれた併合が、防衛戦争（これはイギリスとフランスの戦争プロパガンダの大声で永続的なテーマである）.の考え全体を横断する可能性がある」ことを投げかけていた。.30

その上、フランスの政治家は皮肉を込めて言った。「ツァーリの王笏が、ポーランド人の目に自由の象徴と思われることはまずないだろう。」　このような疑いを晴らすために、イズヴォルスキー大使は、ロシアの大義への支持を得るために、パリ在住のポーランド人 (その中には、ノーベル賞を受賞した物理学者マリー・キュリー夫人も含まれる) をロシア大使館に召喚した。それでもポーランド人は、ロシア大使が、戦後のポーランドの自治の問題について、「回避的で曖昧な答え」しかしなかったと不満げだったらしい.31

イズヴォルスキーの仕事を難しくしたのは、フランスの新聞がsamoupravlenieを「自治」と訳したことであり、それはサゾーノフがロシアのドイツ愛好家と保守的な批評家に弾薬を貸すことを恐れて、ポーランドに提供したしたことを本当に意図していたものではなかった。32

大公の布告がフランスのマスコミで受けた最も好意的な宣伝でさえ、マニフェストはポーランドの独立を支持するものとしてではなく、ベルリンとウィーンに対する永遠の敵意へのロシアの誓いとして歓迎されたため、少し混乱していた。発想としては、「永遠に、ロシアはずっと、ポーランドを 2 つのゲルマン勢力（ドイツとポーランド）に対抗させてきていた。.33

p90
＜サゾーノフの本音＞
　1914 年 8 月 20 日、フランス大使は、大公のマニフェストに起因する混乱をいくらか払拭するために、歴史的な「秘密話」昼食会で、ロシアの外務大臣との空気を一掃しようとした。2 人の男が目前の紛争が「交戦国の各グループがその存在そのものを賭けた死闘」になることに同意した後、サゾーノフは初めて、ロシアの本当の戦争の目的について明らかにした。

「ドイツ帝国主義を破壊する」ために、サゾーノフはパレオログに次のように語った。「アルザス・ロレーヌのフランスへの返還に加えて、ポーランドを回復し、ベルギーを拡大し、ハノーバーを再構成し、シュレスヴィヒをデンマークに返還し、ボヘミアを解放し、ドイツの植民地をすべてフランス、イギリス、ベルギーに与えなければならないetc」。Paleologue は、この征服の「巨大なプログラム」を完全には支持していなかったが、彼も特に異議は唱えなかった.。34

　サゾーノフのポーランドへの観測気球が東ヨーロッパのかなりの部分を埋めるまで拡大するのにそう時間はかからなかった。ドイツが 1914 年 9 月に独自の戦時中の帝国拡大計画を練り上げたことで有名なように、ロシアの外相も同月、領土征服に関する広範かつ非常に明確な計画の暗黙の計画を策定した。1914 年 9 月 4 日の「ロンドン会議」の条件により、3 つの協商国は、中央同盟国と個別講和をしないことを誓った（訳注；1917年のロシア革命でこの誓約は破られた）。.35

10日後、サゾーノフはパレオログの前でポーランドのプログラムを発表し、サー・ジョージ・ブキャナンも、初めて同席するよう招待された.。中央同盟国に対する勝利が予想された後、サゾーノフは、多かれ少なかれ、民族的国境線に沿ってヨーロッパを改造することを提案し（もちろんドイツとオーストリアの費用負担で）、シュレースヴィヒ・ホルシュタインをデンマークに戻し、セルビアは、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ダルマチア、北アルバニアを含めた「民族統一主義者」原理を拡大され、ハプスブルク家のトランシルバニアはルーマニアに引き渡され、フランスはアルザス・ロレーヌ、ロレーヌなどを取り戻す、等となっていた。

これらはすべて、ロシア自身の野心の序曲に過ぎなかった。ツァーリは「ニーメン川下流域とガリツィア東部」を完全に併合するつもりであったことだろう。一方、「ポーランド王国」は、「自己による支配」であろうと「自治」であろうと（どちらの場合もロシアの宗主権下にある）、サゾーノフのシナリオでは、ロシア領「ポーランド立憲王国」の現在の国境を越えて拡大し、そこには「東部ポーゼン、シレジア、西部ガリツィア」も含まれていた。

サゾーノフが聴衆の中で繰り返し強調したこれらすべては、依然としてロシアの戦争目的の「非公式なスケッチ」であったが、パレオログは、サゾーノフが戦後の世界のために「我々のために彼の考え方を打ち明ける」ことを心から望んでいたことに疑いの余地はなかった.36

p92
　サゾーノフが失望したことには、パレオログもブキャナンも、東ヨーロッパにおけるロシアの領土的野望をまだ認めようとはしなかった。パレオログもブキャナンも、原則として、戦後の（ロシアの）ポーランドの境界を拡大するというロシアの計画に反対したわけではなく、9月の戦略的状況が依然として危険であり、ロシアのガリツィア戦役全体が戦略的誤りのように見えた。

.同じ日の朝、サゾーノフがドイツの費用でヨーロッパを大規模に作り直すというビジョンでパレオログにセレナーデを捧げ（1914年9月14日）、パレオログはボルドーから緊急の嘆願を受け、ドイツを東部戦線により向けさせるためにロシア人に頼った。パレオログは、サゾーノフに呼ばれる直前に陸軍省でスホムリーノフと会談し、スタフカが「ウィーンへの道を開くことに力を注ぐために、ドイツ戦線を無視している」と正式に抗議した。

おそらく最も説得力のない弁護を展開して、、参謀本部総局長V. A.スホムリーノフは、ロシアが「フランス軍を救う」ために「110,000 人を犠牲にした」タンネンベルクを指摘した。パレオログは、サムソノフの第 2 軍を襲った惨事は「私たちのせいではなかった」と痛烈に指摘した。Sukhomlinovは、オーストリアに対するガリツィアの攻撃を停止するようにはまったく要求していなかったが、フランス大使は、それが手段を選ばず追求されないこと、そしてスホムリーノフがニコラス大公に「私たちの根本的な目的はドイツの力の破壊である」ことを思い起こさせることを要求した[37]。

3日後、（常に遅刻していた）ブキャナンは、フランスとイギリスの政府が、ロシアが、「ガリツィアでのロシア軍の勝利には、オーストリア＝ハンガリー軍の重要性はごくわずかであることを示している」こと、そして戦争は、 3 協商国が、「戦争をドイツ人の心に持ち込んだ」時に勝つことができるであろうことを認めることを要求した正式な覚書に、彼自身の署名をした。38

　予想通り、ロシアの焦点がオーストリア領ガリツィアを征服するのではなく、ドイツを打ち負かすことであるべきだというフランスとイギリスからの要求はどこかへすっ飛んでしまっていた。1914 年 9 月 18 日にスタブカの外交局長である N. A. クダシェフ王子が喜んでサゾーノフに報告したように、東プロイセンでは（ロシアは）屈辱以外の何物でもなかったが、南西戦線では「我々は紛れもなく勝者なのです」。39

p93
ロシアは、「もともとロシア人の住処だった」東ガリツィアを放棄するつもりはなかった。そこでは彼らは（南西部戦線の司令官であるイワノフ将軍が部下に約束したように）、「オーストリアのくびきからの外国に住むロシア人の真の解放者」だったのだ。

クダシェフの代理のニコライ・バジリは、帝国の議論に別の新機軸を加えた。1914年9月29日、東ガリツィアの「ロシア人農民」はオーストリアの不正支配からの解放だけでなく、彼らを経済奴隷にした（とニコライ・バシリが主張した）「ユダヤ人による抑圧からの解放」も待っていることを、ニコライ大公に知らせた。実際、この「原初ロシア」の領土を鎮圧したとは言えず、バジリはまだやるべきことがたくさんあると考えていた。

東ガリツィアの少数民族であるポーランド人は、ロシアに対して「ひそかに敵対的」であったが、ユダヤ人は、占領者に対する敵意をほとんど隠そうともしなかった。（まだ部分的にしか征服されていない）西ガリツィアの人口は、さらにポーランド的でユダヤ人が多かったため、バジリが「自分たちに対するあからさまな敵意のムード」を聞いたのは驚くことではなかった。

レンベルクで、占領中のロシア人は、ロシアに対するポーランドの志願兵団のために「数百万クローネ」が集められたことを発見した。全体として、バジリは大公に、ガリツィアの占領は「非常に困難な仕事」であり、有能な管理者だけでなく、動揺する人口を納得させるための食料と医薬品への「莫大な支出」を必要とする、と報告した。.41

　ガリツィアで繰り広げられたロシアの「歴史的使命」と比較して、ロシアの東プロイセンへの中途半端な侵攻は、スタフカに多くの情熱を抱かせることができなかった。ロシアに北西戦線を完全にあきらめなさせなかった唯一のことは、（第1軍の）レンネンカンプの退却が、ロシアのガリツィア側をドイツに晒してしまう恐れであった。イワノフ将軍と副官のアレクセーエフは、退却するオーストリア軍をサン川を越えてクラクフやブダペストまで追跡することを心から望んでいたが、この目標は、はるか北方の不安定な状況への穴埋めにはならなかった。

ドイツ軍がレンネンカンプの第 1 軍をもっと精力的に追撃していたら、ワルシャワまたはコヴノを脅かしていた可能性があり、イワノフも撤退を余儀なくされたであろう。しかし、北方戦線でのドイツ軍の前進はすぐに行き詰まった。ドイツ軍はレンネンカンプ（の第 1 軍）を追撃するのではなく、オーストリア軍を強化し、クラクフとワルシャワの間の中央ポーランド戦線に攻撃を仕掛け、10月中旬までにワルシャワから約12マイル以内に到達してから撤退した。

p94
11 月11 日から 11 月 23 日にかけて行われたウッチの戦いは、典型的な優柔不断であり、ロシア軍が 12 月初旬に露出した陣地を放棄するまで、ドイツ軍の繰り返しの攻撃は、ロシア軍の戦線を突き崩すことができなかった。東部戦線全体で、10 月から 11 月にかけて、状況は「混乱し当惑」したままであり、攻撃、反撃、および後退の流れにより、1914 年 12 月までに前線は 9 月中旬の状態（レンベルクがロシアに落ちた時期）にかなり近づいた。、ロシアは東ガリツィアとウッチのすぐ東にあるピリツァ川とヴィスワ川の間のポーランド戦線を保持していたが、東プロイセンに侵入することも、サン川の西にあるクラクフの方向のオーストリア戦線を突破することもできなかった。サン川に面したハプスブルク家の偉大な要塞であるプシェミシルは、1915 年 3 月まで持ちこたえた 42。

　オーストリアのガリツィアにおけるロシアの歴史的使命は、説得力のあるものではあったが、戦前の先見者が望んでいたよりも達成が困難であることが判明した。サゾーノフがパレオログとの交渉でロシアの帝国主義的主張を強要し続けていたときでさえ、スタフカの将軍たちは、軍隊の輸送と軍需品の兵站上の困難に加えて、占領の組織的な地域的な頭痛に対処しなければならなかった。戦争が続く限り、「戦時中の軍隊の野戦管理法」の下では、前線地帯（占領地を含む）の実際の管理は、ペトログラードの文民政府ではなく、スタフカの責任であった。43

そしてヤヌシュケヴィッチが1914 年 10 月 2 日にゴレミーキンに報告した、ガリツィアにおけるロシアの政治的目標は、ロシアの軍隊と同じくらいひどく行き詰まっていた。まず、ポーランド人だけでなく、地元の人々とのコミュニケーションが困難であった。ヤヌシュケビッチが「いわゆるウクライナ語」と呼んだものはロシア語との調和が予想以上に困難であることが判明した。同様に、ギリシャ統一教会のルテニア人 (またはウクライナ人) の支持者も、ロシア正教を採用することを意味する場合には、ロシア化に頑固に抵抗した。

何よりも、ユダヤ人住民からの「あからさまな敵意」があり、ロシアの占領に先立って東ガリツィアから逃れたユダヤ人の数が特に顕著であった。彼らの放棄された財産は、今や計数され、何らかの形で公正に管理されなければならなかった。一方、前線の背後では、Pale of Settlement （訳注；1791 年から 1917 年 (事実上は 1915 年まで) に存在したロシア帝国の正式に区切られたユダヤ人の居住地）のほぼ全体がロシア軍の支配下に置かれていた。「いずれにせよ、われわれは認識しなければならない」ヤヌシュケビッチは、ガリツィア占領からわずか数週間でゴレミーキンに警告した。「ユダヤ教徒との非常に困難な戦いが私たちに待ち受けていることを。」.44

p95
無害とは言えないこれらの言葉で、「信頼できない要素」と「敵の主題」の強制追放および/または強制送還（vyselenie）という軍のキャンペーンが始まった。1914 年から 1917 年の間に、50 万人から 100 万人のユダヤ人が、約 25 万人のドイツ国民とともに、ロシアの軍事政権下にある地域から追放された。（訳注；おそらく後のヒトラーもこうしようとしたのだろうができず、虐殺に至った）。

ポーランド人の間でも敵意の証拠があったにもかかわらず、ポーランド人は、大公の宣言で暗示されていた汎スラヴ主義者の連帯を促進するために、一般的にこうした追放を免れた。多くのポーランド人は、強制送還されたユダヤ人の財産を引き継ぐことさえ奨励された。.45

　予想通り、ロシアのますます醜悪な戦争と戦っている将軍たちと、ロシアの戦争の目的を策定している政治家との間に、かなりのギャップが開き始めた。ヤヌシュケヴィッチは、ロシアがすでに征服した小さな領土をどうすればよりうまく鎮めることができるかについて、大臣評議会の議長に助言を求めていたが、ゴレミーキンの同僚たちは、他の場所で広大な土地を征服する計画を進めていた。

9月下旬、サゾーノフとクリボシェインは、ヨーロッパ戦争を終わらせるようないかなる最終的な平和条約においてでも、海峡とコンスタンチノープルでのロシアの野望を最後に書かせるするべく、フランス大使パレオログとイギリス大使ブキャナンともに関心を持たせ始めた。両者は深刻な複雑な事態が待ち受けていることは認めたが（少なくともトルコはまだ協商国と戦争をしていなかった!）、クリヴォシェインはあけすけにパレオログに対して「トルコ人は [ヨーロッパから] 追放されなければならない」、そして、コンスタンティノープルは最悪でも中立都市とし、ボスポラス海峡、マルマラ海、ダーダネルス海峡へのロシア海軍のアクセスを保証し、石炭積み込みのできる海港の設置を含めるべきであると語った。

サゾーノフは、トルコをアナトリア半島の残党国家に引き下げるというクリボシェインのより野心的な計画に言及することによって、英国を刺激することなく、海峡でのロシアの野心について、ブキャナンに勝つ任務を負っていた。(彼は、ブキャナンに、あいまいに、「クリヴォシェインの見解に完全には同意していないさ」と断言していた。)46
46. 以下で見るように、サゾーノフは、ここではクリヴォシェインに対して建設的な批判を行っていたにもかかわらず、トルコにおけるロシアの領土的野心においては同僚よりさらに前進する意欲があったことがすぐに判明するだろう。（サゾーノフは）当面は、執拗な帝国主義者を装うクリヴォシェインに対して「善良な警官」を演じ（クリヴォシェインが悪い警官）、コンスタンティノープルにおけるロシアの計画（結局のところ、これが1878年にロンドンとサンクトペテルブルクの間で戦争を引き起こしそうになったのである）。

重要なことに、パレオログは、9 月１/14 日の会議とは異なり、今回はサゾーノフが「単なる計画の話」ではなく、実際に解決された政策について話していることをパリに伝えた。47

　ガリツィアに対するロシアの主張が 1914 年に勃発した戦争のかなり前に策定されていたように、コンスタンティノープルと海峡の占領も、トルコが実際に戦争に参加するずっと前に決定された（ロシアの）戦争の目的であった。ガリツィアとトルコのつながりは一見ありそうにないように見えるかもしれないが、ロシアの政策立案者の心の中では、この 2 つが密接に関連しており、「コンスタンティノープルへの道はワルシャワを通っている」と大騒ぎしたのは、新スラブ主義者だけではなかったのだ。

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オーストリア領ガリツィアとトルコに対するロシアの併合戦争の目的の基本的な骨子は、ロシア政府内で広く共有されていた。1914 年 9 月に大臣評議会内で展開されたサゾノフ-クリヴォシェインの計画に対する批判は、革命的な「左翼」からでも、「右翼」の反戦ドイツ愛好家保守派からでもなく、外務大臣は臆病すぎるとしたナショナリスト-帝国主義の批判者からのものであった。

反動的な内務大臣ニコライ・マクラコフが率いるグループは、「野党」によって作成された戦争目的に関する最初の真剣な覚書で、「東ガリツィア、北ブコビナ、カルパティア・ルテニアのロシアへの編入」を提案した。すなわち、コンスタンティノープルと海峡の（ロシアへの）あからさまな併合。ロシアの利益のための東プロイセンと東トルコの国境の調整。オーストリア・ハンガリーのスラブ系臣民の「解放」（言い換えれば、ロシアへの民族統一主義的吸収）。ロシア領ポーランドの「可能な限り広い範囲での」統一。48

　野党の綱領は、このように（サゾノフ-クリヴォシェインの計画に）席巻されていたが、ロシア帝国で最も重要な政策立案者である皇帝ニコライ2世は、まだ十分に席巻されていなかった。1914 年 11 月に開催されたフランス大使との注目すべき謁見で、皇帝は戦後の世界に対する彼のビジョンを説明し、ロシアの「小さな父」が彼の農民の子供たちが戦い、出血し、死にかけていると考えていたものに対しての愛おしい一瞥を示していた。サゾーノフが 9 月に提案したものとほぼ同じ路線に沿ったドイツの解体は論外として、ツァーリは、元のハプスブルク家の所有であったザルツブルクとチロル地方 (つまり、ウィーンを含まない) にオーストリアが縮小されることを想定していた。

つまり、オーストリアは、友好的なスラブの緩衝国の輪で置き換えられるべきなのであった。トランシルバニアを含む拡大されたルーマニア。新しいチェコまたはチェコスロバキアの州。そして、クロアチアとアルバニアの領土も含む大幅に拡大された親ロシア派のセルビア。その後にロシアは、東プロイセンをヴィスワ川まで、プロイセンのポーゼンとシレジアの一部とともに、新たに再統一された (ロシア領) ポーランドに統合する一方で。カルパティア山脈に沿った自然のフロンティアを獲得することができたことだろう。

しかし、ツァーリが最も興味を抱いたのは、ロシアの戦後トルコ計画であった。「アルメニアを併合すべきか？」彼は美辞麗句を用いて、パレオログに尋ねた。その前にツァーリは、アルメニア人が頼んできたのならそうしたことだろう、と応えていた。

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さらに重要なことに、ロシアの主権者（ツァーリ）は、「トルコ人はヨーロッパから追放されなければならない」と主張し、コンスタンティノープルをロシアの保護下にある国際都市にするよう主張した。49

　1914 年のヨーロッパの大惨事でロシア人が多くの罪を犯したと非難することはできようが、戦争の目的を策定する際の率直さの欠如は明らかにそれらの 1 つではない。すでにパレオログとブキャナンは、ややはらはらさせるような同盟国側の十字軍的帝国主義に対する嫌悪感を隠すのが難しいことに気づいていた。もちろん、この嫌悪感は、フランスやイギリスがロシアを念頭からなくすほど強くはなかった。

サゾノフがあまりにもよく知っていたように、ドイツ軍の気質と、ペトログラードがいつでも、別の望むような形での平和を裁ち切ることができるというフランスの最高司令部の恐れは、ロシアに圧倒的な外交的影響力を与えた。オーストリア領ガリツィアを併合するというロシアの計画は、最初は 8 月に慎重に計画されていたが、9 月にはすでに外交上の既成事実となっており、ハプスブルク軍が野戦で最終的に敗走するのを待っていた。

ロシアのトルコに対する計画は、9 月にサゾノフとクリヴォシェインによって最初に打ち出され、1914 年 11 月までに非常に確信を持って保持されたため、ツァーリ自身がそれらを隠す必要はないと感じていた。フランスとイギリスは、ロシアが彼らに強制的に与えた戦争の目的が何であれ（それはすでに現れ始めていた）、ロシアからの無理強いを飲み込むしかなかった。

コンスタンティノープルと海峡を征服するというロシアの古くからの夢を実現するために、残された障害は 1 つだけだった。

トルコは戦争に参加しなければならない。

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