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どこにいても何かを脅かす恐怖を感じます。何か危険で忌まわしい何かが差し迫っています。迫り来る大災害の意識です。それを準備している人たちも含めて、全員がそれを感じています。
-F. A. ロディチェフ、1914 年 5 月　１

コンスタンティノープルへの道は、ワルシャワを通っている。
－E.N.トルベツコイ　2

コンスタンティノープルへの最短かつ安全な運行ルートはウィーンとベルリンを経由します。 -補給将校ユーリ・ダニーロフ　3

＜ロシアからのスチームローラー＞
第一次世界大戦の勃発についての現在の考え方に支配的な決まり文句があるとすれば、それは「ロシアからのスチームローラー」に対するドイツ人の恐怖である。ロシアの権力の成長に対するテオバルト・フォン・ベートマン・ホルヴェーク首相の不安は、彼の書簡とリーツラーの日記の両方で十分に確認されており、そこで彼はつぶやいた。「ロシアはどんどん成長している。ロシアは悪夢のように私たちの上に横たわっている」

生データから、なぜベルリンの政策立案者が、時間が自分たちの味方ではないと感じたのかは簡単にわかる。ロシアの人口は、ちょうど1900年から 4,000 万人増加し、ドイツの 6500万人に対して 2億人に近づいていた。 1917 年から 1918 年にかけて大計画が完成するまでに、ロシアの平時の軍隊 (1914 年にはすでにヨーロッパ最大の 142 万人) は 220 万人の兵士を擁し、ドイツの規模の約 3 倍になっていた。4
図録▽西ヨーロッパ主要国の長期人口推移

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ロシアの経済は、まだ世界で 5 番目の規模 (英国、フランス、ドイツ、米国に次ぐ) にすぎなかったが、現在の中国のように、毎年ほぼ 10%の「発展途上国」の割合で成長していた。石炭、鉄、および鉄鋼の生産量で測定すると、ロシアは. すでに 4 位 (フランスを追い抜いた) であり、容赦なくファーストランクにまで上昇している。. 地図を見るだけで、ロシアの近隣諸国に恐怖を引き起こすのに十分だった。有名な計算によると、ロマノフ帝国は、1683 年以来、主に西、南、南東で、1 日あたり 55 平方マイル、1 年で 20,000 平方マイル成長した。ロシアの領土が中国の半分、アフガニスタン、北ペルシャ、アナトリア、コンスタンティノープルと海峡、オーストリアのガリシア、東プロイセンを含む地政学的地図を推定することは難しくはなかった。

　すべての決まり文句のように、これは真実の核に基づいている。ロシアの人口、経済、軍事力は年々増加していた。

知性があり旅慣れたベートマン・ホルヴェークは偏執的ではなかったのだ。彼は1912年7月に自らロシアを訪れ、ロシアの産業試験が拡大するのを直接目撃した。独裁政治のロシアでさえ軍事予算が議会や国民の精査にさらされていた時代に、ヨーロッパの軍隊の強さを比較するのは簡単だった。 1914 年の帝国ロシア軍の規模とその基本的な動員スケジュールは秘密ではなかったが、ロシアが本当にロシアの将軍が主張したほど迅速に動員できるかどうかは未解決の問題であった。５
5. 東部戦線への最初の（完全ではない）集中期間は15日間、というのが戦前の幕僚の会話でロシアがフランスに約束していたものだった。その考えは、たとえロシア自身の準備が十分でなかったとしても、M15までにドイツ軍にロシア軍との武力対決の準備を整えさせることであった。ロシアの軍事アーカイブをより徹底的に調査したブルース・メニングは、これらの数字に疑問を抱いている。彼は現実的には、1914年の「欧州ロシアにおける軍隊の完全動員」には26日程度を要したと考えている。Menning, "The Offensive Revisited," p. 224.

1913 年に制定された大計画の影響も秘密ではなかった。.1917 年までに、ロシアは理論的には、動員から 18 日以内に約 100 個師団を戦闘に動員できるようになることだろう。.6

厳密に軍事用語で言えば、ドイツの軍事計画担当者が、1914 年の方が 3、4 年後よりもロシアを打ち負かすのが簡単だろうと結論付けた理由は理解できる。（訳注；1941年に日本が同じ事を考えた）。

　しかし、国際関係は孤立して行われるわけではない。ロシアの政策立案者が、おそらくは西ヨーロッパの政策立案者よりもよく知っていたように、地政学で重要なのは、ある国の人口統計、経済、または軍事力の絶対的な成長ではなく、他の大国と比較した相対的な成長なのである。. 7

＜ドイツからのスチームローラー＞
そしてここで、ロシアからのスチームローラーの決まり文句は妥当性を失い始める。

それ以前の半世紀（19世紀前半）に、すべてのライバルに対して驚異的な強さを見せたヨーロッパの大国はただ一つ(ロシア）だけであったが、（19世紀後半には力を弱め、）2 つの主要な紛争 (1853 年から 1856 年のクリミア戦争、および 1904 年から 1905 年の日露戦争) で敗北し、1877-1878年の3 番目の戦争 (露土戦争。そこではしかし、サンクトペテルブルクの利益は、ベルリン会議でビスマルクとディズレーリによってほとんど無効にされた。訳注；ちなみにロシアは、その後の日清戦争で日本に三国干渉を行い、意趣返しをした) で空しい勝利しかおさめられなかった。

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（ところで）1870年から1871年の普仏戦争は地政学的な新時代の到来を告げ、ドイツは決定的にフランスを追い抜いてヨーロッパ最大の軍事大国となったのではなかったか？1873年にロシア参謀本部が前例のない「戦略会議」を招集するきっかけとなった展開は、ドイツの脅威からロマノフ帝国を守るための計画を作成するために設計された。8

フランスを当惑させただけでなく、帝政ロシアを明らかに時代遅れに見せたであろう、ドイツの鉄道の使用とプロイセン軍のほぼ普遍的な識字率の向上は、どちらも軍事効果における革命的な発展ではなかったのだろうか? (ロシアの鉄道網は貧弱で、識字率は 1913 年まで 30% であった)

1880 年代以降、ドイツ経済は規模が爆発的に拡大し、英国をも凌駕し、大陸サイズのアメリカのみの後を追ったのではなかったか? 　ドイツの重工業は、東部のライバル（ロシア）のそれを（相対的に）小さくしなかっただろうか? 　ロシアの人口の 3 対 1 の優位にもかかわらず、ドイツの石炭生産量は依然としてロシアのほぼ 10 倍であり、石炭と銑鉄の年間生産量はロシアの 4 倍であった。 9

ドイツは、医薬品から自動車技術、さらにはより破壊力の高い爆発物やより正確な (そしてより長い射程と大口径の) 砲兵に至るまで、あらゆる分野で世界のリーダーではなかっただろうか? クルップとシュコダという言葉だけで、ドイツ軍と対峙しなければならないかもしれない歩兵を怖がらせるのに十分だった。

ロシアパワーの成長への恐怖だって？ 1914 年から 1917 年にかけての東部戦線での戦争の結果から判断すると、ドイツの勢力拡大の方こそ、よりもっともらしい悪夢だったように思われるが。

　「ドイツの勢力拡大」は、少なくともサンクトペテルブルクで認識されたように、外交の場でも同様に目に見えるものであったが、Bethmann Hollwegと彼の外交官は、フランスとイギリスの手によって一連の敗北を喫したと感じていたかもしれない（最直近では、1911年のアガディール事件（ドイツはコンゴの一部を獲得する代わりにモロッコにおけるフランスの優位を認めて終わった）の後、（ドイツ）首相が嘆いたように、モロッコにおけるフランスの支配を黙認した見返りに、ドイツはアフリカの真ん中で「熱帯湿地の平方マイルの膨大な量」を受け取っていた（ドイツはモロッコに対する要求を放棄し、その代償としてフランス領コンゴの一部であったノイカメルーンを獲得し、ドイツ領カメルーンの領土を拡大した。））10．

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しかし、これらは、1908 年のオーストリアによるボスニア併合に対するロシアの引き下がり(3 月 19 日のドイツの微妙な脅威によって強要された) や、直近では1913-1914年冬の Liman von Sanders 事件など、ロシアに対する明確なドイツの勝利によってバランスがとれているはずである。

海峡を守るトルコ軍団の指揮官に任命されたドイツ人将校のリマン・フォン・サンダースは、ロシアからの感情的な抗議にもかかわらず、最終的にはその地位（リマンが単一のトルコ軍団を指揮するには”過剰な”地位であった）とどまることを許された。

ロシア人は、彼らとしては、日露戦争、ボスニア併合、バルカン戦争（セルビアのような名目上の代理人の利益にもかかわらず、ロシア自身は具体的なものを何も得ていなかった。そしてリマン事件での屈辱的な軍事的敗北以来、一連の外交的大失敗に苦しんでいると感じていた。しかし、敗北を和らげるための補償的な勝利はない。

　もちろん、外交上の利益と損失は解釈の問題である可能性がある。矛盾しているように見えるが、たとえば、ベルリンとペテルスブルクの両方の多くの政治家が、リマン事件で負けたと感じていたのに対し、ロシアとオーストリア＝ハンガリー帝国は、バルカン戦争の混乱した結果にほとんど同じように不満を抱いていた.

危機が通常ゼロサムで評価されていた大国外交の古典的な時代には、自分が後退しているという認識は、だいたい常にあったのだった。どこの外交官も、ライバルの外交官の勝利を意味する可能性があった自国の地位のわずかな低下に非常に敏感であった。 (こうしたライバルたちが負けたと信じていたとしても)。

　しかし、地位を失うという感覚は、他の勢力よりも一部の勢力でより強く感じられた.。フランスとイギリスはどちらも、数世紀にわたって徐々に獲得され、かなり安定した、はるかに離れた植民地を統治していた。（ドイツの）唯一の真の近隣のライバルは(お互いは別として)、スペインやポルトガル、あるいは小国ベルギーのような衰退する傾向にあった過去の帝国であった。

パリもロンドンも、過去 5 年間で最も深刻な外交危機が発生したバルカン半島に真の戦略的関心を持っていなかった。 あらゆるパワーが差し迫っていると予想していたオスマン帝国の崩壊を管理するための闘争である東方問題は、フランスにとってもイギリスにとってもそれほど差し迫ったものではなかった。（協商国の中ではロシアのみバルカン半島に戦略的関心を持っていた）。

ロンドンは、英国のグローバルコミュニケーションの要を形成した、オスマン帝国のエジプトとスエズ運河の支配権を奪い取って久しい。 1914 年 6 月、英国はポルト（コンスタンティノープルにあるオスマン帝国の宮廷）と協定を結び、アラビア半島をオスマン帝国と英国の勢力範囲に分け、後者にはアデンとカタールの間の南部沿岸地域全体が含まれていた。 ロンドンは、メソポタミアと南アラビアの静かな経済浸透を除いて、アジアのトルコにほとんど関心を持っていなかった。

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確かに一部のフランス帝国主義者は、シリアとレバノンを貪欲な目で見ていたが、パリの資本はすでにオスマン帝国で非常に支配的であったため、レヴァント（地中海東部およびその島と沿岸諸国）がフランスの影響範囲に吸収されるのは時間の問題のように思われていた。帝国の威信とゲームの基本的な状態に関して、英国とフランスは 1914 年には本質的に「現状維持」の大国であり、（オスマン）帝国に対する欲求はおおむね満たされていた。

＜ドイツとロシアのバルカン半島への利害＞
　対照的に、ベルリンとペテルスブルクはどちらも東方問題に多額の投資を行い、バルカン半島に身動きが取れなくなっていた（たとえドイツとバルカン半島の場合、ほとんどの場合において、オーストリア・ハンガリー経由での2番煎じであったとしても）。. ドイツ人もロシア人も、帝国への欲求の点でほとんど満足しておらず、現在の地位に特に安心しているとは感じていなかった。.

ベートマン・マン・ホルヴェーク、参謀本部、ヴィルヘルムが多くシェアする汎ドイツ主義者の野望は、アジアのトルコとともに「中欧ヨーロッパ」と「中欧アフリカ」を支配することであったことは、よく知られている。11

当時のロシア帝国主義者の目標はあまり知られていないが、彼らはある意味で（ドイツと）同じように野心的であった。日露戦争以来、サンクトペテルブルクは極東で驚くべき進歩を遂げ、日本は 1912 年に北満州でロシアの覇権を認め、中国はしぶしぶ同年、ロシアの強い圧力の下でモンゴルに自治権を与え、英国は1914年にハルビンでのロシアの行政監視に同意した。.ロンドンはまた、アフガニスタンのヒンズークシュ（中央アジアのパミールから南西に伸びてアフガニスタン中部を走る山脈）の北にある「勢力圏」をペテルスブルクに割譲することに同意した。12

一方、ペルシャ北部へのロシア帝国の侵攻は、現場で急速に既成事実を生み出していた。すなわち、ロシアの入植者とシンジケートは、ロシアの外交官によって任命され、すでに帝国の領事代理として行動している裁判官のおかげで、すでに「ペルシャ領アゼルバイジャン」の耕地の4分の3の所有権を獲得していた。 13

1913年から1914年にかけてのアルメニアの改革運動は、ポルトとベルリンの両方を驚かせたが、それは、トルコのアナトリアにおけるロシアの影響力を拡大するための、ほとんど偽装されたトロイの木馬であった。

最後に、コンスタンティノープルと海峡を占領するというロシアの計画は、1914 年までには十分に進んでおり、政策立案者によって広く支持されていた。たとえ黒海艦隊がまだそれらを実行できるほど強力ではなかったとしても。

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　ドイツとロシアの野望がその大きさにおいてほぼ一致したように、これらの野望が敵対勢力の連合によって打ち砕かれるという両国の政策立案者の懸念も同様であった。カイザーヴィルヘルム 2 世、ベートマンホルヴェーク、およびドイツの将軍たちは、敵対勢力 (イギリス、フランス、ロシア) によって巻き上げられた感覚である「包囲」について不平を言ったことは有名であり、決して不当ではなかった。

あまり知られてはいないが、同様に重要であるが、包囲の恐怖はサンクトペテルブルクでも感じられた。どちらかといえば、ロシアの方がドイツよりもEinkreisung包囲について文句を言っていた。すなわち、ロマノフ帝国の長くてぼろぼろの国境は、少なくとも５つの国と衝突をしていた。もともと敵対していたのがドイツ、オーストリア-ハンガリー、オスマントルコ、近年敵対するようになった日本、または日本が一緒に行動した場合、敵対することが確実な中国である。

ナポレオン戦争以来、英領インドがもちろんロシアの主要な戦略的敵対者であり、ロンドンではなくデリーが英国の政策を推進していた場合、依然として敵対的であり続けたであろう。.

1914 年春、ロンドンとペテルスブルクの間でより緊密な戦略的関係を構築するための交渉が進行中だったにもかかわらず、特に 1907 年の冷笑的な合意（英露協商。露仏同盟、英仏協商、とともに三国協商を構成する）は、現場の英国とロシアの当局者の間でまったく真剣に受け止められていなかった。

7月の危機が深まるにつれ、フランスの外交官らは、ロシアがペルシャ北部で土地強奪を続けていることで、パリが最も必要としていたロンドンとサンクトペテルブルク間の脆弱な協定を台無しにしてしまうのではないかと恐れた。.14
14. "Russie-Angleterre. Juillet 1914." Jennifer Siegel, in her acclaimed recent study Endgame: Britain, Russia and the Final Struggle for Central Asia, argues (p. 193) that by 1914,において、次のように主張している (p. 193)。「ペルシャ北部におけるロシアの「前進政策」とそれに対抗する英国の動きは、『ペルシャ、アフガニスタン、チベットの現状維持を保証する1907年の英露協定は死んだ』ことを意味している。」

「死んだ」という言葉は強すぎるかもしれないが、1914年春の協定更新交渉が相互の険悪な状況で決裂し、アジアにおける英露関係が一種の危険な宙ぶらりんな状態に陥ったという意味では、Jennifer Siegelの指摘は正しい。また、1907 年の協定は 1904 年の英仏協定のような真の協商ではなかったとした点も、彼女は正しい。

　1914 年のロシアの戦略的地位の脆弱性を感じて初めて、7 月の危機におけるロシアの行動を理解し始めることができる。非常に冷静なペテルスブルク駐在の英国大使であるダーラム卿は、グレートゲームの緊張の絶頂期にかつて、以下のように観察した。「ロシアの力は非常に誇張されている。...呼応する・・・弱点によって直接的に相殺されることのない強さの要素は何一つ存在しない」。15」

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ダーラムの意見は、インドの防衛を心配しているときと、ドイツに対するロシアの「スラブの大群」を解き放つことを望んでいたときの両方で、ロシアの強みを過大評価する傾向があった英国のような政策立案者の間で、なお少数派の意見であり続けた。

ロマノフ帝国は、まさにその規模と広さから、国境を守ることはほぼ不可能であった。 1860 年代と 1870 年代の中央アジアへのロシアの容赦ない帝国の拡大により、ロンドンのロシア嫌いの人々は、何らかの壮大な計画があったと信じるようになったが、（ロシアによる）インドを標的として進行中の軍事作戦は、実際には、国境の不安定という自己責任的な戦略的問題によって主に推進されていたのだった。. ある軍事アナリストのリストが観察したように、「部族が鎮圧されるたびに」、「ロシアは、「国境線の反対側に住む人々からの攻撃にさらされていた。」16

　ロシアの直近のトルコ東部とペルシャ北部への帝国の拡大は、帝国の国境内にすでに組み込まれた敵に取って代わる新しい敵がフロンティアに現れるため、同じ戦略的難問を再現していた。.

1914 年より前の数年間、ロシア南部の国境地帯で次から次へと危機が勃発し、絶え間なく変化する一連の敵対者が現れた。今や、アルメニア人やその他のロシアに友好的なキリスト教徒に対するクルド人の略奪、今やオスマン帝国による「ロシアのペルシャ」の国境への襲撃が行われていた。親ロシアのクルド部族の追跡、現在ロシア自身のコーカサス人イスラム教徒、特にトルコ人から秘密の支援を受けていると信じられているタタール人とアゼリー人の間で不安が生じていた。

1910年11月、ロシアの外務大臣サゾーノフは、ペテルスブルクの英国の代理公使から、「ドイツはペルシャ領土でのトルコの攻撃的行動とロシア国境の方向への攻撃を決して奨励しなかった、というドイツ首相の保証を信じるかどうか」と尋ねられた時、信じられないといった様子で、「あなたは、私がそれらを信じるほど純真であるとでも思っているのか、そんなことはないだろう?」と答えた。

サゾーノフが推測したように、ペルシャとコーカサスでのトルコの反ロシア作戦が、ドイツ政府によって奨励され、資金提供されていたのであれば、自身が支配するバグダッド鉄道をペルシャ国境まで延長することを不吉に主張していたドイツ政府は、そのベルリンについてのパラノイアについて、ロシアを責めることはほとんどできまい。17

　コリスター橋（ロシア）の観点から見た鉄道の問題は、鉄道が、ロシアの伝統的な戦略的優位性、すなわち地理的な孤立を覆すことであった。1914年以前の数十年間のロシア外交の重要な目的の1つは、ロシア国境近くの敵対勢力の動員を回避するために、特にトルコのアナトリアとペルシャでの戦略的鉄道建設を阻止することであった。

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1907 年の英露協商は、ペルシャとアフガニスタンからの潜在的な脅威を理論的に無力化したが、ドイツの影響下にあると考えられていたアジアのトルコは、まったく別の問題であった。.

カイザーとスルタンの両者にとって残念なことであるが、バグダッド鉄道は、コンスタンティノープルのアジア海岸からアンカラまで走る既存の路線を正確に利用することに完全に失敗し、コンヤを経由して多額の費用をかけて南西に迂回されていた。コンスタンティノープルからアンカラへ - 正確にはコーカサスから 1 マイル以内のどこでも路線を走らせることに、ロシアが反対したためである。

1906年、サゾーノフの前任者であるアレクサンドル・イズヴォルスキーは、ベルリンに対して率直な交渉を提案した。すなわちロシアは、ドイツがペルシャに鉄道を建設しないと約束する限り、バグダッド線の完成を「許可」するだろう、と。

この提案が 1910 年 11 月にサゾーノフによってドイツ人をなだめるために修正されたことは事実であり、ロシアはバグダッド鉄道が計画されているロシアのティフリス - テヘラン線 (当時は国境のジュルファまで走っていた) に接続されることに同意した。引き換えに、ドイツはバルカン半島におけるオーストリアによる「攻撃的な態度」を容認しないことを約束した。しかし、サゾーノフの取引はイズヴォルスキーの取引と同じくらい冷笑的だった。ドイツの戦線がペルシャに近づきすぎた場合、ロシアがこの取引を破棄する時間は十分にあった18。

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　サンクトペテルブルクにとってさらに危険だったのは、東プロイセンのドイツの鉄道網であり、潜在的にはロシア領ポーランドでの独自の拡張ネットワークであった。17 世紀と 18 世紀のスウェーデンとの破壊的な戦争から 1812 年のナポレオンの侵略まで、ロシアは多大な人的・物的犠牲を払って、西側の自国の国境がいかに脆弱であるかを学んだ。北ヨーロッパの大平原は、侵略軍を遅らせるための自然の障害物がほとんどなかったという理由だけでなく、西側の国境で、自国よりも進歩していたヨーロッパ軍に直面したためでもあった。

ロシア領ポーランドに新しい鉄道を建設すること、または既存線を複線化することは、確かにフランスにとっては最善の（反射的）利益となった。フランスの軍事計画担当者は、ドイツ国境でのロシアの動員を加速することに必死であったから。

.しかし、1870 年代までさかのぼる多くの現実的な戦争ゲームのシナリオで想定されていたように、ドイツ軍がそうしたところを占領した場合、ポーランド全土で人員と軍需品の移動を加速することは、必ずしもロシア自身の利益になるとは限らなかった。1910年に皇帝ニコラス2世によって承認されたヨーロッパでの戦争での動員のための更新されたプラン19（c.f.Chapter3 Russia's War The Opening Round）は、実際には、ドイツがロシア領ポーランドのほぼ10の州を占領すると想定していた。.19

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ドイツの侵略に対するロシアの不安は、ブレスト-リトフスクでの鉄道のゲージ差で適切に説明される。今日に至るまで、ロシアに渡る列車は、広軌幅の線路に合わせるため、駅で 1 時間以上待たなければならない。

　我々が「ドイツのスチームローラー」と呼ぶかもしれないものへの恐怖は、1914年以前の最後の2人の外務大臣、イズヴォルスキーとサゾーノフの平和主義的傾向（どちらもまったく誤っているのだ）が信仰に基づいて採用されるほど、ロシアの戦争計画と外交を彩った。パリとロンドンでは、両者ともども「リベラル」と見なされていたのだ。

サゾーノフの後の特徴的な二枚舌が思い出された。彼は言った。「私が[1910年に]ロシア政府に加わったとき、サンクトペテルブルクには戦争を望んでいる政党の存在の痕跡などなかった。」20

ベルリンとの戦争に関しては、オーストリアの外務大臣アロイス・レクサ・フォン・エーレンタール男爵が、「ウィーンの一方的なボスニア併合は、ボスニアの承認を得ていたのだ」と主張して、怒り狂ったイズヴォルスキーを困惑させた1908年から1909年にかけてのボスニア危機で裏付けられたように、このこと（サンクトペテルブルクには戦争を望んでいる政党の存在の痕跡などなかったこと）は、疑いなく真実ではあった.。（ロシアは、ロシアの軍艦が海峡を自由に通過できるようにするために、1878年のベルリン条約を修正するというロシアの目標を支援することをウィーンが申し出て、彼（エーレンタール男爵）が秘密の見返りを交渉したと考えた）.。21

サンクトペテルブルクでの閣僚の地位を追われた屈辱的なイズヴォルスキーは、1914 年 7 月の危機で駐仏ロシア大使として重要な役割を果たしたが、決して平和的な役割は果たさなかった。（ロシアの動員が宣言されたことを知ると、イズヴォルスキーは「これは私の戦争だ！」と叫んだと伝えられている）

ロシアによる、オスマン帝国に対する侵略戦争の計画は本格化していた。イズヴォルスキーは、ある意味、日露戦争での敗北後のロシアの威信を回復するために、ゲルマン人の乱暴を非難さえしていたが。

1908 年 2 月、政府、外務省、陸軍、海軍の長の特別会議で演説したイズヴォルスキー自身は、バルカン半島で危機が発生した場合にトルコを侵略するという考えを議題に乗せた。彼にとっては残念だったことに、大臣評議会の議長であるペトル・ストリーピンは、1905年の革命による社会的影響が続いているため、「ロシアの動員は現時点では、いかなる状況下でも不可能だ」と「断固として」宣言した。

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それにもかかわらず、コーカサス戦線における当時のトルコの優位性を克服するために、ロシアの戦力集中は急速に進んだ。.1908の年の後半、ロシアの参謀総長 F. F. パリツィンは、「国境の反対側のトルコ軍の編成が一定の密度に達した場合、コーカサスでのロシア軍の自動動員をするよう、静かに命じていた」。22
22. From the protocol of the meeting of the Council of Ministers held on 21 January/3 February 1908, reproduced (in German translation) in Pokrovskii, ed., Drei Konferenzen, pp. 25,30. On Palitsyn's order, see Fuller, Strategy and Power, p. 411 フラーは、パリツィンの決定は「国防評議会に通知することなく」下されたと主張しているが、同年2月のサンクトペテルブルクでの非常に明白な議論を考慮すると、おそらく当時の主要人物の少なくとも一部（当時のストルイピンを含む）が出席していた可能性が高い。ココフツェフ財務大臣、イズヴォルスキー外務大臣、そしてスコムリノフの副大臣ポリバノフ）がこの情報に加わっていた。

　ストルイピンは将軍たちに辛抱するよう促し続けたが、トルコを征服するというロシアの計画は、 1908 年 7 月の青年トルコ革命が勃発すると、大きな盛り上がりを見せた。この革命は、アブドゥルハミド 2 世の政権を弱体化させた (スルタンは翌 4 月、コンスタンティノープルでの内戦に近い状態で解任され、表看板のメフメトレシャド 5 世に取って代わられた)。

最後の真のオスマン帝国スルタンの失脚は、ロシアの参謀本部に一種の躁病的歓喜をもたらし、日露戦争でロシアのバルチック艦隊と太平洋艦隊が沈没した後、ほとんど中止されていたコンスタンティノープル占領のための戦争ゲームがすさまじい勢いで再開された。

当時の雰囲気は、1910 年 10 月の、コンスタンティノープルを占領するための計画が描かれていた参謀本部の覚書によく表れていた。すなわち、最初に、アドリアノープルとアンカラへの鉄道と電信線が、「キリスト教徒集団の工作員(マケドニア人およびヨーロッパのブルガリア人、アナトリアのギリシア人、アルメニア人)」によって切断される。するとすぐに、市内のロシアに友好的なキリスト教徒が「金角湾に架かるすべての木製の橋を焼き払い、スタンブルに火を放つ。-主にイスラム教徒の地区は、ロシアの目的のために都合がよく、”焼き払うのに都合のよい木造住宅”であった。 (pochti splosh"iz"derevyannyikh domov). その後、ロシアの水陸両用上陸作戦と連携して、ペラのキリスト教徒が立ち上がる。ロシアの黒海艦隊が海峡を確保すると、それは「バルカン半島におけるトルコ支配の消滅※」を告げるだろう。23
※「トルコ支配の壊滅」が美辞麗句以上の何かであったことを示すために、この正確なフレーズがこの文書の中で3回別々に出てくる。このフレーズのバリエーションは、コンスタンティノープルを標的とした水陸両用作戦に関するロシアの海軍および陸軍のほぼすべての政策文書に登場する。

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　したがって、ロシアの統治者は、（ストルイピンも含めて）ほとんど平和主義者のようではなかったのである。彼らが恐れていた相手は、ペルシア人、トルコ人、中央アジアのカーンとトルクメンの部族であった。これらの敵がヨーロッパ人よりも戦いやすかったという理由だけでなく、彼らを打ち負かすことで、たとえ問題があったとしても、本当の利益が得られたからである。

ロシアが実際に経済の近代化を完了するには「20 年間の平和」が必要であるというストルイピンの有名な 1908年の発言は、サゾーノフの平和主義的意図の公言のように、ロシアの脆弱な西側国境に対するヨーロッパの戦争の見通しに条件付きで言及したのであった。

一方、土地シンジケートと領事代理の領事が、アナトリア、ペルシャ、アフガニスタン、中国のトルキスタン、モンゴル、満州への（ロシア）帝国からの静かな侵入を続けたため、ロシアの東部と南部の国境での多年にわたる小競り合いは続いていた。もちろん、直近の日本との戦争は帝国の後退ではあった。しかし、それはロシアの拡大を、南と南西の国境に、巧妙により集中させただけのことであった。

＜ロシアにとってのガリツィア、ドイツのとってのポーランド＞
　対照的に、西側への拡大は、ロシアにとって問題を生み出すだけであった。ポーランドは、ロシアの軍事計画の化膿した傷であり、何百もの不安な分析と終わりのない戦争ゲームの対象であった。

その理由は、地図を一瞥するだけで十分に理解できる。長さ 230 マイル、幅 200 マイルの領土の隆起である「ポーランドの突出部」は、ドイツの東プロイセンとオーストリアのガリシアの間に直接突き出ており、その側面は自然の国境によって守られていない。

厳密に言えば、ペテルスブルクが「ポーランド立憲王国」に固執することは、ロシアのより賢い将軍たちが気付いたように、まったく意味がなかった。パリツィンの後継者である参謀本部総局長V. A. スホムリーノフ、(彼はその権力を奪取、戦争大臣としての計画を引き継いだ)、および彼の補佐ユーリダニロフ将軍は、1910 年の更新されたプラン19 で、ロシアの配備を東の方に向けて、ロシア中心部に向け直した。 ポーランドの要塞を取り壊すところまで行き、ドイツが愚かにも侵略した場合、ドイツをナポレオンのような消耗戦に誘った。その重要な副次的利益は、トルコに直面しているコーカサス軍の戦力が 2個軍から 3個軍へと効果としては2 倍になったことである。24（訳注；c.f.”夢遊病者たち”ｐ337～）

　当然のことながら、スホムリーノフの（新たな）戦略はパリを完全なパニックに陥れ、V. N. ココフツェフ (当時の大臣評議会議長) や大公ニコラス (当時騎兵隊の検査官) などのロシアの親フランス派のかんしゃくを引き起こし、スホムリーノフの計画を声高に否定することによって、フランス系ロシア人を救うために協力した。そして、ヴィスワ川に架かる鉄道橋を守っていたノヴォゲリエフスクやイヴァンゴロドなどの少なくともいくつかの要塞を彼の破壊作業員らから救出した.。25

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しかし、プラン19は1914年まで存続した。.1913 年 10 月の陸軍の大計画におけるポーランドの戦略的鉄道に対する有名な刺激策は、フランスの主張に基づいて提供された。結局のところ、それを支払ったのはフランスの資本であった。

しかし、ポーランドの鉄道網を構築することは、ロシアの優先事項ではなかった。（実際、ロシアは、それらがドイツの手に落ちることを恐れて、ニーメン川以西に鉄道を建設することを拒否した。.26

スホムリーノフが思い通りに行動していたら、ポーランドの要塞は最後の 1 つも破壊され、5,000 門の重要塞砲にお金が無駄に費やされ、その代わりに野戦の移動式砲兵に費やされていたであろう.27

　ロシアにとってのポーランドの戦略的重要性は、実際には、実質よりも象徴的なものであった。1870 年代以降、汎スラヴ主義者（ロシアが頂点となってスラブ民族を統合していこうという主義）のプロパガンダは、ロシアの外交政策に対して途方もなく新しい疑似義務を生み出した。サゾーノフのような中程度の気まぐれな「国民的リベラル」でさえ、ロシア系ポーランド人に対するドイツまたはオーストリアの影響力の増大が、ウクライナ人のような従属的なスラブ人は言うまでもなく、セルビア人やブルガリア人のようなスラブ人の保護者の忠誠心に疑問を投げかけるのではないかと心配していた。

国家自由主義主義の教訓をさらに進めて、外務省の近東部門の責任者であるグリゴリー・トルベツコイのような「ネオスラブ主義者」は、スラブの連帯から離れて、ロシアがポーランドに自治を提供することを望んだ.。.ポーランド立憲王国がドイツの影響下に置かれれば、さらに進んで、ロシアはバルカン半島における影響力に別れのキスをすることができただろう。ブルガリアやセルビアからのあらゆる後退は、ペテルスブルクの軌道内にポーランドを包んでいる絆を緩めたかもしれない。逆に、バルカン半島（またはトルコ）でのロシアの勝利は、オーストリア・ハンガリー・チェコ、クロアチア人、ポーランド人、セルビア人、そして「ルテニア人」、つまり小ロシア人等の間での期待を刺激しただろう。28

理想的には、ロシアの外交政策は、ネオスラブ主義者の考え方では、「スラブ民族をトルコ、ハンガリー、ドイツの束縛から解放すること」や「強力で精力的なスラブ連合におけるこれらの民族の連合」を目指すこととなる[29]。

あるいは、グリゴリー・トルベツコイの志を同じくする兄弟 E. N. トルベツコイが思い出に残るように言ったように、「コンスタンティノープルへの道はワルシャワを貫いている」のである。30

　空想的に響いたことではあろうが、ロシア帝国主義者らは、トルコを解体することに真剣に取り組んでいた。 そして、1912年から1913年のバルカン戦争中のBallplatz（オーストリア）の明らかな無能さをきっかけに、オーストリア - ハンガリー帝国のそれをも。.

p22
サンクトペテルブルクのフランス代理大使が 1914 年 3 月に観察したように、「[バルカン戦争中の] ロシアの政策決定者の目から鱗が少しずつ落ちた・・・オーストリアの嘆かわしい業績は、ウィーンが無力であり、三国同盟の唯一の実権はベルリンにあることを露呈させた。.31

皇帝ニコラス 2 世自身は、1913 年 4 月にイギリス大使に、「オーストリア帝国の崩壊は時間の問題に過ぎなかった」と語った[32]。

サゾーノフがバルカン戦争後の首都の雰囲気について回想したように、「社交界では...宮廷や軍事センターと緊密に連絡を取り合っており、オーストリア-ハンガリーとの和解に好都合な時期が近づいているという根強い確信があった。33

1914 年 4 月までに、ペテルスブルクで最も影響力のある新聞である Nome Vremyaは、オスマントルコの崩壊と同じくらい避けられないように思われるようになったハプスブルク帝国の分割を公然と提唱していました。.34

オーストリアに対する征服戦争をさらに魅惑的なものにしたのは、高位の裏切り者であるアルフレッド・レドル大佐が、1913 年にロシアに対するオーストリアの動員計画の本物のコピーをロシア人に売ったという事実であった35。

オーストリア領ガリシアは、ロシアの将軍たちにとって、ポーランドの突出部がドイツ人にとって魅力的だったのと同じくらい魅力的なのであった。それを占領することで、ロシア軍は、露出したポーランドの側面を心配する必要がなくなり、結局のところ、これらの要塞すべてが何らかの利益をもたらす可能性があった。

p23
　1914年頃のオーストリア領ガリシアに対するロシアの欲望は、単なるジャーナリスティックなゴシップではなかったということが、直近に任命されたフランス駐在ロシア大使であるモーリス・パレオログによって確認されている。.

1914 年 5 月初旬、パレオローグは「大臣評議会の影響力のあるメンバー」（おそらく農業大臣の A. V. クリヴォシェイン）との会話をパリに報告せざるを得ないと感じた。その中でパレオログは、ロシアの大臣に、ハプスブルク家の長年の皇帝であるフランツ・ヨーゼフ1世が老齢のために辞任した場合、どうなるかを尋ねた。質問をし終える前に、パレオローグは回想した。「[クリヴォシェイン]が私に割り込んできました。「まず、ガリツィアを併合せざるを得ない。戦争大臣スホムリーノフ将軍は、「ガリツィアの所有がロシアの国境の安全にとって不可欠である、その上そこは、基本的にロシアの領土である、とつい先日私に説明しました。」 36。

　当時、1914 年にロシアの戦略家たちの注意を引くために 2 つの「東方問題」が争われていた。しかし、サゾーノフと将軍たちがオスマン帝国とハプスブルク帝国の差し迫った崩壊を見ていた貪欲さを、ロシアが真の受益者になるという自信のようなものと誤解するのは間違っているであろう。

ロシアの政治家たちは、クリミア戦争の惨憺たる結果に何十年も悩まされていた。.ロシア軍がウィーンでのハンガリー民族主義者の蜂起（訳注；1848年；諸国民の春）を鎮圧するのを助けてから6年後、皇帝ニコラス1世の名目上の同盟国であったオーストリアは、ニコラス1世の軍隊がイギリス、フランス、サルデーニャ、オスマン帝国と戦っている間に、彼の軍隊にルーマニアからの撤退を命じてニコラス1世を裏切った（訳注；セヴァストポリ包囲戦 (1854年-1855年)）。

この「クリミア連合への恐怖」は、1878年以降、さらに困惑させる「ベルリン会議症候群」への恐怖に取って代わられた。ロシアは、一度も敵の連合が結ばれなかったトルコと戦争をしたにもかかわらず、外交上の敗北によって、戦場での勝利を根こそぎ奪われた（訳注；露土戦争に勝利したロシアが、１８７８年のサン＝ステファノ条約でセルビアなどのスラブ系国家の独立、ブルガリアの自治獲得など有利な条件を獲得したが、イギリス・オーストリアが反発、ドイツのビスマルクが調停に乗り出してベルリン会議が開催され、その結果締結されたベルリン条約によって、ロシアおよびスラヴ系民族の獲得範囲は大幅に後退することとなった。）

上記で引用した 1910年の参謀本部の覚書の中で、その作者は「1877 年から 1878 年にかけての重大な過ちを繰り返さない」ことを誓っている。すなわち、バルカン半島を通って陸路でトルコに侵入したことで (コンスタンティノープルに直撃する迅速な水陸両用上陸部隊を直接送ることによってではなく)、ロシアはベルリン会議につながることになった敵対的な連合をよせ集めるためのあまりにも多くの時間的余裕を列強に与えてしまった。したがって将来のいかなる戦争においても、ロシアはより迅速に攻撃しなければならないだろう（訳注；だから1914年7月30日に早々と動員をしたのであろう）.37

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