| Music in the Middle
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Age chapter7 p198～230 中世初期の世俗音楽は、宗教音楽のようには、きちんとした形ではなかなか保存されていない。世俗の歌は明らかに、ローマ、ルーアン、メッス、St.Gall,ソールズベリー、そしてあらゆるキリスト教ヨーロッパの聖歌隊におけるような管理はなされていなかった。 世俗の歌は世俗歌手らによって、口頭で受け継がれ、そのためにメロディの変化は避けられなかった。正確な記譜法やメロディを再現することは神聖なことであるという概念の欠落のために、もっとも古い世俗メロディを正確に回復させることは、不可能なのである。（なお、メロディを再現することは神聖なことであるというその概念は、パート譜を作る慣習（後にそれは衰退したが）ができあがる前には、グレゴリオ聖歌に関しては広まっていた）。 多くの写本は、9世紀から１１世紀に遡れるが、staffless neimesで書かれている。しかし、こうした非典礼的メロディを歌うことは、典礼的メロディのように、年ごとに定まっているわけではないので、こうした写本のネウマ譜は、staff notaitonや後の計量的記譜が現在のように一般的になった時代には、おそらくは、死んだ文字に近い形になっていた。 我々が知っているようなあらゆる機会において、こうした内容は（もしも我々がUt queant laxisに音楽がついた、diastematicな記譜をされたホラチウスのオードを含めなければ）、staff notationで書き継がれて現存はしていない。現代譜へのtrascriptionsの試みは、大部分、推論にとどまっている。 p１９９ ひとつの9－10世紀のマドリッドの写本は、Visigothic ネウマで記され、西ゴート族の王、Cindasvinthusと女王Recibergaの死について書かれている。こうしたラテン語テキストのplanctusは、7世紀からのものと信じられており、聖Eugeniusによって作曲されたと信じられている。同じ時期の別のパリの写本は、ラテン語テキストによる歌の形が含まれ、興味のある歴史的イヴェントを扱っている。こうした作品群は、シャルルマーニュの死等のlamentsを含んでいる。 その概要がよくわかっている初期中世の非典礼的なラテン語歌のひとつに、 「Sibylの歌」がある。それは聖歌を構成しているわけではないが、何世紀にもわたり、ほとんど変化を受けることなく続いてきた。その音楽のもっとも初期の知られた版は、staffuless neumesで記された、１０世紀中頃のスペインの写本中に見られる。  １１～１６世紀のフランス語、イタリア語、スペイン語の写本による多くの版が現存している。「Sibylの歌」のオリジナルはギリシャ語であり、少なくとも５世紀には聖AugustineのDe Civitate Dei（神の国）の第１８巻、第２３章に見られる。ギリシャ語の17行の冒頭をつなげると、”jesus Chris, Son of God,Savior"という意味になる。p１９５で見たように、「Sibylの歌」は、簡潔な劇的場面として演ぜられた。 p200 ラテン語の歌は、中世のverseの歴史において影響を与えている。最近では、そうした歌はトロ馬ドール、トロヴェール、ミンネゼンガー等の母国語詩を直接担っている、と言われている。それらは中世ラテン語verseに見受けられるいくつかの形式を含んだり、借用したりしている。 カロリング朝の宮廷詩は、goliardsの歌によって受け継がれてきたが、それもまた、ラテン語で書かれている。goliardsは、特に、ドイツにおいて活躍をしていた。その名前の由来は、彼らが自らのパトロンと看做していた神話的な”Bishop Golias"から由来すると考えられている（訳注；Hoppin著「MEDIEVALMUAIC」では、違う解釈となっている。http://machikun.la.coocan.jp/medievalmusic2.htm参照）。彼らの最初の活躍時期はオットーの治世と一致する。その活躍は12世紀～13世紀初期を最高としていた。 彼らの歌の主題は多岐に渡っている。彼らは、非常に悪評であった。彼らの作品はしばしばバブル的であり、時に猥褻であった。彼らの行動は、おおむねこのようなものであったが、いくつかのversesは、上演された。酒飲みの歌である。”The Confessio of Golias”は、12世紀に栄えたArchipoetaと呼ばれる。 こうしたgoliardsたちの不名誉な行動と教会に対する風刺は結局、”牧師の特権”によって否定された。彼らの影響力は1225年頃には衰え、さまよう学生は居住する学生に置き換えられた。 p201 主なgoliardのコレクションは、ケンブリッジの11世紀の写本に含まれている。大英博物館にあるセットは、Walter Mapによって記述された。彼は、アルザス地方の伝説形成にも関わったと考えられている。ベネディクトボイレンの修道院１３世紀の写本は、カルミナ・ブラーナの名のもとに、1847年に出版されている（それらは音楽はほとんどついておらず、大部分の現存するgoliard songのように、stafflessネウマで書かれている）。 ケンブリッジ写本は卑猥なO admirabile eneris Ydolumが含まれている。それはメロディはstaffelessネウマで書かれている。このメロディはMonte Cassinoの写本にも保存されているが、音高は解読できていない。これは中世の世俗テキストに関連するもっとも初期のメロディであり、それゆえに非常な関心が持たれている。しかし不自然ながら、それは、Monte Cassinoの写本中で、ローマを讃えたpilgrimsの歌のverse O Roma nobilisと結びついている。聖と俗の境界線は、その当時では曖昧だったのである。 ＜単声conductus＞ 13世紀の中世作家は、11世紀から１３世紀のある種のラテン語の歌を大雑把に、conductusと命名した。以下のような２つの特徴がある。。 （１） テキストは通常metricalである。中世ラテン語の音律の専門家は、初期のconductiが、rondearu,ballade,virelaiのmetoricalな形式の原型であるとしている。いくつかのテキストはlai（セクエンツィアの世俗版に該当する）の形式を取っている。 （２）音楽は概して、グレゴリオ聖歌のレパートリー（たとえば、トロープスやセクエンツィアのように、これをパラフレーズ化したもののように）からは引用されず、また、既存の有名なレパートリーからも引用されていない。 単声conductusのもともとの性質はよくわからない。当初、conductusは、行列（司祭の聖務が教会のある場所から他の場所へconductされる時）の最中に歌われたトロープスや、典礼遂行時のその他の休止の時に歌われたものであったと思われる。こうしたことをもとに、Spankeはこうした作品を、１０世紀かそれ以前の写本中のBenedicamus トロープスと関連して、conductusの初期形態であったconductusとして、Versusと呼んだ。 conductusのルブリックは、1140年頃の２つの写本に最初に現れる。そのうちの一つはBeauvaisのフランス語写本であり、ダニエル劇を含む典礼劇が含まれている。この劇での登場人物について歌われる一節が、conductiと呼ばれている。 もうひとつの写本は、有名なカリクストゥス写本で、”conducta sancti Jacobi"と呼ばれる４つの行列歌が含まれている。テキストの終わりに現れる押韻したラテン語のinstructionsは、これらの歌のうち３つが聖ヤコブの聖務日課での朗読を導く聖歌として採用されたことを明らかに示している。 しかし12世紀末までに、conductusという名前は、その想定されてたもともとの意味合いを失っていった。12世紀末～13世紀の写本には多くのconductusが存在するが、テキストも音楽も独立した音楽形式としてのconductusの性質に光を当てることはない。なぜなら、テキストは宗教的でも世俗的でもよいため、重苦しくても軽快でもよいため、音楽はもっとも単純なhymnの節からセクエンツィアをベースとする精巧なパターンまでその形式の幅が広いためである。 単声conductiのもっとも大規模なコレクションは13世紀のF写本である。大部分は宗教的な内容であるが、非典礼的なもの、さらにはその他の世俗的なものもある。ほとんどの作品の作詞者はPhilippeであり、ペロタンは多くの単声conductiを作ったと信じられている。しかし実際に彼の作とはっきりしているのは、１曲だけである。 同じ写本の最後の冊子では、60の短いラテン語作品が見られる。それらは、rondelliあるいはrotundelliと呼ばれている。それらは有節歌であり、最も単純なタイプでは、それぞれのスタンザは4行からなっている。そのうちの第2行、第４行はrefrainsを伴っている。メロディパターンはaAbBである（訳注；大文字はrefrainを伴うことを示す）。 このコレクションのrondelliの約半分は、より精巧であり、フランス語のrondeauの音楽形式はaAabABとなる。このテキストの興味深い点は、refrainのいくつかは聖務日課やミサのGradualsからの応唱から取られているということである。そのオリジナルは散文であり、rondellusの作者はテキストを詩の音律に合うように適宜変えている。 p２０３ ＜ジョングルール＞ しかしWayfarersのようなgoliardsで、必ずしも教育を受けているわけではなかた人たちは、フランス語でjongleurs、ドイツ後ではGauklerと呼ばれていた。彼らは９世紀頃から現れ始め、ラテン語のマイムの子孫であった。ジョングルールやGauklerは、めったに作曲はしなかった。こうした人たちは、他人が書いた歌を歌う貧乏な遊蕩人であった。ヒゲをはやして騙し、協力者を手元に置き、要求の応じて、結婚式を活気づかせたり、スキャンダラスに振舞ったり、司祭の絶望を誘ったりした。しかし、こうした人たちの間でも、まじめに仕事をする人もおり、良い社会を上演するための十分な才能を持つひともいた。もしも幸運に恵まれれば、かれは封建的一族における地位のためにさまようことやめたことであろう。そうでなければ、彼は宮廷から宮廷へと旅をし、彼のレパートリーを披露した。これが、ジョングルールたちのサービスの需要がないレントに招集された吟遊詩人の”楽派”を補充ものである。 ジョングルールたちのconfrerie（兄弟）は、１０世紀末～11世紀始めのFecampに存在する。こうした”楽派”は学校ではなく、出会い場所として選ばれた中心街に、雇用者や彼ら自身の発案によって送られたジョングルールたちの集まりであった。 そのレパートリーはラテン語のみならず、各国の言葉であり、chansons de gestのみならず、その他のトロバドールやトロヴェールたちの作品も含んでいた。絵画などが示す通り、ジョングルールたちの演奏は、いろいろな楽器を使っていた。しばしばジョングールたちはトロバドールやトロヴェールたちを助けた。 声楽にたいして、器楽がどれほどのウェイトを占めたのかはよくわからない（器楽ダンスは別として）。現存する写本は単声の作品のみである。器楽は単純に、おそらくは即興で、演奏されたことだろう。概して、声楽の伴奏としてではなしに。 ＜chansons de gest＞ chansons de gestはシャルルマーニュやローランド、ウェーバー作「オベロン」の英雄であるHuon de Bordeauxなどの行動の叙事詩である。音楽はメロディの簡易なスナッチから成っている。それは通常はひとつのシラブルにひとつの音符がつき、連祷のフレーズのように何度も何度も続いてリピートされる。 音楽と行を一致させることは優しい。なぜなら、それらはすべてにわたって、等しい長さであるからである。スタンザ形式や節の繰り返しに陥ることはないが、”thought"の終わりまで、休みなくお互いが続いていく。不均等なparagraphs-in-verseは、laissesあるいはtiradesとして知られている。メロディ定式は、よりよくリピートするために、メロディの半終止（laisseの終わりで、最終的な終止を導くもの）で終わるように見える。laisseのあとには、最終終止の定式は、歌手が休止している間、器楽でリピートされているように見える。最終終止は、器楽で延長され、caudaは、歌手がlaisse終止で文字通りのリピートを行う。so 真のchansons de gestの現存曲は、Adam de la Halleの牧歌劇Le Jeu de Robin et Marionと関連している。メロディは2つの動機からなる。  テキストの最初の6行は、完全な”thought”を形成している。もしも器楽による後奏がなされるならば、最初のlaisseの形式は ab ab ab ab ab ab c. となる。全体をより卑猥に復興させた作品が、GennF.41.にある。写本中に保存されたスナッチがchansons de gestであるかどうかは定かではない。12世紀の写本MS Digby 23) Chansons de Rolandは、叙事詩の上演におけるやり方を示しており、現存するスナッチのひとつは所定のメロディであるかもしれない。 残された素材の欠乏は驚くことではない。おそらくは、書かれたものは、ほとんどないのだ。記譜されたものは、想起のためにはほとんど必要なかった。短く、一貫してリピートされた音楽は、それを耳で聴いて再生しようとしたプロの演奏家や聴取者の記憶の負担にはならなかった。 我々は、グロケオのTheoriaにおける記述において、演奏のやり方を再建することができる。その論文は、1300年以前の中世世俗音楽に関するかなりの情報を含んでいる点において、重要である。 chante-fableは、ある部分は散文であり、ある部分はverseであり、chansons de gestとは形式的には異なるが、よく知られたAucassin et Nicoletteの魅力的な詩の部分（それはchante-fableである）は、chansons de gestのlaissesの部分を構成している。その音楽は残されている。 それはlaissesの具体的定式のみならず、caudaも含んでいる。このcaudaは、期待通り、最終終止している。を形成している。しかし、定式の後半部分のために単に使われていることでもある。小さなtuneのメロディ的関心は、その形式のいくつかの現存にもかかわらず、むしろ薄い。 p２０５ ＜トロバドールとトロヴェール＞ トロバドールとトロヴェールの叙情的な作品を取り上げる。彼らは、詩人でありかつ音楽家でもある。その詩は、歌われることを意図されているのであって、語られるものではない。トロバドールであり、ダンテの「神曲」にも登場するFolquet of Marseilles（d.1231)は、”音楽のないverseは、水のない製粉工場のようなもの”と書いた。 彼らは、1487年以降はフランス王国の南西部となったプロヴァンス地方出身であった。彼らの言語はオック語で、Midi地方の方言であった。トロヴェールは彼らトロバドールの北フランス地方の模倣者で、彼らの言語はオイル語であった。それは後に近代フランス語となった。もっとも単純であり得そうなフランス語動詞はtrouverで、名詞はtrouvere,であるが、それはプロヴァンス語のtrobar,trobadorであり、それらはラテン語のtropusと語源的に関連している。 トロバドールとトロヴェールは、ジョングルールたちのような放浪はしなかったが、その初期の時代には、貴族、プリンス、高い地位の女性といったランクの人たちであった。彼らは11世紀終わりから13世紀終わりまで、200年にわたって栄え、騎士時代のもっともよい構成者であった。彼らの歌は、多くの場合、社会や政治の世界を反映していた。1095年に教皇ウルバン2世によって始められた十字軍をも扱った。 ヘンリー2世とその息子の諍いを生じさせた（プランタジネット朝は1154年にアンリにより成立した）Bertran de Bornによる２つのメロディが現存している。彼はまた、”parted perons so united"であり、ダンテの地獄編でその手に頭を持っていると表現され、そのために彼の頭は胴体とくっついている、と言われた。 p２０６ リチャード獅子心王自身もトロヴェールであったが、1199年に死に、彼の死は、プロヴァンス人のconfrereでおよそ1216年に亡くなったGaucelm Faiditによる高貴なlamentで嘆かれた。 アルビジョワに対抗した1208年の十字軍は、トロバドールにとっては、重大な打撃となった。Peire Cardenalは、このような異教徒の抵抗が容易に十字軍を促すようになる、という風刺の歌を歌った。 こうした歌手たちの音楽は、あちこちの写本に保存されている。多くはきらびやかに装飾され、疑い無く、高貴なパトロンや芸術遂行者のライブラリーのために作られた。もっとも控えめなものは、あまり豊かでないジョングルールの財布にあった。音楽は、音符の下に書かれた第１スタンザのテキストとともに、歌の最初に書かれていた。続くスタンザは同じメロディで歌われ、その後音楽のないスタンザが続いた。現存するシャンソン集は13世紀から１４世紀のもので、それらの内容は従って、もっと古いものである。 2600の言葉のみのものが残されているが、トロバドールのメロディが現存しているのは、わずかに２６４のみである。北フランスの現存物は量において多い。Johannes Wolfは、その数を、1400のメロディと4000の詩があると見積もっている。 写本の多くは譜表を使った聖歌記譜を用いている。そのために、読譜は容易であり、比較的な音高も決定できる。歌の１/３以下は、13世紀のパリのシャンソン集で使われているような計量譜で書かれている。 リズムを決定する作業は、多くの独自性を示し、論争がある。多くのメロディは順序だったリズムで歌われ、すなわちそれらは写本がどうあれ計量音楽の形式で成り立っており、とくに確実である。それらの多くはダンスソングである。これらは明確な拍子で演奏されなければならない。モテット（point against point様式での制限がかからないパート譜作品はそれゆえに、パートが演奏者に委ねられているやり方で、音価の計量を要求する）がリズムをはっきり示さない記譜で書かれているところでは、同じ写本に含まれるいくつかの単声の歌は、明らかに同じ書記の手により、同じシンボルにおいて、計量的とみなされているということが主張されている。。 計量音楽の記譜システムは、1230～40年以降のいくつかの論文で論議されているが、それらはほとんどすべてポリフォニー音楽が対象となっている。しかしこうしたシステムは、記譜に対して計量ではなく、モードシステムと呼ばれるリズム解釈を課す別の方法に先鞭をつけられていた。このモードシステムは、トロバドールとトロヴェールの歌に適用されるべきリズムの糸口となる。 リズムモードは中世の理論家によって、すべては3拍子で論ぜられてきた。こうしたリズムモードは、表向きは少なくとも、必ずしも忠実ではないにせよ、古典的な韻律（prosody）に由来する。その数は論文によって変わり、著者の選好によって、４から９となっている。もっとも重要なリズムモードは、第１～第３モードである。datylicモード（第３モード）では、第２のアクセントが出現する。（したがって、３/２拍子ではなく６/４拍子と読むべきである）。第４モードはトロバドールとトロヴェールの音楽では使われない。 p２０７ 古プロヴァンス語や古フランス語は近代フランス語のようなアクセントを完全に欠いており、モード理論は、音楽は言葉のアクセントに応じたアクセントを持たなければならない、そして記譜で示された音価の欠落は大きな問題ではないと提唱していた。なぜなら歌手たちはテキスト上のアクセントの状況を見れば、どのようなリズムを使用すべきかを知っていたであろうから。 それゆえにたとえば、以下のような行は第１リズムモードとなることが明らかなのである。  （中略） p２１１ トロバドールとトロヴェールの活躍は、以下の３つの期間にグループ化される。 （１）11世紀後半から12世紀中期 （２）12世紀中期から13世紀中期 （３）13世紀中期以降 トロバドールはより前の時代であり、トロヴェールはより後の時代である。最初期のトロバドールは、その作品として、ギョーム９世のいくつかがある。彼の詩とそれらのうちのひとつのためのメロディは現存している。その他の重要なトロバドールには、メロディとともにその詩が現存している、Marcabru of Gsconyがいる。Jaufre Rudel(fl.1130-41)はRostandのLa Princesse lintaineの英雄であり、Bernart de Ventadorn(d.1195)は台所係の息子であり、もっとも洗練されたトロバドールであり、顕著なメロディ作者であった。Guiraut de Bornelh(d.c.1220)は、同時代人から”Master of the Troubadours"と呼ばれていた。Guiraut Riquier(d.1292)は、one of the best of the bandと言われていた。彼は、暖かく文化的社会であったプロヴァンス地方が野蛮主義でやられたアルビジョワ十字軍後に生きた。この戦争は、教皇イノセント３世と北フランス人による南フランス人への対抗であり、アルビ派を根絶するためのものであった。そして、南部の詩や音楽の成長もまた破壊された。Guirautは書いた。「歌は喜びを表現するが、悲しみが私を抑圧する、私は遅く生まれすぎた」。 p２１２ トロバドールの芸術は、ギョーム９世の孫エレアノールが、フランス王ルイ７世となる予定であったフランス王子と結婚した時に北フランスへ移植されたと言われている。彼女は確かにかなりの影響を及ぼしたではあろうが、しかし、他の力もあったことだろ。ラテン語歌や十字軍のような、南部と北部が混ざったようなものが。エレアノールはアキテーヌで、彼女が一緒に北部へ連れていった、Bernart de Ventadorn（彼のベストソングは、アキテーヌに宛てたものだった）のパトロンとなった。エレアノールは、北部の詩人に、南部の詩人に倣うよう奨励した。 もっとも傑出したトロヴェールは、Gace Brule(d.c.1220)であった。彼の歌のひとつはThibout of Navarreへ宛てられ、ダンテの（俗語論）De vulgari eloquentiaで賞賛されている。Conon de Bethune(c.1150-1224)は政治家でかつ兵士であり、1204年の十字軍にも従軍し、コンスタンチノープルで活躍した。彼の現存する歌は２つのchanson de Croisadeに残っている。Blonde de Nesleは、リチャード獅子心王が獄舎に幽閉された時に活躍したことでヨーロッパ中でキャロルで歌われた。Chatelain de Coucyは1186-1203年の間、有名な封建的要塞、Coucy城の城主であった。Colinmuset(13世紀初期）はジョングルールに当てはまるが、真のトロヴェールと区別されている。ティボー４世は、Champagneの公爵で、Navarre王であったが、フランス王に対する封建的義務を放棄した。しかし、プロヴァンス語形式のラブソングの作者としては、並ぶものがいなかった。Moniot d'Arrasはブルジョワの一人であり、トロヴェールの発展が貴族たちの中でほとんどその発展を達した後に、Arrasに輝かしき終了の動きをもたらした。Arrasは、そのタペストリで有名になる前の、13世紀のpuy(academy)が1世紀の間輝いていたところである。Adam de la Halle(c.1230-c.1288)は、トロヴェールとしてパート音楽の作曲家であった。また、牧歌劇Le Jeu de Robin et Marionの作者であった。また、初期のオペラコミックも書いていた。この作品はAdamがナポリのフランス人宮廷のために書いたものだが、最初に1275年あるいは 1285に上演された。その歌はフォークソングとされAdamによって、彼自身の作品というよりは、劇化された。記譜された音楽は、メロディのみが現存している。airsはおそらく、バグパイプのような楽器の助けのもとで上演された。 p２１３ 以下のリストは、これまで論じた人たちの詩（メロディを伴う）の数を示している。詩を作った人たちによるそれぞれのメロディは確かではない。「騎士的な詩人は彼らのversesを書き下ろすことはできない、音楽を作ることも記譜することもできない、ジョングルールたちは新たなメロディを書いた詩の数を減らした」とされている。 たとえば、我々は、ひとつの詩にひとつのメロディしかつけないが、Chatelain de CoucyのMercirci clamantには２つのメロディがある。Adan,vaurries vous manioirには、３つのメロディがある。そのテキストは少なくとも部分的には、Adam de la Halleの作である。他の例でいえば、同じメロディはしばしばvariantを伴って、いくつかの資料に現存している。 p２１４ ラブソングは、かつては、真の騎士道の表現とされてきたが、今では、想像の飛行、洗練された社会の喜びへの貢献、勝利の認識手段などとみなされている。音楽的詩的思想は時にはささいなことである。示された形式の変化を賞賛して、我々は内容を過大評価してはいけない。しかし、真の感情が時に詩と音楽に浸透することは、Bernart de Ventadornによる歌Can vei la lauzeta moverや Pois preyatz me senhoeの調査から推論される。ここに後者を示す。  どんな歌もそれより前の歌と同じであってはならない、という規則があるが、些細な変化はある。多くのラブソングのメロディは、宗教や政治的テキストから取られる。 ラブソングあるいはcansoの他に、、北部にも南部にもある叙情詩の主なタイプにはjoc partit(jeupati)あるいはpartimenがある。それは詩的論議、あるいは対話であり、通常は、愛の問題を取り上げている。p213で取り上げたAdam de la HalleのAdan,vaurries vous manioirのように。 tensoは、より一般的な順序の問題をより追求したものであるが、やはり論争である。しかし、実際よりは見せかけ的要素があり、ひとりの歌手が無言ではあるが明確な”命題”に対抗する形式となっている。 pastourelleは、騎士（詩人）が慎重に羊飼いの娘からの愛を得ようとし、高徳が必ずしも愛の勝利のつながるわけではないことを扱う。 chansons de toile(spinning songs)は、基本的性格として、女性を不倫の妻として扱い、さらに、いない恋人に恋焦がれ、彼女の親戚が彼女の男の選択に反対すると不平を言う女性を扱っている。 alba(dawn song)は興味深い形式で、歌手はふたりの恋人の警戒している友人であり、彼は一日の休息を見て、アナウンスする。以下のGuiraut de Borneill作のalbaReis gloriosは、その音楽の美しさに注目すべきである。その音楽は、ドーリア旋法の使用だけではなく、その形式やメロディの輪郭に教会の影響を示している。 p２１５ albaの例  訳注；下線部位 Et ades sera l'alba!"はrefrain この作品にはいくつかのtranscriptionがあり、リズムの解釈がかなり異なっているが、すでに出版されたものである。Aubryは私たち同様、第３モードを適用しているが、異なっている。（以下略） トロバドールとトロヴェール主な詩の形式には、sirventesのような、ある種の相対的な形式、そして宗教歌も含まれている。sirventesの主題（奉仕の歌、もともとは偉大なる領主を持っているトロバドールによって書かれた）は、政治的道徳的なもの（たとえば、p２０６で言及したPeire Cardenalの抵抗のような）であった。 p２１６ これは、すでに知られているメロディで歌われることが意図されていた。sirventesに関連しては、planh（朝の歌、すなわち、獅子心王の死に際しての嘆き）、そしてenueg（風刺）がある。後者においては、詩人が特に世の中で彼に気に入らないことへの説明であった。特殊な関心のあるenuegは、Conon de Bethuneによる傲慢な伯爵（十字軍のための基金を提供した）へのエネルギッシュな告発である。メロディはオリジナルを保っており、大部分のchansons de Croisade（そのほとんどは粗野で優美さに欠けている）とは区別される。それはvirtue of a fittingによって魅力的であり、無口な単純さがある。 宗教歌はこの期間の終わりまである。Guiraut Riquierとそのmoine-trouvereの作品が主である。彼はＢ ｅｎ ｃｄｉｃtｉｎ ｅ Ｇ ａｕtie ｒ d ｅ C ｏiｎｃi(d. 1236)と呼ばれ、その大規模なコレクションLes Miracles de Nore Dameは、メロディを伴う３０の歌がふくまれている。p２０２で扱ったペロタンのconductusの冒頭句は、Gautierの作品に現れ、それは、Bernart de Ventadornのcansoの中にある。 我々はおそらくは、世俗の単声曲のメロディ定式の採用の証拠をここに見る。作詩の観点からすれば、GautierのLes Miraclesは、Alexandrine（アレクサンドラン）の使い方の初期の例として価値がある。それは、1115年頃の写本のPelerinage de Charlemagne a jerusalemに現存している。 非常に多くの詩の形式がある。 メロディは通常、オクターブ以内の範囲で収まっている。６度程度が普通である。8度は稀である。 多くのメロディは、ひとつないしいくつかの教会旋法で形成されている。ドーリア旋法やミキソリディア旋法が特に好まれている。したがって多くの場合、短調、あるいは長調の枠内である。グロケオははっきりと、世俗音楽は、典礼音楽とは対象的に、教会旋法には縛られていない、と言っている。musica falsaの規則が適用される程度は曖昧である。 現代譜へのtranscriptionsや演奏に際しては、三全音を避けるために、ラ音に隣接したシ音を♭させることが多い。シ音の♭は、しばしばリディア旋法を長調へと導く。音程の7度の跳躍は、それがカデンツの手前の音の場合で、もしもそれがまだ終止より下の半音でないのであれば、それはしばしば引き上げられて導音を形成する。ここに我々は、 許容されなかったsubsemitonalのemmelesによって初期のチャントで強く示された傾向を見る。その傾向はおそらくは、半音形成への嫌悪とは対照的なものである。 フレーズは通常４小節（measures)よりなり、periodsは８である。３小節句と６小節periodsが他の組み合わせと同様に現れる。 p２１７ 音楽形式は驚く程多様である。ほとんどのパターンはaabである。つまり、バール形式である。Hans SachsがDie Meistersingerで記したように、彼がマスターソングの形式について説明すると、Minneliedの由来は、トロバドールから由来するとのことである。 最初のaはときどき、半終止をし、２回目で完全に終止となる。この場合、最初がvert(ouvert)、次がclosと呼ばれる。aabパターンは、メロディのより大規模な部門についてのみ考えられるのであれば、常にではなくても大部分に適用される。しかし、個別部門の構造においては、imaginationのもっとも大きな多様性が示される。驚くべき石造建築を成し遂げた１２、１３世紀の天才は、音調にもまた無限で多様な形式を考えた。カテドラルにおいてのように、基礎計画はしばしば彼らが全体に関心を持っていたようであり、彼らは詳細にわたり、偉大なる多様性を持っていた。初歩段階から離れて、トロバドールとトロヴェールのメロディの形式は、後のすべての歌の形式を予言している。 我々がすでに見てきた歌は、上流階級によって、上流階級のために創造された。詩人や音楽家は、彼らのモデルをどこに求めたのであろうか？Riberaは、歌はプロヴァンス人の旅行者によって模倣されたスペイン語の原型に由来する、と主張した。そして、スペイン語の例は、ムーア人の先祖を持っている、と。 しかし、彼の主張は、状況証拠に頼っているために、一般の賛同は得ていない。Beckは、トロバドールの歌と散文とセクエンツィアの結合として主張している。Gennrichはこの考えを発展させ、現在広く論議されるようになっている。Spankeは、St.Martial修道院で作られたconductiを指摘し、新しい芸術の資料として、Abelardの詩的な貢献を示している。Aubryらは、少なくともひとつの例（Kalenda maya)を引き合いに出し、そのメロディが小さな物語に依っているので、もともと存在していたestampidaとの結合を明らかにしている。 p２１８ すでに見てきたように、Le Jeu de Robin et Marionのメロディは民謡調であることが指摘されている。トロバドールやトロヴェールの作品の由来が器楽や民謡調にあることを考えれば、それも当然のことではあろう。だが、これらの器楽や民謡はどこにその原型があるのだろうか？Gennrichらがその直接の影響として信じていたように、そのようなトロバドールやトロヴェールのメロディの影響は、教会にもまたおそらくあった。 我々がすでに指摘していたように、教会の音楽はそれ自身、民謡的要素の影響を受けていたことが主張されている。しかし教会は、その文化的優位によって、システム化することができ、俗人の間で、多かれ少なかれ、アットランダムに跳躍した広い影響力と芸術表現を持っていた。教会の音楽は疑い無く、人々の音楽によって豊かにされ、教会が人々に影響を及ぼしたというよりは逆に、教会が人々から影響されたのである。 トロバドールにとって、彼の歌が教会のメロディへの直接のモデルとなったことは、自然であり、難しいことでもなかった。トロバドールは教会で音楽を聴き、しばしば教会にも出席した。こうした日々を、誰が否定し得ようか？ｐ20１で指摘したように、聖と俗との間には明確な区別線が引かれていたわけではなかった。典礼音楽に愛の詩を採用することは、不遜なことであるとは考えられていなかった（訳注；こうした傾向は、バロック期にまで受け継がれ、たとえばバッハのマタイ受難曲の基礎になったコラールは、もともとはハスラーの恋の歌であった）。そのオリジナルなものからメロディが使われた結果はcontrafactumとして現れる。いくつかのメロディは特に詩人たちから好まれ、多くの国や時代を通して、contrafacta作成を促した。セクエンツィアLaetabundusのメロディは、ふたつのトロヴェール作品（酒の歌とGａｕtieｒ ｄｅ Ｃ ｏｉｎｃｉによるクリスマスソング）のみならず、15世紀や16世紀のHuguenot Songにまで含まれている。 contrafactaは母国語詩に採用されただけでなく、ラテン語作品のメロディにもなった。ラテン語versesはフランス語の歌の音楽が付けられたりもした。同様に、オリジナルなものは特に名前がつけられ、さらに、母国語のひとつの詩は、他の代替になった。 Gennrichは、教会音楽の影響を受けた例を理解している。トロバドールたちはモデルとしてhymnsを好み、トロヴェールたちはセクエンツィアを好んだ。しかしこうした好みの違いが、あらゆる地（ドイツ、スペイン、英国、イタリア）に中世叙情詩が発展していく影響を促すことを禁止することはなかった。しかし、プロヴァンス地方や北フランスほどの作品は生まれなかった。 p２１９ トロバドールやトロヴェールの歌のエッセンスでは、Gennrichが示したように、音楽学にも言語学にも一緒のアプローチが必要となる。音楽とテキストは一体であり、それぞれの形式への理解（understanding)は、互いへの理解(comprehension)無しには不可能である。 一つの例を上げよう。ある作品は、２つの音楽部門から構成されている。それぞれはリピートされる、それぞれ、rotrouengeあるいはlai部門である。これは、テキストの裏付け無しには理解できない。我々が現在はっきりとわかっている相違なしで、区別はできない。 以下の論議は、Gennrichをベースにしている。我々は２声、あるいは３声の歌形式を言うことはない。Gennrichは主張する。これらのタグは、単に表面的な性質へのヒントになるだけである。それらは形式の実際の基本的差異を構成する個々の声部の構造には何ら区別すべき糸口を与えない。さらにタグは、現存するミスリードとなる。トロバドールやトロヴェールのもっとも良い形式の節は、概して想像されるものである。こうしたものは確かに、分析され、取り除かれる。しかしそれは単なる分離され想像されたセクションの集まりではない。指名はトロバドールやトロヴェールによって使われる。そこには何の名前もやってこない。Gennrichは、彼が適当とおもわれるものを供給した。そして命名法は彼のものを使っている。彼は「詩の形式のための使われる名前は、音楽の構造の糸口にはならない。たとえば、”pastourelle"は、単にテキストの主題に対して言及されるだけで、決して音楽形式には関与しない。」と主張している。 The forms 分類は、４つの主要なタイプに分けられる。これらはlitany,rondel,sequence,hymnから成る。１２、１３世紀では、こうしたタイプを発展させた大陸は、もはや、litany(連祷）的原理の装飾のないapplication中に満足ができるような世俗の文化を支えなかった。しかし、chanson de gesteに適用されたその原理は、改変によって、驚愕からの生存を禁じた。psalmodyが世俗タイプを生まなかったことが期待されている。recitation,tenor,tubaは、世俗歌の要求には適さなかった。応唱は、歌のタイプとして機能した音楽的性質によって資格づけられた。セクエンツィアは中世の音楽家の想像を刺激する資格があった。我々は既に、それが音楽的創造性主にがSilver Ageに動いた出口として働いたことを調べた。 Ⅰ chanson de gesteが属する連祷タイプに対して、有節的なlaisseやrotrouenge,chanson avec des refrainsがある。 p２２０ A 叙事詩chanson de gesteは、メロディ定式の一貫した繰り返しとともに、laisseの終わりの時々のcaudaにより解放される（p２０３参照）。 B chanson de gesteに現れる不均等なlaissesを実際に呼び起こす方法は、平行構造のスタンザを持つ叙情詩形式には適用できなかった。しかし、歌の形式は叙事詩を育てた。ひとつのlaissesパターンはすなわち、 a a a a etc. ...b あるいはab ab ab ab etc. ...c(co.p204) これらはすべてのスタンザに適用される。そしてそれは、有節的laisseを構成する。形式はchanson de toileの長さによく適合することとなった。それは、refrainを持つlaisseの体部に従うフレーズのために可能である。すなわち、そのテキストは音と同様、あらゆるスタンザにとって同じである。すでに見てきたように、refrainがそのテキストから作られたかどうかを知るために、歌の形式を決定することは非常に重要である。 C refrainsは聴衆によって歌われる意図があったことは明らかである。節の体幹はソリストによって歌われた。もしも体幹が、refrainを必要としたであろうそのメロディとともに存在する決定をしたとしたら、明らかにそれは、聴衆を助けたことだろう。 これが起こったところでは、有節的laisse形式は他の点で保持され、その結果は、rotrouengeとなる。以下のグラフは典型的なrotrouengeの構造を示している。  無名者のpastourelleが次にその具体例として以下に示される。  p２２１ D chanson avec des refrainsは疑いなく、後にquadlibetが大バッハの時代にその権利を広げたように、当時の人気を得る要素をを備えていた。そしてより初期の形式はさらに、すでに広く知られていた素材の類いを使うことによるquadlibetに似ていた。しかしそれはpotpourri（寄せ集め）のやり方で互いにひとつの音に縛り付けていた点で異なっていたが。 人気のある素材はよく知られた歌のrefrainsから構成されていた。それぞれの節は異なったrefrainで終わっていた。その選択は先立つスタンザの体幹へのテキストの適合性によっていた。言い換えると、refrainsは、個々のchanson avec des refrains内で、すでにパラグラフBで記述された要求を満たすためではなく、その起源に依っていた。 節の体幹は、ある程度は連祷の原理にも適用されたが、ひとつのパターンに制限されることはなかった。しかし節はひとつの特徴を持っていた。その終わりに、refrainのために用意されたverseがあったのである。このverseは、行、あるいはrefrainの行とともに押韻した。しかし、必ずしも同じ数のシラブルは含んではいなかった。それゆえ、それが可能であったとしても、常に同じメロディを持っていたわけではなかった。望まれれば、refrainのメロディは部分的には予兆され、必ずしも選ばれた部分が始まりである必要もなかった。 Ⅱ rondel形式で始まるrotrouenge,chanson avec des refrainsのような３つの形式がある。rondeau,virelai,balladeである。これらは広くダンスソングに適用された。これらのダンスソングは、現存作品から判断する限り、その言葉や音楽が単一なcharm,graceであった。ソリストはダンスのリーダーであり、additamentaと呼ばれたフレーズを歌い、合唱がrefrainで応答した。 p２２２ A 音楽的に、rondeauは２つのユニットからなる。それらは必ずしもひとつの句ではない。これらのユニットは、refrainとadditametaの両者に、メロディの素材を提供する。すべては固定したデザインである。rondeauのもっとも単純なものは６行テキストで、以下のようなデザインであった。  もしもテキストが8行あるいはそれ以上の場合、refrainは最後同様、最初にも完全に出現する。 もしも本当のrondeauの完全なテキストが現存しているのであれば、全体の作品が再構成されるであろう、とははっきりと言えよう。たとえ音楽がrefrainのテキストとの関係で保存されていたとしても。rondeauは数世紀に渡り、人気が有り続けた。14世紀にマショーによって書かれた多声部の8行詩の例は（rondeauが”芸術形式”となり、もはやそれで踊られることはなく、合唱もついて演奏された）本書p３５１に見られる。ここでは、amour courtoisの美しい表現として、無名のトロヴェールの例を挙げたい。  グロケオはTheoriaの中で、「西部やノルマンディーでは、cantilenaの一種は、お祝いや重要な祝祭の時に、それらを装飾するために、少女や若人たちによって歌われる。」と記している。cantilenaという用語については、彼は、refrainを伴うダンスソング、すなわち、一種のrondeauを含めている。 rondearuの影響は、Jer de Robin et Marionの冒頭、マリオンによって歌われる愛らしいRobins m'aimeのようないくつかの比較的自由な形式の作品でも認められる。 p２２３  形式はAB aab ABとなる。refrainの第１行は、中心としての役割を果たしている。この部分のa'とbは、完全に同一には、AとBの音楽を繰り返さない。合唱はないが、rondeau形式は見られる。謙遜ではあるが興味深い小形式の多様な可能性が感じられる。 B もしもふたつのユニットのrefrainが最初と最後にあり続ければ、中間部分には第３ユニットが新たに出現する。refrainの音楽でリピート、フォローされるが、結果としてこれはvirelaiとなり、その標準構造は以下のようである。 AB cc ab AB 我々は、１４世紀フランス（本書p３４９参照）で再度virelaiを取り扱うが13～14世紀のイタリアでは別の名前となっている。フランス語の命名はvirer( "to turn round,veer)が語源と考えられる。これがlai,すなわちセクエンツィアの世俗曲に相当する言葉と結びついたのである。（訳注；Hoppinの”MEDIEVAL MUSIC”では、この説は誤りだとしているようである。http://machikun.la.coocan.jp/medievalmusic3.htm参照。） それゆえにこの結びつきは、laiが”refrainへbent backしたメロディとともに”いることを示しているのだろう。 C （AbbaA baA bba のvirelainにおいて）もしもrefrainの音楽がvirelaiの中間部から脱落し、第４ユニットが代替すれば、我々はそれをballadeと呼ぶことになる（第１varientsAB cd cd ef AB)。中間部のrefrainのメロディの保持の結果、別の種類が生まれるが、その前に第４ユニットが挿入されている(第2varientsAB cd cd e ab AB)。さらに、refrainをつける後の傾向で、第１varients導入refrainが落ちると、また別の種類となる(第3varientsab ab cd E)。 最初の２つのvarietesと関係するスペイン語の例がp２４７で見られる。音楽的韻は、refrainのメロディの終止と節の体部の終止の間に出現する。他のballadesにも再現されるその特徴は、第２varietyには厳密には適用されない。 p２２４ 次に示すのは、Thibaut of Navarreによる７行詩で、第３のvariety(ab ab cd E)の例である。第４スタンザは、十字軍のcurse,Mort Mahom!と関連している。これは、第１モードでの解釈例である。  ここで見られるように、繰り返される母音やシラブルのみがrefrainの音楽として現れる場合、それらはrerainが合唱ではなく楽器で演奏される意図があったことを示している。p２１５にあるReis gloriosのplanは、Por conforter ma pesanceのそれと同様である。 しばしば引用されるA l'entrada del tems clarは、簡単なrefrain-interjectionsと、節のcourseにおける繰り返しのないフレーズと、比較的長い最終のrefrainを持っている。しかしその他の点で、それは同じvarietyに属している。そのplanは以下のようである。 aB aB aB ac DDDEEFG(３つのDはメロディの連続を示している） p225 我々は、応唱的chantingとrefrainとしての交唱の使用がこうした形式を促し、rondeau,virelai,balladeとしてのrefrainによって特徴づけられたことを示した。あるいは、交互に、いくつかの古い民謡のpractice（rondeau,virelai,balladeが比較的近代的な例であるようなrefrainを使用した）が、典礼的practiceを奨励したかもしれない。 Ⅲ セクエンツィア形式はlai,reinforced lai,estanpie,notula有節のlaiなどを包含し、有節laiやlai‐segmentsを減じる。 A ”Lai”は、教会的セクエンツィアのplanで作られた俗的作品に対する命名であった。laiおよびこの章で論議されたその他のあらゆる形式の主な音楽的性質は、新しい言葉に対して繰り返された連続的な音楽ユニット（double versicles P188参照）の出現である。 セクエンツィアにおいては、繰り返しのないユニットはintroductionあるいはpostludeとして使われている。laiが標準的なセクエンツィアから外れるている３つの理由がある。 ①それぞれのユニットの中に繰り返しを持っている。これらの繰り返しは文字通りであり、あるいはvertとclos終止を受け入れ、跳躍の異なったステップとなっている。すなわちそれらは、メロディ的セクエンツィアを構成している。 ②繰り返しにおいてvariationを受け入れている。すなわち、メロディ単位のcourseにおけるvariationは、単にvertとclosの代替ではなく、これまで使われていたようなリズム的交代である。 ③decort（discordance；不調和)。descortの起源をたどるのは困難であるが、それは形式の特性を区別することを決定することを学者らが禁止してきたからである。Gennrichは、彼はそれを見つけた、と信じている。彼の理論は、リズムモードはdescortに適用され、実際、リズムモードなしの形成は不可能であることを許容することである。この理論は、以下のように説明できる。 リピートされるべき音符の連続を仮定する。そして、それはテキストの6行masculine行と5行のfeminine行（さらに、カウントされない最後の軽いシラブルが加わる）で歌われると仮定する。グラフ的には以下のようになる。  どちらかが音符の同じ連続にフィットすると仮定する。明らかに、モード理論では、音価とアクセントは、１つの行と関連して作られ、その他の行と関連して作られた行と合致することはない。 A descortは結果としてできたものである。（”合致の欠如は、必ずしも作品を通して得られるわけではない）。説明は巧妙だが、ある仮説が別の仮説を作り出す。もしもそれが正しければ、１９世紀は、音楽と詩の相互依存がより大きくなった形式を産生しなかった。 p226 B reinforced laiは、doubled -cursusを伴うセクエンツィアを適用する点において、通常のlaiとは異なっている。その形式は、特に長い作品に適していた。Ernoul le VieuxによるLai de l'Ancien et du Nouvequ Testamentは、この形式を説明する。 C 器楽のestanpida(あるいはestampie)は、p２１８で述べられているが、punctaと呼ばれた二重versiclesの構成において、セクエンツィアと似ていた。しかし、第１statementが通常vertで終わり、第２statementがclosで終わるところが異なっている。 教会チャントの音楽韻を思い起こしてみればわかるが、通常は、同じvertとclosがあらゆるセクションにおいて配備されている。その終止は、しばしば引用されるKalenda mayaにおけるようにはならない。Kalenda mayaは、３つのpunctaを持ち、clos終止ではあるが、少なくともそれぞれは似通っている。さらに、この作品は他の手段でも結びついている。ほとんどすべてのメロディ素材は、最初のユニットに由来する。 ５つのpuncta以上を持つestampieの例は存在しないが、それらはより長くなる傾向にはある。以下のグラフは、４つのpunctaを持つestampieを説明している。 ab1 ab2 /cb1 cb2 /db1 db2 /eb1 eb2 名前の類似性にかかわらず、estampieはstantipesとは同じではない。 D notula(=note)の命名とともに私たちに到達する２つの例は、二重versicle（ペアでないものも含む）を含んでいる点で、あるいはestampieへの形式にリンクする繰り返すterminationにおいて、互いに似通っている。しかしこれらは、estampieのような交代するようなものではなく、最後のグループが形式を取る例の中にある。ユニット内のカデンツではなく、付随したもの（versicleの最後に出現し、たびたび新しく、リピートされない素材が最後の付随が現れる前に加えられて）として。 p227 ひとつの例、La Note Martinetは、グループの繰り返しにおいて、いくつかのユニットが省略されていることを除けば、二重cursusを伴うセクエンツィアのようである。もうひとつの例は、Adam de la Bassee(d.1286)のLudus super Anticlaudianum中にあるlai様のものである。グロケオは、notulaの記述をしているが、例によってばらつきがあり、権威としての彼の個性に依存している。 E 有節のlaiは、有節のlaisseが連祷タイプのそれの間に占めるように、セクエンツィアタイプの間で同じ位置を占める。 それは二重cursusを取るが、より簡単な作品であろうとする。ペアの繰り返しセットは、短い。長さはあまり考慮されない。なぜなら、同じ有節デザインはそれぞれのスタンザに適用され、長い有節デザインはそれゆえに断続的な作品となるからである。二重cursusuを伴わない典型的なパターンは以下のようである。 。 a bb cc d laiにおいて見つかるヴァリエーション、メロディの連続、通常の典礼的なセクエンツィア形式からの逸脱は、有節的なlaiにおいて許され得ることである。 短くなった有節パターンの創造の試みは、３つの主要なコースを持つ。最初は典型的なセクエンツィアあるいはlai形式を保っているが、いくつかの二重あるいは短いversiclesとともに構成されること。次が、有節的laiのパターンを保っているが、中間にひとつだけ二重versicleを持っていること。３番目が、繰り返しのない導入は省略し、２つの二重versiclesを保ち、最後に繰り返しのない、最初のversicleの単純なrestatementを構成する後奏を保つこと。 F もしも最後の名前のコースが変えられたら、中間部は単一の繰り返しのない単位から構成されることとなる。つまり、もしもパターンがaa b aであったら、その形式は、有節laiを減じることを示すことになる。それは将来のダ・カーポアリアの原型となる。減じられた有節laiの例は、例５９（p２３５）に見られる。その形式はvariationに従う。 G.Piecesは、短縮された有節パターンへの別の試みを提示しているが、それは、３つのグループに分類される。Gennrichiによってlai分画として分類されたものである。 第１グループは、繰り返し構造のない（二重versiclesでない）、ひとつの二重versicle(すなわちセクエンツィアやlaiパターンの導入部分）であり、第２グループは２ないしそれ以上の二重versiclesを持つもの、第３グループは１ないし２の二重versicleと繰り返し構造のない新たな素材を含む後奏を含むものである。 p228 第２グループは,下記の、春の歌、Moniot d’ArrasのCe fut en maiによって説明される。  第３グループはp２１４で紹介したBernart de Ventadorunの歌がその例となる。 たとえばもしもスタンザが、体幹の４行ではなく体幹の３つの行＋refrainの１つの行で構成されれば、歌はlai分画としてよりはrotrouengeとして分類される。たとえ仮想的なメロディが、直接繰り返される２つの句から構成され、同じように残されても。なぜなら、それはソリストと合唱のための作品だから。 Ⅳ ver,chanson(refrainなし）、rounded chansonは、hymn由来であった。 A hymnとversの音楽は、同じ顕著な特徴を共有する。それぞれの節のメロディは、自身内部のthrough-composedであった。versの例は、p２０６で言及した獅子心王の死に際しての平文に見られる。そして、p２１４で言及したBernart de VentadorunのCan vei la lauzetaにも。ここに実際の例を示す。 p229  B chansonは、ひとつの二重versicleを保持しており、いくぶん、第３グループのlai分画グループに似ている。channsonnもlai分画グループも、繰り返し句が冒頭に掲げられ、残りは非繰り返し句となる。しかし、違いもある。lai形式の歌では、セクエンツィアのような繰り返し句は、非繰り返し句よりも非常に長い。chansonにおいては、非繰り返し句は、through-composed（すなわちhymnに類似）であり、繰り返し句より長い。Reis glorios やPorconforter ma pesanceは、もしもそれらのテキストの最後の行がrefrainsでなければ、chansonの例であろう。 p230 C rounded chansonは、chansonのようであり、冒頭の繰り返しセクション部分を除き、最後にもう一度聴かれる。それは減じられた有節laiのようである。lai形式の作品中に全体の冒頭セクションが繰り返されるのを除いて。そのplanは以下のように示される。 ab ab cdb 形式は例５７のNu alerst lebe ichi mir werdeによって説明される。 特殊な作品に対する形式の選択においてトロヴェールやトロバドールを導いたものは、我々の情報の状況は、我々に言を許さない。しかし、１２～１３世紀のフランス語やプロヴァンス語の詩人・音楽家によって扱われた構造の工夫の富を賞賛することあできるだろう。 |