Pelotin viderunt omnes

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ここでは、初期多声音楽の時期から１２世紀後半〜１３世紀前半のノートルダム楽派の音楽について、ＹｏｕＴｕｂｅを利用し、実際に音を聴きながらたどっていきたい。 ●ペロティヌスの活躍 サンマーシャル楽派まで来て、グレゴリオ聖歌に対旋律をつける慣習は、その後レオニヌス（レオナン）、ペロティヌス（ペロタン）の登場により、体系づけがされるようになる。後の古典派音楽におけるハイドン、モーツァルト、ベートーベンに相当する人たちである。ヨーロッパはいよいよ多声音楽の興隆を迎える。 一般的に、西洋音楽は１５０年サイクルで新しい形の音楽が勃興してきた。ここにそれを列記してみる �@1000年〜1150年 多声音楽の勃興 �A1150年〜1300年 アキテーヌポリフォニー、ノートルダム楽派、アルスアンティカ、等による多声音楽の急速な高まり �B1300年〜1450年 マショーに始まり、ブルゴーニュ楽派による中世音楽の発達 �C1450年〜1600年 デュファイに始まり、パレストリーナを頂点とするルネサンス音楽の隆盛 �D1600年〜1750年 モンテヴェルディで始まり、J.S.バッハで終焉するバロック音楽の隆盛 �E1750〜1900年 マンハイム楽派ではじまり、ベートーベンを中心とする古典派音楽。 �F1900年〜2050年？ ワーグナーに始まる和声音楽の破壊、今日に至る いよいよこの稿は�Aに入る。ノートルダム楽派の始まりである。サンマーシャル”楽派”やCalixtinus写本を通して鍛え抜かれてきたAquitanian polyphony は、パリのノートルダム楽派となって合流する。このページでは、Perotinの有名なviderunt omnesを取り上げる。Leoninとの比較も試みる。まずはLeoninの方から。 R　Viderunt omnes　fines terra　salutare Dei nostri.　Jubilate Deo, omnis terra. V　Notum fecit Dominus salutare suum;　ante conspectum gentium　revelavit justitiam suam. （太字；verse plain songのまま　黒細字；オルガヌム　赤；ディスカント） 曲の構成、すなわち、オルガヌム様式、ディスカント様式の構成はLeoninもPerotinもほぼ同一である。Perotinは、Leoninの曲を２声から４声にし、全体を引き伸ばした。重要なのは、何といっても、モードリズムの採用である。 この時代は、音符の長さにきちんとした決まりがなかった。それでも片方がドローンの２声なら何とか、”見計らい”で歌うこともできようが、４人同時で歌うとなるとそれはもう、不可能である。歌うための何らかのリズムの約束事が必要となる。 現代のように、四分音符、八分音符といった定量符を使えばよいではないか、というのは後知恵であり、当時としては、それは考えにくかった。それは、こうした定量符の前提となる”小節”の概念がなかったから。現在の定量符は、音楽を小節単位で考え、その中で音符を分数で考えていくが、そうした概念がなかったため、結局１３世紀の人は、古典詩の韻律に合わせた６つのリズムパターンを考え出した。これがモーダル記譜法である。 この詳細は、まうかめ堂氏に詳しいので、そちらを参照されたい。要するに人類は、いきなり定量符を発明するのではなく、まずは詩の韻律を利用したリズムパターンを考えだし、パターン化したリズムを用いることによって、３声の声部を統一したのである。 ここで興味深いのは、本来リズムモードは詩の韻律から作られたわけであるが、そのモードには、言葉がついていないことである。リズムモードは連結符を組むことで形成されるが、言葉がつくと、この連結を外さざるを得なくなり、したがって、リズムモードは、歌詞のないメリスマ専用足らざるを得ないのである。 ところで、モーダル記譜法が発達するにつれ、それより古くに作られた２声のconductusが、これを利用して歌われるようになった。つまり、それまでは見計らいで歌われていたリズムは、モーダル記譜法を使うことにより、定量的に歌われるようになった。 そしてその対象となったのは、上記の理由により、メリスマすなわち歌詞がついていない部分（sine littera)であった。こうして、もともとは歌詞を参考にして作られたリズムモードは、逆に、歌詞がない部分において発達することになった。 ところが、ペロタンのディスカント様式部分がその後clausulaとして独立し、その後メリスマであった部分に歌詞が付く（モテットの発生）ようになると、再度この問題が蒸し返されることになった。すなわち、歌詞がついたモテットにおいては、sine litteraを前提としていたリズムモードでは、もはや対処できなくなってしまったのである。 このために、１３世紀も後半となると、単独の音符の定量化が必要とされ、それが進化していくこととなる。 ●viderunt omnis ふたたび ここでいよいよPerotinのviderunt omnesを取り上げてみよう。 この曲は、ternaria→binariaというパターンが基本なので、対旋律は第一モードで作られていることがわかる。ただし、教科書的なこのパターンは実はあまり多くはなく、結構例外がある。また、各声部も決してその進行は一つのリズムモード命！といった感じではなく、バラバラな部分が多い。 http://imslp.org/wiki/Magnus_Liber_Organi_(Various)パート１ p12