| Mc Meekin JULY1914 Count down to war４ |
Russian occupation of Eastern Galicia (1914–1915)
| 7 無線の沈黙 7月8-17日 p114 <7月8日> ティサの戦術的勝利により、ベルヒトルトは困難な立場に置かれた。 ハンガリー人（ティサ）はセルビアに対する迅速な行動の歯車に砂を投げ込んだ。 その間、ドイツ人はスピードの必要性を主張し続けた。 皇帝とベートマンはまだ休暇中だったが、彼らが示した政策は十分に明確だった。 7月8日水曜日、駐オーストリア・ドイツ大使のチルシキーが前日の会議の結果を知るためにボール広場を訪れた際、同氏はベルヒトルトに対し、「いくら強調しても足りなかったが、ベルリンは（二重）君主制がセルビアに対して行動を起こすことを期待しており、一撃も与えずにこの機会を見逃してしまったら、ドイツ人は理解できないだろう」と語った。 同じ7月8日水曜日、ベルリンではオーストリア大使のセジェーニがヴィルヘルム通りを訪れた。そこで彼は、ツィンマーマン国務次官や「他の権威ある人物」から「ここにいる誰もが、どうするかについての私たち（オーストリアとドイツ）の決定を焦りながら待っています。なぜなら、ここにいる誰もが、セルビアに対して行動するなら今だ、と考えているからです。こんな有利な瞬間は簡単には繰り返されないでしょうよ。」と言われた。 イタリアの新婚旅行からようやく帰国したヤーゴ国務長官もこの意見を支持した。 タカ派のツィマーマンは、「セルビアに対する、提案された行動は遅滞なく実行されなければならない」と「最も強調した態度で」セジェーニに告げた。 もちろん、遅延はまさにティサが主張していたものであった。 オーストリア軍が近年導入した農村部の部隊向けの夏季「収穫休暇」によっても、何らかの遅れが避けられない状況だった 。（c.f.夢遊病者たち p638） 首席補佐官のコンラッドは、二重君主制の強力な地主たちをなだめるために、しぶしぶながらもこの政策に同意した。 7月6日月曜日、ボール広場から軍司令部に駆けつけたコンラッドは、恐ろしいことに彼の16軍団のうち7名が収穫休暇のために一時帰休したばかりであることを発見した。 このうち5名(III、IV、V、XIII、XIV)は7月19日に現役に復帰し、最後の2名(VIとVII)は7月25日まで休暇となっていた。 もしもコンラッドがオーストリアの好戦的な意図をヨーロッパに電報で伝えようとでもしない限りは、彼は収穫休暇を早期に取り消すことはできなかった。 したがって、軍隊も動員が可能になるまでに2週間の時間がかかることになる。 ドイツ人にとって 2 週間は遅すぎたが、ティサの条件を満たすには十分だったことだろう。2 p115 7月8日水曜日午後6時、火曜日の軍評議会後のコンラッドとベルヒトルトの最初の会談で、参謀長コンラッドは、セルビアに対して24時間か48時間の期限付きで最後通牒を発するよう強く主張した。 セルビアに動員の時間を与えないように。一方オーストリアは、開戦の合図となるであろう（セルビアからの）拒否を待っていた。 収穫休暇の問題とティサの主張の変化の必要性を考慮して、コンラッドとベルヒトルトは、最後通牒が早くても7月22日まで発令できないことに同意した。 その日までにベオグラードに書簡を送るのに間に合うかどうかは外務大臣ベルヒトルトにかかっていた。 一方ベルヒトルトは、コンラートとクロバティン陸軍大臣が「何も起こっていないという印象を残すため」にそれぞれウィーン政庁から休暇を取るよう提案した。参謀長コンラートは言われた通りに水曜日の夜、彼の邸宅であるクラムシュロッセルへ向かった。 イニチェンに 2 週間滞在することになった。3 ベルヒトルトはティサの抵抗を打ち破るためにあらゆる手を尽くした。 彼は8日水曜午後、駐オーストリア・ドイツ大使のチルシキーに対し、ハンガリー人（ティサのこと）が「物事を遅らせている人」であり、彼自身も（オーストリアが）素早く行動するために全力を尽くしてはいることをドイツ人も知っていて欲しい、と言った。 それから彼は、ブダペストに戻ったティサに、ベルリンがどれほどスピードに注意が向いているかについてのチルシキーの発言を概説したメモを送った。「ドイツ人は、我々の側がセルビアとあらゆる和解すれば、それを弱さの表れとみなすだろう。そうした弱さは、オーストリアの同盟国としての立場に疑問を投げかけることになるだろう」と結論づけながら。 ベルヒトルトはティサに対し、彼がバート・イシュルでフランツ・ヨーゼフ1世陛下に謁見する途中であることを伝え、ドイツ大使の発言に対する返答を宮殿に電報するようハンガリー人（ティサ）に「懇願」した[4]。 p116 ティサは餌を受け取らなかった。 彼はすでに、7月7日火曜日の会議の結論（c.f.p108～）を概説した皇帝向けの覚書を作成しており、それを修正するつもりはなかった。 「結局、戦争が起こるとしたら、我々は正当な自衛に基づいていることを全世界の目の前で証明しなければならない」とティサは主張した。 セルビアへの宣戦布告の前に、徹底的な外交準備―二段階の最後通牒のプロセス（訳注；第一段階としてオーストリア側が譲れない条件を提示し、 もしセルビアがそれらを拒否すれば、第二段階で、武力介入の脅威を伴う最後通牒が用意される）を意味するーがなければ、彼はハプスブルク君主、ルーマニア、ロシア、そしておそらくイタリアがオーストリア＝ハンガリーに対して武器を取るだろうと警告した――四正面戦争となってしまう！ こうしたリスクがあるため、ティサは「セルビアには、外交的敗北」と引き換えに、戦争を回避する機会が与えられるべきである」と結論づけた[5]。 ティサが態度を変えることを拒否したため、ベルヒトルトは再び、何をすべきかについてまだ（政府としての）合意が得られていないことを主権者（皇帝）に告げなければならなかった。 ＜7月9日＞ ベルヒトルトは7月9日木曜日の朝7時にバート・イシュルに到着し、2時間後にフランツ・ヨーゼフに会った。 彼らは一緒にティサの覚書を読んだ。 表面的には即時行動への障害となっていたが、徐々に策の余地が見え始めた。 ティサは、たとえ他の閣僚が望んでいたほど明らかに厳しくないことを望んでいたとしても、ボール広場がセルビアに対して厳しい要求をすることは明らかに予想していた。 なぜベルヒトルトはあっさりと最後通牒を作成できなかったのだろうか？ ティサの承認を得るには時間がかかったことだろうが、ティサがコンラッドのアドバイスに従い、48時間以内という「厳格な期限」を与える限り、セルビアが、（オーストリアが）望む通り拒否する可能性は高まったことだろう。 ベルヒトルトとフランツ・ヨーゼフはティサを引き留める必要性を理解していたが、翌日ベルヒトルトがドイツ大使に語ったように、「セルビアに対して具体的な要求」を課す必要性については合意に達した。 もっと根本的に、皇帝は、セルビアに対して清算の時期が来たと判断し、「後戻りはできない」と述べた[6]。 p117 皇帝からのこの非公式の口頭命令に基づいて、ベルヒトルトは部下に、セルビアに対する最後通牒の準備を開始するよう命じた。 ＜7月10日＞ 7月10日金曜日、駐ウィーン・ドイツ大使ハインリヒ・フォン・チルシキーはベルリンに対し、オーストリアがついに行動を共にしつつあることを明らかに満足げに報告した。 確かにベルヒトルトは、ティサがセルビアに対して提示された条件を骨抜きにして、チルシキーが軽蔑的に言ったように「紳士らしく進める」ことを望んでいたことを認めた（彼は強調のために英語の表現を使った）。 ティサの反対にもかかわらず、事実は次のとおりであった。ベルヒトルトはベオグラードに対し、「最長48時間という厳格な期限付き」で最後通牒を作成していた。オーストリアの外務大臣ベルヒトルトは、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とティサを除く政府関係者全員とともに、こう望んだ。 （最後通牒の）条件は拒否されるだろうということ。 念のため、チルシキーはまた、クロバティンとコンラッドが「警戒心を与えないようにする」ために休暇を取っているとベルリンに報告した。7 ＜7月10日；ベオグラード駐在ロシア公使Nikolai Hartwigの怪死＞ その夜、ベオグラードで恐ろしい事態が起きた。 セルビア駐在オーストリア公使であるギースル・フォン・ギースリンゲン男爵は、ウィーンでの長期滞在を終えて、7月10日金曜日に戻ってきた。 7月初旬にハプスブルク家の高名な外交官が欠席したことで、ベオグラード駐在ロシア公使Nikolai Hartwigは、オーストリアに哀悼の意を表さない都合の良い言い訳をすることができた。 しかし、サラエボの暴動からほぼ2週間が経ち、Nikolai Hartwigの頑固さにも限界があった。 そこで彼は、空気を晴らすためにオーストリア公使館を訪れた。 午後9時に到着したNikolai Hartwigはギースルに対し、「残虐な暴挙に対する個人的かつ心からの哀悼の意」を表明した。その後、彼は殺人事件の夜にブリッジパーティーを開催したことを否定し、大公の追悼式で半旗掲揚を拒否したのは正しくはない、と主張した。 ロシア人の善意を信じたいギースルは、これらの主張を受け入れた。 こうしてオーストリアとロシアの間にはある種の和解があったが、それは長くは続かなかった。 午後9時20分、Nikolai Hartwigはオーストリア公使館内で心臓発作で倒れた。 数分以内に彼は死亡した。（c.f. McMeekin The RUSSION ORIGINS of the First World War p48, ） p118 Nikolai Hartwigの突然の衝撃的な死は、一か八かの外交におけるデリケートな瞬間を犯罪現場に変えた。 ロシア人が不自然な死因で亡くなったという疑惑を逸らそうと、ギースルはハートヴィッヒの最も近い親戚である娘リュドミラを迎えに馬車を送った。 しかし、遺体を見るために公使館に到着したとき、リュドミラはすでに不正行為の疑いがあることを明らかにした。 ギースルがウィーンに報告したところによれば、Nikolai Hartwigの娘は部屋を「徹底的に」検査し、「日本の大きな花瓶をいくつかあさり」、毒が入っているのではないかと疑うケルンの瓶に特に興味を示したという。リュドミラは気持ちを落ち着かせた後、Nikolai Hartwigが公使館の厨房で何か食べたり飲んだりしたかどうか尋ねた。 ギースルは彼女に、そうではないと断言した。ロシア人（Nikolai Hartwig）は夕食後に到着し、到着からわずか20分後に死亡した。 しかしNikolai Hartwigはタバコを2本吸っていた。 オーストリア人（ギースル）はリュドミラに吸い殻を差し出し、リュドミラは証拠として守るために「慎重に財布の中に入れた」(c.f. Fromkin, David. Europe's Last Summer p166)。 彼女が去った直後、セルビア人警官が捜査に現れたが、ギースルは域外外交特権を理由に警官を追い返した。 ギースルにはそうする権利が完全にあったが、彼が地元警察との接触を拒否したことにより、ほとんどのセルビア人はオーストリア人が何かを隠していると考えた。.8 セルビアのマスコミはこの記事を取り上げて熱心に取材した。 週末中、オーストリアによるハートヴィッヒ殺害容疑に関するばかげた話が広まった。 ギースル有罪の信念が非常に広まったため、ギースルは地元の理髪店を（幸運にもお忍びで）訪れた際に、自分自身が犯罪で告発されているのを聞いた。 この時点で、この物語は、オーストリア人ギースルが単なる殺人者ではなく、一種の大量処刑人であるという点まで脚色されていた。 ギースルの報告によると、あるセルビア人は別のセルビア人に、「ギースルはウィーンから電気椅子を持ってきたが、これに座った者は即死し、痕跡も残らないのだ」と静かに語ったという。９ Nikolai Hartwigは、バルカン戦争中の支援でセルビア民族主義者にとってすでに英雄であったが、今や、オーストリアの圧制に対する殉教者として称賛されていた。 彼については、国家元首並みの「盛大な」葬儀が執り行われた。 ベオグラードの有名な通りは彼の名にちなんで名付けられ、彫刻家たちは町の中心部に建てられる彼の栄誉を讃える記念碑の制作に着手した。 ＜7月12日＞ 7月12日日曜日、Nikolai Hartwigの死に対する民衆の怒りに乗じて、ベオグラード全土で反オーストリアデモが組織された。 ヴィドフ・ダンのコッソヴェ・ポリェで起きたフランツ・フェルディナンド殺害の祝賀と、セルビアのマスコミがギースルに向けた根拠のない殺人告発に加えて、Nikolai Hartwigをめぐる週末の大騒ぎは、オーストリアの誇りを侮辱するために意図的に計算されたもののように見えた。 パリとロンドンがバルカン半島で起きているドラマに気づかずに眠り続けている一方で、ベオグラードはすでに戦争中の都市のような気分になっていたのだった。 p119 ベオグラード駐在ロシア公使Hartwigの死後、オーストリア人がロシアやロシア人たちに対して感じていたであろう共通感情はすぐに消え去った。 7月12日日曜日の午後、ベオグラード駐在ロシア公使Hartwigの行動に関する噂を払拭するためにギースルから呼び出されたイタリアの臨時代理大使は、（フェルディナント大公の）葬儀のレクイエム中にロシア国旗が降ろされなかったという話が真実であったことを確認した。 ブリッジパーティーの話も同様だった。 つまりHartwigはギースルに嘘をついていたのだ。 故ロシア人の「残虐な暴行に対する心からの哀悼の意」は結局のところインチキだった。10 <白紙小切手の意味合い> ベルリンからのニュースはさらに積極的なものだった。 その7月12日日曜日、駐ドイツオーストリア大使ラースロー・セジェーニ伯爵は、ドイツ側はオーストリアがセルビアに対して迅速に行動することを望んでいると繰り返した。 しかし、今回はより明確に、「カイザー・ヴィルヘルム殿下と他のすべての責任ある人物」はオーストリアが「（セルビアにある）革命陰謀者の巣窟をきっぱり一掃する」ことを望んでいたと述べた。 ドイツはウィーンに、セルビアを支援するために「ロシアが武器に訴えることは確実ではない。」ということを理解してほしかった。さらに重要なことには、「ドイツ政府はさらに、たとえこれがロシアとの武器供与、ひいてはフランスとの武器供与につながるとしても、現時点ではイギリスがバルカン諸国をめぐる戦争に参加しないという確かな兆候があると信じている。」 これは白紙小切手以上のものだった。つまりドイツはオーストリアに対し、ただちにセルビアを攻撃することをほぼ要求していた。（Fromkin, David. Europe's Last Summer p158 「小切手は完全に白紙ではなかった可能性がある。 ドイツは、オーストリアが実行するのは自分たちの計画、つまり即時攻撃であると信じていた可能性があり、実際には意思決定をウィーンに委ねていなかった。」） p120 ＜7月13日＞ 13日月曜日には、ウィーンの戦争党派にさらなる歓迎すべきニュースがもたらされた。 10日金曜日、ボールプラッツの主任弁護士フリードリヒ・ヴィースナー博士は、この犯罪に関する法的書類を作成するためにベオグラードに派遣されていたc.f.(オーストリア＝ハンガリー二重君主国による「最後通牒」（1914 年 7 月 23 日）再考─ F. ヴィースナーの『覚書』にみる開戦決断の背景 ─)。 7月13日月曜日、彼は最初の（暗殺事件の現地調査の結果を伝えた）報告書を提出した。 ヴィースナーは、セルビア政府が実際に犯罪計画に共謀した可能性をほぼ排除したものの、彼は、この陰謀がベオグラードでタンコッチ少佐の援助を受けて計画されたことを「疑いの余地なく」宣言した。タンコッチ少佐は暗殺者たちに、「爆弾、ブラウニング剤、弾薬、その行為後に飲み込むための青酸カリ」を提供していたのだ。 「プリンツィプ、チャブリノビッチ、グラベジがセルビア当局者の手で密かに国境を越えて密航しようとしていた」ことも明らかだった。 ヴィーズナーの報告書はポティオレクがすでに発見していた内容を大きく超えるものではなかったが、彼の慎重で弁護士的な文章は、セルビアの罪を概説する適切な文書がオーストリアの戦争を主張するのに間に合うだろうとベルヒトルトを安心させた。12 駐ドイツオーストリア大使ラースロー・セジェーニ伯爵の最新の電報、ベオグラードで週末に勃発したセルビア人排外主義、そしてヴィースナー報告書に基づいて、ベルヒトルトは頑固なハンガリー人（ティサ）をついに追い詰めたと信じてティサとの会談を招集した。 7月13日月曜日の午後、彼が駐オーストリア・ドイツ大使チルシキーに語ったところによると、彼は「明日14日、セルビアに届けるメモの文面についてティサと合意したいと思っている」と述べた。成功すれば、ベルヒトルトは7月15日水曜日にバート・イシュルへ赴き、皇帝に最後通牒を提出して承認を得る予定だった。48時間を期限とした最後通牒は、当初の予定である7月22日より1週間前倒しで、7月15日の夜、ベオグラードに渡される可能性があったのだ。（ベルヒトルトは（少しでも早く最後通牒を発して）ドイツ大使チルシキーに好印象を与えたいと考えていたが、収穫休暇の問題を忘れていたようだ）。.13 p121 すべてが計画通りに行けば、ベルヒトルトは、優柔不断で迷っているという評判をやっと払拭することができるだろう。 ドイツ人はどんなに喜ぶだろう！ ベルヒトルトがその週に最後通牒を出すことを望んでいたもう一つの重要な理由があった（収穫休暇のスケジュールで義務付けられた次の最後通牒とは対照的に）。 7月15日水曜日は、フランス大統領ポアンカレがサンクトペテルブルクでの皇帝ニコライ2世との首脳会談に向かう途中、フランス号に乗って出航する日だった。 ベルヒトルトはこれまでフランスとロシアにオーストリアの計画について秘密にしておくことに成功していたが、オーストリアがベオグラードに最後通牒を送付すれば、たちまち外交危機を引き起こすことになる。 ベルヒトルトがもっとも恐れたのは、フランス大統領がサンクトペテルブルクにいる間にこのような外交危機が起こることだった。 ポアンカレとツァーリは、おそらく公式晩餐会でお互いの健康を乾杯しながら、その瞬間のオーストリアの行動に対する軍事的対応を調整する可能性があろう。 対照的に、もしベルヒトルトがポアンカレの出発前に何らかの形で最後通牒を突きつけることができれば、大統領は訪問を中止する可能性があり、その場合、大統領はロシア側と政策を調整することがはるかに困難になるだろう。 フランスの海峡沿岸からロシアの首都までの汽船の旅は通常約5日かかり、ポアンカレは7月20日月曜日にサンクトペテルブルクに到着することになる。 したがって、1６日木曜日か1７日金曜日に最後通牒を送り出せば、ベルヒトルトはトリックを勝ち取ることができよう。そうすれば、セルビアの回答までの48時間の猶予期間は、長い航海による「無線の沈黙」で確実に覆われることになるだろう。 （ポアンカレがロシアに着いた後には、最後通牒の期限が切れている）  フランス大統領はこの場合、7月20日月曜日にサンクトペテルブルクに到着した後でもロシア側と対応を調整することは可能ではあるが、18日土曜日か19日日曜日にセルビアが最後通牒を拒否したことを受けてオーストリアが（やはり収穫休暇問題を無視して）動員を開始してしまえば、もはや、戦争の結果を変えるには遅すぎることになる。 そうすればドイツは、彼らの既成事実fait accompliを得ることができたはずであろう。 p122 ＜7月14日；ティサ首相の転向＞ ティサは、7月14日火曜日にウィーンに戻ったとき、ベルヒトルトが決定を期待していることを知っていた。 四方八方からの絶え間ない圧力に抵抗が弱まり、ティサはついに警戒を緩め始めた。 ティサは、セルビア報道機関による反オーストリア攻撃が耐え難いものになったことを認めた。 ティサは危機が広がり始めて以来、「（オーストリア・ハンガリーは）その活力を発揮し、南東部（セルビアに対する婉曲表現）の耐え難い事態に終止符を打つために大胆な決意をしなければならないという信念を強めた」としぶしぶ言った。 ティサは、「ドイツが（二重）君主制の側に立った無条件のやり方」に特に感銘を受けたという。「戦争を勧める決断を下すのは容易ではなかった」が、今では「戦争の必要性を確信」していた14。 ベルヒトルトは明らかに勝った。 ティサは転向のために大きな代償を払った。 サラエボ騒動から２週間以上が経過したが、この2週間の間、オーストリアはコンラッドが望んでいたように軍隊を動員し始めておらず（収穫休暇が始まる前の最初の週にのみその可能性はあったが）、セルビアに対する戦闘事由casus belliとなる最後通牒の用意さえなかった。 時間の経過は、ウィーンからの国際的な精査を縮小させることを助けた。ヨーロッパのほとんどの国々がバルカン半島危機を忘れ始めていたためである。 しかしそれはまた、この厳しい精査が最終場面に来たときに、オーストリアがハプスブルク家の後継者の暗殺後の最初の怒りのフラッシュではなく、冷静で皮肉な計算に基づいて行動しているように見えることを確実にするのにも役立った。 7月1日に（収穫のための一時帰休が始まる前に）動員するというコンラッドの計画は、その率直さのために、外交的には健全だったろう。ショックを受けた政治家もいただろうが、オーストリアの誠実さや決意を疑う者は誰もいなかっただろう。 今や、ティサの遅延戦術の結果、オーストリア軍はベオグラードへの不誠実な外交文書の中でセルビアと戦争をする意図を偽装し、暗躍することを余儀なくされた。（最後通牒の秘匿） ベルヒトルトがドイツ大使に対し、フランス大統領の航海中の最後通告は見送りたいことを伝えた際、こうしたこと（セルビアと戦争をする意図を偽装し、暗躍すること）を認めていたが、それはあたかも、最後通牒が日の目を見ることを恐れているかのようだった。 これは、ティサの頑固さがベルヒトルトを貶めてしまった、ある種の不誠実で皮肉な外交となった。（c.f.McMeekin The RUSSION ORIGINS of the First World War p44） 最後の反抗の姿勢で、ティサはこの計画（ベルヒトルトがポアンカレの出発前に何らかの形で最後通牒を突きつける計画）すら不可能にした。 セルビアに送られるいかなる声明の文面も彼は承認しなければならないという7月7日の評議会での誓いを忠実に守り、ティサは最後通牒は全閣僚評議会で可決されなければならないとベルヒトルトに通告したが、閣僚評議会は19日日曜日までに召集することができなかった。 したがって、最後通牒は最速で7月19日の夜、つまりポアンカレがサンクトペテルブルクに到着する数時間前に発令されてしまう可能性があった（会談”直前”に)。 ベルヒトルトが「シャンパンの影響下で兄弟の誓いを立てながら（会談の前、最中に）」フランス大統領とロシア皇帝にオーストリアの最後通牒を知ることを許すはずはなかった。彼はチルシキーに「声明が届く前に会議が終わっていれば良いのに（最後通牒が会議”後に”届く）」と辛口に言った。 15 ＜最後通牒通告プランの変更＞ それゆえに、（最後通牒の通告をする）新しい計画は、フランス代表団がサンクトペテルブルクを出発する夜まで待つことになった（c.f.p170)のである。ベルヒトルトは、その日が7月25日の土曜日であると（誤って）予想していた。サラエボからほぼ1か月後、収穫休暇の問題のため、ベルヒトルトとコンラッドが合意した日の3日後である。 p123 ティサによって引き起こされた最近の遅延にもかかわらず、新しい計画には推奨すべき点がたくさんあった。 7月25日はコンラッドが望んでいたより少し遅かったが、その日までに、一時帰休していた最後の2つの軍団である第6軍団と第7軍団も任務に戻ることになっていた。 さらに、ベルヒトルトがよく考えてみると、「無線の沈黙」は往路よりも復路のほうが効果があることに気づいた。 ポアンカレが去るまで手を出さずに待つことで、オーストリアは、首脳会談中にフランスとロシアが調整する機会をつぶせることができたからだ。 ポアンカレは、パリでもサンクトペテルブルクでも最も好戦的な政治家との評判だったが、（会談後に最後通牒が通告されれば）セルビアの最後通牒を知ったサゾノフとツァーリに鉄槌を下すチャンスを逃すことになっただろう。 ポアンカレが海上で反応できなくなった時に（最後通牒を通告することによって）、オーストリアは既成事実 fait accompli を撤回することになった。 それは皮肉な計画であったが、素晴らしいものでもあった。 p124 素晴らしいが、確実ではなかった。 フランスやロシアがオーストリアの最後通牒を早くから知っていれば、シャンパンで乾杯しながらそれに対応する調整をすることができたが、ベルヒトルトが彼らをからかおうとしたという激怒する動機も加わった。 したがって、最後通牒は（ドイツ大使を多かれ少なかれやりとりの中に入れておくのは別として）可能な限り厳重な機密で処理されなければならなかった。敵対勢力によって漏洩が拾われた場合、それは致命的となる可能性があった。 ロンドンがアイルランド危機に巻き込まれ、パリがカイヨー事件に巻き込まれている今、イギリスとフランスをその匂いから遠ざけるのはそれほど難しいことではなかった。 もちろん、ロシアはもっと疑念を抱いているかもしれなかった。 それでも、サンクトペテルブルクのオーストリア大使館は、7月14日火曜日、サゾノフが首都を離れ、グロドノ近くの田舎の邸宅に向けて出発したことをボールプラッツに伝えることができた。 ロシアの外務大臣サゾノフは19日日曜日まで執務室に戻らない予定であり、まさにその日、閣僚評議会が最後通牒の最終文を承認することになった。（サゾーノフを煙に巻けると思った）。 もしベルヒトルトがそれまで事態を秘密にしておくことができれば、「無線の沈黙」計画は成功したかもしれない。 それは大きなifであった。
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