Rhythmic paradigms in the Cantigas
de Santa Maria: French versus
Arabic precedent
MANUEL PEDRO FERREIRA∗
音楽エッセイのページへ戻る 初期多声音楽 St.マーシャル楽派へ
Leoninのページへ ノートルダム楽派（conductus)のページへ
 ペロタン（Viderunt　Omnes)
ペロタン（Alleluja Nativitas) ペロタン　Clausulaのページ まうかめ堂さんのページへ
substitute clausulaのページへ 中世音楽のページへ その２（ｐ２５～）へ

p１
＜要約＞
この論文は、聖母マリアのカンティガ集の表記法のリズム的な意味が、さまざまな理論的パラダイムに直面することによってのみ理解できると主張している。Juli´an Ribera は1922年にアラビアのパラダイムを擁護し、他のパラダイムを排除したが、アラビアの歴史的著作へのアクセスは厳しく制限されていた。 1943年のHiginioAngl´esとほとんどの現代の音楽学者は、フランスの計量理論を採用して以来、多くの曲に適合しないことを認識した。

著者は他の場所で、フランスのパラダイムに適合しない曲がアラビア語のパラダイムに適合することが多いことを示した。ここでは、重ね合わせを含む両方のパラダイムの適用可能性を体系的に比較している。

一般的な概念（ordoとperiod）、偶数音価の構成（modes V–VI または conjunctive rhythm）、3拍子音価の長短の対立（モードI〜IIまたはRamal）、およびより複雑なパターンを比較した後、
著者は暫定的に、フランスのモデルを明確に指し示すパターンはほとんどないと結論付けているが、ほとんどの場合（第1モードと第2モード、および第3モードの潜在的な形式）フランス語とアラビア語の両方のパラダイムが適用される可能性がある。

2拍子韻律と3拍子韻律の両方を含むその他の多くの場合、アラビア語のリズムパラダイムは、明らかにパリのパラダイムよりも適切であるか、適用する唯一のパラダイムとなる。


聖母マリアのカンティガ集として知られ、カスティーリャ王アルフォンソ10世の主導で作曲された聖母マリアの歌のコレクションは、まさに有名である。音楽の総体として、それはlangue d’ocで現存しているトルバドゥールのメロディーの数を約50%上回っている。

それでも、その豊かさは音楽学的観点からほとんど探求されていない。この明らかな関心の欠如の理由の1つは、ほとんどのRomanist（古代ローマ研究者）にとって異質であり、カスティーリャ王国の歴史的相続者によって促進されたスペイン文学の主流の外にある中世のガリシア-ポルトガル語の歌の言語であることである。もう1つの同様に強力な理由は、このレパートリーが中世ヨーロッパ音楽に関する現在の歴史的物語に容易に適合しないという事実である。

p２
簡単に言えば、この物語は、13世紀には誰もがフランスの足跡をたどったことを示している。

パリは誰もが認める文化活動の中心地であり、音楽の斬新さとファッションの唯一の起源であった。ノートルダム大聖堂の記念碑的なオルガヌムは、豪華に装飾された典礼のための卓越した構成モデルとして流通していた。後期パリの副産物であるモテットは、大学教育を受けた聖職者の間で知的な鬱憤を生み出し、都会的世俗者の称賛を得た。対応する表記法は、世紀半ば以降、その起源がスコットランドやドイツなどのパリから遠く離れている可能性のあるようなさまざまな論文で説明され、議論されてきた。 Castilian, Leonese or Galician origin の若い出身者らは、実際、これらのファッショナブルなトレンドから孤立していなかった。

　Gautier de Coinciの奇跡のコレクションに示されているように、聖母マリアのカンティガ集は、フランスの祈りの歌の先例に従ったとも言えよう。

カンティガが語った物語は主に国際的なストックであり、ラテン語から翻訳されている。写本は、フランスで事前に実験されたものと同様のレイアウト規則と記譜法を使用している。したがって、コレクションは、その並外れた範囲と印象的なイコノグラフィーにもかかわらず、一般的な歴史的期待を確認しているようである。

しかし、レパートリーをより綿密に調べると、この上等な物語には、問題が生じてくる。

アルフォンソ王の生涯の最後の20年間（1264年から1284年まで）に編纂されたこれらの曲は、ピレネー山脈（Andalusian rondeau）を決して越えなかったか、その1世代後にパリで人気を博すようになった（ヴィルレー）音楽形式を示している。

さらに、記譜法には奇妙な特徴があり、14世紀初頭になって初めてフランスで書かれるようになったリズムを記録するようになっている。3

Yet, to　paraphrase Jacques Handschin, the fact that Castile was, in the perspective of ‘linear’historiography, always ‘behind’ the French evolution does not forbid that she could take initiatives of her own: we ought not to force the Cantigas into an evolutionary order that is not its own by maintaining that binary rhythm, for instance, could not possibly appear before it was duly recognised by (French) theorists.4

　アルフォンソの伝記作家、Johannes Aegidius de Zamoraは、献身歌の作曲における王の業績の中で、比の計量的制御（おそらくリズム、形式的なバランス、またはその両方を含む）を配置した。ダビデ王のように、栄光の聖母の賞賛のために、[アルフォンソX]は、調和のとれた音と音楽的比で計量された多くの美しい曲を編纂した。5

p３
しかし、カンティガのリズムは論争の的となっている。6　1920年代、スペインのアラビア人、Juli´an Ribera（1858–1934） ）は、リズミカルなパターンを含め、カンティガの音楽のすべてがアラビア的であると提案した。7スペインの司祭であるHiginio Angl´es（1888–1969）は、この論文に衝撃を受けた多くのキリスト教民族主義者の1人であった。Higinio Angl´es（は、作曲家兼民俗学者であるFelipe Pedrell（1841〜1922）の弟子であり、スペインの人気曲に対するアラブ音楽の影響を否定し、1923〜 1924年にwithWilibald Gurlitt (1891–1963) と Friedrich Ludwig（1872– 1930）に師事した。後者はノートルダムポリフォニーの第一人者である8。

彼は1927年に、多くのカンティガを純粋なパリのモーダルリズムに転写することで、Juli´an Riberaの主張に反応した。9　

当時、これはトルバドゥールの当代的な演奏的解決であり、20世紀初頭にPierre Aubry and Jean Beck によって発展させされ、熱心に擁護され、アイデアの父性を主張したルートヴィヒによってサポートされた。10

　聖母マリアのカンティガ集を完全にアラビアの影響下にあったというRiberaの誇張は誤りであったが、それにもかかわらず、レパートリーにおけるアラビアのパラダイムのその後の拒絶は、同様に、音楽性と歴史の重要な要素を見逃している。代わりに、さまざまな伝統の相互作用と融合が、これらの曲に魅力と特異性を多く与え、そうでなければ、Angl´esの初期の転写はまったく失敗に終わった。(略）

p５
リズムの計量記譜法がモードパターンを示すための初期の sine littera システムから独立している限り、計量ポリフォニーの実践者は新しい組み合わせを試し始め、最終的にはシステムの限界を試していた。モードの混合またはmutationは明確な可能性になった。15

p６
1280年頃以前の中央部のポリフォニーレパートリーと当時の理論家による声明の両方を考慮すると、音値の融合または分割によって行われた、以下のようなバリアント(extensio modiあるいは fractio modi)の使用が明らかになる。

• mode Ia – 3(=2-1)–2–1 . . . beats (extended first mode or alternate third mode)18
• mode IIa – 1–2–<1–2–> 1–2–3(=2-1) . . . beats (Lambertus: fifth mode)
• mode IIIa – 6–1–1–2–2 . . . semibreves (Lambertus: sixth mode)

　Walter Odingtonが1300年頃に言及した第２モードの中には、extensio modiとLB.BLと記された第1モードと第2モードの混合物がある（実践は必ずしも理論に従ったわけではないが、brevesの間にdivisio modiの付点が付いている）。19

さらに、Anonymous VII のパリバージョンは、第３モード＋第2モード(L B B + B L)、あるいは第３モード＋第５モード(L B B + L).も許容している。20

　したがってつまるところ、13世紀の最後の数年間に、パリのリズムモードのシステムが崩壊し始める前に、すべて3拍子に基づく、少なくとも12の(リズム）パターンが使用されていたと考えることができる。

p7
いくつかの写本で証明されているノートルダム大聖堂のポリフォニーのカスティーリャでの採用は、フランス北部に対して、強い外交的、封建的、家族的につながっている。22　1275年にアルフォンソ王自身が南フランスに長期滞在し、教皇とフランス王フィリップ3世との出会った。したがって、1280年の終わりにバイヨンヌで、これらのリズム慣習が王の側近で知られていた可能性が非常に高い。24

Rhythmic variety
カンティガの音楽に関する研究の過程で、Angl´esは最終的に、モーダルリズムのみを使用した転写が、人気のある曲に見られるリズムの多様性とは対照的に、過度に単純化されるだけでなく、また、多くの場合、元の記譜法の形や暗黙の意味を無視することを意味していた。

結果として、彼はパリ的なモデルをほぼ放棄したが、Riberaとは異なり、代替の歴史的パラダイムを（外部に）求めなかった。音楽的ナショナリズムや当時のイデオロギーの文脈に沿って、彼は、写本によって記録されたリズムがスペインの人々の独創性と音楽の天才を証明していると考えた。

　1943年にAngl´esが完全な音楽のトランスクリプションを出版してから、1964年に彼の版の対応する第3巻、「de losm´ usicos」（siglumE）と呼ばれるエスコリアルコーデックスの複製が出版されるまでに20年以上が経過しました。学界はついに、戦争によって流通が延期されたアングレの労働の結果を彼の主な情報源と比較することができた。

2つの問題があった。第１には、彼が表記を本格的な計量システムとして解釈することを選択したことである。それはフランスの理論家には支持されておらず、ポピュラーな創造性に対する議論の余地のある信念に依存していた。第2には、厳密に従えば、一部のトランスクリプションはやや不自然に聞こえた。たとえば、単純な2拍子要素が3拍子を妨げた場合、またはその逆の場合、である。

　問題を複雑にするように、若い音楽学者らは、中世の歌のリズム転写に疑問を投げかけ始めた。トロバドールの写本は、通常、リズムの手がかりを欠いており、スマートなポリフォニック書法は、宮廷歌についての特別な内容や機能とは別の世界や、知的訓練と音楽リテラシーを要求した。26

p8
中世の歌のリズム的側面への関心は知的に疑わしくなり、Concern with the rhythmical aspects of medieval song became intellectually suspect, and, hence, a dubious thesis argued in Spanish was decidedly not going to change their minds.

それに応じて、Angl´esの仕事は歴史的な言説の余白に置かれるようになった。それにもかかわらず、音楽アンソロジーの編集者は、ソースの記譜法に当惑したとき、それが便利であると感じ、そして、最終的に、古楽の演奏者は、時折奇妙ではあっても、演奏するのが魅力的であることに気づいた。27

これは、Angl´esが彼のお気に入りのソースを厳密に追跡し、最初に書かれたCantigasには、他の中世のモノフォニックレパートリーよりもリズムが簡単に把握できるメロディーが含まれているためである。

　All three manuscript sources for the music carry rhythmic information, albeit to different degrees. The first (Madrid, BNE MS 10 069) was once in Toledo, hence its siglum, To. It includes 128 songs, and represents the first stage attained by the compilation: one hundred songs, plus prologue, epilogue and appendices.

The remaining codices originated in Seville and are found in the Royal Monastery of El Escorial, north of Madrid. The lavishly illustrated MS. T. I. 1 is generally referred to as c´odice rico, or by the siglum, T. It contains 193 cantigas and was meant to be the first volume of a two-volume luxury set.

The other,MS. b. I. 2 (siglum E) is called codice de los musicos, because every tenth song is headed by an illumination representing one or more musicians. It contains 407 cantigas (apparently 416, but nine are given twice) and represents therefore the final stage of the collection. The Toledo codex was copied no later than 1275; and the Escorial codices written (or at least initiated) towards the end of King Alfonso’s reign, around 1280–4. 28

　聖母マリアのカンティガ集の写本の表記は、2つの異なるタイプがある。1つ（To）は地方で考案され、もう1つ（EとT）は、フランコ・フランスモデル直前の実用的な適応である。

基本的な音符の形は、Toでは、正方形とひし形のpunctumである。EとTにおいては、 virga と■の punctumである。

表現される音楽の実体は同じである。Toの表記は、半計量記譜法として最もよく説明されている。なぜなら、基本的なネウマ譜の中に、計量記譜法的意味合いを持つものが5つまたは6つしかないためである。

p9
Escorial表記には、最大14の計量記号が含まれる。さらに、T表記とE表記の間にはわずかでるが、重大な違いがある。すなわち前者は、2種類の連結符の区別においてより有益で一貫性があり、そして、cum opposita proprietate stemの使用において、より確かとなる。29

　Angl´esの版と写本の複製では、聖母マリアのカンティガ集のリズムは、一般に単純なモーダルタイプであり、頻繁なextensio modi またはモードの混合があることが簡単にわかる。30

さらに、Lambertus の第6モードのような特別なパターンがあり、 Galician-Portuguese troubadour song の歌のように、華やかな等音節リズムとラプソディ的接頭辞が組み合わされた場合もある。先例のアラブ音楽を想起させる4拍子の例もたくさんある（例：CSM109）。

ちなみに、アルフォンソ10世はアラブ文化に深く関わり、関心を持っていた。彼の治世の最後、彼の宮廷はセビリアにあった。そこでは、中東との何世紀にもわたる交流の影響を強く受けたアンダルシアの伝統が、ユダヤ人、モサラベ、改宗したイスラム教徒の間で今も生き続けている31。

　私はずっと前に、カンティガのリズムの多様性は多様な音楽的慣習の合流によるものであり、Riberaが最初に考えたように、これらの1つ、おそらく最も重要なものはアラブ文化に起源があると提案していた32。

アラビアのリズムの伝統は、フランスのモーダルシステムといくつかの類似点があるが、いくつかの珍しい特徴的な機能が含まれている。すなわち、大規模なリズム周期、シンコペーションの使用、付点リズム、５拍子、4拍子、である。

ここでは、いくつかの新しい考察を追加して、より体系的な方法でトピックを再検討したい。

Parisian versus Arabic paradigms
　アラブ・イスラム文化では、器楽は歌と切り離せないものであり、歌のアイデンティティとその学習プロセスは、主にそのリズムのパターンに基づいていた。

リズムパターンの名前と定義は変更されたが、バグダッド住民の伝統に根ざしたアラビアのリズミカルな理論の一般原則は、10世紀から12世紀の間のさまざまな時期と場所でさまざまな著者によって明確に共有された。

Ordo and period
al-F¯ar¯ab¯ıの著作から派生したアラビア音楽理論の有用な概念は、（単純な）サイクルと複合サイクルまたはperiodの区別である。リズミカルなサイクル（dawr）は短い繰り返し可能なスキームであり、通常は休符またはprotractionで終わる37。

p11
中世ラテン語の理論用語では、periodはordoと呼ばれている。適切と思われる数のコンポーネントを繰り返すことができる。

西洋の音楽理論は、抽象的なモーダルパターンを、通常のシリーズまたはオルドの系統的な配置と区別している。これは、脚と詩的なmetreの間のprosodyで使用されるものと同様の区別である。

モーダルパターンは、通常は単一のパターンを複製し、最後の休符で区切られる順序で示される。時折、Anonymous IVの第3モードのように、標準パターンが、拍子の細分化によって到達するバリアントパターンと組み合わされる場合がある39。しかし、すべてのordinesは通常、3拍子韻律に適合している必要があり、内部の多様性はまれである。

一方、アラビアの理論では、すべての韻律が可能であり、内部の多様性が期待され、異なる性格と長さのサイクルを単一の繰り返し可能なperiodに組み合わせることができる。異なるperiodを順に、同じ曲に組み合わせることができる。(略）

p12
彼らはまた、最後のdisjunctionがアクセントのない押韻音節で埋められたperiodのバージョンを使用している。4番目のパルスを細分化すると、その結果はcantiga 100Santa Maria、 ‘strela dodiaの最初のフレーズに見い出せる。さらに細分化が許容されている場合は、その2番目のフレーズmostra-nos via pera Deus e nos guiaを得る（例1）。


　period内のサイクルの組み合わせには、韻律の変更も含まれる場合がある。たとえば、CSM 107の最初のフレーズは、2つの8ビートサイクルを並置しており、最初のフレーズはそれらを4つの2拍のlongsに分割するが（装飾符は例外）、2番目のフレーズは拍を3 + 3 +2としてグループ化している。

この韻律体系は、al-F¯ar¯ab¯ıによって説明され、イベリア音楽では長く続いていた42。2番目のフレーズは、2つの不均質な6ビートサイクルを並置し、両方ともal-F¯ar¯ab¯ıによって記述されている。43　それはカデンツでのシンコペーションを示し、後の多くのスペインの例を想起させる（例2）。


　Al-F¯ar¯ab¯ıは、サイクルが逆になっているだけで、同様の曲に言及しており、Juan del Encinaの曲は、CSM 269と同じパターンを使用しているが、最初のlongを最後に置き換えている44。

余分なattackを追加し、それらを差し引くことによって開かれる可能性の範囲は広い。私は他の場所で、カンティガのシンコペーションと付点リズムの問題と、それらのアラビア語モデルとの明らかな関係を調査した。CSM 100は、これらの付点リズムの1つを特徴としている（例3）。45


p13
　同様のリズムがヒスパニックの人気のある伝統に浸透したことは、16世紀のEstevan Dazaによって提示されたロマンスEnfermo estava Antiocoによって証明されている。ゆっくりとした等音符の真っ只中にある付点リズムは、ロマンスPaseavase el rey moroに関連するそれらの典型的なものであり、Diego Pisadorによって発行されたQui´en ubiesse tal venturaにも見られる46。

Rhythmic modes V and VI
アラブの理論では、規則的な間隔の拍は、パターン化されたリズムの基礎と見なされる。このアイデアは、Ish¯aqal-Mawsil¯ıにすでに存在し、al-F¯ar¯ab¯ıに引き継がれ、10世紀後半の科学用語の辞書であるMaf¯at¯ıhに再び登場する。47

Avicennaは、ペルシャとKhor¯as¯anのすべての古代の歌は同じ長さの音符で構成されていたと主張し、IbnHald¯unは、この同じ単純さが、アラブ人を含む遊牧民の軽くて原始的な歌の特徴であったと暗示している。彼らはそれをHazajと呼んだ。

p14
この定義がいくつかのリズム的なバリエーションも含むようになったとしても、理論家らは、完全に規則的な間隔のattack（conjunctive リズム）で構成された作品を認めている。唯一の違いは、テンポであり、それぞれ比較的遅く（「重い」または「軽く重い」）あるいは、速い（軽い）ことである。これらは、韻律が事前に決定されていないことを除いて、パリの第５，６モードに対応している。

　パリ風とアラブの理論では、フレーズの終わりは一pauseでマークされる。アラブの書法、これはdisjunction, or separatorとも呼ばれ、最後の音の延長を伴うことがよくある。したがって、事実上、基本的な時価単位（percussions, attacks or articulationsの間で維持された音価）に加えて、2番目のリズム音価が作成される。対応する音価は、基本的時価単位を2倍または3倍にすることができる。これにより、2倍または3倍の時価、あるいはそれらの組み合わせでのパフォーマンスが可能になる。

　この理論は、詩だけでなく、歌や器楽にも適用される。Avicennaは、いくつかのパターンは器楽ではうまく聞こえるが、詩ではうまく聞こえないと説明している49。

別の言語的内容に適用する場合は、同様の調整が必要であった。アラビア語とは異なり、アルフォンソ10世が詩で使用したGalician-Portugueseは非定量的な言語である。このような詩は音節数と韻に基づいているが、テキストアクセントは韻の中と前の両方で構造的な役割を果たすことができ、これは通常、他のロマンス諸語には当てはまらない。50

リズムのパターンは、歌詞づけされたテキストの重要なアクセントに合わせて調整できる。またこれらは、書かれていないパーカッシブなダイナミクスで予想される、響き渡るattacksと一致する。51

　聖母マリアのカンティガ集では、ゆっくりとした等間隔のリズムがいくつかのメロディーにおいて見られ、ほとんどがロングで表記されている。これらは時々細分化される。つまり、連結符で表現された短いメリスマで置き換えられる。これは、音節のアーティキュレーションに影響を与えない装飾の形式である。

表記法に触発されたAngl´esは、この様式をex omnibus longisと呼んだ52。カンティガ106、111、322、327、335、341、および358は、概略的に、それぞれ7つまたは8つのlongの音符の音楽フレーズで構成されている（押韻するアクセントの位置に応じて、常に7番目のlongに該当する）。

これらのロングは、2つまたは3つにグループ化できる。longの装飾的細分化はしかし、すでにAngl´esによって考察されているように、cum proprietate / sine perfectione連結符(B B)を使用することで2拍子として明確にマークされている。したがって、基になるパターンはパリの第５モードではなく、むしろアラブのパラダイムがその代わりに適用される。

http://machikun.la.coocan.jp/apel1.htm

p15
　Angl´esがex omnibus brevibusと呼んだconjunctiveリズムの素早いマナーは、いくつかのカンティガに見られる。すなわち、249、266、302、334、および361であり、それらはすべて7音節または8音節行であり、アクセントは7番目にある。（7または7 '）。

そうしたラベルづけにもかかわらず、breve単位の細分化またはconflation の場合がある。基礎となるスキームが厳密なパリの第6モードである場合、短い音符のみが示され、フレーズはアクセント付きの breveで終わることが望ましいと主張できる。ただし、順序は不完全で、フレーズは、アクセントのないshort、続いてアクセントのあるもの、あるいはlongで終わる。longは、最後のアクセントのある押韻音節をマークするのに役立つ。アラブのパラダイムのように、延長によってセパレーターの機能を引き受けると考えられる。

これに対応するパターンBBBBBBLはフランス音楽では知られていないが、しかし、それはまた、al-F¯ar¯ab¯ıによると、First Light-Heavy compound cycleの最初のバリエーション（最後は2拍long）と一致する。53

overlaidテキスト内の内部アクセントの分布、または修正2拍子連結符の存在（CSM 266）は、モーダルリズムを除外する2拍子グループ化を全体的に示唆している可能性がある。

それにもかかわらず、根底にある3拍子パルスは、最終的なvirgaに続くstrokeによって示唆されることがあり、こうした状況下では、テキストに従って3つの2拍子グループと2つの3拍子グループを交互に切り替えることができる。たとえば、m´eus am´ıgos v´os dir´ei [ . . . ] c´a por as´ı o ach´ei (CSM 361)のように。

要するに、より大きな韻律の枠組みが明確に与えられておらず、カンティガからカンティガに変わる可能性があるため、適切な適応を伴う両方のパラダイムが適用される可能性があるのである。

　他のカンティガはさらに予測が困難である。リズムは最初は conjunctiveである可能性があるが、男性韻を踏む行では、延長は両方の韻を踏む音節に起因する可能性があり、それによってdisjunctiveパターン、つまりshort と longを混合するパターンが生成される。

これは、標準の音楽パターンと一致する場合と一致しない場合がある。2拍子の例はCSM79にある。それはB B B B L L（4つのシングルビートと2つのダブル）となっている。これは、conjunctiveのリズムサイクルのバリエーションの1つに対応し、al-F¯ar¯ab¯ıによって説明されている。

他のケースはカンティガ323と378で、厳密なテキストの対応よりも音楽の多様性が優先されている。サイクルも2拍子で、4つのショートと3つまたは4つのロングで構成されている（押韻アクセントの最後や最後から2番目の位置によって異なる）。

　アラブ的パラダイムは、パリのパラダイムよりも、一連のロングまたは一連のbrevesとそれらとの並置を説明するのに一般的に適していると結論付けることができる。

アラブの理論的枠組みは、未分化な音符の並び、つまり不完全な第6モードのordinesの実際の使用を吸収するのに十分な柔軟性もあった。これは、omnibus brevibusの表記のいくつかのケースに類推して適用できるが、これらのケースでは必ずしも順守されていなかった。

p16
Rhythmic modes I and II

フランスのモデルでは、カンティガ85、164、332などに見られる第２モードパターン（B L..．）として容易に認識できるものを説明することができる。しかし、ほとんどのアラブ人の作者らは、まったく同じパターンを異なる名前で認識している（RamalまたはLight Ramalが最も一般的）。

　パリの第２モードとRamalの基本形は一致しているため、only slightly unusual, 関連するパターンは、これらのパラダイムの1つが普及していることを示している可能性があるが、表記上の証拠はしばしばあいまいである。カンティガ260でのアルフォンソ王の個人的な酷評は、Angl´esによって、アウフタクトと伸長を伴う第2モードとして、転写された（例4）。56
56　リズムモードとの直接的な関係の仮説は、例４ではやや歪んでいる。押韻音節（第2、4、6小節）が3拍ではなく2拍であった場合、結果は、al-F¯ar¯ab¯ıによって確認されたリズムパターンと一致する。

Angl´esの解決は合理的である。なぜなら、というパッセージがEにて、数度にわたって生じているからである。第4モードとしての仮説（1 + 2 + 3、1 + 2 + 3ビート）では、同じbreveの代表としての punctum と virgaの交代を説明できない。57
57　第4モードの転写は、「modo arabico」の代替案とともに、Cunningham、Alfonso X、o S´abio、193–7にある。第２モードのアップビートはCSM149であり、その開始はCSM260とほぼ正確に一致している。

ただし、（転写の）結果は第２モードのパターン化とは明らかに異なっている。最も近いパリのパターンは、上記のバリアントIIa（Lambertusの第5モード　1–2–<1–2–> 1–2–3(=2-1)）であろうが、これはまた、最後から2番目の音節に対する非定型的なアウフタクトとextensio modi を想定している。

p17
この曲は、代わりにRamalのパラダイムに触発された可能性がある。しかし、（表記で許容されるように）2拍子を超えないことを前提とすると、al-F¯ar¯ab¯ıによれば、a cycle of the Second Light とa cycle of the Fifth Lightを並置することで正確な形に到達できる。

　いくつかのリズム的な躊躇、またはマインド変化は、ソースで識別できる場合がある。たとえばカンティガ86は、現存する3つの写本、To、T、Eすべてにおいてコピーされている。

2つのリズムサイクルを並置する最初のメロディフレーズが、例として十分であろう。コーデックスToでは、両方のサイクルが（スタンザで）Ramalまたは（不完全な）第2リズムモードの例として解釈できよう（fig.1を参照）。


一方、コーデックスTでは、最初のセグメントは明らかに、10世紀のal-F¯ar¯ab¯ıや13世紀のSaf¯ıal-D¯ınなど、そしてさらに、多くのアラブ諸国で広まっていた多くの理論的ソースで文書化されているパターンに対応しているようである。たとえば1+2+1+2+2 beats, only with double attack (1+1) at the disjunction.59

2番目のセグメントは同じパターンになり、代わりに終止が長くなっている（例5を参照）。コーデックスEの表記は、5番目の音節に１拍を追加して、そのために、スムーズな3拍子パルスを復元する。すなわち、結果は、ランベルトゥスの第5リズムモード（上記のバリアントIIa 1–2–<1–2–> 1–2–3(=2-1)）に対応し、第１セグメントの終わりにfractio modi がある。


　標準的Ramalは、明らかにアラビア的リズムの基本的な構成要素の一部であるが、一方で、第１モード（L B..．）は、アラビア的理論よりもフランス的理論の方が目立つ。しかし、実践に関する限り、これは幻想かもしれない。

p18
理論には独自の制約がある。ラテン語の作者とその地平線上に計量ポリフォニーを持っている現代の解説者とは対照的に、アラビア語で書いている人は、リズムサイクルの定義において、韻律的なパルスと音価パターンの要素との間の調整を含んでいなかった。したがって、Ramalの概念には、第１リズムモードが含まれている。したがってパルスは、最初の拍または2番目の拍に無差別に当たる可能性がある。

B L B Lなどの最初の短い音符は、カンティガ61におけるようにアップビートになるか、消える可能性があります。60

第１モードのバージョンは、サイクルまたは結果的periodの基本形式としては提示されなかった。なぜなら、これは、implying dropping out the last attackを意味するlongで終了する必要があったためである。したがって、それは修正されたパターンと見なされ、さまざまな技法の結果として、さまざまな形で論文に取り上げられている。

Al-F¯ar¯ab¯ıは、それをlong-short-long-short（Light Ramalのバリエーション）またはlong-short-long-short-longのいずれかとして説明している。longは2つのshortの音価となる。（Sixth Light、seventh variation）; 61　しかし、Avicennaはより長いdisjunctionを可能にし、3拍子との互換性をメイクしている。62

　理論的なあいまいさは、L B L BLシーケンスの最後のlongのビート値に関する表記上のあいまいさによってカンティガで同様である。たとえば、CSM 213では、パターンがprefix（2つのshortまたはshort-longグループ）とともに使用されている。ただし、フレーズは2つのlongで終わり、その後に2つのshortのアップビートが続き、それは、標準的３拍子韻律と交替する、3 +3と2+ 2 +（1 + 1）拍が並置されていることを示している（例6a）。


DionisioPreciadoは、Cantiga166をこのカテゴリに割り当てたが、最後の2つのlongはコーデックスTでのみ見出だされる（例6b）。


彼はこれを、ルネッサンス期のいくつかのスペインのソースにその痕跡を残している人気のあるpeteneraリズム（4行8音節の歌詩がついたスペイン Andalucía 地方の民謡）の例として解釈した。63

　このリズムプロファイルは、たとえば、16世紀のPor Antequera suspira, Retrayda est´a la infanta や Rosafrescaで使用されている。これらは人気のある伝統から、もっぱら、2種類の音価tempora longsで転写される。現代的記譜ではそれは、6/ 4拍子および3/2拍子の規則的な交替となる。（例6c）64


交替は、Juan del Encina,による人気のあるポリフォニックvillancicosでも生じる。これらは、Angl´es が「混合モーダルリズム」と呼んだものに関連する65。

p19
　この表現によって、ルートヴィヒをきっかけに、彼はパリのモーダルパターン、特に第1モードと第2モードの体系的な混合を意味するようになり、その結果、このタイプの新しいリズムパターンが生まれた。

/ /. /. / (B L L B)
or the reverse
/. / / /. (L B B L)

Angl´es は、この第1モードと第2モードの混合が、86ものカンティガに適用されたと主張した66。

これらの「二次的」パターンはオディントンによって認められているが、明らかにフランスでの使用が限られており、これらが実際、アラブ音楽では現在にもあるという事実に、Angl´esは、気づいていなかった。67

　最初のパターン（B L L B）を明確に例示しているカンティガは、CSM 43、108、および331であるが、他の多くのパターン（CSM 55、57、199、234、310、および369）にも見られる。69

p20
Al-F¯ar¯ab¯ıもこのパターンを説明しており、最後に2拍のlongが追加されている70。Avicennaはこれを1〜3のlong（2種類の音価）と組み合わせている71。

Cantiga76は、3つの最後のlongが二重のアップビートに変換される可能性があることを示唆している。コーデックスTでは、ルフランは第２モードの接頭辞（BL、BLLB）を持つ同じパターンを持ち、その後にLLBBまたはLLLと同等の形が続いている。その結果、6/ 4拍子および3/2拍子の組み合わせとして解釈される可能性がある。コーデックスEの写字家は、こうした混合を、フレーズの最後まで延ばそうとした（例7）。


（略）
p21
　つまり、通常のパリの第1モードと第2モードは、Ramalのリズムに対応している。それらの組み合わせは、カンティガで頻繁に使用される一貫したパターンをもたらし、イスラム世界で広まった。いくつかのカンティガで記録されている韻律のヘミオラも、パリのパラダイム外である。パリのパラダイムの影響をRamalの実例から解きほぐすのは難しいが、notational revisions may betray its mark.

Rhythmic modes III and IV
フランスのArs antiqua理論では、long and short の明確な定性的な区別は、実際の音価に関する不可解なあいまいさを伴う。表記は2拍のlongと3拍のlongを区別しておらず、breveはまさに短い音を示していた。つまり、クイック/レギュラー（1ビート）または拡張/アルテラ（2ビート）のいずれか。最終的に、このあいまいさはsemibrevisの概念に移り、これは、breveのあらゆる細分化に適用される。

　Angl´es は、聖母マリアのカンティガ集の Escorial codices が、 virga and two puncta, or a virga, a punctum and a virgaのいずれかを使用して、第３リズムモード（3+1+2 beats　L B B(アルテラ化））を表すことを考察した。

　trouv`ereレパートリーでは、表記は第3モードを示唆することがある76が、第４モードは通常、実用的な代替手段としてではなく、対称性のための理論的構成概念と見なされる77。

ソングでは、virgaが続く２つのpunctaとして（概念的には、short, extended short, long、1 + 2 + 3ビートに対応）記譜されている。

Angl´esは、1958年に出版された彼の版の最後の巻で、聖母マリアのカンティガ集に、第3または他のモードと関連して発生する第4モードの存在を認めたが、but never by itself;78 。彼が第4モードに関連付けたいくつかのパッセージの表記は標準的なものであるが、virgaが,extended breveを表すために仮想的に使用された可能性がある。

p22
第4モードは、単に第2または第3モードの1つの可能な側面と見なされていたようである。

(略)

Conclusion
あああ
Juli´an Ribera（1922）、Higinio Angl´es（1958）、David Wulstan（2001）は、これまでのところ、聖母マリアのカンティガ集のリズムプロファイルの包括的なリストを作成し、全体的な結果を詳細または数値で提示する唯一の学者である。81

これらの著者はレパートリーに対して異なるアプローチを持っているため、統計は一致しない。 RiberaとAngl´esの両者によると、シンプルで認識可能なリズミカルなパターンがメロディーの半分以上で発生している。それぞれ266曲または233曲です。

　聖母マリアのカンティガ集の表記法は異なる解釈を認めているという事実にもかかわらず、コメンテーターは、この記事で説明されている単純なリズムパターンが、少なくともコレクションの半分に適用されることに同意する。

聖母マリアのカンティガ集と当時のリズム理論との間の正確な対応の程度を確立するために行われるべき作業はもっとたくさんあるが、前述の議論から、我々は、聖母マリアのカンティガ集のかなりの部分は、リズムモードの観点から考えることができたとしても、確立されたアラブパターンと一致する可能性があるため、疑いなく、フランスのモデルを明確に指し示すパターンはほとんどない、と結論付けることができる。

ほとんどの場合、2拍子と３拍子の韻律（ex omnibus brevibusの表記、混合モード、混合韻律、2拍子、４拍子パターン）を扱い、アラブリズムパラダイムがパリのパラダイムよりも明らかに適しているか、適用する唯一のパラダイムとなる。聖母マリアのカンティガ集のリズムパターンは、東洋の影響を受けた伝統を参照してのみ説明できる場合がたくさんあるのである。

　フランスのモデルの影響と重要性を認めるような、パリ中心の歴史的イデオロギーのために、この重要性は以前は誇張されており、聖母マリアのカンティガ集のアラビアの遺産は最小限に抑えられていた。

リズムがアンダルシアの音楽活動の中心的な特徴であり、すでに学ばれた段階にある曲の主な特徴であるという事実は、Alfonso Xと彼の仲間が、計量的に考案された聖母マリアのカンティガ集に、リズム形の膨大な語彙を記録するように導いた可能性がある。

そうすることで、場合によっては、リズム的な変種が解釈の緊張を裏切る可能性があるとしても、 in so doing they did not normally choose between alternative paradigms,を提案したいと思う。

代わりに、パリのリズムモードの限られた語彙は、新たに征服されたアンダルシアで普及している、より発達した、包括的なアラブのリズムの伝統を通してフィルタリングされ、吸収された。

　そのパターン化されたリズムとその自由な組み合わせを許容することは、現在認められているよりも、同等のヨーロッパのモノフォニックレパートリーに適用されることが多かったかもしれない。当時、フランス人は、彼らの計量記譜法を、モノフォニックソングの多様な現実に適応させる意欲または適切な文脈を欠いていた-例外はあっても。

これらの現実に対処するために、リズムモードの文脈の中で解釈されることを意図したフランコニア以前の表記法の制限を超えることは、王からの容赦ない圧力の下で、アルフォンソの宮廷でのEscorial codices での写字家の役割となった。

パリの表記法とリズム的に変化する外国の音楽オブジェクトとの間に生じる緊張は、写本の音楽的解釈における論争の原因であり続けている。

　フランスの影響は、聖母マリアのカンティガ集のリズム的なモデルの提供には限定的であったかもしれないが、それはそれらの保存に不可欠な役割を果たした。
　
確かに、「その治世の最後の10年間に、アルフォンソ王はフランスの支配的な力に悩まされるあらゆる理由があった」83が、結局、パリは彼に、かつては新しい文化的文脈に適応し、聖母マリアのカンティガ集のリズムがEscorial codicesで、将来の聴衆の喜びに歌われるのに十分な精度で生き残ることを可能にした表記ツールを提供したのである。