Walter Frye and the Contenance Angloise 1

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Introduction ｐxvii 15世紀は、矛盾と対照の時代であった。 敬虔と堕落、富と貧困、退廃と発見の精神との間には極端な対照があり、人々は「この時代の卓越性」と「時代の悪」の両方について長い間、書きとめていた。 特定の葛藤と矛盾は、世紀中に起こったより大きな現象、すなわち神を中心とした世界から世俗世界への移行の一因となった。15世紀には、中世末期の神秘的な信仰と初期のルネサンス時代のヒューマニズムが、不安定かつ不変で常に変化していた基盤に達していた。 　ルネッサンス期の初期の生活に関する奇妙な矛盾は、15世紀の音楽レパートリーに見られる。ますます世俗的になっていた時代に、突然大きな神聖なポリフォニーの開花があった。宗教的信仰は、人道主義の出現を明白に生き延び、それによって変容したが、ルネッサンスの神聖な音楽の活力は、不利な状況での単なる生存よりも、何かを主張した。 それは、作曲家が独創性の高さを示し、オリジナルの創造性を示した媒体であった。Heinrich Besselerは、 DeventerのDevotio Moderna※、Thomas a Kempisの「キリストに倣いて」の精神、特にオランダで、世俗的な宮廷や教会の廃頽への反動として生まれた世俗の敬虔主義などと関連させて、1450年前後の典礼音楽の盛り上がりへの突然の上昇についての一つの説明を提案した。 ※トマス･ア･ケンピスのいたアグネテンベルク修道院と同様，フローテの創設した〈共同生活兄弟会〉に属した約50の修道院は，ネーデルラントとドイツに〈新しい信仰Devotio moderna〉と呼ばれる敬虔主義的運動を民衆の間に広めた Besselerの提案の難点は、作曲家と敬虔的運動との直接の関連がないことであった。 15世紀のDufay、Ockeghem、Dunstable、Busnois等の偉大な作曲家たちは、フランスの王たちやSavoy、Burgundy、Bedfordの公爵の素晴らしい宮廷ために彼らのミサ曲を書いたが、それは、Devotio Modernaのためではなかった。 xviii 当時の才能ある作曲家のなかで、Obrechtは恐らくDeventer周囲の仲間と多くの関係を持っていた可能性が高い唯一の人だったであろう。しかし、そのような接触は神聖な音楽の発展にとって有益であるとはほとんど証明されなかった。なぜなら、敬虔な敬虔主義者は、一般的に芸術の精緻化には敵対的であったからである。 Huizingaは、15世紀の知的人格と道徳的人生の領域の間の鋭い分離を、以下のように指摘している。 一方では、宮廷文化、貴族と豊かな中産階級。野心的で誇り高く、魅力的で情熱的で贅沢なもの。 一方では、Ruysbroeckの、そしてSaint Coletteの "キリストに倣いて"の "devotio moderna"の静かな領域。Van Eyckの穏やかで神秘的な芸術をこれらの領域の2番目、"devotio moderna"の静かな領域に置きたい 献身的な仲間は、この時期に栄えた偉大な芸術とはほとんど触れていなかった...彼らはおそらく、小羊の祭壇画を、単なる自慢作としか考えていなかった。 Utrecht大聖堂の塔にも、またそのような認識だった。 したがって、初期のルネッサンス時代の特定の仲間において繁栄した宗教的信仰の現象は、神聖な音楽と芸術の創造に対する強い動機を示唆しているが、原因と結果の間の関連性が失われている。 　人道主義時代のこのような豊かな神聖音楽の単なる出現は、ある意味において、矛盾ではあるが、当時のミサ曲作曲の様々な技法的側面は、調和しないルネッサンスの統合を反映している。 15世紀のミサ通常文における聖なる要素と世俗的な要素の混合には、独特のルネッサンス的な切り口がある。これは、中世のものとはまったく異なっている。ルネサンス期の神聖な音楽への世俗的な歌の組み込みは、13世紀のプレインソングテノールへの世俗的なモテットの取り込みよりもはるかに冒涜的に見える。 中世とルネッサンスの宗教的精神の違いは、13世紀のモテットと15世紀のミサの間での、聖的なそして世俗的な機能の完全な逆転ほどには、あまりうまく説明されていない。 神との親しい言葉を発した13世紀の人間には、テキストが徹底的に素朴な感情に祈られた作品の基盤にチャントの断片を置くことなどについての、何ら宗教的冒涜感はなかった。 彼の15世紀の子孫は、神とは、快適でカジュアルな関係ではなかった。ミサは、15世紀に、はるかに多くのcommissionを受けた。しかし、典礼の強調にはほとんど関心がなく、それは常に、固有文ではなく、設定された通常文であった。通常文の５つの章が、チャントの断片によって統一されるかどうかは、問題ではなかった。そのチャントは、典礼のその他に属していたり、あるいは世俗調でさえあった。 　ミサ曲作曲における音楽家の関心は、宗教的信仰の問題とは別に、理解される。なぜなら、芸術的な課題があったからである。すべての章で反復的なメロディーによって統一された大規模な複数章の創造は、15世紀半ばの産物であり、それは鋭く活発な音楽想像力の証拠である。 それにもかかわらず、特にプレインソングの顕著な耐久性に関して、神聖な音楽にこの躍動的な想像力を捧げるインセンティブが何であったのかは不可思議である。 単に宗教的表現に適切なものではなく、カトリック教義のすべての微妙な洗練性に絶妙に適切かつ敏感であるチャントのレパートリーが存在した。チャントは世紀ごとに写譜され、教会で演奏された。したがって、新しい、当時音楽表現を要求するのに効果的であり、宗教的信仰の独特な人格主義的性格を伝えている様式を要求するのに十分強く感じられた宗教心??があった。 　カール・フリードリッヒは、「様式」は、「神秘的な性質であり、自発的であれば真実であり、本物の感情と真実の経験が投影された場合にのみ自発的である。様式は、その個性によって確信され、証明されることはできない」と述べている。 xx ルネサンス期に登場した神聖な音楽は確かに説得力があり、その最高の一人であるパレストリーナは、伝説的な姿となり、彼の名前は、彼の死後400年間、音楽における宗教的表現と同一であった。20世紀においてさえ、 教皇ピウス10世のMotu Proprioは、グレゴリオチャントとパレストリーナの音楽のみが、神聖な礼拝に適していると提唱した。 　西ヨーロッパの音楽で15世紀に起こった様式変化は、多くの点で決定的なものであった。ポリフォニーの創造以来初めて、フランスは音楽の分野で覇権を失い、成長と変革の衝動は他の場所から始まった。 音楽史家は、この変化の説明のために、イングランドとイタリアの両方を調べた。最近まで、イタリアの音楽史は、ルネッサンスのリーダーであるとリスペクトされていたため、より徹底的に探究されてきている。 しかし、音楽の分野では、イタリアはその時代における新しい神聖な様式の創造を促すに十分な精神的雰囲気的精力を提供していないようである。 ”ルネッサンス”あるいは”新生”という言葉は、他のどこよりもイタリアにおいてより多く記述されてきた。なぜなら、人道主義的興味が、特に文学においてだが、（イタリアが）古典的な古風さの壮大さを復活させていたためである。 ペトラルカは、後の時代のことだが、とりわけ過去の美を復活させることに関わっていた。彼の生涯にわたる関心は、ローマを教会と市民の覇権に復帰させることであり、 Cicero ， Livy ， Horace ， Vergil ， Homer 、そして過去の栄光を負った古典的な作家に宛てた手紙は、過去の実りの栄光を再度要求した。 ボッカチオもまた、古代文化の復活を強調し、彼はペトラルカを、1000年後に月桂樹の花輪を取り戻すよう賞賛した。 ルネッサンス時代に、音楽家たちが、古典ギリシャ音楽理論の全音階、半音階、エンハーモニーの分野の復活を試みたのもまた、イタリアであった。 xxi 　「ギリシャの栄光とローマにおける壮大さ」の伝統を継承していなかった北部諸国は、創造的な活動をより新しいチャネルに変えた。彼らは、西領域の新しい世界だけでなく、一般的な新しい世界をも求めた。 ルネッサンス時代の絵画と彫刻におけるイタリアの創造性精神は、依然としてチャレンジされていなかったが、英米の学者たちが主導した文学批評の最近の革命は、ルネッサンス時代の英国の詩に大きな注目を集めている。様式の進化が、北方の国々においてより早く、より決定的に行われ、ほとんどの時期のルネッサンス時代に、英国が文学において先立っていたことが言われている。それは、美術におけるイタリアのそれと同等であったということである。 　音楽においても、英国はまたリーダーであった。なぜなら、英国の作曲家は、最初の循環ポリフォニーミサ通常文を書き（L..Power)、その様式は、大陸の作曲家によって率直に賞賛されたためである。 神聖的カテゴリーが、ルネッサンスの音楽の様式変換における主要形式であるということが作者の主張ではないが、新しい様式が典礼形式を受け入れ、循環ミサ曲のような主要なものを作り出したという事実は、考慮に入れられない。 英国の14-15世紀の雰囲気は、ブリテン島の宗教サービスが時代の様式に追いついていたため、神聖な音楽の発展に資するものであった。英国の神聖音楽作品は、イタリア、イタリア、フランス、ドイツのそれより深い信心深さではないが、どうにかこの地に舞い降りていた宗教的精神によって促された。 英国での宗教声楽の発展は、英国教会がより現実的であったために、大陸よりも草の根と密接な関係を持っていた。 14世紀から1550年頃までの英国で栄えたポリフォニーキャロルの豊富なレパートリーは、一般的な礼拝と芸術音楽との密接なつながりの明確な指標の1つである。準典礼的で非常に活発なキャロルのような音楽形式に正確に対応する大陸での形式はない。最も近いパラレルなものとしては、13世紀のモノフォニー作品と16世紀のポリフォニー設定作品との間にほとんど連続性・（関連性）を示していないイタリアのlaudaがある。また、似たようなものだが、14世紀のドイツのGeisslerliederがある。laudaもGeisslerliedも、英国の音楽生活の中でキャロルが重要な役割を果たしたようなものではなかった。したがって、キャロルは、異国において、大陸界で欠落していた原因と結果の間のリンクを提供している。 　世俗的敬虔と芸術音楽の関係を示す英国の宗教的、音楽的な生活のもう一つの特徴は、cantorの地位である。英国の大聖堂の修道院のコミュニティは依然としてプレインソングを歌っていたが、新しい神聖な音楽の作品は、作曲家やcantorが俗人とともに持っていた接触から決定的な刺激を受けた。 15世紀の英国のcantorの役割は、彼が頻繁に直接接触していた一般の人たちに音楽を提供することであった。cantorによって作曲された音楽は、教会の奥深い所から来ていて、彼は世俗的な君主ではなく教会に支持されていたが、世俗的な世界に触れ、教区の趣向に精通していた。彼の会衆はおそらく「 “Tappster ， Drinker ， Fill Another Ale ， "」のように流暢にポリフォニック・ソングを歌うことを知っていたことだろうし、確かにキャロルを知っていたことだろう。Probably even the minor clergy had a weakness for such songs. Red Book 0f Ossoryのラテン語詩は、1317年から1360年にかけてフランシスコ会の Richard de Ladrede司教によって書かれ、彼らが大声で歌い慣れていた世俗的な歌の言葉を置き換える大聖堂のマイナーな聖職者のために書かれた。 このように、プレインソングは、個人の修道院の儀式の柱であり続けたが、世俗礼拝に対する音楽の責任を持ったcantorは、より世俗的な聴衆のために作曲した。彼らは、同時代の様式において想像された十分な刺激を受けていた。 　英国の教会とその会衆の間に確立された特有のラポールの結果として、おそらく14世紀後半から15世紀後半にかけて英国芸術と音楽を特徴づける習慣とスキルの奇妙な組み合わせがもたらされたのかもしれない。そのラポールは、cantorの地位とキャロルのレパートリーによって象徴されている。 キャロルはある意味では、あらゆる中世の英国音楽の特徴であったある種の人気ある嗜好を持っていた。 Jacques Handschinは、13世紀から14世紀初頭の英国音楽をフランス音楽と比較し、「比較的反映がされず、研究されず、審美的な感知性がより強調されている」と表現している。おそらく、15世紀半ばの大陸に対する中世の英国音楽の強い魅力が、その人気の性質とすぐれた魅惑から生まれた。 「様式」という言葉は、特に芸術の様式のために使用されるときには、魅力的なものである。しかし、いろいろな芸術の様式が、同じような方向に発展しているようである。 例えば、抽象芸術は、人間が自然界に疎外感を感じる時に繁栄する傾向があり、自然主義的な技術は、人間が自然に服従するときに出現し、シンボルを課す必要性を感じないときに出現する。 ルネッサンス時代、生活と芸術のほとんどの表現に共通していた要素の1つは、異様に洗練された様式であった。 コンスタンティノープル陥落のニュースを受け取ったブルゴーニュの宮廷は、十字軍を組織し、準備祝祭の中では、1454年にLilleでの有名な農民の祝祭があった。 これは精彩な出来事であった。その間、pastriesは非常に巨大で、20人の音楽家を収容することができた。彼らは飛び出して、適切な時に、自分の腕を披露した。それは滅多にないような贅沢な洗練さの規模で構想されたpartyであった。 十字軍が実行されなかったという事実は、ほとんど忘れられている。人々の記憶に生き生きと残っているあらゆる事柄は、”別れ”の、その様式の優雅さと誇張である。 そこには、繊細さについての異なった種類の画家の間についての強い関心がある。Bosch and Brueghel の描いた堕落した生物は、ヴァン・アイクやフラ・アンジェリコの崇高な狂気のようなものではなく、比類のない忠実な描写、徹底的にコントロールされた線を支持する広範囲の筆遣いを打ち消す絵画技術を示している。 中世の絵画のより抽象的な表現は、細部に象徴的な意味が含まれていたとしても、現実的な細部への情熱につながっていた。 音楽においても、10世紀半ばに起こった様式的変化の主要な要素の1つは、技法の素晴らしい改良であった。 世紀の最後の半分では、作曲家はそのような高度な技術的融通を達成していた。彼らは、様々なピッチや時間間隔で興味深く仕上げられたカノンの形で、自分自身に芸術的制約を課し始めた。 xxiv 　同時の音高関係の鋭い感覚と非常に合理的な規制手段は、より洗練されたリズムとメロディーのコンセプトが、全体として、垂直の和音の重要な関与をほぼ完全に排除しているあらゆる東洋文明から西洋音楽を区別している。 垂直の和音は、伝統的には、協和和音や不協和音として議論されてきた。そして、西洋のポリフォニーの発展において、両者のバランスが絶えず変わっている。 1450年に進化を遂げ、16世紀後半に最高潮に達したスタイルは、西洋音楽全体の歴史のなかでも最も厳密な協和音程のひとつである。不完全協和音程（3三度と六度）の柔らかい響きは、完全協和音程（五度と八度））で注意深く処方された使用に認められるようになり、不協和音は非常に短縮された。 16世紀の理論家は時々の不協和音のケアや扱いのための正確で広範な規則を与えたが、15世紀の音楽家（理論家や作曲家も同様）は、この問題についてははるかにカジュアルであり、15世紀末以前の不協和音の扱いについての一貫したパターンはほとんどなかった。 15世紀後半の大陸理論家たちは、彼らが「減価した対位法」と呼んでいた不協和音の問題に適度な注意を払っていたが、英国の音楽家たちは、不協和音の使用の問題には、この上なく、冷淡であった。 いずれにせよ、主な考察は、協和音程の音程の扱いであり、歴史的な観点からみると、協和音程とのこの先取りは、非常に重要な傾向を示している。 15世紀は、西ヨーロッパが多声音楽を発展させた1000年間のほぼ中間点であった。 15世紀に先立つ最初の5世紀の間、音楽は、協和音程の使用の増大と不協和音亭の排除に、かなり着実に動いた。それ以来5世紀間、音楽は協和音程から離れ、肯定的な審美的要因としての不協和音の復活に向かっていった。 　「ネーデルランド様式（訳注：現在ではフランドル様式と呼ぶべきだが、あえて原文のまあとする）」と呼ばれることが多い15世紀の様式は、フランドル楽派の間で、最も初期の代表者を見出した。彼らの多くは、ネーデルランドだけではなく、フランスやイタリアを中心に、より多くの有利なポジションを他の場所で探し求めていた。この旅は、真に国際的なスタイルの創造をもたらした。 このように、理論家や詩人は、外国の影響、特に英国からの影響に言及していたので、様式が、実際には、元々 　「ネーデルランド様式（訳注：現在ではフランドル様式と呼ぶべきだが、あえて原文のまあとする）」がどのようであったのかということには、疑問がある。 本書の目的は、この様式の形成に貢献した特に英国の特徴を調べることである。彼らが大陸の音楽の流れに同化したやり方を検討することは、主に英国の作曲家であるウォルター・フライ（Walter Frye）の研究を経て行われてきた。その作品は1450年から1480年にかけて大陸で広く流通し、フランス、ブルゴーニュ、イタリアに英国の音楽慣用を伝える重要な役割を果たした。 　これまで何十年もの間、15世紀の英国の作曲家の英国楽派に関しては、海外を旅した同胞のそれとはまったく異なっているとみなされるのが通例であった。大陸を旅した者は、外国の様式に影響され、その結果、彼らの音楽はもはや、純粋な英国の音楽を示さないと考えられていた。 しかし、最近では、英国と大陸の写本の間に多くの一致があることから、BukofzerはDunstableの作品を編集して、英国の作曲家を、こうした2つの楽派（英国固有と大陸との交流があったもの）に分けることができないことを示している。 Walter Fryeの作品は、英国のものよりも大陸の写本ではるかに広く示されているが、彼の作品は、まったく英語の音楽の伝統のなかにいる。 Fryeの作品は、15世紀の作品の３つの主要な分類、すなわち、ミサ曲、モテット、世俗歌すべてに及んでいる。 Walter Fryeは、ジョン・ダンスタブルとリオネル・パワーが、15世紀前半にヨーロッパ界に導入した“ contenance angloise ”の伝統を実現した作曲家である。ゆえに、彼の作品は、対位法の黄金時代に、実際の英国人としての貢献をした標準を供与する。