Mid-Fifteenth-Century English Mass Cycles in Continental Sources, vol. 1 －４
James Matthew Cook

音楽エッセイのページへ戻る	初期多声音楽
Leoninのページへ	中世楽のページへ
ペロタン（Alleluja Nativitas)	ペロタン　Clausulaのページ
substitute clausulaのページへ	前ページへ
	次ページへ

p60
Chapter 2
English Music on the Continent:
Dissemination and Scribal Practice
第1章では、英国と大陸音楽の間の15世紀の接点の多くについて概説した。場合によっては、これらのルートは、ルッカやブリュッセルクワイヤーブックなどの特定の写本に直接つながり得る。他の例では、イギリスのサイクルはある大陸の資料から別のものにコピーされ、最終的にイギリスと直接の接触がないまま写本に到達した。

　この章では、15世紀のイギリスのMass cycles のレパートリーが見つかる大陸写本のそれぞれについて調べる。このようにして、大陸全体に広がったレパートリーに影響を及ぼした伝搬の複雑なパターンは、たどることができる。とすれば
この論文の焦点はバンドIIレパートリーにある。15世紀なかばの作品を含んだこれらの写本は、多くの注目を集めるであろう。

　大陸の資料の概観（2.1）に続いて、現存する大陸のコピーのより包括的な概観を提供するためにそれらの構造を論じる（2.2）。この概観は、第4章で、どの大陸のミサ曲が英語のレパートリーの最良の比較対象になるかを決定するために後で使用される。

2.1 Continental sources of English Mass cycles: an overview
(略）
p62
　Hamm氏は、より整理されたアンソロジー作品集のいくつかは、自身が小さな「冊子写本」であり、したがって、複数の写本の見本として機能し、スクライブの間に出回っていた可能性がある見本から直接コピーされた、と提案した。逆に、レパートリークラスター、スクライブ、そして透かしが異なるようなあまり整理されていない写本は、いくつかの初期の束ねられた写本をまとめたもので構成されることがありる。

p63
　ハムの提案の明らかな魅力にもかかわらず、それは問題のない理論ではなく、そして、Margaret Bent は、そのより広範囲にわたる結果の、いくつかに対する注意の注意を鳴らした。「私たちは、現存する写本の中の作品の並び順の詳細が、より大きなコレクションの順番が保持されるよりも、小さく独立している冊子（写本）からコピーされた作品の並び順を保存しているとは思われない」と述べた。

さらに、後日一緒に束ねられた「冊子写本」のセットからの写本の生産は、紙の大きさとその時点でコピーが可能な領域における非常に大きな違いによって制限されていたに違いない。写本は「束ねることが物理的に可能であるような方法で」計画されていなければならない。

　紙の大きさや譜表の規則の問題に注目するのと同様に、地域の慣習の違いが、どんな「魅力的な写本を」明らかにするだろうとBentは指摘している。なぜなら、イギリスで生まれた、または英語の見本に密接に関連する「冊子写本」、「使用方法の違い、ページ内の声部の順序、ボーカルスコアリングとテキストづけの変更、記譜法の黒フルから白抜きへの”変換”、そして大規模な単一冒頭形式から小さい形式の２つの冒頭の登場などは、大陸の写本の中で見つかるならば、明らかとなったことだろうから。

こうした足跡も、英語のスクライブの存在も、ハムの明らかな英語の「冊子写本」のいずれにも見られず、ベントはそれらのうちの非常に多くのものの特定に異議を唱えている。 8

p64
　ハムが提案した英語の「冊子写本」は、オリジナルの英国の筆記作品ではなく、むしろ大陸への普及の初期段階である可能性がある。以下の、Strahov写本のいくつかの gatherings について述べられているように。

さらに、用紙サイズの比較的小さなずれは、写本をトリミングすることで簡単に取り除くことができる。それにもかかわらず、Hammが説明しようとしていることについての、より簡単な説明があることは明らかである。

　明らかに、「冊子写本」という用語は、今や多少非難されている。しかし、それが説明しようとしている現象 - 現代の学者が直面している写本はしばしば最初に作られたものと同じではない、ということ - はまだ考慮に入れられなければならない。

ハムが説明しようとしている現象の多くは、他の方法でもっと簡単に説明できるということにおいて、Bentは疑いなく正しいが、多くの写本がいくつかの異なる編集段階を持っていたことは確かである。伝搬と影響を追跡しようとするとき、この理解は重要であり、そして、完成した写本と同様に、各レベルの編集を追跡することは有用である。

p65
　さらに複雑なのは、後で別の素材を再製本して再利用することである。これは、まったく異なる写本の作成につながる。

これら2つの問題、写本の比較的同時代的な階層化された作品と、後代のより侵略的な再綴じ込みは、写本の制作のさまざまな段階を考慮に入れた著しく複雑なアウトラインの必要性を示唆している。

このために、Tr 93からLyon 6632までの写本に焦点を当てたい。この日付より前の7つの写本には、band Iのミサ曲だけが含まれている。

時系列のbandsは第3章でより詳細に検討されるが、Tr93以降の写本への一般的な焦点は変わらない。

　英国のバンドIIのミサ曲の大陸のコピーのより包括的な概観を提供するために、それぞれの写本のためのコピーの異なる段階は、最初に概説されなければならない。これは付録1.1に概説されている大まかな年代順に進むであろう。その後、これらの再定義された写本セクションは、大陸の資料における英語のサイクルのコピーのより詳細な暗示を作成するために使用される。

Tr88, 89, 90 and 93
Trent Codicesは、この研究対象期間での作品の最大の現存コレクションである。 Tr88、89および90は同じ主たるスクライブに拠っているが、一方Tr93はTr90の大規模のための見本としてコレクションにつながっていて、Johannes Wiserのそれを含む、何人かのスクライブを共有している。

p66
Peter Wrightは、これらの写本のコピーについての興味深い洞察を提供した。透かしとスクライブの証拠に基づいて、彼はTr90が、Wiserの故郷であるミュンヘンで（編纂が）始まったことを示唆している11。

Wright は、Wiserが彼の助手によってコピーされたセクション（Sanctusの真ん中から始まる）を残した後のコピープロセスの中断は、写本が、1454 あるいは1455年頃、トレント大聖堂での後任者の地位を引き継ぐために呼ばれたという事実による、と主張する。

未完成のTr90とその見本のTr93（おそらくそれ自体未完成）とともに、彼はトレントで購入した紙に「新しい同僚や弟子」の助けを借りて、写本を完成させることができた。

　Tr90は、Trentに移るまではほぼ完全にWiserの作品であったが、彼の後の写本（Tr88とTr89）には他の約15人のスクライブからの作品が含まれている15。これに対する例外は、Tr88とTr89の両方の大部分をコピーし、Tr89の半分以上をコピーしたスクライブBである（テキストのコピーが信頼されるわけではないが）。Wright は、スクライブBがWiserーの後継者であるPetrus Schrottであると、考えた。略）

P68
The Lucca Choirbook
以下に示すように、 Lucca Choirbook は主に一人のスクライブによって連続的にコピーされた。しかし、あとでいくつか追加がある。付録2.5には、Strohmによって再建されたルッカ写本でのMass Ordinary の設定の概要が示されている。（略）

　付録2.5に示すように、 Lucca Choirbookの大多数は、一人のスクライブの作品であるように思われる。 Strohmは、それがブルージュで約.1463年頃に編集されたことを証明した。後のスクライブによって追加されたのは、nos. 9, 13 and 14 (as numbered by Strohm in the inventory).の3つのミサ曲だけである。

p69
Strohmは、no.13は、写本がブルージュにある間にコピーされ、それが写本の核と密接に関連があることを示唆している。

この作品を担当したスクライブBは、写本に単一の完全な追加をした。それはnos. 2, 6, 12a and 12bのように、ブリュージュへの地域的関係を持っていた。

第9号と第14号はやや遅れて複写されたようである。イタリアでc.1480-90に。英語の作品は、イギリスのミサ曲を entabulating する目的で、20〜30年前にブルージュでコピーされた元の核の中にのみ見いだされるので、イタリアでコピーされたルッカクワイヤーブックには含まれていない。

　Strohmは、ルッカクワイヤーブックと、ブルージュでのカルメル修道会のマーチャントアドベンチャーズの礼拝堂との関係を、第１章で詳しく説明している。

彼はまた、1467年2月に、聖マルティーノ大聖堂で、S. Regoloの祭壇の牧師となったCarmelite 托鉢修道士のJohannes Hothbyを経由して、このクワイヤーブックがルッカに来たと述べている。現時点では、写本に英語の作品は追加されていないが、イタリアでのクワイヤーブックの使用は、イタリアの作曲家がイギリスの音楽に出会うことを可能にするであろう。

p70
The Brussels Choirbook
http://www.cmme.org/database/sources/23
Brussels Choirbook は、構造の点で上記の写本よりもかなり複雑です。付録2.6には、この写本の中で見つかったマスサイクルの概要が記載されている。

各サイクルの編集、スクライブ、ウォーターマークの段階については、ブリュッセルクワイヤーブックが非常に複合的な資料であることがわかる。写本の大部分は、英語のサイクルからなる最初の核の後、いくつかの別々のセクションで作成されたようである。

これらの後のセクションの1つには、さらに英語のサイクルが含まれているため、日付も付けなければならない。31

英語の作品のコピー日を判断するには、2つの別々の写本、その核と gatherings 9–10を日付付けする必要がある。これらの後のセクションのうちの1つには、さらに英語のサイクルが含まれているため、日付も付けなければならない。

結びつけられたクワイヤーブックとしての継続的使用の証拠を考えると32、大陸の作曲家への英国の影響を考えるときには、コレクション全体を見ることも重要なこととなる。
32 Wegman（1986）、 15 notes が、写本がたびたび使用された兆候を示していると述べている。紙のラベルは、おそらくリハーサルを助けるために、核の中のそれぞれの新しいミサ曲の垂直の端に貼り付けられた。そして、スクライブがテキスト化するいくつかのポイントが歌手によって修正されたようである。 Pour quelque paine massのテノールパートの中のcanonの解決は、より後の15世紀のスクライブによって書き出されていて、写本は引き裂かれては補修される繰り返しであった。　　

　第1章で論じたように、最初の4つのgatheringsを構成するブリュッセルクワイヤーブックの核は、5つの英国のミサ曲で構成されている。このセクションの日付は約.1468年である。Du FayのMass Ecce ancilla dominiを含むgathering 5が、核の前で作られた唯一のgatheringであった（1462–6年頃）。

p71
Wegmanは、gatherings6、9-10、11は同じ透かしを入れた紙にコピーされ、1469年から1476年までの4年間の同じ期間内に書かれたに違いないこと、を示している。

Gatherings 5, 6, 9–10, 11 and 12 は、すべて、同じスクライブによって、ブルージュでコピーされた。- おそらく同じ原典から。

Wegmanは、Regisの Ecce ancilla Domini Massを含むgathering 12の透かしと完全に一致するものを見つけることができていないが、鎖線は、写本の核に近い日付を示していると示唆している。

OckeghemのQuinti toni Massを含むgathering 8に使われた、かなり後に日付が書かれた唯一の紙について、Wegmanは、これが1476年から80年に北フランスからやってきたもの、と示唆している。

　全体としては、写本を2つのセクションに分け、両方とも英国の作品であり、1468年頃からのオリジナルの中核と gatherings 5、6、9-10、11および12を含むその他とに分けることが最善のようであう。

Gatherings 6、9、10および11は、 1469年から1476年までの4年間にコピーされ、gatherings5と12は、これらと同じ原典に由来するようである。 Wegmanは、なぜ彼が、核の前のgathering 5だけを日付決定したのかを説明していないので、彼が提案したdate bandingのまさにその始まり（すなわち1466–8年）が正しい可能性がある。このような場合、 gatherings 5、6、9–10、11および12はすべて、同じ原典の中で、英語の中核の少し前またはほぼ同時にコピーされた可能性がある。

p72
The Strahov Codex
Strahov Codexには、比較的多数の英区の作品が含まれている。 Pawel Gancarczykの研究までは、写本はc.1460–80年のものであり、中央写本の周辺にあり、トレントからの、あるいはより広く言えばオーストリアの中心からのモデルの適応過程を表したレパートリーを含んでいると考えられていた。

だがそういうことに代わり、Gancarczykは、写本はまったく同じ文化的伝統の一部であり、Trent Codicesの間の２つのもっとも最近のものの間のギャップを埋める架け橋であると主張している。

　Gancarczykによれば、Strahov Codexは、「冊子写本」の大規模なグループから作られた。この証拠には、「紙の種類の束から別の束への変更、[…]書誌的特徴の多様性、[…]照合レパートリーの仕方」が含まれている。37　この章の前半で述べたように、ここでは、Ganzarczyk自身がこの用語を使用している。

（略）

Conclusions
イギリスの音楽は、と大陸の資料から大陸の資料へ大いに流布した。そして、そうすることにおいて、イギリスとほとんど関係のない写本となった可能性もある。

大陸での英国のMass cycles のコピーの段階をより微妙に理解することは、各バンドがコピーされたように見える時点をより正確に日付付けするのに役立つ。

バンドI のMassがコピーされた最も新しい日付は1456–60 / 2年である。この日付決定は、Tr88の初期にコピーされた Fuit homo missus （M56）の残りの楽章に対するものである。

残念なことに、このミサ曲は、日付決定がされていない数少ないgatheringsの一つにコピーされている。それにもかかわらず、それは写本のかなり早い時期であり、1462年よりも1456年に近い日付であった可能性がある。

p90
一般に、Band I Massesは、1450年代後半までには時代遅れになっていたと考えられる。残りのバンドのI Massesは遅くとも1455年までにコピーされた。

　バンドIIのMassesは、最初に大陸の資料にコピーされた。約.1450–3年頃である。これにより、2つのバンドが両方とも、大陸循環している時間が著しく短くなる。バンドIIのMassesは16世紀の尖頭まで複写されていたが、1469年から76年にかけては新しいバンドIIのミサは発見されない。

この日付け以降にコピーされたすべてのミサ曲は、以前の原稿に見られ、大陸での長期間の普及の結果であるという兆候を示している。このため、ある程度の自信を持って、大陸での新しいバンドIIのミサ音楽の普及には、1450年から75年の日付範囲が推奨されると思われう。

　これらの最初の人気時期、約1450–75年頃の後、バンドIIの英国のcycleは結局、共通の中央ヨーロッパのレパートリーの一部となり、そしてさらに25年間そのようなものとして伝搬された。 'Two Kyries' Mass（M50）のようないくつかのケースでは、これらのバンドIIのミサは、最新かつ有用であり続けるために様式的および典礼的な変換を受けた。