| p21 From Variety to Repetition; The Birth of Imitative Polyphony Julie E.Cumming 1500年に至るまでの数十年にわたるポリフォニック音楽での広汎な模倣の出現は、音楽様式の大きな変化を示している。 ジョスカン時代に発展した模倣は、ほぼすべてのジャンルのルネサンスの残りの時代の音楽作品を支配した。 しかし、その重要性にもかかわらず、広汎な模倣がどのように進化したかについての驚くような議論はほとんどなかった。 すべての主要なルネッサンスの教科書（Reese, Brown, Atlas, Perkins, Sparks, Strohm）でこの問題についての議論を探した。 それらのすべては、15世紀後半に模倣が出現し、1470年代にミラノで最初に出現したとも言われるが、どのように発展したとは言われない。 私は、1500年以前の数十年を、特にモテットの普及と模倣の起源と発展を追跡している。この論文は問題の最初の試みであり、関与するメカニズムに関するいくつかの仮説を提示する。 広汎な模倣とは何か？ それは、15世紀後半、そして16世紀のモテットで使用された模倣である。広汎な、と呼ばれるのは、すべての声部と作品の構造に浸透しているからである。 16世紀から20世紀に典型的な地位を獲得した15世紀後半の作品の冒頭で、模倣がどのように機能するかを見てみたい。Josquin's Ave Maria（例1）がその例である。 p22 私がこの作品を選んだのは、新しい様式を例示するために頻繁に使用されるため、また Joshua Rifkin などが示すように、多くの点で「ミラノモテット」に似ているためである。 15世紀後半と16世紀のモテットの模倣は、句や文などの詩的な行または文法単位として定義されるテキストの単位に対応する一連の「模倣の主題」で構成されている。 例1は、非常に短いテキスト単位で始まる。Ave Maria、次にgratia plenaなど。すべての声部が1つのテキストユニット（Ave Maria）を完了すると、新しい模倣の主題が新しい動機（gratia plena）で始まる。 カデンツは、個々の模倣主題、またはいくつかの模倣主題で構成されるスタンザ、文、段落などの大きなテキストユニットを終止するために使われる（第15小節、virgo serena）。 「模倣の主題」は（Ave Mariaの冒頭のような）以下のように分けられる （1）すべての声は同じ動機で次々と入ってくる（2つ目のスタンザのように、ペアで入ってくることもある。 ） （2）各エントリの前には無音（休符）がある （3）エントリは、同じテキストフレーズのシラビックなテキストデクラマシオンで始まる （4）それぞれの新しい声部は、数拍後に入る（模倣の音価、すなわち、Ave Mariaの冒頭では、音価はlongであり、あるいは４つのsemibrevesである） （5）音価は通常、メンスーラ構造に適合する（2拍子;通常のエントリによって作成される周期的なスタイルは、Ave Mariaの最も顕著な特徴の1つである）。 15世紀半ばに見られるこの様式を比較しよう。模倣とカノンは、ポリフォニーの始まり以来ほぼ存在している。ペロタンのオルガヌムでの声部交換、あるいはSumerカノンを思い起こしてみよ。 15世紀半ばには（模倣とカノンは）確かに存在していたが、音楽形式での機能は、後の音楽での使用とは非常に異なっていた。当時は模倣はめったに強調されず、時には意図的に隠された。ここで最も良い例は、隠されたカノンを中心に構築されたオケゲムの Missa prolationumである。これは、ミサ曲全体が、隠されたカノンでのサイクルミサである。 p25 しかし、オケゲムは模倣を隠したり避けたりした唯一の作曲家ではなかった。 15世紀半ばのほとんどの神聖な音楽には、特定の限られた状況でのみ模倣が含まれている。 例えば、おそらく1450年代に作曲されたJohannes PulloisのモテットFlos de spinaを見てみよう（例2）。 15世紀半ばの神聖な音楽の模倣は、根本的に、非模倣のテクスチャーの装飾的な追加として機能している。高度にメリスマ的なスタイルと、休符が先行せずに、フレーズの先頭ではなく、中央または末尾に出現するという事実のために、テキストの単位と目立つ方法で一致することはめったにない。 特徴は、以下のようである。 （1）2声のみのデュエットセクション（例2、第19–21小節）、または1声のペダルトーン（例2、第6、11–12、18–19小節、 （2）2番目の声部は、1ビートまたは半分の拍後に非常に密接に続くことがよくある（例2、第20小節） （3）2つのパート間のリズム音価は異なり、模倣の時間間隔をシフトさせる（例2、第19–21小節） （4）模倣の時間間隔は、多くの場合、メンスーラ構造と矛盾する（第20小節、第12小節の３つのminims) この15世紀半ばの模倣の使用は、Josquinで見られる一般的な模倣とは明らかに大きく異なる。 Flos de spinaから Ave Mariaへはどう変わったのか？ 広汎な模倣が出現した理由は何か？ 15世紀後半には、「多様性」を重視する美学から、構成力として「繰り返し」を重視する美学へと根本的な変化が見られたと思われる。 p28 VARIETY VERSUS REPETITION 15世紀半ばの神聖な音楽は、varietasの音楽的美学が特徴であることがよく知られている。すなわち、さまざまな質感、リズム、メロディ、形式が、繰り返しよりも高く評価された。1477年のLiber de arte contrapunctiでティンクトリスは、varietasの重要性を繰り返し強調し、繰り返しに対して警告をしている。 book2で、彼はvarietasを、減価する対位法において賞賛し、”領域での花の多様性”と比較している。 p30 ティンクトリスの varietas の美学は、それゆえ、それまで一定の多様なメロディ、リズム、および対位法を重視していた。 1つ以上の声部での素材の繰り返しは、回避または隠された。 他の多くの15世紀半ばのモテットと同様に、Flos de spina（例2）はこの美学を体現している。 繰り返される唯一の音楽は、（ボックスに囲まれた）模倣パッセージである。 他のすべての小節のリズムはそれぞれ異なっている。 旋律の輪郭は絶えず変化している。 対照的に、15世紀後半の模倣ポリフォニーは、繰り返しを主体としている。Tinctorisは、フーガを「the identity of the parts of a line (cantus) as to the value, name, form, and sometimes placement of notes and rests’」と定義している。したがって、Tinctorisの場合、フーガとは、繰り返しを意味していることになる。（訳注；ティンクトーリスは模倣の両方の特徴のちょうど端境期にいたために、このようなことになるものと思われる） 特にジョスカンは、文字通りの動機の繰り返し、および対位法的ブロックの連続的繰り返しで知られている。アベ・マリア（例1）をもう一度見てみよう。ここでは、繰り返されないパッセージのみがボックスで囲まれている。事実上、作品内のすべての要素は、別の声部（模倣や平行侵攻）または同じ声部（自由な繰り返しまたは連続）またはその両方（celestia、第22小節、カノンである和声的連続）で、繰り返されている。 繰り返される要素が単一行である場合がある。ほとんどの場合、2声の対位法の組み合わせである。これは、繰り返されるデュオでは特に明確であるが、重複する模倣テクスチャにも当てはまる（したがって、第２小節のソプラノとアルトの対位法的組み合わせは、第３小節のアルトとテノールの間、第４小節のテノールとバスの間で繰り返される） 。 p31 ある声部が他の声部で繰り返された素材に対して自由な対位声部となっている場合でも、メロディーの素材を繰り返す傾向がある。したがって、第10-11小節では、ソプラノは、テノールがアルトラインを模倣する（繰り返す）ときに、下降する音階を繰り返す。これは、Tinctorisが精査したことである。  繰り返しが多いだけでなく、繰り返しは（隠されるのではなく）明白であることが意図されている。模倣の時間間隔は十分に長いため、繰り返される要素を聞くことができる。繰り返される動機は、シラビックに繰り返されるテキストセットに関連付けられている。声部がはっきりと聞こえるように、テクスチャが縮小される。 メロディ素材について、そして対位法的組み合わせについて、繰り返しが作品を構築する主要な方法となるのが、この新しいスタイルなのである。 15世紀後半の音楽においては、いくつかの異なる相互接続の力が組み合わさって、モテットのこの変化をもたらしたことを提案したい。それは以下の如くである。 （1）ジャンル階層の下方への移動。 （2）新しい種類のテキストを持つ新しい種類のモテット。 （3）新しい種類のパトロン。 THE GENRE HIERARCHY Terminorum musicae diffinitoriumTinctoris において、ティンクトーリスは、シャンソン(cantus parvus）、モテット (cantus mediocris）、ミサ曲 (cantus magnus):の３つのヒエラルキーを確立した。 p32 Tinctorisの階層で最も低いジャンルはシャンソンである。したがって、varietasが最も少なく、繰り返しが最も多くなる。シャンソンでは、神聖な音楽でそれが生じる前に、Josquin様式のような広汎な模倣が生じている。シャンソンは、‘forme fixe’（歌曲定型）における、韻を踏む scanning 詩の設定である。テキストの各行は、音楽のフレーズを受け取っている。 フレーズの冒頭の模倣は、詩的なテキストの表現を明確にするのに役立つ。テキストの新しい行を導入するか、主要な部門区分を明確にする。 'forme fixe'のシャンソン、特にロンドーの音楽も完全なパフォーマンスで複数回繰り返される。 15世紀半ばの多くのシャンソンは模倣的である。オケゲムはシャンソン（例えばMa bouche rit）で、模倣を日常的に使用している。 ｐ33 15世紀半ばのシャンソンに見られる模倣は、後のジョカンのタイプに似ている。すなわち、テキスト単位（詩の行）の先頭で発生し、しばしばシラビックなテキスト設定で始まる。それは休符が先行し、模倣の時間間隔は通常、breveである。 少なくともわずかである。Antoine Busnoys やFirminus Caron は、特に模倣と連続的な繰り返しを好んだ。模倣的なシャンソンの有名な例は、 Mellon Chansonnierの始まりにある、, BusnoysのBel aceuil.（楽譜）である。ここでは、すべてのフレーズは、1つのbreveの後でユニゾンでの模倣から始まり、 Ave Mariaでの模倣と非常によく似た周期的な効果がある。 Bel Acueil, le sergent d’Amours by Antoine Busnois モテットは、ジャンル階層の中間の位置にあり、15世紀を通じて、階層の制限外から機能を借用している。 したがって、モテットのサブジャンルは、包括的なジャンルと同様に、ジャンル階層に参加する。 ハイステータスのモテットサブジャンルは、ミサ曲の楽章に似ており、ローステータスのサブジャンルはシャンソンに似ている。 15世紀の第3四半期の大きな4声のモテットの多くは、その2部構成、デュオの使用、tenor のcantus firmiによって示されるように、ミサ曲の様式の高さを目指していた。 Flos de spina.で調べたように、これらのモテットは多様性を受け入れ、繰り返しを避けていた。したがって、繰り返しを探している場合は、そのジャンルの底（およびサブジャンル）を調べる必要がある。 c 1450～1470年にコピーされたモテットにおける模倣を調べると、それは基本的な、２つの低いサブジャンルに分けられることが見出された。ソングモテットと、チャント-パラフレーズモテットである。 ソングモテットは、通常、ラテン語テキストを使用した3声の作品で、多くの場合、シャンソンと区別がつかないか、「‘formes fixes’」に関連する典型的な正式な構造を回避する点のみがシャンソンと異なっている。 多くの3声の作品は、２，３の言葉を持つ。 すなわち、フランス語のテキスト、テキストなし、おそらくは器楽作品としてのシャンソンである。しばしば説明的なタイトルで、ラテン語のテキストのモテットとして。 CaronのHelas que pourra devenir（例3）は完璧な例である。ラテン語のテキスト（Ave sidus clarissimum）とGlogauer Liederbuch（BerlPS 40098）にドイツ語のタグ（Der seyden schwantcz）を含めることからわかるとおりである。 これは、この時代で最も広く普及したシャンソンの1つであり、22のソースに見られる。シャンソン、モテット、ファンタジーまたは triciniumとして知られる楽器のトリオの間の特別なものとして使われていた。 ここでは、15世紀半ばスタイルの模倣の特徴の多くが見られる。：短い時間間隔、韻律の矛盾、二つの声部の集中など。それにもかかわらず、ここには非常に多くの繰り返しがあり、その多くは非常に明白である（例3の繰り返されない素材はボックスで囲まれている）。 p34 シャンソンのように、模倣はテキストの新しいフレーズを導入するのに役立つ。最初の3つのシステムのコントラテノールパートと、カデンツに至るまでの素材だけは繰り返されない。 Johannes TourontのCompangant omnes / O generosa / Je suis seulet（例4）は、いくつかの異なる形式で見つかった別のソングモテットです。 それは5つの異なるソースにあり、2つの異なるラテン語のテキストがあり、テキストはまったくなく、シャンソンニエのフランス語の「インシピット」、BolC Q16.26は3声部であり、フレーズを開始し、フォームを明確にして（bb。11–12、28–30を参照）シャンソンで見つかったものと同様の模倣を使用することがある。 。 それにもかかわらず、Compangant omnes（例4）は、Caron’s Helas（例3）よりもサブジャンル階層で高くなっている。これは、ミサ楽章に似ており、シャンソンに似ていないためである。 それは、ミサ曲楽章の二部OC（3拍子から2拍子へ）構造と大きな4声のモテットを持っている。 Compangantisはサブジャンル階層で上位にあるため、繰り返しの使用も少なくなり、例2のように、フレーズの途中で繰り返しが隠されることがよくある（例4の繰り返し節はボックスで囲まれている。bbを参照してください。 18、24–6、および32–35）。 p37 したがって、繰り返しと広汎な模倣は、モテットの最下位のサブジャンルであるソングモテットを介してモテットに入り込む。 シャンソンとラテン語のソングモテットでは、模倣はテキストの構造を引き出すのに役立つ。 これらの作品のテキストのない器楽版では、模倣はテキストのない状態で形を表現する方法になる。 同じことが、ミサ曲楽章の非常にメリスマ的なデュエットとトリオのセクションでも言える。これらは通常、4声部セクションよりもはるかに模倣的である。 模倣は、1500年前後の数十年に作られたテキストのない楽器のtriciniaで強化されている。 JosquinのLa Bernardina、またはJohannes GhiselinのLa Alfonsinaを思い浮かべてほしい。 p38 模倣を含む15世紀半ばのモテットの別のサブジャンルは、チャントパラフレーズモテットである。ソングモテットと同様に、チャントパラフレーズモテットはサブジャンルの階層では低く、規定の典礼音楽や即興のポリフォニーを想起する。ジャンルはティンクトリスのスキーマに入らないほど低い。 いくつかのチャントパラフレーズモテットは高く照準を合わせている。それらはミサ曲楽章の形式と規模を使用し、メロディーを非常に精巧に言い換えて、ほとんど認識できないようにしている（例：OckeghemのAlma redemptoris）。しかし、多くのチャントパラフレーズモテットは、チャントとそのテキストを認識可能な形式で提示することに関心がある。 模倣と繰り返しを使用するチャントパラフレーズモテットの良い例は、トレントC 89からの匿名のAve beatissima（例5）である。チャントはディスカントゥスでパラフレーズされるが、テノール声部でも頻繁に現れる。模倣は、すべてのチャントフレーズの冒頭にある。 多くの場合、チャントはVorimitation（前模倣）の対象となる（bb。56、66、71、84、および90を参照）。時々、1つの声部だけがチャントを模倣するが（m。78のように）、この作品の模倣はしばしば3つまたは4つの声部に見られる（模倣と繰り返される素材はスコアのボックスに囲まれている）。他の場合、3〜4声で始まるチャントの模倣は、discantus とtenor のフレーズの終わりまで続く（mm。55〜64） シャンソンのように、模倣はチャントの旋律の新しいフレーズのそれぞれの始まりを強調することによって作品の構造を明確にするのに役立っている。 p41 A NEW KIND OF MOTET ソングモテットとチャントパラフレーズモテットは模倣を使用しますが、まだアヴェ・マリアによく似ていない。 それらはまだメリスマ的であり、幾分不規則に模倣を使用しており、我々が探しているスタイルの典型的な繰り返しのデュオとペアの模倣を欠いている。 しかし、1470年代または1480年代には、モテットの新しいサブジャンルが出現した。そのサブジャンルには、Ave Mariaがメンバーであり、ミラノのmotetti missalesが含まれる。 したがって、私はそれを「ミラノモテット」と呼ぶ。29 29 This is inspired by Joshua Rifkin’s description of the style in J. RIFKIN, Munich, Milan, and a Marian Motet. この新しい、より単純な種類の4声モテットは、循環ミサ曲の地位を目指した、大部な二部構成のテノールモテットとは大きく異なる。 p42 それは詩的な祈りやシーケンスを含むさまざまなソースから描かれたテキストのはるかに大きな選択をする。多くの場合、これらのテキストはシャンソンに分かれており、シャンソンのようにアクセントのあるメーターと韻を使用します。30 新しい種類のテキストには、新しい種類の音楽が付随した。その音楽は、その性質上、多くの点で、シャンソンに似ている。 これらのモテットのほとんどは、完全テンプスや、絶えず変化するメリスマ的なスタイルを放棄している。その代わり、1470年頃以降のシャンソンに典型的な  を使用するようになる。時折、それはソングのような三拍子セクションを持っている。シャンソンのように、それらはフレーズの冒頭にシラビックにテキストを設定し、多くのリズミカルなパターンを繰り返す。シャンソンを引用するものもある-ジョスカンの例には、Christe fili Dei from Vultum tuum（J'ay pris amours）、Tu facis（D'ung aultre amer）、Victimae paschali（J'ay prisand De tous biens）が含まれる。31 関連する既存のチャントメロディーはないが、チャントへのテキストによる言及がある場合、これらの新しいモテットは、すべての声部でチャントを模倣して引用することによって、チャントパラフレーズモテットの模倣的な扱いをしばしば想起させる。 これはまさに、Ave Mariaの冒頭で起こっている。そこでは、シーケンスのメロディが模倣の最初の4つの主題の基礎として使用され、その後、作品が自由に作られている。この新しいサブジャンルである「ミラノモテット」は、シャンソン、ソングモテット、チャントパラフレーズモテットなどの下位ジャンルおよびサブジャンルで発展した反復および模倣の手法を採用し、適応させた。ジャンル階層の中央にあるモテットの位置により、モテットは何度も再発明することができた。 15世紀後半、階層の最下位への言及は、あらゆるジャンルの神聖な音楽の繰り返しと広汎な模倣への扉を開いた。 1500年頃までに、広範な模倣は引き継がれた。しかし、なぜこれが起こったのか？どのような力が作曲家にティンクトリスの神聖な音楽の varietas への嗜好を放棄させたのだろうか？ p43 A NEW KIND OF PATRON ここで説明されている多様性から繰り返しへの移行など、美的変化の理由を明らかにすることは非常に困難である。しかし、おそらく、15世紀後半に変化した音楽愛好の形態に結びつけることができるであろう。 オケゲムやビュノワの世代の15世紀半ばの主要な作曲家のほとんどは、フランス北部やネーデルランドにいた。彼らは北部合唱団の学校で訓練され、大聖堂や大学教会、またはフランス国王またはブルゴーニュ公爵に雇われていた。彼らパトロンは、膨大な権力を持ち、直接の競争相手がほとんどいなかった。 神聖な音楽の音楽的趣味の調停者は、教会員や他の音楽家であった。そのため、フランスやフランドル地方で活動する音楽家たちは、自由自在に、おそらく意図的に神秘的な、または自意識的に不可解な、非常に複雑なスタイルの素晴らしい美しさを発展させた。この文脈での複雑で難しい音楽は、力と権威のしるしであったかもしれない。 対照的に、Josquin世代のほとんどの音楽家たちはは、フェラーラ公爵やミラノ公爵などのイタリアの王子のために、イタリアで大人の生活の多くを過ごした。これらの王子は相当な同業者グループと競争していた。32 フランス国王やブルゴーニュ公とは対照的に、イタリアの王子らは比較的小さな所有権を持ち、時には権力と権威に対する薄っぺらなな主張をしていた。彼らは人々を引き入れ、支援を深め、同盟を結ぼうとした。彼らは、宮廷や使節が理解し楽しむことができるモテットを望んでいたかもしれない。すなわち、フランスのシャンソンのような音楽が、15世紀半ばから後半にかけての非常に多くのイタリアの写本に見られる。 繰り返しを特徴とする音楽は、一般の聴衆にとって理解しやすく、覚えやすいものであった。 Leonard Meyer が観察したように、「音楽には、重複的存在が…知覚と理解を促進する」33。 p44 Ave Maria はFlos de spinaよりもはるかに簡単に想起ができ、リスナーにすぐに影響を与える。繰り返しの導入による神聖な音楽の「簡略化」は、ジョスカンの世代のこれらのイタリアのパトロンにアピールし、彼らの主題と彼らの競争相手を、簡単で理解しやすい音楽で印象付けた。 1470年代の論文でのvarietasの重要性に対するティンクトリスのかなり誇張された強調は、彼自身のナポリでのパトロン Ferrante I of Aragonを含めて、イタリアの常連客と観客が、多様性や複雑さをもはや十分に評価していないという彼自身の感覚から生じたのかもしれない。 Tinctorisは、他人のエラーや誤解を修正する際に、音楽的な問題について最も強く話すことで知られている。おそらく彼は、審美的な潮流が、多様性から離れて、繰り返しに向かっていることを感じたのだろう。 |