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1 Vienna: Anger, Not Sympathy

＜コンラッドの対応＞
それは、1914 年の輝かしい夏に典型的な、ヨーロッパ全土の素晴らしい一日であった。「昼も夜もずっと」と小説家のシュテファンツヴァイクは回想しした。「空は絹のような青、空気は柔らかだが蒸し暑くなく、草原は香りが良くて暖かかった」

6月28日日曜日の午後、ツヴァイクはオーストリアのほぼ全員と同じように、屋外で天気を楽しみ、温泉街バーデンの公園のベンチに座ってトルストイの小説を読んでいた。

午後２時過ぎ、帝位継承者の死を知らせる通知が野外観覧席近くに貼られた。そのアナウンスを見て、ミュージシャンたちは突然演奏を止め、全員に何かがおかしいと警告した。やがて、町中の誰もがその話を知るようになった。1

サラエボでの殺人事件のニュースはすぐに全国に広まった。政府関係者の中では、フランツ・フェルディナンド大公が殺害される数時間前に休暇を取った首席補佐官コンラッドが最初に知った。コンラッドは、午後10時半の列車でサラエボからクロアチアに向かい、そこで作戦を監督することになっていた。

日曜日の正午過ぎ、コンラッドがザグレブを通過したとき、騎兵将軍レーメン男爵がクーペに乗り込み、恐ろしい話を伝えた。最後の目的地であるカールシュタットで、コンラッドはハプスブルク家の後継者とその妻の死、そして暗殺者が「セルビア国籍のボスニア人」であることを知らせる公式電報を受け取った。

コンラッドはその場で、暗殺は「一人の狂信者の行為」であるはずはなく、むしろ「よく組織された陰謀の仕業」に違いないと結論づけた。

事実上、フランツ・フェルディナンド大公の殺害は「セルビアによるオーストリア・ハンガリー帝国に対する宣戦布告」であった。この戦争行為には「戦争によってしか答えられない」と彼は決意したのである。

コンラッドはすぐにバート・イシュルの高山の別荘にいる皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に電報を打って、クロアチアで計画されていた演習を中止して首都に戻るべきかどうか尋ねた。答えは「はい」であった。コンラッドは二日目の夜に続けて夜行列車に乗り、今度はウィーンに向かう途中であった。2

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　このニュースに対するコンラッドの冷静で好戦的な反応は、まさにこの人らしいものだった。軍に適性を持ち、非常に痩せていたこの参謀長は、フランツ・フェルディナンドと同じくらい頑固で、その地位に昇進できたのはフェルディナンドのおかげだった。

殺害された大公は1906年にコンラッドの参謀総長の任命をし、1911年年11月の短期間の解雇に続き、1912年にコンラッドは参謀総長に再任された。いずれもコンラッドの野心的な軍事改革を煩わしいと感じた皇帝フランツ・ヨーゼフの反対によるものだった。

（露土戦争時の1911年11月に、常に好戦的なコンラッドがオーストリアの名目上の同盟国であるイタリアへの侵攻を主張したことも救いにはならなかった。）

コンラッドがセルビアを潰すことに熱心だったということは、ヨーロッパにおける最悪の秘密の一つだった。カトー大帝がローマ上院での演説を「カルタゴは破壊されなければならない」と念を押して締めくくったように、コンラッドは1908-09年の最初のボスニア危機以来一貫して同僚たちに「セルビア問題をきっぱり解決する」よう訴え続けていた。※
※1913年だけでも、コンラッドはセルビアとの戦争を25回提案したと推定されている。彼の好戦的な態度は、若い愛人ジーナ・フォン・ラインニングハウスに感銘を与えて、裕福なビール商人である夫ヘルマンから離れるように仕向けたいという願望によるところが大きかったという一般的な理論がある。人の心の奥底にどのような秘密の動機があるのかは決して分からないが、これは精神分析を少し先へ進めているようだ。

この危機において、ロシアに対してドイツが断固として支援したおかげで、ウィーンはオーストリアによるボスニア・ヘルツェゴビナ併合を欧州で承認させることができたが、セルビア民族主義者はその正当性を決して認めなかった。ナロドナ・オドブラナと黒手組はどちらもこの併合を覆すために結成されたものであった。

ボスニアにおけるオーストリア支配の打倒にはこれまでのところ成功していなかったが、セルビア人は他の地域では次々と勝利を収めていた。

1912年から1913年のバルカン戦争でセルビアは、トルコとブルガリアを犠牲にして面積と人口がほぼ2倍に増加した。セルビアの威信はうなぎのぼりであったが、オーストリアの威信はバルカン戦争への介入の失敗により急落した。ボスニア在住のセルビア人が祖国返還主義と政治的テロリズムを受け入れたのも不思議ではなかった。.3

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　ウィーンが直面する脅威の雰囲気を一段と引き締めるべく、セルビア大国の後援者であるロシアが再び力を入れていた。

日露戦争での屈辱とそれに続く1905年の革命後の国内弱体化の時期に、ロシアは第一次ボスニア危機では後退していた。

4年後の1909年、ロシアのベオグラード駐在汎スラブ主義大臣Nikolai Hartwigはほぼ独力でバルカン同盟（セルビア、ブルガリア、ギリシャ、モンテネグロ）を組織し、1912年10月にオスマン帝国に宣戦布告し、第一次バルカン戦争が始まった。

確かに、トルコがあらゆる戦線で敗北したこの紛争にロシアは自らを動員しなかったし、また、1913年6月にブルガリアが元同盟国に対して始めた第二次バルカン戦争の際にも、第一次バルカン戦争からの戦利品を巡る争いにおいて参戦しなかった（この争いでは、ルーマニアとトルコもロシアに詰め寄った後、ブルガリアは完敗した）。

しかしオーストリアは両戦争中は、傍観者として過ごした。ロシアの宿敵であるセルビアが次々と勝利を収めていたにもかかわらず、ロシアは関与せねばならないわけではなかった。

セルビアがトルコに屈辱を与えている間、そしてロシアの支援なしでオーストリアが介入するように脅してはいても、コンラッドは、二重君主制がスラブ系少数民族とのくすぶっている問題を解決する時間がなくなりつつあるのではないかと懸念していた。

バルカン戦争中にフランツ・フェルディナンド自身がコンラッドの好戦的な路線に反対していたことは、コンラッドの怒りを静めるには何の役にも立たなかったし、大公の死が今や再考を促すこともなかった。

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＜ベルヒトルトの対応＞
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　オーストリア＝ハンガリー帝国の外務大臣レオポルト・フォン・ベルヒトルト伯爵は、そのニュースを知ったとき、ブッフラウにある先祖代々の邸宅の近くにあるブッフロヴィッツで開催されたカントリーフェアに出席していた。

彼と妻のナンディーンはフェルディナンドやソフィーと親しい関係にあった。つい最近まで、彼らはコノピシュトにある大公の邸宅で幸せな週末を一緒に過ごしていた。そこでは見事に再設計された庭園が春の花々で咲き誇っていた。

イケメンでファッショナブルで、途方もなく裕福な貴族であるベルヒトルトは、宮廷ではさほど重視されなかった――1912年に皇帝から任命されたとき、彼は皇帝からの第3候補であった――彼は、友人フランツ・フェルディナンドのようなハプスブルク家の持つストイックさもなく、コンラッドのような冷酷な集中力もなかった。

知的で、礼儀正しく、思慮深いベルヒトルトは、優柔不断であると信じられていた。バルカン戦争中にコンラッドの前に立ちはだかったのはベルヒトルトであり、フランツ・フェルディナンドや皇帝と協力して戦争に反対し、オーストリアの政策を無気力で反応的な消極的なものに委ね、セルビアを抑制することには何の役にも立たなかった。

当然のことながら、外務大臣ベルヒトルトは友人の死を知って悲しみで呆然とし、言葉を失なった。ベルヒトルトは心を落ち着かせるために長い時間の後、駅まで歩き、次のウィーン行きの列車に乗り込み、日曜日の午後遅くにウィーンに到着した。

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　ベルヒトルトは、街が「ある種の恐ろしい動揺に襲われている」と感じた。政府が当初、暗殺の詳細を明らかにすることに消極的だったこともあり、とんでもない噂が街中に広まっていた。

この攻撃はドイツやオーストリアの諜報機関によってでっち上げられたある種の内部犯行だと考える人もいた。フリーメーソンを非難する者もいた一方、亡くなったルドルフ皇太子（フランツ・ヨーゼフの息子）の相続人たちは、王位継承者としてルドルフの後継者であるフランツ・フェルディナンドが父親を殺害したという考えに基づいて、1889年の（ルドルフ皇太子の）自殺に復讐したいと考えたかもしれなかった。

＜むしろ喝采されたフェルディナントの暗殺＞
ハンガリーの大臣兼大統領であるステファン・ティサは、フランツ・フェルディナンドを二重君主制におけるハンガリーの特権的地位に対する脅威と見ていたのではないかとさえ疑う者もいた（大公はティサを激しく嫌っており、その感情は相互にあった）。

また、セルビア人の悪役としてすでに悪名高いアピス諜報部長の名前を挙げて、セルビアが犯罪に関与していることを確信している人もいた。

フランツ・フェルディナンドは宮廷でも愛されておらず、ウィーン社会でもあまり好かれていなかった。彼の殺害は街ではあまり悲しまれず、その刺激的な衝撃の価値が高く評価された。

犯罪の動機を推測することは、お座敷ゲームのようなものとなり、長い休暇中の週末全体にお祭りの雰囲気が加わった。6 月 29 日月曜日は、カトリックの聖ペテロと聖パウロの祝日であった。プラーター公園では、サラエボからのニュースを消化するための短い中断の後、サラエボの暗殺者が誰であれ、まるでそれに抵抗するかのように音楽が夜通し流れ続けた。.4

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　その日曜日、セルビアのコソボ・ポリェの「クロウタドリ畑」では、ウィーンの休日の陽気さと奇妙な類似点があった。午後5時頃にサラエボ暗殺の報告が群衆に届いたとき、ヴィドフ・ダンの国家主義者の熱狂は最高潮に達していた。

芸術を模倣する人生の注目に値する例として、セルビアの殉教者によるスルタン・ムラト1世暗殺の伝統的な再現では、近年悪役としてトルコ人ではなくオーストリア人が登場していたが、今度は本物のオーストリアの「スルタン」がおそらくセルビア人によって殺害されたというニュースが流れた。

目撃者がベオグラードのオーストリア臨時代理大使リッター・フォン・シュトークに語ったところによると、フランツ・フェルディナンドが殺害されたと聞いた群衆は「喜びのあまり、お互いの腕の中で崩れ落ちた」という。

「私たちはこのようなニュースを長い間待っていました」と一人は言った。より政治的な別のセルビア人は、この暗殺はボスニア・ヘルツェゴビナの「併合に対するささやかな復讐」だったと断言した。（この発言を引用した後、リッター・フォン・シュトークは「そして、大きな復讐とは何だろうか？」と尋ねた。）ヴィドフ・ダンの式典は公式には午後10時に終了したが、リッター・フォン・シュトークは幸福感あふれる祝賀会が夜遅くまで続いていたことをベルヒトルトに告げた。5

　ハプスブルク家の君主が夏の間を好んで過ごしたウィーン南西の高山温泉街バート・イシュルでは、雰囲気はもっと厳粛だった。日曜日の夕方遅く、ハプスブルク家の後継者の殺害を報告する電報が、王室プレートに乗せて、副将軍パール伯爵によって正式なルートでフランツ・ヨーゼフ1世に手渡された。

ベルヒトルトと同様に、皇帝は一時言葉を失なったが、彼自身の思いは（フランツ・フェルディナントに）あまり同情的ではなかった。

最後に皇帝は伯爵にこう言ったと言われている。「恐ろしや、恐ろしや、それは神のご意思だ」※
※さまざまなバージョンでは、皇帝は「全能者は嘲笑されていない」と述べており、その考えはフランツ・フェルディナンドの貴賤結婚が神を怒らせたというものである。フランツ・ヨーゼフの話し方に最も詳しい人によれば、これはおそらく叙情的すぎるであろう。「それは神のご意志です」という表現が最も可能性が高いであろう。

フランツ・ヨーゼフはまだ（オーストリアと）セルビアとの関係についてよく知らなかったが、この段階では、フランツ・フェルディナントとゾフィー・チョテクとの貴賤結婚に対する天罰のようなものを殺人事件の中に見ていた。それは、少なくともハプスブルク家の王朝の不純物を一掃する天罰であった。皇帝は、殺害された大公夫妻を、ウィーンのカプチン・フランシスコ修道会のハプスブルク家の金庫室に埋葬することを冷たく禁じた。.6

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　オーストリア＝ハンガリー政府の本拠地であるボール広場では、バート・イシュルと同様に厳粛な雰囲気があったが、そこほどに厳粛ではなかった。ベルヒトルトが日記に記したように、サラエボ暴動後の最初の閣議中に、「確かに、驚きと憤りだけでなく、気分がある程度和らいだことも指摘された」。

サラエボからの報告で明らかになり始めた状況は不安を抱かせるものであったが、同時に明確なものでもあった。（皇太子の死の道となった）アペルクワイには複数の暗殺者がいたが、その全員がセルビア国内の秘密結社と不透明な関係を持つボスニア系セルビア人だったようだ。

ハプスブルク家の後継者の暗殺計画にセルビア国家の公式の関与があったかどうかはいまだ明らかではないが、強力な証拠は「陰謀の糸口」を示唆している。『ベオグラードに集まろう』とベルヒトルトはドイツ大使ハインリヒ・フォン・チルシキーに語り、それは今後数週間何度も繰り返される言葉となった。チルシキーはベルヒトルトの懸念に同情したが、ベルリンからの明確な指示がなかったため、警戒を強く求めた。7

　ベルヒトルトの言う通りにするオーストリア人はほとんどいなかった。ベルヒトルトは暗殺後の月曜日について「『戦争』という言葉が皆の口から出た」と回想した。

外務大臣ベルヒトルト側のあらゆる迷いに先回りするかのように、ベルヒトルトはセルビアとの衝突に備えて彼に筋金を入れようとする当局者らに一日中包囲された。

意見はほぼ一致した。オーストリアの大臣兼大統領であるカール・シュテュルグフ伯爵は、陸軍大臣アレクサンダー・クロバチン将軍や帝国共通財務大臣レオン・フォン・ビリンスキーと同様に、全面的に戦争に向かっていた。

ビリンスキはボスニア・ヘルツェゴビナの大臣でもあり、サラエボの緩い警備体制についてポトリエクと責任を共有していたので（後にビリンスキはあらゆる悪行についてオーストリア皇帝によって免罪された）、彼は犯罪に復讐するという特別な動機を持っていた。急成長を遂げる戦争当事者は心配する必要はなかった。ベルヒトルトの血が頭にのぼっていた。.8

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＜平和主義者ティサ＞
　このことは、6月29日月曜日の午後遅くに起こった（ティサとベルヒトルトの）運命的な出会いで明らかになった。ハンガリー首相のティサはその朝、抜け目なくフランツ・ヨーゼフ1世を訪ね、甥の死に対する哀悼の意を表していた――彼の断固とした主張を信じるなら、ハプスブルク家の後継者の殺害が、帝国の外交政策について何らかの影響を与えるとは（彼は）全くわからなかった。

ティサが初めて何か重要なことが起こっていることを知ったのは、ボール広場に立ち寄ったときだった。そこで普段は無害なベルヒトルトが火を吐いているのを見つけて驚いた。何が話されたのか記録はないが、この会話はハンガリー人に劇的な印象を与え、フランツ・ヨーゼフ1世に対し、ハプスブルク家の外務大臣ベルヒトルトが「サラエボの暴挙をセルビアとの決別の機会にするつもりだ」とする抗議の手紙を書くまでに至った。

ティサは二重君主制において恐るべき人物であり、ベルヒトルトはその意見を無視できなかった。ベルヒトルトが厳格で無色だったのに対し、ティサは口数が少なかったが、言ったことは本気だった。同世代の多くの野心的なマジャール人と同様に、彼はオーストリアよりもドイツを好み、虫食いに蝕まれたハプスブルク帝国に欠けていた前向きなダイナミズムをドイツに見出した。

ティサは、オットー・フォン・ビスマルクの栄光と名声が絶頂に達していた 1880 年代初頭にベルリンとハイデルベルクで学び、ドイツ帝国の創始者を熱烈に賞賛し、彼に一冊の本を捧げた。

厳格でやや陰気なカルビン主義者であったティサは、信仰と気質の点で、手の込んだ儀式と威厳を装ったカトリックのオーストリアよりも、プロイセンのプロテスタントが支配する地味な帝国に親近感を持った。

ハンガリーを領国最強の国とみなしていたにもかかわらず、ティサは国王に忠実であり、ドイツ語に第二言語としてハンガリー語を加えることを求める民族主義者に屈してオーストリア軍を弱体化させることを容認するために、ドイツ効果を信じすぎた。

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　ティサはセルビア人にもセルビアにも愛情を持っていなかったが、だからこそ二重君主制がセルビア情勢、あるいはより一般的にはバルカン半島南部に深く関与することを避けたいと考えていた。帝国のいかなる拡大も、その中でのハンガリーの特権的地位を損なうだけだった。さらに多くのスラブ系少数派を受け入れた（実際、マジャール人はハンガリーでもかろうじて多数派を占めた状態だった）。

何よりも、ティサは、カルビン主義者として、最も例外的な状況を除いて、戦争に反対することが自分の義務であると信じていました。

セルビアと戦争をすることになったティサは月曜日にベルヒトルトに対し、「致命的な間違いになるだろう」と語った（少なくとも、これは彼が2日後に届けられた皇帝への抗議文書で述べたと主張している内容である）。

ティサは「セルビアに（犯罪の）責任を負わせ、セルビアとの戦争を誘発する十分な根拠がない」と反論し、もしオーストリア＝ハンガリー帝国が大公暗殺への報復としてセルビアに侵攻した場合、「我々は平和を乱す者として世界の前に現れるべきであり、最も不利な状況で大戦争の火を燃やすことになるだろう。」とティサはフランツ・ヨーゼフ１世に警告した。9

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＜コンラッド―ベルヒトルト―ティサ＞
　6月29日月曜日の夕方、コンラッドはベルヒトルトに打診するためにボール広場に到着したが、ベルヒトルト外相がティサとの会話でタカ派的な立場をとったことを知らずにいた。コンラッド参謀長は長年にわたるベルヒトルトの不安定な状況に十分耐えてきた。今度は彼は断固とした行動を望んでいた。

コンラッドはいつもの歓談をすっ飛ばして、オーストリア・ハンガリー帝国が7月1日水曜日からセルビアに対して動員することを即座に提案した。ベルヒトルトは、ティサに対する態度とは明らかに異なる態度を取り、「（動員の）対外的な機会が不足している」と答え、「まず世論を準備しなければならない」と答えた。

必要な印象を与えるために、ベルヒトルトは、ボール広場（オーストリア政府）がベオグラードに鋭いメモを送り、セルビア政府に、（オーストリア人にははっきりとは知られていなかった）秘密的な黒手組みのよりも立派な公の顔を持っているナロドナ・オドブラナなどの「特定の団体」を解散させ、警察大臣を解任するよう求めた。

「そんなことをしても何の効果もない」と、コンラッドは反対した。セルビアは単に別の大臣を任命し、以前と同じように続けるだけだ、と。「武力行使以外、には何の影響力もない」とコンラッド参謀長は主張した。

ベルヒトルトは、セルビアに対して何らかの清算をすべき時期が来たことに同意したが、軍事的措置を承認する前に皇帝と話し合う必要があるとコンラッドに警告した。

ベルヒトルトは、セルビアに対して何らかの清算をする時期が来たことに同意したが、セルビアと話し合う必要があるとコンラッドに警告した。いかなる軍事的措置も許可する前に皇帝に命令する。

それからコンラッドはベルヒトルトに単調な重みを帯びた三つの別れの言葉を残してボール広場を後にした。カトーもそれを承認しただろう、「戦争、戦争、戦争」である。10

　これらの率直な発言が示唆するものにもかかわらず、コンラッド参謀長は、二重君主制を引き裂く恐れがある国内の緊張の高まりについて真剣に考えていた思慮深い人物だった。

帝国軍 (1867 年にハンガリーに自治権を与えたアウスグライヒ以来、正式に呼ばれるようになった共通軍) は、多民族帝国のほぼ完璧な縮図であった。確かに、ドイツ人は将校団の中で優勢であり、その76パーセント（人口の24パーセントに対して）を占め、ドイツ語が指揮言語であった。それにもかかわらず、警察官の残りの4分の1は、ハンガリー人（11パーセント）、チェコ人（5パーセント）、クロアチア人（5パーセント弱、ただし人口比としては他国より多いおおい）を筆頭とする幅広い民族集団から選ばれた。新兵は少なくとも十数語の「指揮ドイツ語」（Kommandosprache）とライフル部品やその他の必須装備に関するドイツ語用語を学ぶことが要求されていたが、士官も同様に部亜たちの言語を学ぶことが期待され、強く奨励されていた男性（コンラッド自身は7ヶ国語を話せた）。ほとんどの場合、それは「バベルの塔」の言語的困難ですべてが暗礁に乗り上げた帝国の議会よりも、確かにうまくいった（ウィーンの中央国会議事堂は1914年までに無期限に閉鎖された）。たとえば、ブダペストでは、かろうじて（議会が）機能していたのは、ハンガリー人がセルビア人、スロバキア人、特にルーマニア人などの非ハンガリー語を話す人々のほとんどをハンガリー人から遠ざけていたからにほかならなかった。11

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　これらの率直な発言が示唆するものにもかかわらず、コンラッド参謀長は、二重君主制を引き裂く恐れがある国内の緊張の高まりについて真剣に考えていた思慮深い人物だった。帝国軍 (1867 年にハンガリーに自治権を与えたアウスグライヒ以来、正式に呼ばれるようになった共通軍) は、多民族帝国のほぼ完璧な縮図であった。確かに、ドイツ人は将校団の中で優勢であり、その76パーセント（人口の24パーセントに対して）を占め、ドイツ語が指揮言語であった。それにもかかわらず、警察官の残りの4分の1は、ハンガリー人（11パーセント）、チェコ人（5パーセント）、クロアチア人（5パーセント弱、ただし人口比としては他国より多いおおい）を筆頭とする幅広い民族集団から選ばれた。新兵は少なくとも十数語の「指揮ドイツ語」（Kommandosprache）とライフル部品やその他の必須装備に関するドイツ語用語を学ぶことが要求されていたが、士官も同様に部亜たちの言語を学ぶことが期待され、強く奨励されていた男性（コンラッド自身は7ヶ国語を話せた）。ほとんどの場合、それは「バベルの塔」の言語的困難ですべてが暗礁に乗り上げた帝国の議会よりも、確かにうまくいった（ウィーンの中央国会議事堂は1914年までに無期限に閉鎖された）。たとえば、ブダペストでは、かろうじて（議会が）機能していたのは、ハンガリー人がセルビア人、スロバキア人、特にルーマニア人などの非ハンガリー語を話す人々のほとんどをハンガリー人から遠ざけていたからにほかならなかった。11

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　ハンガリーに帝国内で同等の地位を与えることは、殺害されたフランツ・フェルディナンドによって顕著に共有された見解ではあった。だが、コンラートの考えによれば、（それは実は）重大な政治的誤りであった。なぜならそれは、ハンガリーによる少数民族の迫害を招くことになったからであり、そのために、帝国の他の民族集団も、敵を迫害するために利用できる自治権を羨ましがった。

コンラッドは、バルカン戦争中に介入しなかったオーストリアの失敗が「無力の印象」を残し、あらゆる国の立場にある民族統一主義の支持者を激励し、昼夜を問わず、明らかにサラエボの怒りを呼び起こしたと信じていた。

ハプスブルク家の後継者の暗殺は、帝国の力を試す最後の試練となった。オーストリアはハプスブルク帝国の統一を維持するために戦うだろうか、それともセルビア人がボスニア・ヘルツェゴビナをこじ開けて、帝国が嫉妬深い国民国家の泥沼の中に最終的に崩壊することを示唆するだろうか?12

この質問に対する答えは、真ん中にいるベルヒトルトに大きく依存するであろう。共通陸軍の代弁者であるコンラッドは、オーストリアの大臣兼大統領と共通の帝国財務大臣および陸軍大臣の支援を受けて、戦争に熱心であった。

ハンガリー代表として、ティサは断固として（戦争に）反対した。コンラッドにとって、ベルヒトルトはいつもの動揺する自分のように聞こえたが、ティサにとっては、これまではぐらかしていた外務大臣ベルヒトルトが今やコンラッドと同じくらい危険な戦争屋に見えた。

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　実のところ、6月30日火曜日にウィーン郊外のシェーンブルン宮殿で皇帝に告白したとき、ベルヒトルトはまだ何をすべきか迷っていた。

どのような行動も危険を伴うが、最も最悪なのは弱さを見せることである。もしオーストリアが、このテロ攻撃行為を罰することができないまま放置してしまえば、ベルヒトルトは皇帝に対し、「我が国の南と東の隣国は我が国の無力を確信し、その結果、（帝国の）破壊活動の結末がもたらされることになるだろう」、と話した。

それにもかかわらず、外務大臣ベルヒトルトは、セルビアの犯罪への関与を裏付ける信頼できる情報を入手するまでは性急な行動はとらないと主権者を安心させた。

有罪評決が下されると、ベルヒトルトは「セルビアに対する明確な行動計画」を準備したいと考えていた。皇帝はベルヒトルトが待つべきであることに同意したが、彼自身の主な関心事は犯罪そのものの捜査ではなく、むしろ帝国の一体性の必要性であった。

ベルヒトルトが追求したい政策にはティサ、ひいてはハンガリーの全面的な支持がなければならないと皇帝は主張した[13]。

＜オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ 1 世＞
　当時83 歳のフランツ・ヨーゼフ 1 世は、1848 年からオーストリアを統治し、その後に、オーストリア＝ハンガリー帝国を統治していました。当時、（1806年8月6日に滅亡した）神聖ローマ帝国はまだ（皇帝の）記憶に残っており、ハプスブルク皇帝は自分を「千年前に遡り、祖先カール大帝に遡る天命」の後継者であると考えることができ、実際にそうなったのです。

皇帝は宮廷の全員に対し、ハプスブルク王朝の「厳格なブルゴーニュの儀式」を厳守するよう要求した。彼は自分の領土の15の公用語すべてを話し（少なくともウィーンの反逆者たちが反論すると、彼は彼らのありきたりな言葉を口にすることができた）、そして時代の排外主義的傾向を一蹴して、いかなる単一の民族集団も支持しないと主張した。

治世の晩年、フランツ・ヨーゼフ1世は、その優雅さ、マナー、スタイル、そして近代化への頑固な拒否（彼がしぶしぶ受け入れたハンガリーのアウスグライヒを除く）の生きた象徴として古代帝国を真に体現するようになった。そして少なくとも、年とともに目に見えて、脆弱さを示していった。

80代の皇帝は、4月に重篤な気管支炎の発作から回復したばかりで、フランツ・フェルディナンドは皇帝が死去した場合に、皇帝をウィーンまで連れて行こうと数日間「エンジンを始動させ続けた」。※
※間違いなく、皇帝は回復した。ウィーン子の噂は、フランツ・ヨーゼフが驚くほど急速に回復したのは「甥をいじめたいという彼の強い願望」によるものだというものだった。

世継ぎが殺害される前から、多くの人は、ひとたび老人がいなくなると帝国も滅ぶのではないかと恐れていた。なぜなら、彼の威厳ある姿への畏敬が、多くの国を結びつける最後の絆だったからである。14

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　しかし、脆弱に見えたにもかかわらず、皇帝は依然として自身の能力を完全に残していた。彼は傀儡ではなかった。ベルヒトルトとティサとの謁見中、フランツ・ヨーゼフは必然的に非コミット的であり、両名に共通の帝国政策を打ち立てるよう促したが、サラエボの暴動に対するフランツ・ヨーゼフ自身の見解は、コンラッドほど好戦的ではないにしても、おそらく外務大臣ベルヒトルトの見解に近かったであろう。

セルビアとの戦争に反対するティサの書面声明を受け取った翌日の7月2日木曜日、皇帝はドイツ大使のチルシキーに対し、「バルカン半島の情勢がいつまで平静を保てるか分からない」と述べ、ドイツの君主ヴィルヘルム２世が「隣国としてのセルビアの存在が（二重）君主制にもたらす危険性を認識」してくれることを望んでいた。

セルビアの背後にはロシアがあった。皇帝フランツ・ヨーゼフは、セルビア首相パシッチが「ロシアのセルビア公使ニコライ・ガルトヴィクに相談せずには何もしなかった」と信じていた。皇帝フランツ・ヨーゼフは、ガルトヴィクこそが「ベオグラードの真のボス」だと語った。皇帝フランツ・ヨーゼフは、「秋に予定されているロシアの試験動員に特に不安を感じている。ちょうど我々が新兵部隊を移動させている時期だ」と述べた。15

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　ハプスブルク皇帝が、ロシアに関する最も深い予感をベルヒトルトやティサではなく、オーストリアの唯一の真の同盟国であるドイツ大使に明らかにしたことは重要である。

ウィーンが、フランス革命とナポレオン戦争の後の、現状に対するあらゆる革命的あるいは復興主義・国家主義者の挑戦を抑圧することを誓った東の三帝国（オーストリア、プロイセン、ロシア）の「神聖同盟」の拠点だった頃、メッテルニヒの時代に舞踏会の華であったオーストリアは急激に衰退し、西側諸国からは同盟を結ぶ価値がほとんどないと評価されていた。

1853年から1856年のクリミア戦争の勃発時ーその時のオーストリアの外相ブオル伯爵は、ロシア軍にドナウ川からの撤退を要求し、ロシアはイギリス、フランス、サルデーニャ、オスマン帝国との戦争に余念がなかったーウィーンはヨーロッパ外交で漂流していた。

1871年にプロイセンの後ろ盾でドイツ統一を推進したオットー・フォン・ビスマルクは、マキャベリ的な三帝同盟（1873年～1879年、1881年～1887年）で相互に疑念を抱いていたオーストリアとロシアを結び付けようとしたが、その精神は、1887年のマキャベリ的な（そして秘密の）再保障条約でも維持された。しかし、このおよそありえそうもないグループ分けは、フランスとロシアがドイツに対してチームを組むのを阻止するというビスマルクの真の目的をロシアが直感しない限り、うまく機能しなかった。

これ（フランスとロシアの組み合わせ）は、1890年にビスマルクが政権から失脚した直後に彼らが正式に行い、1894年にドイツに対する仏露二国間軍事同盟が締結された。

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＜オーストリア外交＞
　オーストリアがビスマルク外交の煙幕としての戦略的役割を失ったため、ドイツは主に外交上の惰性からオーストリアとの同盟を維持し続けた。そしてビスマルク体制の崩壊以来、両帝国はロシアを敵として共有しているという事実もあった。

確かに、ウィーンは理論上、1882年に遡るオーストリア、ドイツとの三国同盟の第三の車輪であるイタリアを頼りにすることができたが、ローマとの関係はベルリンとの関係よりもはるかに弱かった。

イタリアは戦時中の共通の潜在的な敵国をドイツ（フランス）と共有したが、フランスと国境を接していないオーストリアとは共有しなかった。さらに、オーストリアのトリエステと南チロルのイタリアの有名な計画（未回収のイタリア）は、ローマがウィーンの同盟国であるという概念を無意味なものにした。

コンラッドは1911年にイタリアとの先制戦争を提案するという行き過ぎた行動をとったが、バルカン半島戦争やヨーロッパ戦争でイタリアがオーストリアの側に付くなどという幻想をボール広場（オーストリア政府）の誰も抱いていなかった。

セルビアの脅威に直面して、オーストリアはドイツだけが彼ら（オーストリア）の間に立って完全に孤立していることを知っていた。ドイツなしでは彼ら（オーストリア）は何もできなかった。この点については、ウィーン、そしてブダペストの全員が同意した。
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　7月1日、ティサが皇帝に反戦覚書を提出したのと同じ日、コンラッドは外務大臣ベルヒトルトに打診するために再びボール広場（オーストリア政庁）を訪れた。ベルヒトルトはセルビアとの戦争に対するティサの断固たる反対をコンラッド参謀長に伝えた。ティサはロシアが介入し、「ドイツは我々を窮地に追い込むだろう」と信じていた。

コンラッド自身も、オーストリアの主要な同盟国が支援を申し出なければ、「我々の手は縛られることになる」と認めざるを得なかった。

ベルヒトルト自身もこの懸念を共有し、ウィーンがバルカン半島での同盟国候補として積極的に求愛しているルーマニアが、この戦争がドイツの支援を受けていることが明らかでない限り、オーストリアの対セルビア戦争を支持しない可能性が高いのではないかという懸念を加えた。

ベルヒトルトはコンラッド参謀長に対し、ブルガリアとルーマニアを三国同盟に誘導するようベルリンに勧告する覚書を最近作成したと語った。

コンラッドは興味をそそられた。参謀長はベルヒトルトとの謁見を「何よりもまずドイツに、ロシアに対して我々を支援するつもりかどうか尋ねなければならない」と述べて締めくくった。16

　ベルヒトルトがコンラッドに、自分たちが今からベルリンに行かなければならないことに合意したバルカン政策覚書を自ら作成した、と語ったことが重要である。

実際、バルカン半島におけるロシアの侵略を阻止するために、ブルガリア、ルーマニア、オスマン・トルコを三国同盟に参加させることを中心とするオーストリアとドイツの新たな「和平構想」を概説した当初の覚書は、ティサの指示に基づいて3月に作成されていた。

最新の草案はサラエボ事件の4日前、6月24日に完成していた。もし外務大臣ベルヒトルトがコンラッドに対し、ベルリン構想はティサの疑似平和主義思想を表していると告げていたら、首席補佐官はあれほど明快に同意しなかったかもしれない。

ティサのベルリン和平構想が現在の行き詰まりから抜け出す可能性を彼に与えてくれたので、ベルヒトルトは明らかにこのことを熟考していた。

表向きはバルカン半島の政治の破綻に関係しているが、ティサの覚書は本質的にはドイツとの同盟強化に関するものだった。オーストリアの目的は、ベルリンにオーストリアのバルカン半島情勢へのこれまで以上の介入を強制し、バルカン半島情勢の共同所有権を掌握させることであらねばならない、とティサは主張した。

「ドイツから理解され、尊敬され、支援されるという完全な確信がない限り、成功について語ることはできない」とティサは3月の書簡を締めくくった。

『ドイツは、バルカン半島が我々だけでなくドイツ帝国にとっても決定的に重要であることを認識しなければならない』

7月1日の皇帝への書簡でも同じ考えを継続し、ティサはフランツ・ヨーゼフ1世に対し、近々行われる大公の追悼式でヴィルヘルム2世に近づき、「最近の恐ろしい出来事」を利用してヴィルヘルム2世を「バルカン半島における（オーストリアの）政策への心からの支持」に引きつけるよう促していた。

コンラッドはサラエボの暴挙をセルビアとの決着をつける口実として使いたかった。

ティサは、ドイツ側が望むように、さらなる破壊的な戦争を防ぐために、バルカン半島問題に関してドイツをオーストリアと調和させるための口実として利用したいと考えた。

ベルヒトルトの考えは、ティサの和平構想でドイツ人に接近し、それを利用してコンラッドの戦争政策への支持を得るというものだった.17

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＜寂しい葬儀＞
　7月3日金曜日にウィーンで行われる予定のフランツ・フェルディナンドの葬儀は、ティサが示唆したように、ドイツへのアプローチに最適な環境となっただろう。

オーストリア皇帝とは異なり、ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世はフランツ・フェルディナンドとゾフィーを愛していた。彼は大公が暗殺される数日前、6月にコノピシュトで長い週末を過ごして彼らを訪れていた。カイザーは性急で感情的であることで悪名高い。彼の親友である王族仲間の殺害は、彼を激怒させるに違いなかった。オーストリアがこの怒りを正しい方向、対セルビアに向けることができれば、ドイツは勝利したも同然だっただろう。

　だがそそうはなかった。 7月2日木曜日の朝、防腐処理されたフェルディナンドとゾフィーの遺体がまだトリエステ港からウィーンに向かう途中、皇帝ヴィルヘルム2世が葬儀に出席しないことが発表された。腰痛の発作で彼は旅行できなくなったのだ。

ティサにはバルカン和平構想をドイツの君主に売り込むチャンスはなかったことだろうが、その後、ベルヒトルトもコンラッドも、ヴィルヘルムの怒りを利用してセルビア戦争へのドイツの支持を得ることはできなかった。

事実、葬儀のためにウィーンに来た外国の王族や政治家は一人もいなかった。おそらく、ベルヒトルトは、高齢のフランツ・ヨーゼフを長時間の式典による疲労から守るために招待状が差し控えられたと主張した。その代わりに、海外のオーストリア大使が別の追悼式を手配する予定だった。

誰もが知っていたように、故人に対する皇帝自身の感情は温かいものではなかった。家族内部からの強い抗議にもかかわらず、彼は大公夫妻をハプスブルク家のvaultに埋葬しないという決定を譲らなかった。

より興味深い説明がオーストリア政庁の内部関係者によって示唆されている。すなわち、ベルヒトルトは、外国の主権者が戦争当事者にやんわりとした影響力を及ぼすことを恐れて、皇帝の耳にそうした主権者からのアクセスが入ることを望まなかった、ということだ[18]。

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　ハプスブルク王位継承者の平坦な追悼式は、バーバラ・タックマンが『8月の銃』で記憶に残るように記録した、1910年5月のイギリス国王エドワード7世の盛大な国葬と有益な比較となっている。

その時、ロンドンでは、9人以上の王が立派な馬に乗って、「羽飾りのある兜、金の組紐、深紅の帯、そして宝石で飾られた勲章を太陽に光らせながら」宮殿の門を通過し、続いて「5人の後継者が明らかで、さらに40人が続き、帝国または王室の殿下、7 人の女王」、および「無冠の国からの散りばめられた大使がいた」のが看られた。」19。

対照的に、フランツ・フェルディナンドの死はウィーンではほとんど悲しまれなかった。皇帝はトリエステからの葬儀列車への集合も拒否し、追悼式にも出席しなかった。

皇帝の怒りに立ち向かおうとするハプスブルク王朝の少数の人々は自由に参加できたが、遺体を閲覧するのに与えられた時間は15分もなかった。

フランツ・フェルディナンド自身の子供たちは、こうした重々しさすら許されなかった（花を送ることは許されましたが）。フェルディナンドの棺には、少なくとも、二重君主制で二番目に位の高い王子の完全な記章が刻まれていた。彼の身体は、大公の冠、羽飾りのある将軍の兜、儀式用の剣、そして金羊毛勲章を含む主要な装飾品で適切に装飾されていた。

対照的に、ソフィーの棺は夫の棺より小さいだけでなく、20インチも低かった。白い手袋と黒い扇子を除いては裸で、単なる女官だった彼女の前職を象徴していた。遺体はアルトシュテッテン（帝政ウィーンから遠く離れた「地方の穴」）にある質素な礼拝堂に埋葬された。この礼拝堂は、夫妻が帝室のvaultへの入場を拒否された場合に備えてフランツ・フェルディナンドが特別に建てたものだった。それはハプスブルク家にとって、刻印のない墓に相当するものだった。20

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＜1910-14年＞
　確かに、厳格で社交的に不器用だった大公は、社交的で魅力的なエドワード 7 世ほど人気があったわけではないし、オーストリアは文字通り地球を覆う帝国を統治していたイギリスほど強力な国ではなかった。

それでも、この 2 つの出来事の鮮明な対照は、1910-14年の間の 4 年間に何か重要なものが失われたことを示唆している。

1910年は、古きヨーロッパの一種の小春日和であり、1908年から1909年の第一次ボスニア危機と1911年のモロッコ危機、そしてそれに続くイタリア・トルコ戦争およびバルカン戦争の間の国際緊張のなかでの小春日和の年だった。

当時、オーストリアはまだ屈辱を受けておらず、セルビアも拡大していなかった。オスマン帝国はイタリアとバルカン同盟によって一連の瀕死の打撃を受けることもなかった。

君主制の原則は 1910 年時点ではまだ機能していた。各国の民族主義的マスコミ（訳注；当時は新聞）が敵に対して血を流せとどんなに大声で叫んでも、主権者たちは依然として結婚と血の絆、ある程度の相互の礼儀と信頼を共有しており、それが物事の前の緊張を和らげるのに役立っていた。

　1914年にこうしたことがまだ真実であったならば、殺害された大公に対する同情の強い国際的な湧き上がりがあったはずであり、その残忍な殺害は世界中の支配者にとって明らかな侮辱であったはずだ（オーストリア自身の君主の極寒の感情にもかかわらず）。

実際にはそうではなくて、ヨーロッパ王室の中でフランツ・フェルディナンドの唯一の最良の友人であるヴィルヘルム二世でさえ、敬意を表するためにウィーンを訪れなかったのである。

ヴィルヘルムが家にいたのには十分な、そして明らかな理由があったが、実はそれは世間の報道とは異なり、腰痛のためではなかった。

「サラエボから受け取った警告の結果」、ドイツの首相テオバルト・フォン・ベートマン・ホルヴェークは、オーストリア政庁経由の秘密電報を使ってフランツ・ヨーゼフ１世に告げた。「そもそもは、暗殺は今年の4月にまで遡るのであり、私は皇帝陛下にウィーンへの訪問を中止するよう要請せざるを得ませんでした。」大公夫妻のような暗殺は、「犯罪分子に暗示的な影響を与えることがよく知られている」とベートマンは説明した。21

　ここにウィーンに対する忌まわしい判決が下された。ドイツはサラエボ後の同盟国オーストリアの行政能力のレベルをあまりにも低く評価していたので、オーストリアが自国の首都で皇室の葬儀を安全におこなうことができるとは考えていなかった。

明るい面としては、ドイツ首相が国賓訪問中止の理由としてボスニアを拠点とするテロを指摘したことは、ベルリンがオーストリア戦争党の大義に同情的である可能性を示唆していた。その一方で、ベートマン首相は、サラエボの暴動に加担したとしてセルビア人やセルビアには言及しないように注意していた。

結局のところ、オーストリア人はまだベオグラードを犯罪に結び付けていなかった。ティサ、フランツ・ヨーゼフ1世、ベルヒトルト同様の証拠が、ドイツ首相には必要だったことだろう。

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　オーストリア＝ハンガリー帝国のの政治家たちが、ドイツファーストで行くことなくサラエボへの対応策を立てることができなかったのは、1914年当時のオーストリア＝ハンガリー帝国の戦略的無力さを反映している。

確かに、この行き詰まりは国内の政治力学の結果でもあった。つまり、二重君主制の文字通り半分を代表する能力に基づいて政策に拒否権を発動できる独特の能力を持った、政府の上層部にそびえ立つハンガリー人の存在があったのだ。

しかし、15 の国籍を持つ帝国において外交政策と国内政策を分離することは不可能であった。

バルカン半島政策に関するティサの「平和主義的」見解は、ハンガリーの従属的な国籍に対するマジャール人の優越性を維持するという彼の目標と密接に結びついていた。ちょうどコンラッド、そして今やベルヒトルトが、帝国内の国民回帰主義を弱めるために（それはティサのようなマジャール人の耐えがたいふるまいから始まっていた）セルビアを潰したいと望んだのと同じように。

ハンガリー、オーストリアが支配する帝国外務省、そして陸軍の利害は、外部との衝突（戦争）でもない限り、相容れないもののように見えた。

この奇妙な方法で、ドイツは 1914 年までにオーストリアの外交政策だけでなく憲法上のジレンマの調停者となった。サラエボ暴動へのセルビア（国家）の関与に関するベルヒトルトとコンラッドの疑惑が捜査当局によって確認された場合、オーストリア政庁はすべての人の心に「ドイツは何と言うだろうか」という疑問を投げかけたことだろう。

今のところ、ベルヒトルトには待つことしかできなかった。

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