このことを懸念していたが、ついに日本でも、犠牲者が出た。

昨年の今頃、ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授は、マラソン時にはマスクをつけるよう、勧めていた。私は、それに不安を感じていた。ノーベル賞受賞者とあろう方が、なぜそのような危険なことをおっしゃるのだろう、と。

当時はしかし、山中教授に限らず、マスクをつけてのマラソンが推奨されていたのだ。たとえば、甘利明氏は、以下のようなツィートを出している。

甘利 明
@Akira_Amari

ハァハァ息をしながら走り去るランナーとすれ違うたびに身構えてしまうのは私だけでしょうか。飛沫は咳やクシャミだけでなく息からも飛ぶと報道されています。ランナーの皆さんマスクをしましょうよ。

午後7:09 ・ 2020年4月20日・Twitter for iPhone

https://twitter.com/akira_amari/status/1252177621783199744?s=21

また佐々木理恵アナも、「私も頑張って先日、マスクをつけて走ってきました」と無邪気に話していた。

あるいはスポーツ庁ですら、以下のような図を伴う見解を出していた。


だが、どう考えても、運動時のマスク着用は危険この上ない。だから私は、昨年の今頃、次ののようなコラムsを書いた（令和2年4月20日　ジョギング、マラソンにマスクは禁忌　令和2年6月20日　マスクの過大評価は危険）。

ランニング用マスクなども売られているようだが、そもそも、ランニングで息苦しくならないようなマスクなら、マスクの役割をしないだろうし、そもそも屋外であれ屋内であれ、２ｍ以上の距離が離れていれば、マスクは不要なわけだし。

●プロの観点の死角
なぜスポーツの、あるいは科学のプロがこのような危険を推奨してきたのか？　それは、彼らがプロであるがゆえの死角と言える。

あるおばあさんが、電子レンジに猫を入れて温めようとして、当然のことながら猫は死亡した。以後、電子レンジの取扱説明書には「生き物を入れないでください」との注意書きが記載されるようになったと言う。

要するに、世の中には、まさかそんなことが、ということがあり得る。スポーツ時のマスクもそうした類いの1つである。

Covid-19対策でマスク着用の重要性が言われ始めると、その危険性がおろそかになり始めた。マスク着用をして運動すれば息苦しくなるのは当たり前なのに、それが無視され、プロの人たちは、スポーツ時にもマスク着用を、と言い始めた。

だがそこには、いくらなんでも、苦しくなればみんな自発的にマスクを外すだろう、という思い込みがあった。プロならそうするだろうから。

しかし、子どもはどうか？　猫を電子レンジであたためたおばあさんほどではないとしても、「しっかりとマスクをつけて走るように」と言われれば、愚直にそれを守ってしまう子どもも出てくるだろう。

頑張って、頑張って、苦しくても、苦しくても、マスクをつけろと言われたからつけつづけた、ついにどうにもならなくなって、顎の下まで降ろしたが時すでに遅し・・・

プロには、素人の、そうした愚直さが理解できない。だから、危険なことを平気でやってしまう。

私はだから、何事も、厳格なことはいけない、いい加減さが大事、と常に思う。

スポーツ時にマスクを着用すれば、確かにたとえば、マラソンのスタート時の混み合いの時の感染リスクだけは減らせるだろう。しかし、マスク着用による低酸素の危険を比較考量すれば、マスクなどつけない方がはるかに総合的リスクは低いのだ。

その後、「隠れ低酸素血症」などといった概念も提唱された。マラソンでのマスク着用など、その最たるものではないか？なぜこのような危険が放置されてきたのか？

結局のところ、犠牲が出ないと何も動かない。しかしこの場合おそらく、犠牲者が出ても、世の中は動かないだろう。なぜならそうすれば、山中教授や甘利明や、スポーツ庁の権威が傷つくから。人の命よりも、そうした権威の方が大事なのだろうから、この国は。というか、人の世とは残念ながらそうしたものだ。

遺族は悔しかろう・・・