★朝日新聞の罪はきわめて大きい
確かに、日本が定めて存立危機事態の定義では、「日本と密接な関係にある他国が襲われ、日本の存立が脅かされることその他の所定条件を満たす事態」となっており、中国からすれば台湾は国内であり、他国ではないわけだから、そもそも日本の存立危機事態には該当しないわけだから、よけいなことを言うな、ということになろう。 だが、日本からすれば違う。確かに中国からの台湾への干渉は内政問題ではあるが、武力攻撃を行うとなれば、バシー海峡などの日本の生命線が犯されることになり、それは常識的に考えて、日本にとっての存立危機事態となる（これがわからないおバカさんの元外相がおられるが）。 だからこそ高市首相は、（中国からの台湾への）武力攻撃があれば、それは常識的に考えれば、日本にとっては存立危機事態になる、と答弁したに過ぎない。 この点において中国はしたがって、「わかりました。では、武力攻撃をしても、日本には一切のご迷惑はおかけしません。バシー海峡の通行権は保障します。それが困難で他地域を迂回するのであれば、運賃は保証します。難民はすべて中国で（台湾も含めて）お引き受けします」と言わなければ、日本を納得させられないのだ。 さらにより大きな問題点は、中国がそもそも、日本側から攻撃を仕掛けてくると”誤解”している点である。つまり、中国の内政問題なのに、日本が攻撃してくるのはけしからん！、と単純にわめいている。 これまた、本当にその通りであれば、中国が憤るのは当然だが、高市首相は、そのようなことはまったく語っておらず、むしろ真逆であり、中国側が（武力を伴った）攻撃をしてきたならば・・・と言っているわけである。 この点については、朝日新聞のかの意図的誤報の影響が強い。かの中国の薛剣・駐大阪総領事が「その汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」などとXで発信して大問題になっているが、この発言も、その前段には「勝手に突っ込んできた」という文言があるわけで（これまたなぜかこの部分がオミットされた報道が多い）、これはどう見ても、高市発言ではなく、朝日新聞記事を見ても発言だとしか考えようがない。 しかも朝日新聞はその後しれっと記事タイトルを代え、それも自分たちが間違っていました、批判を受けて見出しを修正しました、とは言っていない。 要するに朝日新聞も岡田さんも、日本よりも中国が大事だと考えているわけで、こうした連中とは、日本の保守層が一丸になって戦い、高市さんを応援しましょう。 | |
| ★高市総理発言撤回への意外な人の意外な発言 今回の高市首相の、存立危機事態についての国会答弁へのコメントでは、意外にもこれまで右寄りと思われていた人・組織が高市下げに走り、左寄りの人が高市上げの発言をしていて、興味深い。ここではその一部を取り上げてみる。 ①国民民主党 国民民主の榛葉幹事長は、野党ではあるが、立民よりも高市総理寄りの発言をしている（国民・榛葉氏「何人かの国会議員が呼びかけ人に…何やってんだ！」高市首相の答弁撤回集会（産経新聞））。岡田克也氏への批判が強く、撤回には明確に反対。また、中国の訪日自粛については、影響がほとんどない、としている。これでもう、立民と国民民主の間の溝は、決定的になったことだろう。 ②橋下徹 もともとは保守的な発言をする人だったが、大阪市長時代には飯田哲也や古賀茂明といった名うてのサヨクをブレーンとし、脱原発を訴えていた人なので、もともとサヨク的要素も混在する人だった。 今回の高市発言については、岡田克也氏の質問を大金星と称したり高市総理は「保守強硬派の応援団を意識しすぎ」 立憲・岡田氏の質問「大金星と思ったが…」、高市発言を失言と断定し、中国の訪日自粛の影響を積極的に評価するなど、榛葉氏の発言とは真逆なものが目立つ（橋下徹氏 高市首相“台湾有事”発言に「政治家失言で一部でも仕事キャンセルになっていいのか」（日刊スポーツ）。 またこういう中途半端な人間ほど極端を好むもので、さかんにペルソナ・ノン・グラータを発動せよ、と言っている。無知は恐ろしい。 橋下氏は、創業者でありながら、現在の維新執行部を徹底的に批判しており、バカとしか言いようがない。人を育てる極意をまったく知らない。ジャパネットたかたの高田明氏を見習ったらどうか？ ③立川志らく この人は、どんな案件だったか忘れたが、以前は大変なサヨクであったと記憶していた。ところが昨今は高市支持が著明である。 ④山尾志桜里 もともと、「日本死ね」と言っていたを支持していた人なのでサヨクだと思うが、国民民主に入ろうとしたあたりはだいぶ右寄りになってきていた。そして今回の高市発言の積極的支持は、まさに右。同じ発言をしている国民民主にやっぱり入りたいんじゃないのか＞ ⑤小林よしのり もともとはまともな人だったのだが、3.11事故後、強烈に脱原発派になり、その後はサヨクになった。今回の高市発言にも徹底的に反発しており、高市支持者を最前線に送って、共産党の軍と戦わせればよい」とまで言っている（小林よしのり氏「戦争前夜」高市首相の台湾有事発言に私見「徴兵制を敷いて支持者を最前線に送って…」。この人は、あの脱原発漫画を書いてから駄目になったと思う。 ⑥舛添要一 もともと自民党でも左寄りのスタンスだったが、高市発言に対するその発言はほぼサヨクとなっている（「中国は圧力を弱めない」舛添要一さん、『高市発言』撤回を促す投稿 「トランプ政権はあえて介入しない」（中日スポーツ） ）。 ⑦ひろゆき 橋下氏以上に変節したのがこの人。少なくとも「一部支持者が感情的にすっきりしたというだけで、経済的なマイナスは明確に存在するので。そういう意味では、日本人の大多数にとって損のあることをやった」という発言は、これまでのひろゆき氏らしからぬものだと思う（「一部の支持者がスッキリしただけ」ひろゆき 高市首相の“台湾有事”発言へのばっさり持論に称賛の声…“脱中国派”からは反発も | 女性自身）。 ⑧古市憲寿 この人は、思想的には少なくとも山尾志桜里よりは右だったと思うが、反高市陣営に属してしまったね（【高市自民】日本民間に実害の高市発言「損をどうしてくれる、怒りある」古市憲寿氏→高市支持派に反論「中国批判して気持ちよくなってる人いるけど」国益損なってる、他にやり方あったよね（デイリースポーツ）。 ⑨保阪正康 もともとは保守的な立場の昭和史研究者だったが、最近は徐々に左にシフトしてきていた。たとえば、3年前には、日本の満州事変にプーチンのウクライナ侵略をなぞらえていた（令和4年7月4日当ミニコラム）。これ以降、、私はこの人の本は読まなくなった。当然、高市政権には批判的である。（監視や治安維持に過剰なこだわり…昭和史研究家・保阪正康が強く危惧する高市早苗政権の“核心”（文春オンライン） ） ⑩原口一博 最期は何といってもこの人。何せ、民主党でも名うてのサヨクだった。この人は佐賀県のオスプレイ配備には一貫して反対をしている。だがその彼が、何と高市政権の姿勢を支持しているのだ（「外交・安保の基本を外して政権は取れない」立民・原口一博氏 岡田氏の質問は「アウト」（産経新聞） ）。 | |
★「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれたI
高市下げの人たちは、これをわざと働き方改革にダブらせた。完全にこれとv.s.となる概念だから、彼らはしてやったり、と思ったのだろう。たとえば共産党の志位和夫はXで、高市氏の「馬車馬のごとく・・・」という言葉の揚げ足を取って、「全員に馬車馬のように働いてもらう」にものけぞった。人間は馬ではない。公党の党首が使ってよい言葉とは思えない」と語っている（X）。高市氏は、「全員に」なんて言っていないのにね。 この言葉が流行語大賞に選ばれたこと自体、まさに高市首相の勝利、高市下げ派の敗北を象徴していると言えるだろう。 ところで、私は現在66歳の医師だが、年を取ってくると、仕事をするとはどういうことなのか、をいろいろ考えるようになる。なぜなら、私の年齢になると、一部の人はいまだに「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」的に働いているが、そうでない人、あるいは年金生活に入っている人もいて、働き方、生き方が幅広くなるからである。 ●高橋まつりさんが自殺したわけ 今からちょうど10年前に、東大を卒業して電通に入社した高橋まつりさんが、24歳で自殺した。 のちに、働き方改革の原動力ともなった事件で、だからこそ一般的には彼女は過労死したと言われているのだが、私は、彼女の自殺の原因はまったく別だと思っている。 学校を出て、若者は一斉に社会に出て働き始める。この時点で、ワークインバランスを重視する人と、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という人とに、すでにだいたい分かれる。たとえば公務員になる人はだいたい前者が多いだろうし、一部の民間企業に入社した人は後者だろう。 私事だが、自分では後者のつもりだった。だから公務員にはなりたくなかったから、民間企業に入った。そこは、生き馬の目を抜くと言われる證券会社だった。 だが、證券会社で求められたのは、とにかく営業成績だった。新人の私たちには、まずは預かり資産を増やすことが求められた。飛び込み営業をして、一円でも多くの資産を預けてもらう仕事である。 営業という仕事は、ワークインバランス的ではできない。成績を上げようと思えば、昔風で言えば、24時間戦えますか？でなければならない。今なら、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」のようなマインドがやはり必要である。 280人いた同期には、この仕事にそのように取り組む人もいた。そういう人はやっぱり、営業成績はよかった。それだけの努力をしているのだから、当然だよね。 私はどうしてもそのようになれなかった。営業だから、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」のようなマインドがやはり必要であるとは思うが、どうしても、そうしたマインドを持てない。当然、営業成績は上がらない。支店内では、ダメ新人で、浮いた存在だった。できる先輩からバカにされていた。 要するに、入ってはいけない職場に迷入してしまったのだ。自らの意思で入ったにもかかわらず。そして高橋まつりさんも、おそらくは私と同じような体験をしたのではないか、と思っている。 高橋さんは、履歴書には「逆境に強い強靭なストレス耐性。強い信念を持って努力すれば解決できるというのが私の信条である」と書いていたそうで、やはり、ワークインバランスよりも「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」的マインドは持っていたと思う。だからこそ、絶対にそれが必要と思われる電通に入社した。 ところが入社してみると、実際の仕事が、自分がしたかったこととは違う。詳細は不明だが、そう思ったのだろう。 私の場合は、とにかく、合わない仕事でも、周りにいかに迷惑をかけようが、1年間は頑張ろう、と1年間、耐えた。しかし高橋まつりさんはおそらく生真面目な性格で、そういった妥協ができなかったのだろう。そのために、最悪の道を選んでしまった・・・ 彼女は過労死とよく言われるが、あそこまでの労働マインドを持っている人なのだから、フィットする仕事に入れば、そもそも過労という概念などもなかったはず。だから高橋まつりさんは、確かに過労で病んだとは思うが、それはハードワークが原因なのではなく、あくまでも仕事内容の問題であったと思うのだ。 ●「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」は過労とは無縁 さて、ここからは年寄りの仕事のことについて語ろう。年をとっても働きたい、という人は多いが、高市さんのマインドで働きたいという高齢者は、実は少数派であろう。というか、働きたいと思っても、そもそもそのように働ける場がある高齢者が少数。 まず、自営業者を除いては、一般の勤め人には定年がある。医師は定年がないと言われるが、公立の大病院ではやはり65歳くらいでの定年がある。大学教授も大体65歳で定年である。 一般企業では、55歳前後で役職定年となる。昔はここで本当に定年となっていたのだが、今では65歳にならないと年金がそのまま支給されないので、多くの人は、脇役に回る。つまり、55歳くらいまでは「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」であった人も、役職定年以後はそれがままならなくなってしまう。当然、収入も下がる。 一部の人は役員になり、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」の働き方を維持することは可能ではあるが、社会的影響力のある大企業の場合、社長まで上り詰めても、だいたい65歳で定年となり、つまりは、大学教授や大病院の院長、パイロットなどと同じ年齢で、その高い社会的地位を退くことになる。むろん中には、実力次第で、それ以上の年齢でも「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」の働き方をしている人もいるが、さすがにこの年齢になると、名誉職的な仕事に回ることも多いだろう。 こうしてみると、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」のマインドを持っていて、その働き方を続けることができる人は、運もよく、幸せな人だと言える。 こういうマインドの人は一般的には収入も高いから、当然、年金は受け取っていない。年金とは無縁の人たち。もともとあてにもしていない。もっともより高齢になって働けなくなれば、受け取ることにはなろうが。 要するにこういう人は、生きるために働くのではなく、働くために生きている人たち。 早期退職派の人たちからすれば、信じられない、なんでそんなに働くの？ということになろうが、こういう人たちがいるからこそ、世の中はうまく回っているとも言える。 たとえば政治家などはまさに典型的なこうした人種だろう。まずもって、自分のお金のために働きたい、などと言う政治家の存在が、少なくとも現在は、許されるはずがない。そのように訴えて立候補して、当選するはずがない。 政治家こそ、わが身を犠牲にしてでも、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と言ってもらいたい、と一般有権者はやはり思うだろう。本人の利得よりも有権者のそれのために働いてもらいたい、と思うだろう。 高市首相のこの言葉が刺さったのは、日本のトップに新しくなった人がここまでの覚悟を持っているのかという、ある種の感動を多くの人に与えたからである。 このような、働くために生きている人の辞書に、過労死はない。過労という概念そのものがない。働くために生きている人たちなわけだから、それは当然だろう。 むろん、その自覚はあるかもしれないが、そもそも自由意思でわざわざ働いているわけだから、これ以上働いたらやばい、と思えば、自己コントロールが可能である。高市首相は、ほっそりとしていて、見かけは軟に見えるので、多くの人が健康を心配している（彼女の唯一の懸念はまさにこの点のみだろう）が、その点はしっかりとわきまえているだろう。午前3時からの勤務にしても、彼女のことだから、当然、自分だけでなく、同席する秘書官らの健康も考慮しての行動であろう。 ●医師の働き方について ところで、こうした政治家マインドは、医師マインドとも似ている。 ある医師が、患者家族から「私の家族が病気で苦しんでいるのに、先生は休んで旅行に出かけられるんですね」と言われたと書いていた。 たとえば政治家ならば、大規模災害などが起きれば、相応の活動が求められるだろう。2019年9月9日未明に台風15号が千葉県を直撃し、大規模停電や住宅被害など県内に甚大な被害を与えたが、その時に森田健作千葉県知事は一度も千葉県庁に登庁しなかったことが非難を浴びた。また、東日本大震災の折には、小沢一郎氏がすぐに被災地（地元である岩手県）を訪問しなかったことに対する強い批判があった。 こうした批判は、普段からの政治家の活動への期待からすれば、当然のことだろう。では医師に対してはどうか？ そもそも医師は、日常的に患者の危機管理をしている。つまり、常に危機に瀕している患者を抱えている。ここが政治家とは決定的に違う。 仮に、医師に対して、災害時の政治家への期待と同じことを期待されたら、医師は24時間on状態とならざるを得ず、患者に何かがあれば、24時間365日、かけつけられる体制にいなければならないことになる。むろん、家族旅行にも行けず、私生活がなくなる。 実は、過去にはそうした期待に応えた医師がいたことはいた。たとえば、先日亡くなられた、腎移植の第一人者だった万波誠医師は、病院に”住んでいた。” また、上皇陛下の心臓手術をした天野篤Dr.は、土日しか家に帰らず、週日はずっと病院にこもっていた。 そこまでいかなくとも、ことに外科系の若い医師は、大きな手術があれば、病院に泊まり込んで、家には帰れないのが当たり前だった。また、最近までは、担当患者が亡くなれば、当直医にはまかせず、夜中でもかけつけて、自分で死亡確認をしてお見送りをするのが当たり前だった。 患者・家族サイドからすれば、こうした医師はありがたいだろう。たとえば、ほとんど面識もない当直医から死亡宣告を受けるよりも、ずっと診てもらっていた医師に病院に来てもらって、看取ってもらう方が、やっぱりうれしいだろう。手術が終わっても、手術に加わった医師に診てもらえることで、安心するだろう。 だが昨今は、医師の働き方改革とやらで、こうした働きをする医師は少なくなった。医師側からすれば正直、ありがたいが、患者・家族サイドからはもやもやがあるだろう。だからこそ、本項冒頭のような意見も出てくる。 要するに、医師については、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」マインドが世間からは求められがちだが、昨今は大きく変化しているわけである。 なお私は、私くらいの年齢になれば、確かにこうした世間の感覚の変化はありがたいと思うが、研修医については、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」マインドをずっと持っていてほしいと思う。なぜなら彼らは、これから一人前の医師となるためには、さまざまな経験をしなければいけないから。今のような、9時5時研修では、絶対に医師として必要な素養は身につかない。 ●高齢医師でも「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」マインドを持つ 上記の万波Dr.や天野Dr.には足元にも及ばないが、私も、高齢医師であっても、高市マインドで可能な限り、働いていきたいと思う。幸い、それができる環境にはいるので。 医師の場合、通常は、一般人よりも高齢でも働いている。それは、それが可能な環境があるからではあるが、それでも、働き方としては、ワーク・イン・ライフ的働き方となる。つまりは、無理はしないで、当直業務はやらず、手術はやらず、病棟管理もしない。一番気楽な、（自らの専門の）外来業務だけを行う。あるいは老健の施設長などになる。救急や外科とは対極的位置にあり、大きな責任を負うこともない。 こういう人が大部分。私はそれに逆らいたい。 尊敬しているのが、41歳になってなお幕内を張っている、玉鷲関である。幕下以下なら、確かに30歳以上で頑張っている力士は多くいる。少し古いデータであるが、平成30年（2018年）12月31日時点での調査では、幕下以下の30歳代以上の力士は122人いる。また、40歳以上でも、2021年のデータで15人いる。 玉鷲関のすごいところは、上位番付において、高齢で頑張っているところだ。幕下以下なら、それなりの実力でやっていけるだろうが、幕内上位ではそうはいかない。 私は、玉鷲を見習いたい。60歳代後半でも、週1回の救急当直をこなし、手術をこなし、急性期病棟を管理していきたい。できれば、70歳過ぎても。むろん、昔の研修医時代のような働き方は無理だから、しっかりと休みももらいながら。 考えてみれば高市さんだって64歳、政治家としては脂が乗り切った年齢だが、世間的に見れば、ほぼ高齢者だ。それでも総理大臣になって、「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と言っている。もっとも海の向こうでは、トランプが80歳に何なんとしているのに、米国大統領の激務をこなしている。 こういう人は見習いたいと思う。人生やはり、生きるために働くのではなく、働くために生きて、生涯を終えたい。 | |
★代表一任の強さ
そして同年秋、当時の安倍自民総裁に議員定数削減を迫ったが、結局うやむやになった。安倍氏といえども、うかつには選挙制度をいじれなかったのだ（というか、他にやるべき事案が多すぎて、手が回らなかったのだろう）。 野田立民代表は、高市首相を見くびっていたのだろう。安倍さんさえできなかったんだ、高市なんかにできるはずがない、と。 だが高市首相は、そうした壁をあっさりと乗り越えてしまった。彼女が、あると言われた（本人はたぶんそもそも、あると思っていなかった）ガラスの天井をあっさりと割ったように。 だが自民・維新でみごとに比例区50議席削減が決まると、野田氏は吠えた。「比例区削減だけじゃ、バランスが悪いからダメだ。小選挙区も削減しろ」。かつて比例区だけの削減を訴えていたにもかかわらず！ 維新は利口だ。「わかりました、じゃあ小選挙区も減らしますよ」と。高市首相とのトップ会談であっさりと決めてしまった。しかも1年後の保証付きだ。 結局、論理的に野田氏は何も言えなくなった。は、早すぎる、だのえいや、じゃダメだ、などという、感情でわめきたてた。野田氏の完敗である。 それにしても、なぜこれほどあざやかにコトが進んだのか？比例区だけならまだしも、利害調整が複雑に絡む小選挙区にまで、なぜ、手を突っ込むことができたのか？ そもそも高市首相からすれば、小選挙区をも削減するという維新からの提案は、渡りに舟、だったのだ。実はこのことで、自民党で自分に後ろから鉄砲を打っているある人を、合法的に処分できる可能性がでてきたわけで。そう、削減対象になる一つの区は鳥取県で、そこには、後ろ鉄砲第一人者の石破前首相がお住まいだから。うまくやれば、彼の政治生命を奪うことさえ、できなくはないのだから。 それにしても、なぜ維新と自民は鮮やかにトップ会談で、どんどんコトを進められるのか？ 民主主義社会は、いろいろな人の意見を聞く、いろいろな意見が俎上に乗る、というメリットがある。しかしながら、それをきちんとまとめられる人がいないと、何も決められなくなる。 かつての民主党がまさにその典型だった。首相でさえ、党内異分子を説得しきれない、結局党は分裂し、解散総選挙で惨敗した。立民は、そのDNAを受け継いでいる。なまじ大所帯なのでどうしてもいろいろな意見が出てくるが、野田代表は今回もまた、収め切れていない。 その点は、自民党と維新は見事だ。維新は、もともと与党化の時でも執行部一任を取り付けていたので、話がどんどん進んだ。おそらくはこの政党は、いい意味での独裁政治であり、トップがまともなら、民主制よりも共和制の方がまし、という好例である。 自民党はもっとすごい。あれだけの大所帯で、しかも、海千山千のつわものがゴロゴロいるにも関わらず、あそこまでまとめきった。この高市首相のリーダーシップは、ものすごい！「私の意見に反対な人は抵抗勢力です」と言い放った、かつての小泉純一郎を彷彿とさせる。 特に自民党では、比例復活でないと当選できそうもない議員、小選挙区議員定数削減でやばくなる議員がいるわけで、本来なら、そうした意見がスクラム組んで、改革を阻む可能性は十分あった。 おそらくそれを突破できたのは、高市首相の高い支持率であろう。少なくとも自民党内であれば、これだけの支持率があれば、独裁者としてふるまえる。幸い、高市首相もまた、良き”独裁者”だ。 だからこそ、安倍さんでさえできなかった、小選挙区をも含めた定数削減をあっさりと達成できたわけである。さらには、高市首相のリーダーシップも素晴らしいが、自民党内を保守で統一したいという高市首相の思惑をうまく維新が汲み取り、助け船を出したことも大きかった。維新は維新で、かつ野党からの批判をうまく利用した。 ここくらいまで決まれば、もう来年には解散してよいだろう。少なくとも衆議院は与党圧倒的多数になるので、それをバックに、粛々と定数削減を進めていけばよい。 | |
| ★医療は公とすべきか？ 今から40年ほど前、まだ社会党が元気だった頃、私は公務員だったが、その時に上司が、「日本の病院はすべて公立にしたらいい」と言っていた。彼は社会党支持者だったからこう言ったのであり、私は反発したのだが、近頃の状況を見ると、彼が言っていたことは、あながち間違いではないのではないか、と思うようになってきている。
たとえば、国防・司法・消防はどの国でも国ないしは行政が行っている。これらのサービスに対して、国民は税金という大雑把な支払いをするだけで、個別の対価の支払いは求められない。これは、こうしたサービスは、いちいち対価に応じた支払いを求めるよりも、皆で一律にその経費を負担した方が効率がいいからである。 これに対して、同じような生活インフラである水道では、多くの国が国営であるが、個別の対価は要求される。それは、人によって使う量が異なるわけだから、平等の点において、当然のことだろう。 同じく生活インフラである電力・ガスは民営ではあるが、最近までは、電力供給は総括原価方式であったように、公的要素が強い。 要するに、国民生活にエッセンシャルである要素は、基本的にはどの国においても公の要素が強いわけで、それはたとえば、民営にしておいて倒産などという事態になれば、国民生活が脅かされることになるので、当然のことだろう。だからこそ、たとえば最近の電力自由化においても、既存の電力会社に最低限の供給継続が義務付けられたわけである。 問題は、医療をこの公の分野にいれるかどうか、ということ。 医療がエッセンシャル産業であることは言うまでもないが、その規模や性質、あるいは歴史的相違等で、その扱いは、全世界において、非常な相違が見られる。 米国は、一身独立して一国独立す、という福沢諭吉の箴言をそのまま実行している国だから、医療もまた民間で、となる。オバマやヒラリー・クリントンが日本の真似をして国民皆保険制度を導入しようとしても、だからうまくいかない。所得格差≒医療格差を当然と考える国である。実際米国は、医療費の対GDP比が突出して高いが、それはその大半が民間で（私保険を含めて）まかなわれているためで、医療は自由経済の一環であり、他産業の果実を食わないからである。 逆に欧州では、医療を公として考えている。イギリス、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイルランド、ポルトガル、イタリアなどでは、医療関係従事者も公務員となるのが一般的である。 日本の医療は、さまざまないきさつを経て、現在、公立病院が病院数で約10％、病床数で約14％となっており、クリニックなどを合わせると、圧倒的に民間主導となっている。 だがそれにもかかわらず、制度としては、世界に冠たる皆保険制度であり、病院、クリニックの収入源となる診療報酬は公定価格となっており、事実上、共産（社会）主義であり、今まさにこの点が問題になっている。 コロナ禍の時には、こうした日本の医療制度の欠点がもろに出た。事実上、公で医療制度を運営している欧州では、政府の鶴の一声で制度を操ることができた。”社会主義”の強味である。日本ではそれができずに、民間病院には拒否権が存在し、そのために、病床の有効活用が困難となっていた。 これまでの日本の医療制度は、欧州と米国のいいとこどりをしてきた。つまり、確固とした社会保険制度を前提として、「能力に応じて支払い、必要に応じて受け取る」という共産主義的医療制度を維持することで、収入に関係なく平等な医療が受けられる一方、経営主体は民間にすることで、公にありがちな無駄を省いてきた。 欧州では前述のように、医療は公なので、原則医療サービスは無料（か低価格）で受けられるが、サービス内容は悪い。米国は自由経済だから、所得に応じてサービス内容が異なる。日本では、所得に関係なく、質の高い医療が平等に受けられる。 だが、こうした日本の医療制度の利点も、昨今の医療費の伸長に保険料・公的負担が追いつかなくなり、その維持が困難になってきている。 そもそも医療費の財源は、公費と保険料負担で85％となっている。この問題点は、保険料は社会保険ゆえに、結局は他産業からの補助である、ということ。言い換えれば、医療は他産業が生み出した国富を減らして成り立っている、ということだ。 診療報酬の引き上げができない根本問題がここにある。自由経済ならば、コストパフォーマンスに従い、価格を自由に設定できる。生産コストが上昇すれば（現在のように）、販売価格もそれに上乗せさせる。 だが医療でそれを行おうとすれば、それは結局、保険料値上げ、公費負担の増大をもたらし、結局、他産業の果実を食うことになるので、結局政府が課税強化したのと同様の事態になるためにできない、ということになる（医療従事者にとっては朗報だが）。 こうして、実際に倒産する病院も出てくるわけで、それならば、医療サービスを安定化させるために、日本もいっそのこと、英国のように医療を公としてしまえ、という考えが出てくる。 医療サービスは国民にとっては重要なインフラなのだから、国防・司法・消防に準じて扱うべきなのではないか、金儲けの対象にしてはいけないのではないか、実際そうやっている国もあるし、ということだ。 公的サービスにおいて最も問題になるのは、言うまでもなく、非効率であろう。 たとえば、埼玉県で開設された徳洲会系列の病院では、同規模の市立病院と比べて、ベッド一床あたり4分の1のコストで建てられている。（市立病院はベッド数300床で、建設費に69.7億円をかけている。それに対して徳洲会の病院は、同じベッド数300床だが、建設費は16.5億円で建設している4,500億円の病院グループ - 徳洲会 創業者「病院王・徳田虎雄」｜村上雄也 / East Ventures）。また運用でも、薬剤や設備投資の一括化などによって、より効率的になされている。 まあ徳洲会ほど徹底していなくても、民間病院ではやはり、経営を効率化しなければ生き残れないわけだから、概して経営効率は公立病院よりははるかに良い。 したがって、医療を公にすれば、その経営効率が低下し、さまざまな無駄が生じることはやむを得まい。上記の英国などは、それを承知で、医療関係者を公務員としているのだろう。国民の安全のためには、多少の無駄には目をつぶる、と。 しかしながら、医療が民営であるがゆえの無駄もまた、無視はできない。 たとえば、病院を維持するための過剰診療は実際どこでも行われている。最近では、公立病院でも経営の効率化が謳われているので、全国の病院・医院でこれは行われている。 過剰診療による無駄について、私は、医師としての30年以上実体験の肌感覚からは、医療は今の半分になっても、そのサービスが低下することはない、と考える。むろんそのためには、欧米のように、年寄りの延命治療はしないという大前提があるのだが。それだけ、不要・無用の医療行為は多い。 仮に医療がすべて公となり、経営の効率化が今のように求められなくなると、こうした無駄が排されるようになり、本当に必要な医療だけが生き残るだろう。 要するに、医療を公にすることは、一面、資源配分の適正化が妨げられる無駄が生ずるが、一面、もうけを余儀なくされるための無駄な医療も減るわけである。 問題は、定量的にどちらの利得が大きいか、ということだろう。ただ実際は、医療における個人の支払いは割合は15％程度であり、あとは社会が負担している状況なので、事実上、日本の医療は公となっているといえる。それならば、いっそ、制度を完全に公としてしまい、利益をあげるための無駄をなくした方がよいのではないか、と今の私は思う。以下、まとめ。 医療を公とする利点 ①うまく運用すれば、無駄な医療費を削れる ②パンデミックの緊急時の即応がやりやすい ③公務員化で、離島・僻地などへの人材派遣がやりやすくなる ④もうけ主義ではない、良心的な医療ができる 医療を公とする欠点 ①経営効率が落ち、資源の適正配分が妨げられる ②医療監視など、監督官庁の権限が大きくなる ③医師報酬などが均一化し、インセンティブがつけにくくなる ④医師の裁量権が狭くなる | |
| ★お花畑が生んだ日本国憲法 ●実は天皇については、新、旧憲法ともあまり変わっていない
日本国憲法で、昔から不思議だと思っていたのが、いきなり、第一章 天皇、とあることだ。実は、大日本帝国憲法（以後、旧憲法）もまた、第一章 天皇であり、日本国憲法が大日本帝国憲法の”改正”で作られたことがよくわかる構造になっている。宮沢俊儀の八月革命がいかにおかしい説かがよくわかる。 むろん、同じく天皇を扱っていても、その内容はまったく異なる。実際には、日本国憲法では、ほとんど形式的なものばかりではあるが、ただ一つ例外がある。それが、第７条第3項で、そこには「衆議院を解散すること」とある。 第4条には「天皇は・・・国政に関する権能を有しない」とあるので、形式的な条文ではあるのだが、それならわざわざこんな条文はいらないのではないか、と昔から思っていた。 衆議院の解散については、第69条もあるが、運用としては、内閣不信任決議を受けての解散よりは、総理の胸先一寸でのそれが多いので、形式的にも7条解散となっている。 実は、旧憲法でも第７条で、「天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス」となっていて、実際にはむろん、天皇の命令などではなく、その時その時の国情で解散がなされていた。ｔつまり、衆議院解散については、その状況は、戦前も戦後もあまり変わりはないのである。この点も、新憲法が旧憲法の”改正”で作られた根拠のひとつであろう。 戦後社会では、旧憲法が悪の権化のように言われているが、実は、起草者の伊藤博文は、可能な限りこれを民主的に運用しようとしていた。だからこそ、大正デモクラシーにまで行きついたわけで、しかしながら当時の政争があまりにも下品であり、国民が民主主義に倦んで、陸海軍に政治を行ってもらおうとしたのである。 しかしながら、戦後まもなくでは、戦前との断絶が強調されており、たとえば、当時の日本ニュースでは、「第８９臨時議会会期満了の１２月１８日、衆議院解散。ここに非民主主義的旧議会は、全く解消することとなりました。（衆議院解散｜時代｜NHKアーカイブス）」となっている。 ●国民主権について 旧憲法と日本国憲法の天皇項目での唯一の本質的な違いは、後者において、第１条で国民主権が宣言されていることである。 このことは、中学校の公民で学び始めるわけで、日本国憲法の三大原則、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義のひとつとして、耳にタコができるくらい勉強させられるわけであるが、実際には、この概念が独立して日本国憲法で謳われているわけではない。 実際には・・・第１条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 とあり、主人公は天皇で、天皇は日本のシンボルなのであり、その根拠は日本国民がそう思っているから、ということで、さらにその根拠が、主権が国民にあるから、という論理構成になっている。 これについては、たとえばフランス共和国憲法では第3条で、「あらゆる主権の原理は本質的に国民に存する」と独立しており、ドイツ連邦共和国基本法においても、第20条で独立で保障されている。つまり、国民主権が主語となっている。 こうした構成になったのも、おそらくは日本国憲法が、旧憲法の急ごしらえの”改正”によってできたためなのであろう。 なお、戦後は「天皇はシンボル」という言い方が流布し、学校でもよく教わったが、実は、旧憲法下でも、天皇は実質的にはシンボルだった。旧憲法第5条において「天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ」となっており、この条文は日本国憲法第3条「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」とあまり変わるところはない（というか、そのような運用が行われていた）。 ●日本国憲法が公布された時期の特殊性 私たちは、戦後の東西陣営の対立、冷戦を当たり前の事実として認識している。しかしながら実は、そこに至るまでには最低限、１～２年のタイムラグがある。 戦後まもなくのこの時期は、世界中がお花畑の時代だった。日本国憲法は、1946年年11月3日に公布されている。つまり、新憲法は、お花畑の産物だったのだ。この点を理解することが、非常に重要である。 終戦後、第二次世界大戦で一番悪者と考えられた存在は、ナチスドイツだった。さらには、強力な陸海軍を持っていた日本。 ドイツはヒトラーという独裁者を生んだ。それは、第一次大戦後にカイザーを追い出してしまったがゆえの結果だった（実際、チャーチルは「我々の最大の過ちは、カイザーを退位させたことだ。もし彼がいれば、ヒトラーが首相になることはなかっただろう」と言っている）。 1930年からの世界恐慌は、民主主義では乗り切れず、英国は植民地を利用したブロック経済を進め、米国はケインズ政策を採用した。つまり、恐慌を乗り切るには異常な力を必要としたわけで、ドイツにはさらに、ヴェルサイユ条約という桎梏が加わっていた。とてもではないが、ワイマール共和国などという甘っちょろい体制では乗り切れず、独裁者の出現は必然だった。 日本でも大正デモクラシーからのまだ萌芽的だった民主主義ではとても世界恐慌は乗り切れず、当時は一番の強力な組織だった軍部に政治を任せるより他はなかった。成立したばかりの満州国が、政治的・経済的な日本のバッファーとなった。そうした事実を、日本人もよく理解していた。”軍部独裁”は日本人の多数派の支持を得ていた。むしろ、政治を任された軍部の方が当惑をしていたのだ。 米英は、第二次大戦の起源、日独の置かれた状況を理解していなかった。だから、両国を腑抜けにすれば、世界は平和になると考えた。スターリンなど眼中になかった（チャーチルはあるいはスターリンの悪に早くから気づいていたかもしれないが、いかんせん、ルーズベルトが老いていた。彼は正常な判断ができず、かといって英国は米国に逆らうことができず、結局チャーチルは、スターリンに味方をせざるを得なかった。もっともチャーチルも、ナチス退治に躍起になっていた時期に、スターリンとにぎにぎしていた負い目はあったのだろう）。 このように、大戦直後の米英には、反共の概念がまだなく、GHQはそれを反映して、左派が跋扈していた。そして、日本を腑抜けにするために用意したのが、第９条を持つ平和憲法であった。 その内容は、第一次大戦の惨禍を経て作られた1928年のパリ不戦条約と瓜二つであった。つまり、自衛戦争以外の戦争はすべて悪であるという、戦争絶対悪視である。 その後第二次大戦が勃発し、結局のところ、パリ不戦条約の理想は踏みにじられたわけだが、GHQ左派は、夢をもう一度見たかった。そのために、同条約第1条を、日本国憲法第9条にほぼそのまま引き写したのである。のちのこのことが、日米にとって大きな足かせになることも知らずに。 また、戦後すぐのこのお花畑の時期は、軍部への（間違った）恨みもあってか、民主主義が過度に喧伝された。民意こそが絶対に正しい、という論調が強かった。そのために、憲法改正のために、国民投票が取り入れられた。直接民主制こそが正しい民主主義だ、と考えられていたのである。これもまた、今日の憲法改正の大きな枷になっている。 ●その後、真の敵が明らかになる 国際連合は、世界がお花畑の時代に生まれた。反共の概念がまだなかった1945年10月24日に発足していた。お花畑だったからこそソ連にも拒否権が与えられた。 だがチャーチルは、真の敵を見誤っていたことを、戦後になって初めて直視せざるを得なくなった。 国連発足のわずか半年後に、チャーチルは、有名な「鉄のカーテン」演説を行ったる。またその1年後には、トルーマンドクトリンが発表されている。本当の敵は、社会主義国ソ連、スターリンだったことを公言したのだ。日、独は本当の敵ではなかった。つまり、欧米外交は大失敗していたのだ。チャーチルのこの演説は、自らの無知を晒しだしたのだ。 急遽、米英は、日、独を自らの陣営に引き入れようと画策し始めた。ドイツに対しては、もともと、その工業力を貶めるモーゲンソープランが画策されたが、1946年9月6日、米国務長官ジェームズ・F・バーンズは、シュトゥットガルトでの有名な演説『ドイツ政策の見直し』において、欧州の相互理解をよびかけ、ドイツの希望のある未来のために産業政策を見直すことを明言した（この演説はドイツの共産主義化を防ぐために安定と復興が必要とするもので、チャーチルのフルトン演説より１か月早く、ソビエト連邦に対抗するためドイツへの米軍の無期限駐留についても触れた、冷戦のさきがけとなる演説でもあった）。 日本においては1945年10月、政治犯として獄中にいた徳田球一、志賀義雄らが、GHQにより一斉に釈放され、共産党が、合法政党として再出発していた。知らぬが何とか、当時のGHQは、共産主義に隠された牙を理解せず、今風に言えば、クマを世に放ったのである。 その、戦後日本のクマは、GHQを襲おうとする。左派が総出で、2.1ゼネストを画策し始めたのだ。GHQはクマの怖さを知らず、クマを世に放ったことを後悔し、こうして、日本において逆コースが始まった。 足かせとなったのが、お花畑の時期に日本に押し付けた平和憲法だった。結局、憲法を無視して、今度は日本に再軍備を押し付けた。 今日なら、世界がお花畑でいられるはずがないことは、少しでも利口な高校生ならわかりそうなことだが、当時の第一級の頭脳でさえ、それを理解できなかった。否、理解はできてはいたのだろう。しかし、歴史の枷が、政治家らが本来はしなければいけなかったことの邪魔をした。 20世紀以後の混乱の最大の原因を作った第一次世界大戦は、サラエボ事件から始まった。それは、少々おつむの弱かったオーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナント大公が危険日に危険な場所を視察に訪れ、さらには大公夫妻がやさしすぎて、負傷者を見舞うために、運転手が道を間違えたことで成功した。 当時の関係者が必死に大戦化を防ごうと努力をしたが、結局、未曽有の大火事なってしまった。戦後処理では、英仏世論を無視できずに、カイザーを悪者にして追い出し、かのヴェルサイユ条約が結ばれた。必然的にヒトラーが現れ、目の前の敵に翻弄されたチャーチルは真の敵を失い、第二次大戦となった。その後遺症が冷戦を生んだ。 ●矛盾した憲法を抱えて さて日本。ことにサヨクが後生大事に思っている日本国憲法は、以上のような、お花畑の土壌の中で誕生した。その象徴が、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という前文である。 お花畑は、憲法公布後すぐに雲散霧消してしまったが、憲法は変わらずに、ずっと戦後日本を縛り続けた。本来なら、1946年頃には改正しなければならなかったのに。少なくとも前文と９条は、国際状況の変化に合わせて、代えなければならなかったのに。 鳩山一郎内閣の時にその気運はあったが、結局、実行されなかった。以後、本来絶対に行わねばならなかった憲法改正は、禁忌となった。改正発議が可能だった安倍内閣の時でさえ、できなかった。 逆コースに乗れなかった勢力が強かったことも、大きかった。戦前の反動で、今度はマスコミが、逆コースを無視して、左を向いたままだった。 東が正しい、西が間違っている、という論調は、ファクトを無視して言論界から流され続けた。 たとえば、朝鮮戦争は南が先に攻めたという誤ったファクトが流され続けた。例えば、日本評論社刊「日本帝国主義」（藤原彰著）p229では、「（1950年）6月25日、38度線全線にわたって韓国軍が攻撃を開始し、戦端が開かれた」とある。昭和43年から10版にわたって刊行された本である。 つまり戦後20年以上も経過した時期においてなお、このような間違ったファクトが綿々とつづられていた。 サヨクは戦後ずっとお花畑であり続けたが、そうした彼らの論拠となったのが、そもそもお花畑の時期に作られた、お花畑憲法だったのである。 こうしてみると、サヨクがなぜ改憲に反対するのかが、よくわかるだろう。それは、頭の中がお花畑だから、お花畑の時代に作られたお花畑の内容の憲法を後生大事にしたいからである。 | |
★共和制と民主制
そもそも日本の地方自治制度は大統領制なので、共和制であるといえる。共和制＝大統領制、なので。 共和制の担保は選挙である。つまり、有権者（現代では一定年齢以上のすべての自国民男女）による投票でトップが決められる。つまり共和制においては、民意はしっかりと反映されている。 問題は、この民意。実は民意を直接問うことにはさまざまな危険がある。住民（国民）には正直、いろいろな人がいる。成人しているからといって、きちんとした判断力・思考を持っている人ばかりとは限らない。ちゃらんぽらんな人も大勢いる。 民主主義では、どんな人だろうと、すべての人に一票の権利を与える。ある意味これは非常に危険なことで、つまり民主主義は常に、衆愚に陥る危険がある。 衆愚のもっとも大規模な史上例は、第一次大戦後の英仏、就中、フランス世論である。第一次大戦では、フランスでは、135万8000人が死んでいる（第二次大戦より多い）。そのためにフランス世論は、敗戦国ドイツを目の敵にして、厳しい制裁を望んだ。当時の仏首相クレマンソーは、世論を無視することはできず、結果的に、ヴェルサイユ条約の桎梏を生んだ。 当時、心ある人（たとえばケインズ）は、その副作用を心配していた。ドイツにここまでの枷をはめれば、必ず反撃してくるだろう、と。そして、折からの世界不況もあり、ドイツはヒトラーという独裁者を生んだ。結局、フランス世論という民主主義が第二次大戦を生んだ。 当時は、第一次大戦に懲りて、世界はパリ不戦条約という防波堤を築いていた。しかし世論という津波は、それをあっさりと乗り越え、世界を被災させてしまったのだ。ここに世論政治の恐ろしさがある。 また、こうしたことに懲りもせず、第二次大戦後は、世界的に国民投票が広まった。悪いのはナチスだ、日本の軍部だ、と思われ、民主主義こそは正義だ、と世界中から考えられた。なかでも直接民主制こそすばらしい、と考えられ、国民投票がさかんに行われるようになった。 このように、今から80年前には、民意がだいぶ買いかぶられたわけだが、徐々にそのデメリットが明らかになり、国民投票は下火になっていった。それは世界中が、実は第二次大戦勃発の理由が、実は民意をないがしろにしたせいではなく、逆に、民意を尊重しすぎたために起こったことを理解し始めたからである。 最近の国民投票の失敗例としては、英国でのbrexitの例がある。当時のキャメロン首相は、ガス抜きのつもりで国民投票を行った。だが、加熱した世論は、brexitに同意をしてしまった。それは、心ある人ならば、誰もが否定したいことがらであった。 このように、生の民主制は非常に危険なシロモノなのであり、そのために代議制が取られたり、米国の場合などは予備選挙を行うようになった。 山口佐賀県知事の発言は、まさに、以上の事柄を簡潔的に説明している。 確かに、単純に、「佐賀県に新幹線要りますか、要りませんか？」という形で県民投票をすれば、単純に、そりゃくれるんならもらったほうがいい、作った方がいい、といった格好で、間違いなく、要ります、という意見が多くなるだろう。 むろん、実際にはさまざまな前提条件をつけて（たとえば1400億円の県民負担が出るとか、10分くらいしか速くならないとか、料金がいくら上がるとか）の投票にはなるだろうが、残念ながら、そうしたことをいちいち勉強して投票に望む人はきわめて少ない、ということだ。 だからこそ、議会というバッファーが必要となる。県民にはまずは議員を選んでもらい、その人たちに代わって議論をしてもらって結論を出す。 手間暇はかかるかもしれないが、おおむねこの形の方が良い結論は得やすい。代議制は、人類の知恵と言える。 昨今は、首相公選制にすべきだといった、代議制を批判する意見が多いが、私は絶対に、議院内閣制の方が、日本には合っている、と思う。 ●実はメリットが多かった制限選挙 そもそも戦前は、選挙権を持っている人は限られていた。だが、一定以上の税金を納めている人だけに選挙権を与えるという制限選挙制度は、実は、きわめて合理的だったのだ。 日本の近代史を見ても、選挙権が拡大するにつれて、世の中は悪くなり、戦争へと突き進んでいった。（戦前は戦後と真逆で、低い民意ほど戦争支持を訴えていた。たとえば、「帝国政府は爾後国民政府を対手とせず」という近衛内閣声明が出されたのは、「寛大な和平条件では国民が納得しない」という意見が閣議から出されたためだった。） 立候補者にしても、有権者が増えれば、演説レベルを落とさざるを得なくなった。普通選挙法ができて20年後に、日本は敗戦を迎えている。 現在における堕落した民意の歯止めは、実は投票率である。一般的には、投票率を上げよう、という掛け声がよくなされるが、私はこれには反対。なぜなら、政治に関心を持ち、勉強している人だけが投票すべし、と思うから。 技術的には、今なら、スマホで投票させることは可能だろう。しかし、そんなことをすれば、いいかげんな民意がどっと投票することになり、とんでもない民意が生じることになる。だからこそ、面倒ではあっても、わざわざ投票所に足を運ばせるのだ。 便利は危険。昔のようなぼったんトイレなら、断水しても排便できるが、水洗便所が当たり前になった今では、断水すれば、排便もままならない。タワマンはかっこいいが、以前の武蔵小杉のように、電力が止まったらアウトだ。不便なモノ、制度はある程度は残しておかなければならない。 ところで、自民党総裁の党員選挙もまた、一種の制限選挙であると言えよう。少なくとも、自民党内でどのような立場にいる人を総裁にすべきか、という判断においては、さまざまな利害が絡む議員よりも党員が最適である。むろん、大統領選挙ではないのだから、一般国民は論外。 そして今年の総裁選では、まさにこの党員の意思が明確に現れた。昨年の総裁選においても、党員は高市氏を選んでいたが、つぶされた。今年は昨年よりもさらに多い党員票を獲得した高市氏を、さすがに国会議員たちも無視はできずに、最良の結果を生んだのである。 | |
| ■女性は”無能力”の意味-”無能”ではない |