| ★子どもを作らなかった人の老後
その内容は、だいたい以下のような感じ。 ①夫婦がまだ揃っている人たちは、概ね自分の選択に肯定的 ②ただ一部は、60歳代過ぎると、やはり孫がいない寂しさを感じている ③伴侶を亡くした人、生きていても片方が要介護状態の人のほとんどは、子どもを作らなかったことを後悔している 私は、こうしたコメントを読んで、特に③の人は、そんなことは若いころからわかってて当然でしょ、と感じた。したがって、だからなぜ、子どもを作らなかったことを後悔しているの、と思った。 私が若いころから、DINKSという言葉があり、結婚はするが子どもはいらない、という人が一定数いた。子ども不要、という理由は、仕事に打ち込みたい、二人の生活を楽しみたい、自分たちの稼いだおカネを子どもに費消されたくない、そもそも子育てをしたいと思わない、といったことである。 私は個人的には、こうした人たちを、バカだなあ、と思っていた。 人はなぜ結婚するのか？と言えば、愛する人と一緒に暮らしたいから、というのが一番の理由だろう。当然、愛する人とはHをする（この人とならHをし続けてもいいと思うから結婚するわけで。特に女性は）。Hをすれば、多くの人は子どもが生まれる。そうして人類は綿々と命をつないできた。 結婚してもあえて子どもを作らないというのは、こうした人類の歴史を否定することであり、きわめて不自然なことなのである。 私は、人が子どもを作るのは、ズバリ、老後のため、だと思う。 子育ては確かに大変なエネルギーを要する。おカネもかかる。しかし、少なくとも健常児でまともに育てば、自分が年を取った時に、頼りになる存在になる。 社会保障がなかった時代は、多くの人は老後の経済的、介護目的で子どもを生み育てた。今はそういう時代ではなく、こうした目的で子育てをする人は超少数派で前時代的ではあるが、自身が年を取った時の、まともな子どもの存在は、現在でもやはり、強い心の支えとなる。 そういう目的で子どもを育てることは、決して悪いことではない。 年をとっても、①の人は、若いころの状態が今でも継続しているわけであるから、こうした子育ての目的は理解しにくいだろう。しかし、人間には、経験に基づく将来への想像力があるのだから、こうした幸せな立場の人にしても、自分がいつかは必ず③の立場になることは、容易に理解できよう。 そしてその立場になった時（配偶者が死亡した時）、DINKSのほぼ100％が後悔するのである。子どもがいたら・・・と。 平均して数年くらいとは思われる、配偶者死亡後の期間の後悔予防のためにわざわざ長期間にわたる子育てをする必要もあるまい、という意見はあるだろう。 ただ、子どもはあまり好きではない、という人でも、その多くは、実際に子どもができると、やっぱり子どもを作ってよかったと思うらしい。つまり子育ては一種の本能であり（但しそれは、学習を前提としたもの）、DINKSは本能に逆らう存在と言える。 DINKSの人は、二人の生活を選択したくらいだから、基本的には夫婦仲がよい人が多いだろう。だが”子はかすがい”と言われるように、子どもの存在でかろうじて関係が保たれている、仲の悪い夫婦も世には多い。子どものために仮面夫婦を演じ続ける夫婦も多い。 つまり、子どもがいないと破綻するような子あり夫婦よりは、DINKSの方が生活の幸福度が高い、とは言える。DINKSなら、夫婦関係が悪くなったら、即離婚できるだろうから、相対的に幸福度は高くなるだろう。 いずれにせよ、破綻した夫婦関係を続ける人生は間違いなく不幸であるが、そうなる割合は、間違いなく、子あり夫婦の方が高いだろう。つまり、夫婦関係のみに焦点を当てれば、だいたいにおいて、DINKSの方が幸福度は高いと思われる。 だが子育てには、老後のための他にも、さまざまなメリットがある。”子を持って知る親の恩”という言葉があるように、子育ては人間の幅を広げる機会にもなるし、苦労は多いが、DINKSには絶対に味わえない楽しみもある。 DINKSの言い分は、子どもにかける費用は自分たちで費消したい、ということだが、そもそも子どもを持つ多くの人は、子育て費用＝自分たちの費消、という考えである。たとえば大学の学費に何百万円かかっても、それは自身への投資と考える。その分、自身にかける費用は減るだろうが、それを厭うことはない。 ただいずれであれ、子育てをするのであれば、やはり、できれば健康で、良い子に育てたい、という思いは、すべての親に共通しているだろう。 最悪は、子どもから殺されてしまう親もいる（逆もある）。ことに子どもが障碍者の場合、何とも言えない気持ちになる。 ここまでいかなくても、昨今の8050問題のように、いつまでも子どもが自活できず、いつまでも”子育て”が続いて、老後資金がこどもに食われる恐れもある。こうした例を見れば、DINKSからすれば、「だから子どもなんていらないんだよ」ということになるだろう。 したがってここでは、一般論を述べておこう。 ①家族の存在は、子や孫の存在は、ヒトにとっては一番普遍的、あるべき姿である ②だから子どもはやはり、できるのであれば作った方がよい。それも育てられる限り、多くの子どもを ③健常児を授かったことに、神に大いに感謝し、ぜいたくをさせず、わがままを言わせず、一生懸命にわが子を育てる ④きちんと育った子どもは、自身老後には、必ず頼りになる存在になる。 私は仕事柄、病気やけがをした老人を扱っているが、一番不幸だと思う老人は、実は子どもがいない人ではなく、子どもがいても、見舞いにも来ない人である。ただ、昔のことゆえ、DINKSは少なく、生涯独身者がほとんどだと思うが。 基本的に、複数の子どもがいて誰も見舞いにも来ない老人は、子ども自身の資質よりも、親に問題があったと思われ、子育てに成功したとは言えまい。 逆に、本当に子どもが親身になって見舞いに来る老人もいる。こういう老人が一番幸せである。つまり、↓こうなる。 人生の幸福度 子育てに成功した人>>独身者＞子育てに失敗した人 | |||
★誤解を生む数字
 だいたいにおいて、男は家庭では役立たずなので、高齢になって、奥さんから嫌がられて、家に居づらくなって働いている人が多く、女性は逆に、家でやることが多いので、高齢になると、家に戻る人が多い。 おおざっぱにいって、60歳代前半男の就業率は8割、後半が6割、70歳前半が4割、７０歳代後半がだいたい２割であり、女性はだいたいその半分、と考えてよい。 上記サイトの数字は、要はこれらすべてを平均したものなのである。年齢で就業率が相当異なるし、男女差は無視できないので、年齢差、男女差を無視したこの平均はほぼ無意味だろう。 ついでに言えば、さぞ最近、高齢者の就業率が高くなってきたように言われるが、実はそれは、昭和の頃の方が高かったのだ。これは、昭和の頃は、自営業者が多かったためである。  要するに、高齢者は実は昔から、よく働いていたのだ（令和6年5月2日当ミニコラム参照）。 ●平均とは もともと平均が意味を持つのは、平均値≒中央値≒最頻値となる場合である。たとえば、試験の得点などがそれに当たる。 通常、生徒の学力は正規分布を取る。これは高校など、選抜されたメンバーでも同じで、だいたい母集団の学力は、それぞれの高校のレベルの応じたものとはなるが、優秀な高校であろうと底辺であろうと、だいたいは正規分布となる。 教師はしたがって、試験結果が正規分布となるようなレベルの問題を出す。集団に対して、問題レベルが低すぎても高すぎても、試験結果は正規分布にはならず、したがって、学力を試験に反映させることができない。 よく引き合いに出されるように、年収や資産は平均を出す意味がない。それぞれ正規分布にはならず、両者はだいたい以下のような図のようなカーブとなるから、前者の場合は中央値や最頻値が意味を持つし、後者の場合、３つの指標はいずれも無意味となる。   高齢者の就業率の場合、下図のように、右肩下がりのカーブになるので、そもそも80％から20％以下へと幅広い年齢層で就業率が低下していくことの平均を出す意味合いがないことが理解できるだろう。  そもそも、７０歳代後半以降ともなると、働き手の大半は自営業者であり、勤労者とは労働環境がまったく異なっている。この世代の働いている人≒自営業者はそもそも、労働が生活の一部となっており、そもそも働いているという感覚がないだろう（むろん、一部の自営業者には、年金が少ないために、老体に鞭打って働かざるを得ない、という人もいるだろうが）。こういう人と、勤労者を同じ土俵で考えることの意味合いも、あまりない。 引用記事を、高齢者の就業実態を知らない人が読めば、「高齢者は4割が働いているんだ＝6割は働いていない」という多大な誤解を招くだろう。それは確かに正しくはあるのだが、世の実態はそれではつかめないのである。平均の誤謬と言える
 だいたいにおいて、男は家庭では役立たずなので、高齢になって、奥さんから嫌がられて、家に居づらくなって働いている人が多く、女性は逆に、家でやることが多いので、高齢になると、家に戻る人が多い。 おおざっぱにいって、60歳代前半男の就業率は8割、後半が6割、70歳前半が4割であり、女性はだいたいその半分、と考えてよい。（70代後半になると、そもそも統計がほとんどない）。 上記サイトの数字は、要はこれらすべてを平均したものなのである。年齢で就業率が相当異なるので、この平均はほぼ無意味だろう。 ついでに言えば、さぞ最近、高齢者の就業率が高くなってきたように言われるが、実はそれは、昭和の頃の方が高かったのだ。これは、昭和の頃は、自営業者が多かったためである。  要するに、高齢者は実は昔から、よく働いていたのだ（令和6年5月2日当ミニコラム参照）。 ●平均とは もともと平均が意味を持つのは、平均値≒中央値≒最頻値となる場合である。たとえば、試験の得点などがそれに当たる。通常試験は、母集団の学力を測るために行われるので、母集団が正規分布を作るようなレベルの問題が出される。この場合、母集団の能力と問題レベルに応じた平均点（通常はだいたい60点が目途にされる）が出るが、それは母集団全体の学力をよく示していると言える。同じ問題で、平均点が低い母集団は逆のそれと比較して、学力が低い、と認定できる。 よく引き合いに出されるように、年収や資産は平均を出す意味がない。両者のだいたい以下のようなカーブとなるから、前者の場合は中央値や最頻値が意味を持つし、後者の場合、３つの指標はいずれも無意味となる。   高齢者の就業率の場合、下図のように、右肩下がりのカーブになるので、そもそも80％から20％以下へと幅広い年齢層で就業率が低下していくことの平均を出す意味合いがないことが理解できるだろう。  引用記事を、高齢者の就業実態を知らない人が読めば、「高齢者は4割が働いているんだ＝6割は働いていない」という多大な誤解を招くだろう。それは確かに正しくはあるのだが、世の実態はそれではつかめないのである。 | |||
★原発増設から核武装へ
戦後の偏向教育を受けてきた平均的日本人においては、核武装など、確かに考えもしない選択肢ではあろう。しかし、日本を取り巻く諸外国の現実を見ると、核武装は決して突飛な考えではないことがわかる。 日本の安全保障の歴史を見てみる。 元々四方を海で囲まれている日本は、諸外国と比べれば、安全保障の概念は薄かった。少なくとも19世紀前半までの技術であれば、日本を組織的に攻めてくる国は皆無であった。また、江戸時代にはほぼ自給自足ができていたので、シーレーン防衛などという発想もなかった。 だが、19世紀後半になると世界は一変する。いわゆる第二次産業革命で、たとえば移動手段は鉄道、蒸気船となり、電気通信が発達し、もはや日本は、海に守られた聖域ではなくなってきた。また、貿易依存度が高まり、シーレーン防衛の必要性も出てきた。 とりあえず江戸幕府は開国に傾き、明治維新以後もその方針は拡大されたが、どのようにして国防をしていくかは、未知数だった。 結果的に、明治期に、周囲の大国と2回の大戦争を戦うことになり、莫大な血が流れた。最終的には、朝鮮半島は何とか日本の圏内に入ったが、中国大陸の状況は不安定なままであった。また、日露戦争以降、対米関係も悪化していた。 本来であれば、日露戦争後に、満州を米国資本に任せるべきだった（桂・ハリマン協定参照）。これには反対意見も多いようだが、私は直観的にもやはり、米国人ハリマンの提案に乗った元老らの智恵がひとつ上だったように思う。日本は抱えきれない荷物を背負ってしまったのだ。 米国資本を断った以上、日本は自力で満州を防衛しなければならなくなった。それが結局は満州事変につながった。 満州に米国資本が入っていれば、日本は戦後の日本同様、とにかく米国と仲良くさえしていればよかったわけで、米国がロシアの防波堤となったはずで、戦後の日米安保が一足先に実現されていたわけである。当然、大東亜戦争など、起こるべくもなかった。 さて、とにかく日本が自力で大陸の国防をなさなければならない以上、満州国建国は必然であったわけだが、防波堤には、またさらなる防波堤が必要だった。 これはさすがの石原莞爾も見落としていた（というか目をつぶったのだろう）点であり、結局のところ、中華民国、欧米資本の聖域に踏み込んでいかざるを得なかった。虎の尾を踏まざるを得なくなったのである。 結局のところ、国防の防波堤は、作ればよいというわけではなく、管理が大事となる。戦後の防波堤である日米安保にしても、そのために、日本中に米軍の駐留を許容せざるを得なくなり、沖縄にはいまだに多くの米軍基地がある。それは、サヨクには理解不能な、国防のための防波堤（日米安保）のための防波堤なのだ。 ところで戦後の日本は80年間、核の傘に入る日米安保を軸にして何とかやってはきたが、今後も核を拒否した状況を続けることができるのか？ 核廃絶をすれば世界が平和になるという被団協の主張は、確かにノーベル平和賞は受賞したが、国際政治の目から見れば、まったく説得力はない。少なくとも対米依存度を減らしたいと主張するのであれば、核武装は視野に入ってくる。 亡き安倍元首相は、晩年に核共有論を主張していた。安倍氏ならば、日本は将来的には核武装が必要と考えてはいただろうが、いきなり核武装はさすがにハードルは高く、だからこそ、その前段階を主張したのだろう。安倍さんが生きていれば、参政党のここまでの躍進はなかったと思うが、彼の死はつくづく、日本に多大なマイナスとなったものだと思う。 ●原発増設から核武装へ 3.11原発事故後、日本中が脱原発一色となった。竹田恒泰や西尾幹二といったかなり右寄りの人までが脱原発を主張し、当時の状況では、今後日本は、ドイツのような脱原発国になっていくのではないか、と思われた。何せ自民党でさえ、「原発依存度を可能な限り低減」としていたのである。もしも2012年に安倍自民党が復活しなければ、日本はドイツの二の舞になっていたことだろう。 だが事故後10年以上が経過し、原発アレルギーも落ち着き、再エネが当てにならないことも明らかになり（わかる人にはわかっていたのだが）、電力需給の逼迫も予想されるようになると、世は一転して、脱・脱原発となっていった。以前はすべての野党が脱原発であったが、国民民主は原発増設にまで踏み込み、フェードアウトを主張していた維新の会も原発推進で、脱原発政党は立民、れいわ、共産党のみとなっている。およそ10年前には考えられなかった状況である。 このように、状況は変わるわけで、原発よりももっと長いスパンである核武装も、将来的には認められるようになると私は考えている。 電力に関して言えば、一部のサヨクには、電力需要を減らして、昭和30年代に戻ってでも原発を廃止する（エアコンや冷蔵庫を使わない）という主張さえあったが、多くの人にとって一定以上の電力は必須であり、それは再エネでまかなうことはできず、結局、原発に頼らざるを得なかった。 平和にもこの考えはそのまま当てはまる。一部のサヨクでは、核兵器絶対廃絶論（原発即廃止）を唱え、世界平和（電力需要）には実は目が言っていない。彼らにとってはとにかく核をなくすことだけが目標であり、その結果は一切考察しない。 だが多くの人びとにとって、究極の目的は、戦争のない世界（電力需要が満たされる世界）であり、核廃絶（脱原発、再エネ促進）はそのための一手段でしかない。 そして、再エネ促進が必ずしも電力需要を満たさず、それどころか電力供給の不安定化や電気代高騰を招いてしまったことが理解されるや、政治が原発回帰に舵を切ったように、核廃絶がかえって世界平和の妨げになることが、やっと日本人にも理解されるようになった。 先の大戦を経験した日本人で、戦争を欲する人間はいない。それは参政党もまったく同じ。そして、今後の日本が平和を保つためにはどのような政策を取ればよいのか？ そろそろ核廃絶の幻想に幻惑されることなく、現実的な策をさぐる時期に来ているのだ。 今回の参政党の躍進は、国民、ことに若者が、そうした政策変更の必要性を、本能的に感じていることが主因であろう。若者がバカなだけでは決して、ない。 | |||
★ドイツの脱原発の影響について-イタリア化したドイツ
 ドイツでは、2011年の日本における原発事故を契機として、メルケル首相（当時）の主導のもとで、脱原発政策が取られ始めた。さらには、再エネ促進もそれ以前からなされており、ちょうど2011年頃で原発と再エネ発電量は逆転している。その後ドイツは、脱原発を粛々と進め、2023年を最後に、原発出力はゼロとなっている。対照的に再エネは2011年以後も順調に伸びてはいるが、ここ数年はほぼ頭打ちのようである（上図）。 メルケル氏は、脱原発をドイツに導入するに当たり、①電力消費量の10％削減、②火力発電能力の1000万～2000万ｋWの増大、を要求していた。 ①については誰しも直観的にわかるだろうが、②はなぜなのか？脱原発をし、再エネを拡大するなら火力発電も減らすべきではないのか？ 実は、2011年以降、ドイツの火力発電量は確かに減少している。だが、発電能力は増えているのだ。その理由は、再エネが不安定電源であるため、火力発電によるバックアップに欠かせないためである（つまり火力発電所の稼働率は落ちる）。 ただ発電能力は、実際にはメルケルの基準には到底達していない（下図）。  No.359 ドイツにおける電力部門の脱炭素化政策 - 京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座より引用者作成 ちなみに、①についても、10％削減目標には到達していない（下図）。  つまりドイツは、メルケルの基準に達しないままに、脱原発を完成させてしまったのである。では、それはどのような影響を及ぼしているか？ 如実に現れたのが、電力の輸入・輸出バランスの変化である。ドイツはこれまでずっと、再エネの増大もあって、電気余り、の状況であり、したがって、輸出超過状況が長く続いた。だが、ここ1，2年は、上記のように、節電が思うように進んでいなかったのと、バックアップの火力発電能力が不足していたために電力の需給バランスがタイトになり、輸入超過になってきている。だいぶ前に脱原発をしたイタリアと同じ状況である（イタリアはずっと輸入超過が続いている）。   要するに、今後のドイツの電力事情はイタリア化することであろう。（定量的にはともかく、少なくとも定性的には）。つまり常に電力は不足している状況。 さらに都合が悪いことに、ドイツで作られた電力の多くは、再エネによる質の悪い再エネ発電である。この点、まだイタリアの方がましと言える（イタリアのVRE発電率29%、ドイツ46％。イタリアは火力発電国なのだ）。 つまり、メルケルの基準が守られないままに脱原発化したことで、電力不足に加えて、発電の不安定化が加速され、ドイツはさらに安い値段で電力のダンピングをせざるを得なくなり、電気料金は今後ますます高騰し、ドイツ経済を圧迫していくことだろう。 ドイツはイタリア同様、なまじ、フランスという原発大国が近隣にあるがゆえに、それを頼っての脱原発を行った。だがこのことは、化石燃料を輸出しながらEV化を進めて環境問題を改善していると言い張るノルウェーと同じ矛盾したやり方であり、自分の玄関だけを掃き清めてごみを減らしたというようなものである。 つまり、自国のみで脱原発を行ったところで、自己満足以外の何物でもない。どうせやるなら、欧州全体を脱原発化すべきだろうが、そうしたら、欧州経済が立ち行かなくなる（奇妙なことに、ドイツはそれをわかっていながら脱原発を行なったのだ）。 その点日本は、なまじ電力の輸出入ができないがゆえに、原発を残すことができた。よかった。 P.S. ところで、日本国内の,ドイツの脱原発政策を支持する人たちは、これまで,ドイツの電力輸出超過を理由に,ドイツは正しい、と主張してきた。今後、ドイツがイタリア化した場合、彼らはどのように弁明するのだろうか？ | |||
★障碍者親のホンネ
私がある離島に赴任していた時に、9歳の障害児が入院していたが、コミュニケーションが取れないどころか、人工呼吸器を使ってやっと生きている状態で、家族は他の島に済んでいたが、私が知る限り、少なくとも亡くなるまでの数年間は、家族が見舞いに来たことはただの一度もなかった。つまり、後者の部類。 かといえば、人工呼吸器管理でも、医療者がびっくりするくらいに、細かいケアをする親もいる。 とかく世間では、前者の親を親の鑑であるとし、絶賛を惜しまないが、実は、、後者の親も少なからずいる。実際、障害を持つ子どもが亡くなってほっとした、というのは割と聞く話だし、亡くならないまでも、施設に入れられてほっとしたという親はたくさんいる。 重要なことは、こうした親を非難しては、決していけない、ということ。 障害の程度や種類にもよるが、障害児を生んだ親は、多かれ少なかれ、健常児を生んでいればする必要がなかった苦労をしている。そうした中で、自らの心を守るために、どうしても子どもを見放さざるを得なくなる親は、一定数、出てくるわけである。そうした親は、決して鬼であるわけではない。 つまり、そうした親の態度は、裁判長のように、「了解可能」なのだ。 犯人は、障碍者施設に勤務しながら、そうした親たちの心に、惹かれてしまったたのだろう。障害児を持ったことによる苦労、それを「了解可能」とまで思ったくらいなら問題はなかったが、歪んだ正義感から、障碍者を亡きものにしてしまうことが、そういう親への恩着せと思ってしまった。 そして実際に、犯人の行動を支持する親もいたわけだ。おそらくは、表には出ないだろうが、同じように感じた被害者の親は他にもいただろうし、障害児の親のみならず、一般人ではあっても、正直、犯人の犯行を100％は非難できない、と感じた人もいただろう（実は私もその1人ではある）。 現在は、分娩前に、ある程度の障害児のスクリーニングができるようになったが、たとえば、染色体異常検査を行った人の9割は、異常が見つかれば中絶を選択する。むろん、スクリーニングを受ける人自体、すでに障害児に対するある程度のバイアスがかかっているわけであるが、やはり、出征前からわが子の障害を受け入れられる人は、非常に少ないだろう。 多くの人はしたがって、当面の期間は、障害を持ったわが子を受け入れきれない。 私は正直に言うが、わが子の運動会で、障害を持っていて他の子どもと同じように競技ができない子どもを見て、「あの子が自分の子どもでなくてよかった、自分の子どもだったら、暗然たる気持ちになったなあ」、と思ったものだ。 多くの親は、それでも、当初のネガティヴな気持ちを乗り越えて、障害児を育てていくのだろうが、やはり、すべての親が前向きになれるとは限らないのだろう。一定数の父親は逃げるし、ずっとネガティヴな気持ちで子育てを続ける母親は、実際にはかなりいるのではないか？ この事件は、そうした親、あるいは世間の、黒い気持ちをえぐりだした、と思う。みんなは奇麗ごとばかりいうが、実はそうではない、という意見は、言いにくいことではあろうが、無視してはいけないと思う。 | |||
| ★年収分布と資産分布の乖離について-なぜ生じるのか？
次に濃い灰色は50歳代の正規社員の所得分布である。当然のことながら、年齢が上がるにつれて、平均年収がぐっと増えることがわかる。それでもやはり、正規分布にはほど遠く、平均値＞中央値、最頻値であることには変わりはない（50歳男子の平均値624万円、中央値550万円）。  50代の平均年収【男女別推移・東京大阪名古屋など都道府県別推移】｜平均年収.、２ 所得の分布状況｜厚生労働省より引用者作成 所得の場合、人間の能力、運等で、資本主義社会において、国家による再分配政策が行われた後でも、絶対に正規分布にはならない（学生時代の学力格差は概ね正規分布になることを考えると、興味深い）。 基本的に上記のようになり、通常、平均はあてにならず、それよりもかなり低めになる、中央値や最頻値が問題になるわけである。言うまでもなく、それは、極端に所得が高い人が少数いて、そうした人が平均所得を押し上げるため。 こうした曲線は、人間社会ではもっとも自然な形であると考えられ、たとえば共産主義社会はこれを、極端に狭い正規分布にしようとしたわけだから、社会が歪むのは当然と言える。 次のグラフは、ほぼ資産形成期を終了したと考えられる、６０代の資産状況を示している。これはまさに、逆正規分布を示している。すなわち、両極端、金融資産非保有者と３千万円以上保有者が一番多い。 よく、高齢者の平均資産はいくらぐらいか、という問いがあるが、こうした実態をみると、そもそも平均の意味がないし、また、所得では非常に重要な要素となるメジアンやモードといった概念も無意味であることがわかる。 ●所得分布と資産分布グラフはなぜ異なるのか 普通に考えれば、所得分布と資産分布グラフはだいたい同じ曲線となるように思うだろう。仮に、すべての人の消費性向が同じだとすると、両曲線も同じになるはずである。 だが実際は、同じどころか、似てもいず、真逆。なぜだろう。 当然それは、長年のトータルでは、消費性向に相当な差異があるため、と考えられる。その差異は個人の性格、育ってきた環境が重要なポイントであり、所得額そのものはあまり関係がない、ということが重要である。つまり、所得が低くても消費性向が高い人はいるし、逆に、高所得者でも消費性向が低い人がいる。当たり前だが、前者は金融資産がないか少なく、後者は多い。そしてそのために、必ずしも所得が低い人が金融資産が少ないとは限らないし、逆もしかり、である。 要するに、消費性向の差異が、結果的に上記のグラフを生むことになる。欲望を抑え、将来のためにコツコツと貯金をし、投資などで増やした人は、仮に所得がさほど高くなくても、かなりの人が、3000万円以上の資産が築けたことだろう。 よく、政治が悪いから資産が築けない、と言って文句を言う人がいるが、それは間違いであることがわかる。つまり、資産が築けるかどうかは、国家ではなく、個人の自己責任なのだ。 上記グラフによれば、60代の夫婦がそろった世帯のおよそ半数が、1000万円以上の金融資産を有していることがわかる。むろんこれだけでは老後の生活には十分とは言えないが、ここまでの資産を築けた人は、年金もそれなりにはあるだろう。少なくとも、生活のためだけに働かざる状況ではなさそうである。 60代夫婦の約半数は、それなりの資産＋年金があり、多少の労働で暮らしている。こうした人たちは、やはり若いころから、欲望を抑え、コツコツと資産形成に励んできた、要は勝ち組である。それは、自助努力の賜物に他ならない。 逆に、単身者だと、3割が無資産、半数が500万円以下の資産しかない。こうした人たちがしかし、若いころからの所得が極端に低かったとは考えられず、消費性向が高かったがゆえに、要は、老後のことなど考えずに、若いころから欲望のままに、費消を続けた結果である。 上記のグラフで興味深いのは、保有金融資産200万円以上レベルになると、単身者と所帯持ちの差異がなくなるか、逆転すること。夫婦そろって経済観念のない人も一定数、いるのだ。 消費性向は、たとえば日にち単位だとさして個人差はないように見える。しかし、一日100円でも、意識して貯金する人は、一か月で3000円、一年で約4万円弱、30年で100万円以上の差異となる。これを福利で運用したら、何百万円の差となる。 わずかな消費性向の差でも、何十年の積み重ねではものすごい差異となり、その結果が上記のグラフ。 将来年を取れば、思うように働けなくなることなど、人間であれば、誰でも想定はできる。そこまでは万人が同じなのだが、そのために、老後のために、日ごろから若いころから貯蓄ができるかできないか、ちょっとした努力の差異が、上記のグラフを作るのだ。 | |||
| ★延命重視か、QOL重視か 医療行為の目的には、延命とQOL改善の二種類がある。診療科で考えると、内科、外科は延命重視、整形外科その他のマイナー科目がどちらかというQOL改善重視となる。 延命とQOL重視は、基本的にトレードオフ関係にある。つまり、前者を重視すれば、後者が犠牲になることが多い。また、機会は少ないが、後者を重視することで、前者が犠牲になることがある。 医療の歴史は、基本的にQOL＞延命だった。病気や傷病の苦痛から逃れるために、おそらく医療は始まった。苦痛除去（QOL重視）がその主たる目的だったが、その結果が延命につながった。 たとえば、外傷できちんと処置を行えば、けがの疼痛は軽減し、結果的に延命が可能となる。おそらく遠い昔は、目の前のQOLのことで、医療は精一杯だったことだろう。 しかし人類は、医療によって、延命が可能であることを理解するようになる。特に戦後になって、抗生物質治療が始まると、たとえば、不治の病だった結核が治癒するようになり、その症状によるQOL低下が改善されたことに加え、劇的な延命効果が発揮された。戦後の大幅な平均寿命の伸びの医療面の主因は何といっても、結核をはじめとする、感染症対策の著しい進歩である。 ●延命重視・QOL無視のがん治療 ところが、医療によって大幅な延命が可能であることがわかると、今度は医療の比重がQOL対策から延命へと、大きく舵が切られることになる。ターゲットはがん、つまり、医療の比重は感染症から悪性腫瘍へと移行した。おそらくはこの移行期は昭和40年代頃と思われる（がん検診の始まりは、1960年とされている）。 感染症と異なり、がんの場合は、早期発見が重視される。また予防もある程度は可能である。要するに、がん治療の場合、QOLはまったく無視され、延命一本ということになる。なぜなら、早期がん患者のQOLは正常であり、改善させる必要がないから。 そして、全国的にがん検診が普及し、早期発見・早期治療（主として手術）があまねく行われるようになり、おそらくは、それなりの延命効果は出ているのだろう。 ただ、がん治療には大きな陥穽があった。すなわち、治療によるQOLの低下である。そしてこれは、一般には非常に理解されていない概念である。 早期がんの場合、基本的治療は手術となるが、術後は基本的に、QOLが低下する。手術によっては、人工肛門などが造設されたり、声帯摘出などがなされる。そうなれば、その人は、延命のために、大幅なQOL低下を受け入れなければならない。ここまでではなくとも、早期がんの手術後にQOLが改善することは100％ない。 進行がんの場合、QOL改善のための姑息的手術が行われることがあるが、その場合、がん治療の本来の目的である延命には、結びつかない。 つまりがん治療の場合、完璧に延命効果を発揮するためには、その代償として、必ずQOLの低下を受け入れなければならないという、矛盾が存在するのである。 一般人はこのことが理解できないようで、たとえば大橋巨泉は、とにかく悪いことは切ってくれ、の一点張りで、QOLの低下には何らアタマがいかなかったらしい。 もともと日本の外科医のマインドが、延命一本であり、QOLの低下には無関心な人が多かった。たとえば欧米では、直腸がん術後の性機能低下に強い関心があるが、日本人や日本の外科医はほぼ無視してきた（最近はそうでもないが）。 ●どちらもある循環器・脳外科治療 循環器治療はここ数十年は外科以上にその進歩が著しい。がん治療が延命一本なのに対して、、循環器治療の場合、QOLと延命の両要素を持ち合わせている。 たとえば、90歳のおばあさんがペースメーカー植え込み手術を受けるとする。彼女の治療の主たる目的は、多くは突然死を防ぐための延命処置だろうが、心拍数が足りないがゆえに心不全状態であった（労作時息切れなど）のが、治療によって心拍数が改善し、心不全症状も改善し、QOLが改善する効果も期待できる。私の患者さんでも実際、そういう人がいた。 私自身は、年寄りの延命には否定的であるが、ペースメーカー植え込みでQOLが改善するするのであれば、その治療は、意義あるものと考える。 その他の治療法でも、循環器科の場合、やはり、QOL改善と延命の両方の目的があるが、循環器科医はどちらかというと、後者を重視している感じがする。 脳外科の場合も両者の要素がある。たとえば、最近、急性硬膜下血腫で続けて二人の若いボクサーがなくなったが、彼らの治療目的は当然のことながら、延命である。そもそも意識がないのだから、QOLのへったくれもない。 脳外科は、外傷の場合はこのように延命一本だが、腫瘍の場合は、QOLと延命の両者が問題となる。なぜなら、脳腫瘍はがんとは異なり、ほぼ全例、患者を苦しめる症状が出現し、その後に治療が始まるから。治療の目的はむろん、延命ではあるが、QOLも同時に改善する。 要するに脳腫瘍はがんとは異なり、無症状期からの早期発見の概念がないのである。 脳ドックがあるじゃないか、と言われるだろうが、その目的はくも膜下出血の原因となる動脈瘤の発見にある。 そしてここにこそ、脳外科医は言わない、一般人はごまかされる、動脈瘤治療の最大の問題点が存在する。 脳動脈瘤は基本的に無症状であり、これがいきなり破裂してくも膜下出血が発症する。だから検診でこれを事前に発見して治療すれば、くも膜下出血が予防できるという理屈だが、実は治療はかなりリスキーであり、かなりの人に、麻痺が残ったりする。 要するに、脳ドックはがん検診の極端バージョンなのだ。がんの場合、早期がんはかなりの確率で進行がんへと発展していくが、動脈瘤の破裂確率は年1％以下と言われている。 くも膜下出血は、発症年齢が一般のがんよりも若いので、だからこそ延命重視となるわけだが、治療によるQOL低下が現在においても無視できず、がんよりもその重症度は比較にならないほど高いので、いまだに政界がない分野だと言ってよいだろう。ちなみに私は絶対に脳ドックは受けないし、知り合いや患者にも勧めない。何気なく受けた検診で、人は大変な重荷を背負うことになるわけで、知らぬが仏、なのだ。人生、なんでもわかればよいわけではないのだ。 ●QOL一本の整形外科 整形外科の場合、骨腫瘍を除けば、ほぼQOLを低下させないことが、その治療目的の大半である（ことに骨折）。 現在、もっとも患者数が多いのが、年寄りの骨折、ことに大腿骨頸部の骨折である。 この場合、何歳であろうと、手術を行う。私はこれまで、101歳の女性の手術をしたこともある。 その目的は、そこに延命はゼロで、あくまでもQOL重視だから。骨折は当然のことながら、めちゃくちゃな痛みがあるために、いくら老人だからといって、そのまま死ぬまで放置しておけ、というわけにはいかない。何歳であろうとも、適切な治療をすべきであり、それが手術である。 手術によって年寄りは、骨折の疼痛から解放され、ある程度元気であれば、リハビリをして、QOLの低下を最低限に抑えることもできる。 がん手術については、その目的はQOLではなく、延命であるため、たとえば無症状の80歳代の年寄りに手術を受けさせること自体が、いろいろ議論がある。ことにもともとのADLが高くない場合、具体的には、特養に入所中の年寄りなどに早期がんが見つかった場合（そもそもこういう人たちに検診を受けさせることに疑問があるが）、手術をすべきかどうかという、問題が出てくる。しないという選択肢もある。 骨折手術の場合、こういう疑念はない。QOLだけの問題で、延命はどうでもよいので、何ら迷いなく、手術療法を選択する。 | |||
| ■女性は”無能力”の意味-”無能”ではない |