40歳の玉鷲が頑張っている。先日は、横綱大の里を倒して、史上最年長金星を挙げている。出場回数だの連続出場回数でも歴代トップクラスではあるが、何と言ってもすごいのは、40歳でなお、幕内上位の地位で長く取っていることである。
40歳力士自体は、過去にもたくさんいる。しかし、私が調べた限り、40歳の時点でこの地位にいたのは、同じくモンゴル出身の旭天鵬だけである。
私は、玉鷲や旭天鵬に、我が医師人生を重ねる。医師は、一般人よりは高齢で働く人が多く、80歳、90歳くらいでも働いている医師はかなりいる。しかし、医師の場合、高齢で働いているとはいっても、そのほとんどは老健の管理医師だとか、半日の外来だけとかで、若い頃のように働いている医師は、まず見たことがない。やはり力士と同じで、年と共に体力、知力、気力が衰えていくのだ。
つまり多くの高齢の就労医師は、力士でいえば、幕下以下の地位で働いている。
私はそんな中で、医師の旭天鵬、玉鷲をめざしている。つまり、彼らが高齢になっても幕内上位という過酷な地位で活躍したように、高齢になっても、救急医療、当直、手術といった、過酷な勤務をこなしていこうと思っているのだ。
私はもうすぐに66歳になるが、今のところ、若い頃と同じ分量の仕事をしている。週に1回（今年3月まで2回していた）の当直では、一晩に平均して、２～３台の救急車が来る。そのたびに起こされる。その他、walk
in受診、病棟急変、看取りなどでも呼ばれる。勤務時間は32時間連続勤務となる。その他、適宜手術もこなしている。その頻度やレベルも、若い頃と変わらない。
経済的には、完全に引退するか、楽な業務に移ってもよいのだが、おそらくそういう生活は、耐えられないだろうと思う（笑）。つまり、いろいろ苦労が多くとも、現在の生活を可能な限り、続けていきたいと思う。
玉鷲もそうだろう。記録にこだわるわけではないだろうが、最年長金星を獲得し、あと2場所でも務めれば、旭天鵬の引退年齢を抜く。彼はおそらくその記録更新を狙い、可能な限り、幕内上位での取り組み継続を望んでいることだろう。
無論、他の高齢力士のように番付が下がってもよいというのなら、彼はまだまだ取れるだろう。だが、旭天鵬が、最後は、十両陥落が決定的となって引退したように、少なくとも幕内を保てなくなれば、彼はやはり、いさぎよく引退するだろう。
私も、玉鷲や旭天鵬を見倣って、医師として、できるだけ幕内上位で相撲を取れる実力を維持して、一日でも長く、今の仕事を続けていきたいと思う。ただ、完全引退するつもりはないので、序二段、序の口レベルの医療しかできなくなっても、”力士生活”は続けるだろうが・・・
| ★頑張れ！玉鷲-おじさんの星
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★衆愚は江戸時代から変わらない
意次は、局地で成功した政策を国家政策にしようとした。そのためには、自身の政策を一体となって行うスタッフが必要で、（おそらくは私心は抜きに）自らの息のかかったスタッフを集め（当然息子もその1人）、田沼派を築いた。 意次はしかし、いわゆる成り上がりであったために、周囲からのねたみ、反感を買った。また、意次は最終的には日本人全体の生活レベル向上を考えてはいたのだろうが、そのためにはまず、幕府財政の建て直しが必要であり、結果的にその段階で精一杯であった。 意次は、相良藩での財政改革では殖産興業政策が軌道に乗り、減税をすることができたが、国政においては規模も大きく、彼の趣意通りにはいかなかったのだ。 国政において彼のやろうとしたことは、相良藩の改革同様、国中の殖産興業政策で、流通・消費が活発になることだった。 ●生産依存から流通消費依存経済へ それまでの経済は、生産に依存していた。始めに生産ありき。課税はだからそこにしかかからなかった。年貢である。流通・消費は規模が小さかったので、そもそも課税の対象にはならなかった。 それは、原始時代のヒトの生存とあまり変わらない。生きるために必要なモノを作る。それを分配する。生産物に応じた人数しか生存できない。生産力が経済を支配していた。 おそらくは全人類的に、17～18世紀が経済の転換点だった。それまでは供給が需要を規定していたのが、需要が供給を支配するようになったのだ。それは、おそらくはさまざまなイノベーションの結実によって、人類の生産性が上がったためだろう。つまり、需要に応じた生産調整が可能になっていき、これだけのモノが今あるから買え！から、これだけ買うからこれだけのモノを作れ！という経済に、変化していったのである。日本ではこれが、18世紀中ごろに出現した。 意次は、こうした社会の変化を敏感に察知し、ならば上からの殖産興業で流通・消費を拡大し、さらにはそちらから税金を取ろうとした。経済のパイが拡大すれば、実質増税になっても、民は困らない、という発想である。 それは、現在で言えば、国民民主の発想に近い。他の野党は始めに減税ありき、なのだが、国民民主は経済のパイ拡大を主眼においている。ただ国民民主は、選挙対策のために、はじめに減税ありき、としており、減税→殖産興業というイメージであり、意次の政策とは逆ではある（意次の場合、殖産興業がメインで、減税はできうれば・・・程度。結果的に増税になるかもしれない） そして、相良藩という小規模経済において、その実験は成功した。だが国家レベは・・・ ●意次の不運 意次の以前までに、このように経済が順調に成長していたが、不運にも彼の時代には天災が続いた。天明の飢饉も起こった。当然、全国のコメの生産高は激減し、これはいわば、歴史のコマを一気に戻すことになった。殖産興業は、供給の安定を前提にしていたわけで、その供給力が不安になったわけだから。 つまり意次は、殖産興業の前提が壊れた状態でこれを行わざるを得なくなった。 飢饉になれば、当然その供給が減るわけだから、コメの値段が上がり気味にはなる。しかし、なまじ流通経済が発達しているから、それに便乗して値上げがなされたり、コメを秘匿してさらなる値上げを待つ輩なども現れる。よって、実物経済以上の値上げも起こる。 いずれにせよ、需要が生産を支配することが前提である殖産興業は、生産が需要を規定する状況でうまくいくはずがない。 そしてこれが、すべて意次のせいにされた。 冷静に考えれば、諸悪の根源は気候であり、意次ではない。だが庶民は、目に見える敵を作ろうとし、さらには「べらぼう」ではその煽動者も描かれた。煽動者がいると、民衆は容易に暴徒化し、意知は殺されることで、父親の代わりに、民の攻撃を一斉に受けることになった。生きている意次よりは死んだ意知の方がターゲットにしやすい側面もあったかもしれない。 ●殺した方がヒーローになる衆愚 さらに「べらぼう」では、最初に石を投げた男が、殺した佐野政言を世直し大明神とする幟を掲げ、これを見た庶民はこぞって、殺人者をヒーローに祭り上げた。 田沼意知と佐野政言への民衆のこうした態度こそは、私にはつくづく、衆愚を感じさせる。人々は、田沼親子が、実はいかに最終的には民衆の安寧を考えていたか、を理解できなかったのである。 こうした衆愚は、あまり改善もされることもなく、今日まで続いている。たとえば、私は特に石破首相を応援するわけではないが、彼は確かに、田沼親子のように、国民のためを思って働いてきた政治家であるとは思っている。だがそれはなかなか国民に伝わらない。彼が、かなりの誤解を受けてきたことは事実である。 たとえば、就任直後に行われた昨年の衆院選においては、敗北の責任はほぼ彼にはなかったことだろう。その主因は、彼とは無関係な、裏金問題だったわけだから。また大きな観点からすれば、裏金問題があそこまで自民党を痛めつけるようなものではないことは明らかで、折からの物価高などの原因まで、自民党、石破首相の責任にされてしまった。首相はまさに田沼親子だった。 今回の参院選にしても、自民党の敗因は要は、減税を訴えなかったことだった。また先ほど、意次の政策は現代の国民民主と書いたが、国民民主は前回、今回と確かに選挙では支持はされたが、玉木代表の真意が理解されて勝ったとは思えない。やはり、減税、手取りを増やすというあたりが支持されたわけで、彼の言う殖産興業的側面は、ほとんど理解されていないままだった。 要するに、減税派は佐野正言であり、令和の国民もまた、佐野を大明神、減税大明神としたわけである。 | |
★宇宙旅行なんていつまでも大金持ちの道楽
人類はどこまで進歩するのか。19，20世紀に人類が歩んだような長足の進歩は、21世紀にも続くだろう。このように考える人は、結構多いようだ。それも、知的レベルが高い人にこそ、多い。 イーロン・マスクは、2016年に、2025年までに人類を火星に到達させる、と言っていた。テレビに出ていた日本人のある学者も、2050年には火星旅行が実現する、と言っていた。 まあ、夢をみるのはいいが、影響力のある立場の人であれば、その実現性はよく吟味して発言してもらいたい。 確かに、19世紀以後の空に関する人類の進歩は著しい。19世紀までは空中に滞在することさえ不可能だったのに、1903年にライト兄弟が人類初飛行に成功すると、あっという間に人類は空を飛ぶことが可能となり、その66年後には、人類はついに月にまで到達した。それまでの進歩はとてつもなくすごい。 だがその後はどうか、アポロ11号以後３年間ほど人類は月面着陸をおこなったが、結局その後半世紀、人類は月に行っていない。つまり、空に関して、進歩していない。無論、コンピューターの進歩などで、宇宙滞在時間が伸びるなど、各論的にはいろいろ進歩しているのだろうが、誰にでもわかるような夢のような進歩はない。 記事から、宇宙に行くのにどれくらいの費用がかかるのか、時系列でみてみよう。 ①1960～1970年代、米国がソ連との宇宙開発競争に国家の威信をかけ、約10年間で250億ドルを投入。1969年に人類月面着陸に成功。その後3年間ほど月面着陸は続いたが、以後、半世紀にわたって、なし。 ②2001年、民間人が、約2000万ドルを支払い、ロシアのソユーズ宇宙船でISSに8日間滞在。 ③2021年に実施された史上初の民間人のみの宇宙旅行「インスピレーション4」は約2億ドル。 ISSに8日間滞在できるアクシオム・スペースのパッケージ料金は5500万ドル。 ISSの8日間の民間人滞在費用は、20年間でむしろ値上げされている（2000万ドル→5000万ドル）ことがわかる。要するに、打ち上げコストその他を考慮すると、そもそも宇宙に数日間滞在するためには、技術的にはどうしてもこれくらいまでが限界なのだ。 ところが記事では、「イーロン・マスク氏は2030年代に火星有人飛行を実現し、ひとりあたり10万ドルから50万ドルでの渡航を目指している。しかし、現時点で宇宙に行きたい場合はどうか――。」とあり、ほら吹きのほらをまともに受け取っている。まるであと10年ほどで、画期的な技術開発が進んで、打ち上げコストが１/100になるような書きぶり。しかも、マスクは数日間のISS滞在ではなく、火星旅行そのものがこの費用で可能だと言っているのだ。聞くだけであほらしくなる。 このように、記事そのものが矛盾に満ちている。 現在の技術では、マスクの言う費用で可能なのは、数分間の無重力を楽しめるくらいなものであり、また、こういう状況が将来的に大きく変化することはない。 あまりにも矛盾するが、記事もそうしたことは認めており、「宇宙旅行はインフラとしての移動手段ではない。むしろ、資産を体験に変換する新たな支出形態と見るべきである」として、今後も宇宙滞在は、超大金持ちの道楽に留まる事実を認めている。 記事には触れていないが、国家的プロジェクトとして、アルテミス計画がある。2030年代に火星への有人探査を実現させるという、壮大な計画ではあるが、当初、2024年までに「最初の女性を、次の男性を」月面（特に月の南極付近）に着陸させることを目標としている、とされていたが、全然実現していない。 アルテミス計画は国家プロジェクトだから、コストは無視できる。つまり、マスクの言うような、家一軒のカネで火星旅行を目指すようなほら吹きではない。 だがそもそも人間の生理を考えれば、アルテミス計画でも、せいぜい、選ばれた宇宙飛行士による月でのある程度の生活程度が限度だろう。月ならば、移動期間は数日で済むので、現在のISSの延長と考えられるから、半年～1年程度の滞在ならば、不可能ではないだろう。ただ、いまだに安全に人間を月に着陸さえできていないわけだから（アポロ計画の技術はきわめて特殊かつ奇形的なもので、現代では再現できないと言われている）、月面生活は人間生理的には可能であっても、技術的には当面、不可能と思われる。 無論、半世紀ぶりに人類が月面を踏むことだけでも画期的ではあるが、それだけでは、半世紀前の功績の焼き直しに過ぎない。だがせめて、ISSが月面に移動するだけでも、つまり、訓練を受けたスーパーマンレベルの宇宙飛行士が、1年間ほどでも月に住むことが可能になれば、人類に夢を与えるという点では、画期的なこととなろう。 ただいずれにせよ、低コストで宇宙に行くことはどだい無理な話で、結局宇宙滞在は、コストは無視した国家プロジェクトにまた戻ってしまうわけだ。 そもそも、火星到達なんて、人間の生理からして、未来永劫、到底無理です。火星に無人基地を作って、遠隔で楽しめればいいではないですか。 | |
★日本製公会九州教区だいじょーぶかー
もう少し前まで遡ると、20世紀には現役司祭が20人ほどいたようなので、この四半世紀の教区の教役者数減には、驚く他はない。 現在の現役男性司祭は、3人ともよく知っているが、そのうちの2人は、同じ教会に中高生時代から集っていた仲間である。当時の牧師夫人が大変優しくていい人で、私も医学生時代は、ずいぶんとお世話になった（夫のH牧師は対照的に無口な人だったが、奥様がそれを補っておられた）。 昔は、教会に入りびたりだった若者がたくさんいて、その中から司牧希望の人が現れていたのだ。だが、今はそういう若者がいない。そもそも、ゲームやケータイなどが発達して、みんなで集うような習慣が、若者になくなってきたのだろう。 もっとも、教役者数の減少は、九州教区だけでなく、一部教区を除いて、聖公会全体の問題のようだ。日本聖公会は、共産党や公明党と同じような問題を抱えていると言えよう。 | |
★減税の負の側面を知っている立民、国民民主
逆に、うまいことやったのが国民民主である。実は国民民主は、参政、れいわ、共産のように、はっきりと減税を主張していたわけではなかった。それは代表の玉木氏が元大蔵官僚であり、減税と財源、インフレのことについては、知悉しているからである。 もともと玉木氏が訴えていたのは、”手取りを増やす”ことであり、”減税”ではなかった。ただ、減税＝手取りが増えることは間違いないわけで、そこにあいまいさがあった。 減税には副作用が大きい。さまざまな識者が指摘している通り、英国のトラスショックを参考にすべきだろう。トラス元首相は、減税の代替案をあいまいにしたまま、インフレ下で減税を強行しようとした。主として法人税減税であり、その額は日本円にして、7.5兆円（日本の消費税の3％分程度、つまり各野党の主張する減税額程度）にもなった。市場は反発し、国債価格は暴落し、にっちもさっちもいかなくなり、すぐに退陣した。 日本は、確かに英国ほどのではないにしても、現在はインフレである。さらには、国民民主党の言うように、5％に税率を引き下げると、10兆円の歳入欠損が生じる。それについては、「必要な財源は、税収全体の上振れ分と国債の発行に加え、特別会計の剰余金なども活用する」として、立民同様の、あいまいなことしか言っていない。実際には、相当の国債増発を余儀なくされるだろうから、オオカミじいさん藤巻健史氏の言う事が実現してしまうかもしれない。 玉木代表は、こうしたことは当然わかっているので、減税については、曖昧な表現を繰り返してきたのだ（若者だけ減税するとか）。 たとえば、今年5月15日に古川代表代行は、物価の上昇率を上回る賃上げが実現するまで税率を引き下げるべきだ、と言っている。これは言い換えれば、賃上げ＞物価上昇となった場合は、減税をしないということで、実際、選挙直前の7月2日には、持続的な賃上げ＞物価上昇が期待できるとのことで、減税を否定している。だがそれをしっかりと聞き取って国民民主に投票した人は少なかっただろう。 国民の多くは残念ながら、経済がわからない。経済については衆愚である。トラスショックも知らないか覚えていない。とにかく、インフレがどうだろうが、減税命、なのだ。財源など、どうでもよいと考えている。 自公と野田さんが減税に慎重なのは、現在、過去に政権を担って、その代替財源を見つける苦労が身に染みているから。 参政党は、さまざまな革新的政策を打ち出すのはよいが、減税の財源は、MMTをそのまま採用している（興味深いことに、れいわもそうで、左右両極端がこの点においては奇妙に一致する）。 私はMMT自体は否定はしないが、コストプッシュインフレの今これをやれば、ミニトラスショックくらいは起こりかねないと考える。せっかくの賃上げムードも、賃上げ＜物価上昇となってしまい、国民生活はかえって困窮することだろう。 ただ今後、自民党の石破総理が辞職して、積極財政派の高市早苗氏が総理となり、衆議院を解散しても過半数確保ができず、参政党と連立政権になるとしたら、間違いなく減税を実施することだろう。 その前に、我が資産を金（ゴールド）に代えておこうかなあ・・・ | |
★民意は衆愚なのか？パートII
この記事のコメントを見てみると、予想通り、村上氏のこの主張には反対意見が圧倒的に多く、かつそうしたコメントへの賛否も、賛成が圧倒的に多い。 たとえば、財源はどうにかすれば出てくる、というコメントも多数ある。中には財務省解体を主張するコメントもある。 実は日本人は、2009年に大失敗を犯している。当時の民主党が、財源はありますといって政権交代を成し遂げた時、国民の多くはそれを素直に信じた。鳩山首相の内閣支持率は何と78%にもなっていた。 だが、結局財源は見つけられず、最期は消費税増税をするかどうかで内輪揉め状態になって、壊滅した。 今、日本人はこの16年前の大失敗をすっかり忘れてしまったらしい。後継の立民は、またぞろ、何とか財源はあると言っているし、国民民主も、いろいろ引っ張り出せば財源はある、としている。 しかしながら、昨年の衆院選後に国民民主が勝ち、103万円の壁の見直しが現実的になった時に、各地の知事が反対の狼煙を上げたことを皆、忘れている。各県では、地方交付税、住民税の原資数百億円の欠損が生じるとして、歳入欠損が懸念されたのだ。 今回、暫定税率撤廃では野党の足並みがそろっているので、これが実現する可能性が高い。世論からの高い支持も受けている。 ぜひやってみるがよい。私自身は、村上総務相の懸念がある程度は当たると思うが、2009年の政権交代時と同様、国民はやはり、一度は痛い目に会ってみないとわからないと思う。さらには、10年もするとその免疫が切れてしまうので、何度も痛い目を繰り返す。 少なくとも、暫定税率撤廃だけなら、傷は浅くて済む。この程度の減税で、代替財源確保に四苦八苦すようであれば、消費税の大減税など、今後、できようがないことが、衆愚の国民にもやっと理解できよう。 | |
| ★”19番目のカルテ”考 総合診療医をテーマとした”19番目のカルテ”が始まっている。総合診療医とはあたかも新しい概念のように考えられているようだが、実はそうではない。すでに半世紀ほど前にもあった概念だ。 私の母校の佐賀医大（現佐賀大医学部）では、1978年の開学時からすでに、総合診療部が鳴り物入りで置かれていた。その他のいくつかの大学にも設置され始めた。 だが結局、半世紀を経ても、あまり世間の注目を浴びることもなく、総合診療は医師の間でも評判は良くなかった。潰れた総合診療部も結構ある。なぜだろうか？ 理由は以下の４点と考えられる。 ①大学病院に総合診療部（科）が作られた ②総合診療科≒内科となってしまった ③就職先がない ④診療が完結しない これらの点については、当サイトの離島・僻地医療における総合診療の試みを参照。私がこれを書いたのは、何と四半世紀前である。 ①について。大学、大病院での総合診療の難しさについては、番組でも紹介されていた。”19番目のカルテ”の第二話の最初に、頭痛の患者が、総合診療医から、別の科にお回しするかもしれませんと言われて、それなら最初からその科に回してくれ、と言って、怒って出ていってしまった話がでてきた。これこそが、①の矛盾であり、半世紀解決できなかった問題である。 ②については、欧米の家庭医は、正常分娩まで手がけるほど幅広い分野を担っているが、日本では結局、さまざまな壁があり、こうなった。だが前述の佐賀大では、総合診療部と並んで”一般内科”という科があり、何が違うんだ、などとよく議論されていた。総合診療部は内科と差別化しようとして、小児診療も行っていたが、結局患児を診るのは小児科からの出向医であり、それなら小児科で最初から診ればいいじゃん、ということになる。 ③については、②と関連するが、そもそも、総合診療部（科）を標ぼうする病院がほとんどないために、大学の総合診療部から派遣された医師のほとんどが、内科に所属となり、”内科医”となった。結局したがって、日本では、総合診療≒内科という概念が定着してしまった。 ④については、主人公の松潤が自分で話していた。「総合診療医は患者を各科に振り分けるのが仕事のひとつである」。 無論、本来の総合診療医の仕事は、さまざまな症状を持つ患者の訴えを聞きながら診断をつけていくことにあるのだが、実はその必要性がある患者はそう多くはなく、結局、「じゃああなたは○○科に紹介しましょう」で終わることになる。つまり、単なる患者の振り分けで、中小病院なら、外来のベテランナースが担当している。 こうしたことは総合診療医の宿命ではあるのだが、どうしてもそれに物足りなくなってしまう総合診療医が多いわけだ。やはり、何かの専門を持って、最後まで患者を診たいという気持ちは、医者の本能かもしれない。 ここ半世紀、総合診療はひとつの専門分野なんですよ、とずっと口酸っぱく言われてきたにも関わらず、ついぞそれが定着しなかったのは、まさにそのためである。だからこそ今回の総合診療医特集は、19番目の診療科と言いたかったのだろう。 だがそもそも、”総合診療の専門医”という概念が、おかしい。たとえば、特定の品を揃えた店が、うちは○○の専門店です、と言うのならわかるが、コンビニが、うちは多様な品を揃える”専門店です”とは言わないだろう。コンビニにはコンビニの機能、ニーズがあるわけで。 このように、日本ではそもそも、ボタンが掛け違って総合診療が始まったために、欧米のような家庭医制度もできず、かなり知っちゃかめちゃかな診療が行われている。 ではそれがダメかというと、実はそうではない。私は日本の医療制度こそが世界最高だと思う。世界でもっとも安く、もっとも平等でもっとも高度な医療を受けられるのが日本なのだ。 なるほど、キューバなどの社会主義国は、医療費は無料だ。しかし質が悪い。欧州もほぼ同様だ。米国では高度で迅速な医療は受けられるが、その分の医療費は高い。低所得者は質の悪い医療しか受けられない。 日本は、医療については共産主義であり、能力に応じて保険料を納め、必要に応じた医療を、すべての人が受けられる。こんな国は、世界中、ない。 だが、医療の現場に身を置いていると、いろいろな矛盾があるのも事実。一医師としては、もっと総合診療が広まって欲しいと思う。ただ、半世紀前のボタンの掛け違えを、いまさら治すのは難しい。まさに、戦略の失敗を戦術で取り戻すことはできない。、 | |
| ■女性は”無能力”の意味-”無能”ではない |
