昭和57年4月1日
今日から社会人になった。Y証券にめでたく就職したのだ。昨年10月に会社訪問をしたが、結局採用通知を頂いたのがここだけだった。まあ、僕のようなさえない学生を採ってくれただけでも感謝せねばなるまい。なにせいまだに恋愛ひとつしたことがないのだから。
今日から2週間の研修が船橋の研修センターではじまった。もともと自分を売り込むのは苦手なのに、研修の最初から「君たちは商品を売るのではなく、君たちそのものを売り込むのだよ」と言われて面食らってしまった。どうやら場違いな会社に就職してしまったかな。やっぱり公務員試験とか受けとけばよかったかな。それにしても配属先が気になる。一応関東地方希望と出しておいたが、関東と言っても広いもんなあ。やっぱり東京希望とかにしておけば好かったかなあ。
昭和57年6月1日
山梨の甲府支店に配属されて、一ヶ月半がすぎた。毎日自転車に乗って債券とか売ってるがいまだに一件も成約がとれない。同期生の中にはバンバン契約をとってるのもいる。この支店の二年上の先輩は二人ともすでに預かり資産10億だそうだ。信じられないなー。
それにしても最近医学部の再受験をしてみようと思いはじめている。自己弁護かもしれないが、決して今の境遇から逃げたいためではない。学生の時の愛楽園での体験で、なにも出来ない自分が歯がゆかったのである。少なくとも医者であればハンセン氏病の方たちにもう少し何かができるんじゃあないかと思っているのだ。そうだ、僕も勉強して医学部へ行こう。数学がチョー苦手だから受けられる医学部は限られているが、一校や二校は数学がないか、負担の少ない医学部もあるだろう。まだ22歳、運良く来年受かれば23歳で入学、何とか20代ぎりぎりで医者になれる、決して遅くはない。頑張ろう!
22歳の時の日記
編注;こうして医学部受験を決意、この6月から受験勉強をはじめた。とりあえず共通一次試験逃げきりをめざしたため、二次試験の負担が少なく、数学のない佐賀医大を目指すこととした。しかし、言うは易く、行うは難し、その後実際に医学部入学まで5年かかることになるとはこの当時は予想だにしなかった。