| 天国は地獄？ |
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天国での会話 天国に老人が二人いた。 じいさん「なんか退屈だなあ。どっかいいとこないかなあ」 ばあさん「どんなとこでもここよりゃましでしょ」 天国をめざした日本 この寓話は人間にとって幸せとは何かを考えさせられるものである。日本は特に明治維新以来、富国強兵のスローガンのもと、欧米に負けない文明を築こうと努力してきた。努力の方向がまちがって大東亜戦争では手痛い敗北をし、多くの貴重な命が失われたが、戦後はまたみんなが日本をもっともっとよい国にしようと努力してきた。 天国となった日本 さまざまな統計データなどに関する限り、今の日本は過去からみれば、あるいは発展途上国などからみれば天国であるといってよい。 たとえば日本人の平均寿命を見てみるとは平成１４年の統計で男７８歳、女８５歳である。こんな国が古今東西あったであろうか。平均寿命が８０歳ですよ！単純に考えて国民の大多数が８０歳くらいまでは生きていることになる。それにまた昨年は１００歳以上のお年よりがナント２万人を超えたという。 感染症や戦死、お産などで多くの小児や若い人が死亡していたその昔、日本の医療の目標はとにかく先進国並みの平均寿命を確保することであった。悲願であったといってもよい。そのために膨大な社会的資源が投入された。予防接種の普及、妊婦検診の充実、戦争そのものの放棄、人間ドックの普及、etc。 さまざまな人たちの努力により、日本人の平均寿命は８０歳程度となり、なんと世界一になってしまった。長生きができれば幸せ、というのであれば今の日本人は世界一の幸福者ということになる。しかしいくらなんでも平均寿命がこれからさらに延びて９０歳台、１００歳などとなることはまずありえないから今くらいがほぼピークであろう。したがって今の日本はほぼ平均寿命が理想に達した状態といってよいだろう。 かつて中国などの皇帝は不老長寿の薬を捜し求めた。若々しい姿で８０歳台くらいまでは生きたい、といった願いが皇帝という地位にいるならばかなえられると思ったのであろう。しかし「不老」の方はともかく、今の日本はかつての皇帝でもむずかしかった「長寿」に関してはその理想を実現してしまったと考えてよかろう。 平均寿命以外にも就学率、識字率、乳幼児死亡率、妊産婦死亡率（これはほんの少し欧米より高いが）自動車普及台数、電化製品の普及率、その他さまざまな統計は現在の日本が大多数の国民が平穏無事に長生きができ、楽しく生きていくのには最適の社会であることを示している。それはまさに過去の日本が目指した、あるいは現在の発展途上国が目指している理想社会を現実にしている社会であるといえよう。なにより兵役の義務がなく６０年近くもまったく戦死した人間がいないというのはすばらしいことである。 こうした今の日本の状況は過去の歴史を鑑みればまさに天国であるといってよかろう。戦争で男が死に、女が陵辱され、感染症で乳児が死に、身障者は放置され、そんな昔の状態に比べたらなんだかんだ言ったって今の日本ほど住みやすい国はないはずである。 天国の実感がない日本人 しかし多くの日本人は上記の意見には組しないであろう。Dr.町田はなんだかいいことばかり言うが自分の暮らしは大変である、平均寿命が延びたおかげで老人の介護に苦労している、家は狭いし、ローンはある、リストラされて仕事がない、ケータイが普及したおかげで子供は遊びまわる、etc。 しかしだからといって大東亜戦争前の日本に帰れと言われて喜んでハイと言う人はまずいないだろう。ましてや江戸時代の農民になれ、と言われたら誰だって絶対にいやであろう。 何だかんだ言っても今の日本はとても豊かなのだ。一説によれば昭和３０年代以前の庶民の生活水準でよいのであれば現代の金額に換算してだいたい月収７〜８万円あれば十分なのだそうだ。要するに家のローンもなく家賃の安い長屋に住み、保険などもなく、レジャーにも行かず、子供を塾にやらず、クルマやクーラーやケータイなどもちろん持たず、家族数人が何とか食べていければよい（要するにエンゲル係数が限りなく１００％に近い）ということであるならばそんな多くの収入はいらないのである。そしてほんの数十年前までの日本人の大多数がこんな生活水準に甘んじていたのである。（発展途上国ならば今でも国民の大多数はこうした生活をしているだろう） 天国の住み心地 天国のような理想社会を築きたい、と多くの日本人が努力をしてきた。そして過去のそうした日本人から見ればまさにその理想社会ではないか、と思えるような社会が今築かれた。しかしながらその天国に住んでいる住人は天国ではなく地獄に住んでいるような気分でいる、という皮肉。私たちの先人たちは草葉の陰で今の日本人をどう思っているのだろうか。 「オレたちが頑張ったおかげでオレたちの時代には考えられないような天国のようなよい時代に生きているあんたたち、ちょっとぜいたくじゃないの。オレたちはあんたたちにそんな思いをさせるために頑張ったんじゃないんだよ」 ご先祖様のこんな声が聞こえてきそうな気がする。 |
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