| 63 総合診療部のゆくえパートⅡ |
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今回は医師のトレーニングのお話。従来、医師免許を取ったばかりのまだ何もできないできたてほやほ
や医師は大学の医局に入局し、それぞれの専門の勉強をしてゆく、というやり方でトレーニング
をしていました。したがって自分の専門分野以外のトレーニングを受ける機会はほとんどなか
ったのです。たとえば内科系の医局に入れば簡単な外科的処置もできない、といった具合です。
ここ２～３０年は専門分化はますます進みました。たとえば内科では消化器、循環器科はそれぞ
れ一領域を築き上げ、外科も脳外科、整形外科、消化器外科、心臓血管外科等分かれてきています。
医学が進み、トータルの医学知識が莫大な量となってきているため、これはある程度やむをえない
こととは思います。
反面、患者側から見れば自分の身体全体を診てくれる医師がほとんどいなくなったといえます。
主治医不在の医療、主治医になるのは経験の浅い研修医、というのが特に大病院では顕著です。
これではいけない、というので各大学に雨後のたけのこの如く「総合診療部」ができてきました。
しかし、それが大学や大病院にばかりできたため、総合診療部の医師は専門がないゆえ、居場所が
ない、というのが実体です。また、総合診療部に参加している医師の多くが内科系であるため、
簡単な外科手術を要する患者でも総合診療部では診れず、結局総合診療部は一般内科と同じでは
ないか、という意見もあります。
私は自分が外科だから言うわけではありませんが、外科医はもっと総合診療に関心をもってよい
のではないか、と思います。というのは、やはり外科医は間口が広い人が多い、と思うからです。
総合診療部と名乗るからにはたとえば急性虫垂炎（いわゆるモーチョー）の患者が来ても、きち
んと手術をしてあげられなければならない。それにはどうしても外科の技術が必要です。
総合診療をやっていこうという医師はまず、初期研修の２年間で内科、外科、産婦人科、小児科
を研修し、その後は一般外科をトレーニングするべきだと思います。なぜなら一般的な外科の技術
を習得した医師なら整形外科、脳外科、産婦人科等の手術は必要になれば比較的短期に習得でき
るし、知識的なことなら独学ができるからです。
田舎で、医師が少ない病院ではどうしても１人の医師の守備範囲は広くならざるをえません。
耳鼻科医も眼科医もいないから、耳に入った虫をとったりとか、眼に入った異物を取ったりとかの
都会ならそれぞれの専門医がやるであろう医療行為も一般医がやらねばなりません。お年寄りの
骨折などはしょっちゅう来るのです。
総合診療をやりたい、という医師は大学の象牙の塔にひっこんでないで、こういった離島など
に出てくればいい。しかし大学の総合診療部の医師で田舎や離島に行こうなどという人は皆無な
のです。
結局離島を実質的に支えている医師は外科出身者が多いのです。外科の技術の応用で専門外でもかな
りのことができるし（つまり間口がひろい）救急疾患に一番強いのはやはり外科医です。（無論外科
医でも自分の専門以外なにも関心がない、できないという人もいますが）
こうした実態をみるにつけ、総合診療部なんぞは大学に作らず、地方の中小病院に作ってほし
いとつくづく思います。そして外科系を中心としたトレーニングをみっちりやればよいのです。
現在、自治医大出身者が各離島にいますが、自治医大方式にも問題は多い。なぜなら彼らは
医師となり３年目くらいで１人で島の診療所をまかせられるため、十分なトレーニング（特に
外科系の）を受けていないのです。総合診療という名のもとに中途半端なトレーニングしか受けて
いないから、たいした病気でなくてもすぐに島外に搬送してしまう。診療所にもたいした医療機器
は置いていない。医師さえ島においとけばそれでいい、といういかにも行政が考えそうなことですな。
やはり、地方の中小病院に総合診療部を作り、外科系を中心としたトレーニングをみっちり受けた少なくとも
卒後５～６年目の外科系医師を離島におくべきだと思います。そして外科医のなかからもガンの手術
だけでなく、総合診療をやりたい、という医師が多数出てきてくれれば、と思います。
Ｐ．Ｓ 今回の意見には内科系の医師の方からは反論があろうか、と思います。
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| 【63】 総合診療部のゆくえパートⅡ 2002/2/17(日)02:49 ＤＲ．Ｍ (3550) |
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