★4種類のシニアの働き方
①大企業・官庁の役員等、いわゆる”えらくなる”こと ②一定以上の技能を持ち、それが活かすこと ③自営 ④誰にでもできる労働に従事する ①はきわめて少数、かつ、運も必要。また、最終的には企業のトップまで行くしかないが、当然それはひとりだけ。つまり、上へ行けば行くほど間引かれる。 もっとも、大企業や官庁のトップに近いレベルまで行けば、そこで栄達を極めることはできなくても、やや格下のトップや、大学教授、著述業といった、知識人としての活躍は期待できるだろう。 こういう人たちは、まさに余人をもって代えがたい人材であり、だからこそ、年寄りになっても働くニーズがある。報酬もそれなりにあるわけで、年金は当然、支給停止となる。 このレベルの人たちには、年金は不要であり、むしろ逆に、年をとっても、若い人を指導しながら、世の中を支えていく人たちである。 こうした層は、以前はその平均年齢はもっとずっと若かったと思われるが、社会の高齢化で、主として一般の定年年齢よりも年長者が主体となり、そのために、シニアの仕事になったと言える。 ②について思い浮かぶのは、パイロット、医師、さまざまな技術者などで、高い技術を維持している人は、シニアになっても高給を取ることができる人である。こうした層も、人材としては限られており、やはり年金とは、いい意味でも無縁の人たちである。 ③はさまざまな人がいる。国民年金の老齢基礎年金をもらいながら、悠々自適で働いている人もいれば、それだけでは足らないので、やむを得ず老体に鞭打って、という人もいる。後者の場合、年金額が少ない分、④の人たちよりも生活は大変だろう。 高齢者の就業形態を見ると、特に70歳を超えると、自営業者の割合が高まる。これは、この年齢になると、高齢雇用就業者数は急激に減少するのに対して、自営業者数はあまり変わらないためである。  【シニアの概況】高齢者の就業状況 2020年6月 | シニアライフ総研より改変 ④は、高齢者雇用の圧倒的多数派であり、年金必須者となる。記事で問題になっているのが、この人たちは、④に属しているのに、②だと思い込んでいる、つまり、己の技能で飯を食っていけると勘違いしていることである。 たとえば大企業で部長で1000万円以上稼いでいた人が、（役職）定年になれば年収ががくんと下がる。それは単純に、彼の生産性が年収を下回っていたための調整であり、それは彼が④に属した働き方しかできないことの証なのである。 ④の業種は、要はふつーの人間ならば、一定の訓練を受ければ誰でもできる仕事であり、であれば、本来ならば、若い人が担うべき仕事といえる。 たとえば警備員などは、常識的に考えて、シニアよりも若い人が向いている。悪者が入ってくれば、若い警備員なら取り押さえられるだろうが、シニア警備員なら、警察に連絡するくらいしかできないだろう。その生産性は明らかに、若者＞シニアである。 だが、若い人がいないので、やむを得ず、雇用主は、シニアを警備員として雇う。世の中の多くの仕事は、こうした実態になっている。 ただ少数ながら、人生経験自体が生きるような仕事もあるので、記事においては、それに甘んじないで、それを小出しにしながら、賢く働け、と言っているわけである。 残念ながら多くの人は、企業（ことに大企業）から離れれば、ただの人になってしまい、ノウハウ・スキルを独立して発揮できる人は、有資格者など、ごく少数であり、こうした人たちのかなりは結局、③に吸収される。たとえば医師ならば開業医になることで、労働期間を延命できる。 いくら技能があるとはいえ、それでも75歳ともなると、通勤の問題などもあり、雇用されての形態での技能発揮は難しくなる。だからこそ、75歳以上の雇用は、自営に収斂されていくのだろう。 多くの人は、年金をベイシックインカムとしながら、④の仕事で老後を過ごす。まさに、ワークライフバランスそのもので、高市首相の、働いて、働いて、働いて、働いて、とは対極的な働き方となる。 高市首相は、①の典型であるが、サヨクがやっているように、①や②の働き方と④のそれとを単純比較してはいけない。多くのシニアは、高市首相は無視して、④でのんびりと生きていくのが良い、と私は思う。 | |||
| ★パナソニックの1万人削減について パナソニックが、黒字経営であるにも関わらず、1万人の人員削減を打ち出して、話題になっている。ただ、１万人というとすごい数字に思うが、同社は23万人近い従業員がいるので、5％以下ということになり、たとえば社員100人の企業で4人ほどが解雇されるという程度ではある。 パナソニックの目的は、文字通りの組織のリストラクチャリングであろう。組織を機動的にいじって、どうしても不要な人員が一万人出てきた、ということ。 この一万人とは、予想通り文系で、かつ、人事・経理といった人たちのようだ。営業部門にも一部及ぶ。 ところで私事だが、私はもともと数学が超苦手で、高校3年の時の進学コースでは私立文系コースに進み、数IIIを履修せず、私立大文系（経済学部）に進んだ。 文系ゆえに、就職活動では、メーカーはまったく考えもしなかった。なぜなら、メーカーとはすなわち生産をする会社であり、生産は理系の仕事で、主役はしたがって理系、文系では仕事が面白くないだろう、と思ったからである。 それでも当時（40年以上前）はまだ、OA化は進んではいたが、文系大卒男子が間接部門でかなり吸収されていた。しかし、この40年間以上、間接部門での文系大卒男子の仕事は、大幅に減り、ほぼ営業のみになってきた。 兆候はあった。私は昭和57年に山一證券甲府支店に配属になったが、支店の男子社員は、支店長、次長はむろん営業出身、その他営業職が7人（戦力外の私を除いて）いた。事務系は、事務次長一人、課長一人、その他、運転手、自衛隊上がりの経理係のおじさんがいた。女性は全員高卒、短大卒。彼女らの担当は事務と窓口業務だった。 営業支店だから当たり前ではあるのだが、初めて社会人になって、改めて営業の重要さを知った。要するに、半世紀近く昔であっても、間接部門は最小限にとどめられていたのだ。 証券会社はほぼ営業のみの組織だから、かなり昔から、必要人材への目が厳しかったのだろうが、メーカーの場合、会社によっては、それが甘かったのではなかろうか？ 実際パナソニックは、他社と比べて、販売比率が5％高い（パナソニックHD（25%）、ソニー（17%）、日立（19%））という。もともとは、創業者松下幸之助の方針で、絶対に解雇はしないことで有名だった会社だけに、おそらくは、必要なリストラができないままに、今日まで来てしまったのだろう。あるいは人事計画が甘く、不要な文系人材を他社よりも余計に採用してしまったのだろう。 ●パナソニックの問題は日本全体の問題 話は変わるが、文科省は、子供の数の減少に伴って、文系学生を大幅に減らす計画である（理系志望の高校生「４割」に…専門人材３３０万人「不足」の一方で事務・営業３２０万人「余剰」の推計 : 読売新聞）。理由は、2040年には社会のデジタル化が進み、理数に強い専門人材が３３０万人不足するが、、文系が中心の事務や営業職といった人材は３２０万人余剰になると見込まれるためだとのこと。 つまり、文系人材の余剰は、ひとりパナソニックだけの問題ではなく、日本全体の問題だということ。 基本的に企業は、幹部候補以外の50代の文系社員は要らないのである（理系の場合、技術を持っていれば、年齢はあまり関係ないか）。昔の55歳定年はしたがって、こうした企業ニーズと人の平均寿命との絶妙なバランスにおいて決まったのだろうが、長寿社会となり、年金受給年齢の繰り下げとともに、定年も延長せざるを得なくなった。 定年延長とは、ありていに言えば、企業にとっての不要人材の滞留に他ならないため、やむを得ず企業は役職定年制を定め、年収を下げて出費を減らすことで何とか対応している。 だがこうした対応もおそらくは、限界を迎えつつある。おそらくは新卒採用段階での抜本的な改革が必要となってくるだろう。 パナソニックリストラ問題を奇禍として、今後日本では、大卒文系の採用そのものが減っていくと思われる。 現在の大企業は、大卒文系新卒を大量採用をし、誰にでも出世のチャンスを与える。5年、10年とOJBをしていき、ふるいにかけていく。しかし今後は、採用そのものを絞り、最初から選抜されたエリートとして育てていくのではないか。欧州のように。 実は官庁では昔から、このようになっているし、戦前の大企業もそうだった。そして戦前は、エリート社員とその他では、給料も大差があった。 戦後の日本は、一億総中流社会となり、こうした格差もなくなった結果平等社会となったわけだが、そうした価値観は崩壊しつつあるのだ。 高校生の段階から、文系志望者を減らそうという試みはだから、そもそも、大卒文系学生を減らすこと、少しでも入口を狭くして、結果的に、大企業が大量採用できないようにすることを目的としているのだろう。 上記の引用記事では、文系志望者が多い背景として、「保護者らに「理数科目は早めに捨てて偏差値を上げ、大都市の有名大に行けば安泰」などの意識があるとみられる。」とある。 だが、今後は、偏差値の高い文系大学を出たからといって、そもそも大手企業に入社できる確率も下がっていくだろう。文系学生数減少で、ライバルも減るかもしれないが、それ以上に、大企業の門も狭くなっていくのだ。親も意識改革をしなければならない。まあ、東大法学部を出ていれば大丈夫だろうが。 | |||
★日本を中国に売りたい岡田克也氏
高市首相は、「中国が戦艦を使って武力の行使を伴う台湾有事の際には日本の存立危機となり得る」と言ったわけで、「なる」と言ったわけではない（ここが中国語でどう翻訳されたのかは気になるところだ）。さらに、”中国が武力行使を伴う”は意図的にオミットされて伝えられている。 高市首相に限らず、保守の立場からすれば、これがなぜ大問題になるのか、理解できないだろう。なぜなら、あまりにも当たり前のことだから。 １０年前の安保法制の審議で政府は、朝鮮半島有事と、原油の重要な輸送路であるホルムズ海峡の危機を例に挙げていた。しかしこれこそ、法案を通す方便であり、台湾有事ではバシー海峡が通れなくなるわけで、むしろこちらの方が重要である。 当時は、中国のみならず、与党であった公明党にも配慮をして、このような案文にしたのだろうが、公明党を無視することができる今、首相が当たり前のことに踏み込んだのは、当然のことだろう。 かつて安倍元総理は、集団的自衛権の権利はあるが行使はできないという、おバカな内閣法制局の解釈をねじ伏せた。逸れこそまさに、日本の安全保障の一歩も二歩もの前進だったではないか。 それができたのは、当時の安倍政権が安定していたことと、安倍首相の強い答弁があったからで、しかしながら、公明党の存在で、かなりの留保がつけられてしまった。台湾有事のこともそのひとつだろう。 あまりに過去にこだわっていたら、日本の安全保障はまったく進歩しない。それは国民生活が脅かされることにつながる。 以前は、防衛費のＧＤＰ1％や非核三原則などが聖域視されていた。敵基地反撃能力も認められなかった。しかし現在ではこんなことはとても言ってはおられず、どんどん見直されている。 対中国問題が微妙であることはわかるが、それを恐れていては、必要な国防が進まない。 高市首相には、媚中派の岡田克也などに負けないでほしい。保守全体で、首相を応援しようではないか。
食べ物を探すことはすなわち働くことと同意であるとすれば、生物の大原則に基づけば、ヒトもまた、働けなくなれば、死ぬことになる。 だが実際は、ヒトは、働けなくなっても、死なないで済む。それはあらゆる生き物において、ヒトのみが、余剰を生みだしたからだ（むろん、百舌のはやにえのような例もあるが、それが餌の少ない冬季対策だとしても、消費のタイムラグであり、余剰とは言えない）。 ヒトは余剰を使って資産や租税制度、年金を生みだした。特に年金は、個人資産をプールすることで、寿命の個人差を埋めることができる、画期的な制度だった。この制度のおかげで、人は老後に働けない状態に陥っても、生きていくことが可能になった。 逆に、年金制度が確立すると、働ける状況でも、あえて働かない人が現れた。主としてカトリック的労働観（旧約聖書のアダムとエバの物語に深く根ざしている、人間に労働が課せられたのは、罪に対する罰であるという考え方Yahoo!検索 AIアシスタント）を持つ人である。 つまり、本来なら働けない人たちのための年金制度が、働かない人たちのための制度となってきたわけだ。 しかしながら一方では、プロテスタント的労働観（労働を苦役ではなく、神への奉仕であり、自己の救済の確証を得るための尊い行為と位置づけるYahoo!検索 AIアシスタント）を持つ人も根強く存在する。こうした人たちは、年金制度のおかげで、働かなくても済むにもかかわらず、働いている。もっと極端になると、年金をもらう権利を失っても働いている（在職老齢年金制度。私もその一人）。 ヒトの人たる所以は、利他にある。むろん、動物でも、親は子を守ろうと必死になる。最近話題になるクマにしても、小グマを殺された親はいきりたっている。だがそれは基本的には、自分の遺伝子を残そうとする本能であり、利他とは言えない。ヒトはそうしたことを考えずに、利他の精神を持っている（それは、教育の賜物と言えるが）。 働くことは、ある意味、その延長と言える。どんな仕事であっても、それによって報酬を得ているのであれば、世の中の誰かしらが、あなたが提供したサービスを評価したことになる。つまりそれは、他人の役に立っている。それは、報酬を介した利他である。 カトリック的労働観では、こうした利他の精神を感じることは少ないかもしれないが、人としてのまっとうな感覚がある限り、こうした精神を持つことは必須だろう。 たとえば、穴を掘って埋めるという行動をずっと行うだけで報酬を得られるとしても、そんなことを毎日続けられるだろうか？モルモットなら、そうした行動を取るだろうが、人としてのまっとうな感覚があれば、そんなことはできないはずだ。 その昔、炭鉱地域などでは、仕事をしないように、しなければ、しないで遊んでいれば、お金をあげる、という政策があった。石炭の過剰生産を抑えるための施策であったが、それは人心を荒廃させ、子弟教育にも悪影響を与えた。 つまり人は、いかにカトリック的労働観で働くにしても、誰もが、己の職業にたいする矜持は持っており、それなしにはまっとうには生きていけないのだ。 そしてできれば、それが昇華して、プロテスタント的労働観に変化することが望ましい、と個人的には思う。こうした価値観を突き詰めていくと、記事にあるような100歳超えのおばあさんでも、働く力があるのならば、働く、ということになる。また、高市首相のように、働いて、働いて、働いて、働いて、ということになる。 生き物は死ぬまで働いている、という生き物の大原則を、人も忘れてはならないのではないか？ ●女性の主婦労働について ところで、女性の就業率は、いかなる世代においても、男性よりも低い。この差は結局、女性が主として家事労働をになっているためにできる。 そう考えると家事労働は、GDPには算定されないが、食べること＝働くこと＝家事ということができる。 私は、フェミニストの人たちが特に、この観点が抜けている、と思う。彼女らにとっては、家事は眼中にない。自然財である空気のように思い込んでいる。 人が生きていくためには、子育てや介護を含めた家事が必須である。ヒトは、長い期間、大人に育ててもらわなければ生きていけない動物だし、また多くの場合、死の少し前からは、排泄や着替えなどで、他人からのお世話が必要になる。 家事自体は、動物は行わないが、ヒトの場合それは、動物が餌を探すことと同等の価値があるわけだ。実際、家事代行サービスがあるし、米国では80％以上が利用しているらしい。また介護は、日本においても、四半世紀前から介護保険制度が始まり、社会化されている。北欧では、公務員が介護の多くを担っている。 女性のほぼすべては、就業からはずれて、高齢になっても家事を担い、家の中で”働いている”。これに対して、多くの定年後男性は、年金で食べていけることを良いことに、家の中で家事もせずにゴロゴロしているという人が多数派である。 年金の財源は、（一部ではあるが）オレがこれまで支払った保険料なのだ、保険料の分、オレは可処分所得を削られたわけで、今、オレはそれを取り戻しているだけなんだ、文句あっか？という意見もあるだろうし、それはそれで正当だとは思うが、今、働く能力があるのであれば、何らかの形で、その労働力を社会に提供すべきではないか、と私は個人的には思う。奥様はそれを、家庭内に提供しているのだから。 | |||
| ★生物はそもそも死ぬまで働いている | |||
★やっと”公がクマ対策に出てきた
本来、国や個人の安全保障は、古くはアダムスミスが唱えたように、”公”の仕事である。それは、職務の危険度と報酬が見合わない、資本主義的営利主義になじまない事柄であるから。 だから、国防、警察、消防はどこの国でもだいたい”公”が担っている。医療もまた、個人の安全保障の範疇に入るので、欧州では”公”が担っている。コロナ禍では、欧州のそうした医療体制が強味を発揮したのは、まだ記憶に新しい。 クマの駆除もまた、当然のことながら、個人の安全保障の領域であるので、”公”の仕事であるのは当然だろう。 さすがに被害がここまで拡大してきて、秋田県知事がなぜかいきなり、自衛隊に援助を求めた。これは順序がおかしかった。なぜなら、自助→共助→公助の大原則からすれば、猟友会という”自助”での解決が困難になったならば、次は地域全体での共助が基本だから。 それは結局、ライフル銃を使える警察に熊駆除を行ってもらう、ということ。ところが秋田県知事は、それをすっ飛ばして、自衛隊へ支援を求めたのだ。 そもそも究極の公助たる自衛隊は、あらゆる機関では対応困難な危機において、初めて出動する。そうした危機では、一般的にはインフラも途絶しているからこそ、インフラも含めてすべての対応ができる自衛隊が求められるわけだ。 たとえば、’60年安保闘争時において、当時の岸首相は、自衛隊に治安出動要請を行ったが、当時の赤城宗徳防衛庁長官からそれを断られ、結局は警察レベルですべてを乗り切った。 確かに自衛隊が治安出動すれば、あっという間に鎮圧はできただろう。しかしその場合、極左が多数死亡してしまう。したがって、自衛隊が武力組織であればあるほど、結局その対応は慎重にならざるを得なくなり、最終的には、かえって警察権力を使うよりも時間も手間もかかったことだろう（ベトナム戦争時に、米国が核兵器を使えずに、敗北したように）。 相手がクマでも事情は同じようで、結局、自衛隊は支援要請をされても、”武力”を使うことができず、罠を作ったりだの、警備をしたりだのといった、何も自衛隊でなくても、といったことしかできず、結局のところ、警察官による武力行使が認められた形となった。 鈴木秋田県知事は、まだ50歳と若いので、’60年安保闘争時の顛末を知らないのだろうし、忠告をするブレーンもいなかったのだろう。この程度の見識でも県知事にはなれるのか、とは思ったものだ。 | |||
★極端な人たちの取り扱い
親ぐまは仕方ないとしても、一緒にいた小グマは助けろ、という、人情派ならぬ、クマ情派の人もいるだろう。 過激な人は、街中に出てきたクマも駆除はご法度で、とにかく前例、麻酔銃で眠らせて、山に戻せ、と言う。クマの命が絶対で、とにかくその場が解決すれば、あとはどうでもよい、と思っている。 クマ駆除派もいろいろだろう。危険なアーバンベアのみ駆除しろ、という人もいれば、山狩りをして、地域のクマを根絶させろ、とまで言う人もいる。 両者には共通点がある。自分たちは安全地帯にいて、無責任なこと。あれ、なんかと似てない？そう、政治信条。 世の中にはさまざまな政治信条を持っている人がいる。むろんそれは、ひとつのそれしか許容しない独裁国家よりは、はるかにましではあるのだが、クマ対策同様、国家の針路をどこかに定めなければならない。 その場合、難しいのが、あえて明確な政治指針を打ち出す政治指導者である。典型例が安倍晋三氏だった。 安倍氏は、52歳の時に、第一次安倍内閣を組閣した。ノンポリだった小泉長期政権の後を受けて総裁自民党総裁・首相にはなったが、あまりに政治カラーが強すぎた安倍氏は、左右から猛攻撃を受けた。 左からのそれは本人も覚悟はしていただろうが、痛手立ったのはむしろ、身内とも言うべき右からのそれだっただろう。期待が大きかったがゆえに、反発も大きかった。 それは、第一次安倍内閣が、当初より、左を向きすぎていたためだったと私は思う。総理就任後、彼はすぐに、小泉内閣時代に冷え切っていた中国への訪問を敢行し、日中関係の改善を図った。それ自体は成功したのだろうが、あまりに彼らしくないふるまいが、右からの不評を買ったことは間違いない。 安倍氏は結局、健康問題を理由に、1年で辞任してしまった。ストレスで病状が悪化するUCという難病を患う身においては、やむを得なかったかもしれない。 高市首相もまた、安倍氏以上に政治スタンスが明解であるので、クマ騒動のように、正反対の陣営から猛攻撃を受けることは必須であろう。実際、存立危機事態についての答弁では、中国から強烈パンチが来たのは予測内であっただろうが、橋下徹や玉木雄一郎のようなリベラル保守あたりからも、強い反発が来た。逆に、右の方からは、中国からの圧力へなぜもっと反駁しないのか、ペルソナノングラータを発動せよ、という反発が来た。まさに左右からのサンドバッグ状態である。 高市首相はおそらく、第一次安倍内閣の失敗は、つぶさに研究していたことだろう。だから、就任早々、やや右の路線を取っている。それはつまり、第一次安倍内閣の時に安倍氏が苦慮した、右からの反発を考慮したうえでのことだっただろう。 だがそうすると今度は左からの反発が強くなり、右からもそれなりに反発は来る。 さて、高市首相は就任早々のこの苦境を、どう乗り切るか？ | |||
★ワーク≒ライフの人たち
我が家の右隣は和菓子屋さん、左隣はお寺さんで、ともに自営業。この人たちを見ていると、そもそも確かに、ワーク≒ライフになっている、とつくづく感じる（ワークライフバランスが取れているというより、両者が一体化している）。 和菓子屋の親父さんはもう90歳近いはずだが、いまだにバイクに乗って、元気そのもの。和菓子製作は息子さんにもう譲っていると思うが、なんだかんだ、いろいろなことをしている。奥様も同様。 左隣のお寺さんは、お寺は大きいが、お墓はそれほど多くはなく、お寺だけで食べていくのは難しそうに思うが、子供がいないせいか、何とかやっているんだろう。坊さんは60歳代後半で私と同じくらい。 両者を見ていると、とにかく通勤が不要な人生はよさそうだな、ということ。むろん、朝起きたら着替えて、朝食を摂って、という生活は私たち勤労者と変わらないが、とにかく家にずっといられる生活はうらやましいとよく思う。 私の場合、幸い、職場が近く、クルマで15分程度の通勤時間で済んでいるが、それでも彼らをうらやましいと思う。 これが都会のサラリーマンなどの場合、1時間以上の電車通勤はザラで、若いうちはともかく、定年後でそうした生活は大変だと感じる。61歳の時に、一か月ほど1時間弱の電車通勤をしたことがあったが、その時点で、こんな生活が、年を取ってからずっと続くのは耐えられない、と思った。 つまり、自営業の人は、日常生活の中で、仕事がすっかりはまり込んでおり、お金を稼ぐというよりも、年をとってもこれまでの生活の延長が続く形で働いている、という印象が強い。彼らにとって、好むと好まざるとに関わらず、働くことは生活に通じており、まさにワーク≒ライフ、なのだ。 会社役員も似たようなものだろう。企業の経営に大きな責任を負っている人はだいたいが、若い頃には、モーレツに働いている。彼らは、多くは、好き好んで働いているわけで、彼らにとってもやはりワーク≒ライフだと言える。 こうした人たちは、年をとってもいつまでも働き続ける。下図でわかるように、高齢になると、雇用者ワーカーはさすがに激減していくが、会社役員はさほど減らず、自営業者はむしろ70歳代前半までは増え続ける（雇用者から自営にとなる人、たとえば開業医などがおそらく、このシフトを構成している）。そして75歳以上で働いている人は、大半が自営業か役員となる。それは彼らの生活が、ワーク≒ライフである証左と言える。 【シニアの概況】高齢者の就業状況 2020年6月 | シニアライフ総研より改変 ●ワーク≒ライフか、ワーク≠ライフか 働くことにはさまざまな理由・目的があるのだろうが、ワーク≒ライフの人は、、ワーク≠ライフの人よりも、幸せな人生だろうと思う。つまり、生活の中に仕事が組み込まれているような人と、仕事と生活を分けて考える人では、前者の方が幸せなのではないか、ということ。 65歳を過ぎると、特にこうした傾向が身に染みてくる。 壮年期までは、特に結婚して家族を養っていれば、必ず働いて所得を得なければならない。この時期もむろん、ワーク≒ライフであることが望ましいが、人生のこの時期は、なかなかそれは難しい。幸か不幸か、日本においては、壮年層は生産性以上の所得があるケースが多いので、ライフのことはさておいて、馬車馬のように働かざるを得ない人が多いことだろう。 だが、役職定年、定年を過ぎ、ことに年金受給年齢ともなると、老齢年金というベイシックインカムを得られることもあり、ある程度余裕をもって働くことが可能になる。つまり、ワーク≒ライフが実現しやすい。 だがこういう人たちとは別に、年寄りの中には、年金収入などが少なく、ライフのことは無視して、ワークせざるを得ない人たちもかなりいる。つまり、ワーク≠ライフ。こういう人たちは、老後の生活費用に追われて、ライフを楽しむ余裕などないだろう。 本来、日本の社会保障制度にきちんと乗って生きてきていれば、65歳になれば、十分とは言えなくとも、誰もがベイシックインカム的な所得保障は受けられるはず。雇用者は、65歳までの雇用が保障されているから、終身雇用制の恩恵を受けながら、年金生活に入ることができる。 つまり日本社会は、 日本国憲法第25条にある「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」を具現しており、本来なら誰もが、ワーク≒ライフの老後生活を送れるはずなのであるが、その権利を行使するためには、一定期間、保険料を収める義務が伴っているのだ。その義務を怠った人が、年を取って、ワーク≠ライフで生きざるを得なくなるわけ（むろん、病気やけがでこうした義務を果たすことが難しくなった人たちにはそれなりの制度がある）。 したがって年を取ってワーク≠ライフとなっている人は、それは社会責任ではなく、自己責任なのである。 ●ライフのみ、ワークのみの生活 なお、こうした人とは別に、最近ではFIREなる概念が出てきて、若い時期にワークライフバランスを無視してがむしゃらに働き、一定の資産ができたらワークをやめ、ライフ優先にする人がいる。 似たような存在で、（おそらくは若い時期にワークライフバランスを無視してがむしゃらに働いたおかげで）年金額が多く、それだけで生活が可能なように出費を調整し、仕事から完全に引退する、という高齢者もかなりいる。 こうした人は、そもそもワークがないライフを楽しんでいる。ライフのみの生活。それは確かに、ワーク≠ライフの人（特に年寄り）よりははるかにQOLは良いだろうが、ワーク≒ライフの人と比べると、生きがいなどの点で、どうだろうか？個人的見解ではあるが、ワークが組み込まれていないライフは、味気ないものなのではないか、と思う。 そもそも人が生きていくためには、ワークが必要であり、原始時代の人間、あるいはつい近代あたりまでの農民などは、起きている時間のほとんどを、食糧確保に費やしていた。つまり、ワークのみの生活で、これは、FIREした人やリタイアした年寄りとは真逆の生活である。 原始時代はすべての人がワークのみをしており、歴史時代になると、ごく一部の特権階級のみが、ライフを楽しむことができるようになった。さらに一部の人は、たとえば引退後の徳川慶喜のように、働くことなく、ライフのみの生活がをしていた。 ●４つの生き方を比較すると・・・ こうしてみると、人の生き方には以下の4通りがある。 ①ワーク≒ライフ（自営業者、会社役員等） ②ワーク≠ライフ（労基法が想定する勤労者、働かないと生活できない高齢者） ③ライフのみ（FIRE,働かずに生活できる高齢者、昔の王侯貴族） ④ワークのみ（原始人、近代までの農民等） この４つに価値判断を与えると、幸せな順から・・・①→③→②→④となる。①が一番か③が一番かの価値判断は人によって割れるかもしれないが、個人的にはこの順番だと思う。あとの２つは大体誰もがこう思うだろう。 考えてみれば、③の人が数多くいる現代社会はやはり、過去に比べればありがたい社会だと思う。世の中の相当の人たちが、晩年の徳川慶喜のような生活を送れるわけだから。 もっとも、徳川慶喜の隠遁生活と、命がけで新しい明治日本を作り上げた同世代の人たちと、どちらが幸せであったかどうかは、わからない。個人的には、後者の生活を送りたい。 P.S.なお、芸能人などは、競争の厳しい社会であるし、ほぼすべての人はワーク≒ライフで頑張っているであろう。サヨクの古舘伊知郎とて、高市首相のお仲間に入るのは、当然のことだと言える。 | |||
| ■女性は”無能力”の意味-”無能”ではない |