| 衆院コピーなら参院無用 国政の監査役に徹すべき 書く書く鹿じか 7/16(水) 11:02配信 産経新聞 かつて参議院に「緑風会」という院内会派があった。「真実一路」「路傍の石」などで知られる作家の山本有三（勇造）が呼びかけて結成された。 貴族院議員だった山本は、昭和22（1947）年4月に行われた第1回参議院選挙に無所属で立候補し、全国区の9位で当選した。この選挙では、第1党は日本社会党、次いで日本自由党だったが、最大勢力は無所属議員が占めた。当選祝賀会で山本は高校時代の友人から「政治家は一人では何もできない。既成政党に飽き足りない清新な人たちを集め、無所属クラブを作ってはどうか」と助言され、設立趣意書を書いた。 「第一院の独走を防ぐには、どうしても第二院が必要である。そのためには、第二院の議員は党派の利害にまきこまれない、公正な人でなければならない。参議院は、衆議院と一緒になって政争をこととするようであっては、第二院としての存在価値はなくなる」 名称は、緑色は7色の虹の中央にあって右にも左にも傾かず、国会に新風を送り込むという意味から緑風会とした。 参議院をどのように位置づけるかは憲法制定時から議論があった。山本が提言したように、衆議院の行き過ぎをたしなめ、足らざるを補うチェック機能が求められ、参議院は「良識の府」と呼ばれた。 しかし、保守合同と左右に分裂していた社会党の統一によって55年体制が成立すると、参議院も政党化が進み、緑風会は所属議員が減って昭和40（1965）年に解散した。 今では参議院は「衆議院のカーボン・コピー」と揶揄（やゆ）される。衆参両院で与党が多数を占めると、採決もコピーしたように同じになり、存在意義は薄い。反対に野党が多数派の「ねじれ国会」になれば、法案は修正を余儀なくされ、成立も危ぶまれる。 フランス革命の理論的指導者、エマニュエル＝ジョゼフ・シェイエスはこう言った。「第二院は何の役に立つのか。第一院に一致するならば無用であり、それに反対するならば有害である」 参議院が本来の「良識の府」に戻るためには、どうあればいいのだろう。例えば、衆議院が予算案を審議して成立させるなら、参議院は決算を厳しくチェックする。企業における監査役のように、行政府を監視する役割に徹するのだ。参議院議員は閣僚など政府の要職に就かず、独立性、自主性を保つ。 選挙制度も抜本的に改革し、党派ではなく、人物本位、能力重視で選ばれるようにする。任期は長くてもいいが、議員数は大幅に少なくする。 参議院選挙が行われている。自民、公明の連立与党が過半数を維持できるかが焦点である。物価高対策は現金給付か減税かと喧（かまびす）しく、参議院がこのままでいいのかと問う声は聞こえてこない。（元特別記者 鹿間孝一） |
緑風会の時代は、昭和34年生まれの私は知らないが、若い頃によく聞いたのが、「参議院は衆議院のカーボンコピーに」なりはてている、という言い分だった。無論、緑風会が解散しただいぶ後のことだ。
かつて、日本維新の会は、その前身の大阪維新の会の維新八策で、参議院廃止を主張していたが、確かに現在の参議院は、カーボンコピーどころか、政変の
とにかく、今もし、戦後まもなくの頃のように、まったく新しい政治制度が作られるとしたら、間違いなく、参議院は不要、と認定されることだろう。現在のような参議院の運用なら、まさに、シェイエスの言う通り、無用か有害、なわけだから。
それでも厳に憲法の規定で存在するわけだから、やはり、運用でこれを日本の今後のために、使っていかなければならない。それにはやはり、日本の参議院を英国の上院や戦前の貴族院のような形に近づけていくことだろう。つまり、選挙制は維持するとして、政党色は薄くし、より高い観点から政治を論議する場にするのである。
そのために重要になるのは、誰が参院議員になるかで、やはり鍵は、知名度である。
その昔、故徳田虎雄氏は、自由連合を作って、政治家養成をしていた時、有名人を候補者に釣ってくることに対する批判に対して、以下のように批判していた。
知名度がある人は、それなりの識見があるからこそ、今の地位を得ているのだ。そういう人を政治家にすることはしたがって、理に適うことなのだ。
この見解は、たとえばかつての横山ノック大阪府知事、青島幸男東京都知事の例などを見ると、にわかには是とはしかねるが、人を評価する重要な基準として知名度を挙げるのは、やむを得ないことだと思う。人は、知らない人のことは知らないわけだから。ただ無論、有名人議員が、玉石混交であることは、否めない。
それでも、参院議員は、石が多数混じっている覚悟で、知名度で選んでかまわない、と私は思う。理由は、他に尺度がないから（笑）。そして逆に、衆議院のタレント候補を規制するのだ。まあこれは、各党の自助努力に頼るしかないが。
●組織内候補を減らそう
参議院には、一定数の組織内候補がいる。こういう人たちは、特定の団体の既得権益保護のために、比例区から立候補し（させられ）、国民全体のためというよりも、特定の業界のために働く。
制度としてこうした人たちの立候補をなくすことはできないので、知名度のある人が頑張って、特定の業界からの圧力をもモノともせずに、国民全体の利益のために立ち上がれば、こうした組織内候補を徐々に排除していくことは、できよう。
私は、有名人参院議員で、今一番頑張っているのが、維新の猪瀬直樹氏だと思う。彼は、持前の馬力で、日本の医療費削減に取り組んでいる。幸い、ある程度力のある維新の会が、猪瀬議員の政策を党の政策とし、さらには、少数与党である自公にも、これを飲ませ、医療費の4兆円削減が、三党合意になった。
こんなドラスティックな提案は、まったくしがらみのない人物からしか提案できない。つまり、選挙に落ちる心配がなく、金持ちであり、特定の業界とのつながりもない人。猪瀬氏はまさにぴったりだ。
現在、国民民主、れいわ、共産党などの野党各党は、給付の問題を無視して、手取りを増やすことを訴えている。手取りが増えるのは誰でも喜ぶが、その分、社会保障費の財源は減るわけで、どこかの給付を減らさなければならないはずだ。だが各野党は、それについてはあいまいなことしか、言わない。
こうした政党はさらには、減税も訴える。社会保険料減らせば、公費負担増となるわけで、野党各党はそれを訴えるが、減税すれば、その公費の元も減ってしまうのだ。野党各党は、こうした根本問題には、無責任にも、口をつぐんでいる。
その点、維新の会は、野党として、社会保障費（医療費）削減に敢然と踏み込んだわけで、さらには与党をも巻き込んだことは、大いに評価できる。
参議院には、こうした、国民全体の利益を優先した提案ができる有名人が多数必要なのである。特定の業界を優先する組織内候補は、衆議院に行けばよいのだ。両者の存在は矛盾するわけで。
石ころが10個でも、玉が１つでもあれば、さまざまな改革は進むだろう。そのためには、猪木氏のような識見を持ち、かつ実行する能力を持つ人物にどんどん立候補してもらうしかない。そうなれば、組織内候補の場としての参議院も、大きく変わっていくことだろう。個人的には、ひろゆき氏やホリエモンには、ぜひとも参院議員になってもらいたいと思う。
●素人の強みを発揮させよう
猪木直樹氏は、東京都知事も経験しており、政治のプロではあろうが、彼の場合、政治家になるというよりも、政治家の地位を利用して何事かを成し遂げたい、という思いが強いのだと思う。〇〇大臣などという地位に就くことなどは、考えていないだろう。
純粋のプロの政治家は皆、究極的には内閣総理大臣になることを目指しているはずである。無論、それ自身が目的ではなく、彼等の究極の目的は日本を良くすることであり、地位はその手段であると考えていると考えたいが。
だからそれは、そうした道がある衆院議員に任せればよい。また、林芳正氏のように、その道をめざすのであれば、山陰参議院から衆議院に鞍替えすればいい。
参議院議員には、良い意味でのアマチュアリズムを発揮してもらいたいと思う。つまり、自身の地位よりも、社会貢献を優先してもらいたい。
幸い、有名人議員はすでに、自らの専門分野では功成り名を遂げた人物ばかりである。わざわざ政治の世界でのトップを目指すこともなかろう。だからこそ、むしろ政治を利用するつもりで、知名度を利用して、自らの理想を実現してもらいたい。
現在、NHKの料理番組で、プロ顔負けの料理を作るアマチュア料理家がクローズアップされている。彼等は別の道で生計を立てており、料理で食べているわけではないがゆえに、理想とする料理を追及し、食べる者をうならせることができる。参院議員は、彼等のような存在を目指すべきであろう。
