両者を主張する人たちは、だいたい重なるようだ。そして両者の共通点は、単純に考えると、必ず正義になるということ。この点では、政府の主張するカーボンニュートラルも同様である。

すなわち、「原発はゼロが望ましいですか？」とか「ウィルスはゼロが望ましいですか？」とか「CO2は減らしたほうがよいですか？」といった世論調査が行われると、必ず多数派になるからである。

原発を例に取れば、原発推進派とて、原発が大好きでこれを肯定しているわけではない。他に代替手段がないからやむを得ず、一定のリスクを承知で賛成しているのである。

したがって、世論調査でも、原発の賛否に対して、生の質問をぶつけるのと、「他に代替手段がなければ・・・」といった一定の留保をつけるのとでは、その結果がまったく異なってくる。(下図）

http://blogos.com/article/171749/より改変（原発推進派のサイト）

ゼロコロナの場合も、同様の組み立てができる。生の質問なら、圧倒的多数は「ウィルスは無いほうがよい」と答えよう。しかし「経済とのバランスを考えると・・・」といった留保がつけば、ゼロコロナはたちどころに少数派に陥ることだろう。それは、脱原発どころではない。

立民もこうした世論調査上の問題自体は理解しているはず。脱原発においては、したがって、代替の留保を示すことなく、原発に反対している。それは、多くの人は、再生エネがその代替になると誤解をしているからで、それを脱原発派はちゃあんと計算してきた。

しかし、ゼロコロナはそうはいかない。経済を無視してこれを主張したところで、多くの人がまさに経済によって苦しんでいるわけだから、脱原発のように都合の良い論理を作ることはできない。

そのために、立民は、感染症対策と経済は両立するという奇妙な論理を構築し、徹底的な補償をすることでカバーすれば、いずれ経済は立ち上がってくるという、きわめて楽観的な見通しに立っている。

大東亜戦争で、日本中の都市が焼け野原になったにもかかわらず、日本経済はあっという間に復興したではないか。Covid-19対策で日本経済が再度焼け野原になっても、必ず日本は立ち上がる、とでも言いたいのだろう。

●柳の下に二匹目のどじょうはいない
原発事故を利用した脱原発派の主張は、大成功をおさめた。代替の留保さえつけなければ、いまだに原発反対は過半数に達するだろう。なにせ、日本人のみならず、遠く離れたまじめなドイツ人さえだまくらかしてしまったんだから。

脱原発派が成功したのは、同時に、再生エネが原発の代替になる、と喧伝をし、こちらの面でも国民をだまくらかすことに成功したからである。

今回の事故で原発の危険性がはっきりしました。再生エネは環境にやさしく、原発同様、CO2を排出しません。だから再生エネ100％をめざしましょう。そのうち必ず大規模蓄電システムも完成します

こう言われれば、反対のしようがない。実はこの論理は科学的に見れば、問題山積みなのであるが、一般人はそこまで理解しようとはしないから、問題は表面化しなかった。

ゼロコロナはこうはいかない。必ず出てくる、じゃあ経済はどうするの？という疑問に、立民はまともに答えることはできない。補償ではぐらかしても、じゃあ財源は？と来れば、何も言えない。そもそも、立民のご先祖の民主党が、それで失敗しているのだから。

ゼロコロナを唱える立民は、原発ゼロの二匹目のどじょうを狙っているのだろう。しかし今度ばかりは、国民は騙されまい。逆に、騙そうとする立民の意図を見透かし、立民は無責任なポピュリストとして、さらに支持率を下げることだろう。

現在、国民皆マスク社会となり、インフルエンザウィルスや風邪のウィルスまでとばっちりを食ってしまい、そもそも飛沫感染症自体が激減している。マスクには飛沫感染の予防効果しかないから、これまで私たちはいかに知らず知らずに、ウィルスを排出し、会話や食事を楽しみながら、同時にウィルスもいただいてきていたかがわかる。

それはそれで良い事だ。誰も風邪やインフルエンザなんぞにかかりたくはない。しかしこうした事象は、あくまでもCovid-19対策の反射的利益なわけであり、たとえば「風邪を減らすために緊急事態宣言をします、不要不急の移動は控えて、会食を控えて」などと言うわけにはいかない。私たちの社会は、風邪をひかないようにするよりも、人と人との接触を優先してきたし、この理は、今後も変わることはない。

立民のゼロコロナの提唱は、結局はゼロ風邪、ゼロインフルエンザに必ずつながっていく。SARS-Cov-2をゼロに封じ込め続けるためには、結局は国民皆マスク、自粛体制を続けざるを得ないわけで、Covid-19と風邪、インフルエンザの毒力を比較考量すれば、Covid-19のみを特殊視することはできないのだから。

立民の理屈からすれば、ゼロコロナにならない限り、経済対策が立ち上がらない。さらにはゼロコロナを維持しなければならない。それは、日本が感染症フリー社会になると同時に、経済がつぶれることを意味する。

●結局サヨクは同じ隘路にはまり込む
レーニンから始まった左翼思想は、最終的にはレーニンの時代からKGBを産んだ。最終的には、スターリンや毛沢東、ポルポトによる大量虐殺につながった。

社会主義はなぜこうした残酷に帰結するのか？　

それは、社会主義が掲げる高い倫理にある。社会主義国家は、国家性悪・個人性善説を取るから、人はすべて善人であらねばならない。中国の文革の折には、 「中国 にはハエ一匹、盗人一人いない、」などと伝えられたとか。うそには違いないが、そういった話が出る土壌はあるのだ、社会主義には。

だが当然のことながら、人間はすべてが善人ではない。悪い奴もいるし、やむを得ず悪に手を染めざるを得ない人もいる。結局当局は、そうした人間を取りしまざるを得なくなる。

つまり、社会主義は、資本主義社会には不要な、国家による取締りが必然なのであり、それが昂じると、監視社会となり、最終的には大量虐殺に向かう。それはナチスのユダヤ人虐殺よりも一桁も二桁も多い人数だ。

重要なことは、レーニンは当然だが、スターリンも、毛沢東も、ポルポトも、まさか自分の政策がそれほどの人間を殺すことになるとは、少なくとも当初は思ってはいなかったことだ。（たとえばレーニンは、国家を維持するために、心ならずもKGBを作らざるを得なかったはず）。

つまり、社会主義の失敗は、その構造にあるのであり、運用者には無関係、ということ。ソ連が崩壊した時に、不和哲三共産党委員長は、その責任をすべてスターリンになすりつけ、レーニンは無謬、と説明していたが、それはまったくの誤りなのだ。

この論理でいけば、立民の主張する社会主義的なCovid-19対策においても、同じ現象が起こるだろう。まず、感染対策のために、彼らが法が許す限り徹底的な管理をする→それでもダメだから法を改正する→法がきちんと運用されているか監視をする→監視者ないしは監視機関を作る→そこが異常な権力を持つ→政府もコントロールできなくなる→次々と逮捕者が出る→陰湿な社会。

現代ではまさかmassacreは起きないだろうが、それは必ずや、枝野氏の意図とは真逆の世界になるだろう。かつてレーニンらが経験したように。