失敗はしたが、一時は政権を取った民主党の政策は、実は、それほど間違ったものではなかった。やろうとしていたことは、すべてではないが、ある程度は正しくもあった。しかし、やり方が拙劣であったために、失敗した。

もともと20世紀の頃の民主党は、新自由主義を信奉していた。小沢一郎にしても、そうだった。菅直人の思想など、小泉元首相とほとんど変わらなかった。

しかし、世界に冠たる経済大国になった今日、（鉄道を敷くとか、製鉄所をつくるとか）そういった投資、あるいは消費については、個々の企業や個々の個人に任せていって、国がやるべき役割はそこから大きく撤退すべきだと考える、そういった構造改革につながる改革だからであります。（○○党ニュース1998年）

これは誰の言葉だと思いますか？小泉さんじゃなくて、菅直人氏の言葉などです！　民主党幹部は、当初はこんなことを言っていたのだ。

つまり、民主党は小さい政府、構造改革からスタートしていたといってよい。それは、当時は自民党が左傾化して弱っていたから。村山内閣などができて、社会党を取り込んだがゆえに、かなりの左旋回をせざるを得なかった。20世紀末にはむしろ、自民党の方が、民主党よりも左にいたかもしれない。

しかし、21世紀になって、小泉純一郎が首相になるや、民主党はあっという間にそのお株を奪われてしまった。菅直人が訴えていた政策はそのまま、小泉構造改革として、自民党の政策となってしまったのである。たとえば民主党が唱えていた公共投資削減は、小泉内閣で、あらかた達成されてしまった。

結局、民主党は、右から左へと、大きく政策転換を迫られた。逆に、小泉構造改革で取り残された人たちの意見を代表する政党になった。

だがそのことが、小沢一郎の豪腕も相俟って、成功のきっかけとなった。2009年、民主党はついに、政権を取った。

民主党政権はそこで、①政治主導、②政府支出の無駄の削減を進めた。

当時の日本は、ずっと官僚支配の国であった。大臣はお飾りにすぎず、重要な政策はほとんどすべて、官僚が決めていた。民主党は、そうした決定権を政治に持っていこうとした。

政府支出の無駄の削減も急務だった。民主党らしさを出すためには膨大な新たな支出が必要となり（子ども手当など）、そのための財源の確保が必要だった。

だが、こうした民主党の政策も、結局はその後、自民党にそのお株を奪われてしまった。

①については、安倍政権で、むしろやりすぎと言われるまでに、徹底された。官邸の力は強大になり、官僚から官邸へ、という民主党政権の課題は、完璧に達成された。

②については、菅（すが）内閣となってから進んだ。菅（すが）首相は、河野太郎の突破力を期待し、これまで見逃されてきた聖域にメスが入れられてきている。

以上でわかるように、民主党そのものは、まったくおかしな組織だったわけではない。結局は自民党に換骨奪胎されてしまい、悪いイメージだけが残ってしまった。

民主党政権時代の残党たちは、いまだに、将来、再度政権を取りたい、と思っているらしい。彼らとすれば、自分たちは決してすべて間違っていたわけではない、自民党が、自分たちが唱えていたいろいろなことを、奪って自分たちの政策してしまっているのが悪いのだ、という思いが強いのだろう。

こうしてみると、民主党政権にも少し、同情したくなる側面はある。もっともそれは、今後二度と、国民が立憲民主党＋共産党政権を作らない、という余裕があるからであろうが・・・