視聴率と国民の文化レベルについて
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昨年のNHK紅白歌合戦は白組の圧勝であった。その理由は明白である。大トリが白組のSMAPの”世界に一つだけの花”だったからである。さすがに昨年ダントツトップのはやり歌だけあって確かに人々の心をつかむ何物かがあり(特に歌詞がよいのだろう)これが審査員をはじめ聴衆を白組へと支持させしめたものであろうことは容易に想像がつく。視聴率もむろん紅白の中ではこの曲がダントツで57%を記録したという。確かに紅白全体曲の中でもこの”世界に一つだけの花”が一番よかったように思う。そういえば一昨年の紅白では中島みゆきの”地上の星”が紅白視聴率トップであった。黒部川からの中継とかはじめて中島みゆきが紅白にでるなどという物珍しさもあったのであろうが、やはり曲のよさが受けたのであろうと思う。
さてテレビ業界においては視聴率がすべてであるという。民放テレビは広告で収入を得ているのであるからこれは当然のことなのであるが、この「視聴率至上主義」に対する批判も根強い。視聴率にこだわりすぎるとよい番組が作れない、低俗番組ばかりになる、スポンサーを説得してもっと高尚な番組を作れ、などという意見は多い。昨年末に起こった視聴率操作問題などというのもこうした背景から出てきているものであることはいうまでもない。
しかし考えてみれば視聴率ほどいわゆる「民意」をよく表す指標もない。視聴率が高いということは多くの国民の関心を引いたということであり、より強く人々の心をとらえているということである。テレビというのはチャンネルの自由選択権があるのであるから、低俗な番組が跋扈するということは結局見ている国民の全体のレベルが低いという証左なのであり、番組のせいではない。賢明なる国民であればあまりに低俗な番組などあまり見ようと思わないであろうし、そうすれば視聴率も低くなり、自然にそうした低俗番組は消滅していくであろう。要するにどんな番組の視聴率が高いか、ということは国民全体の文化レベルに依存するのであり、番組批判ばかりしてもはじまらないのである。
そもそも人一人一人の関心や興味などはさまざまである。テレビの目的というのは(特に広告収入に依存している民放の場合は)高視聴率を上げること、すなわちできるだけ多くの人に番組を見てもらうことであるから、どうしてもテレビ番組は最大公約数的な誰もが見そうなものが題材となるのはやむを得ない。しかし芸術番組など、最初から視聴率は度外視して一定の人たちを対象にして作られる番組もあるだろう。したがって視聴率が低いからといって番組の内容が悪いということは必ずしも言えないが、日本国民全体の知的レベルを考えれば視聴率が高い番組というのはやはりそれなりに内容があるものである、ということは言えると思う。昨年の紅白で”世界に一つだけの花”がダントツ視聴率トップであったという事実はおそらく紅白を見ていた多くの人には納得のいくことではないか。NHKの連続テレビ小説で今だに”おしん”が視聴率トップであるというのもその内容を見ればやはり多くの人が納得することであろう。
テレビというものが出現した当時、かの大宅壮一はこれを”一億総白痴化”と称したが、残念ながらこれは当たっていないと思う。私が佐賀医大に入学して一人暮らしをはじめたとき、何を置いても欲しかったのは一台のテレビであった。家にはテレビは置かない、という主義の人もいるようだが、一人暮らしのお年寄りなどにとってはテレビの落語や娯楽番組などは何よりもなぐさめになるのだという。視聴率というものはこうしたさまざまな環境に住む国民のテレビへの願望などの集大成なのである。株式相場が人々の金銭への欲望の集大成であり、選挙が国民の政治意識の集大成であるように。
新聞雑誌などはよくテレビ業界の視聴率至上問題を批判したりするが、テレビ番組が広告収入をもとに作られているという構造がある限りこの問題は絶対になくならないであろう。その批判する新聞や雑誌とて読者からの購読料や広告収入で成り立っているのであるから、テレビ同様大衆に迎合するような記事を書かざるを得ないようなこともあるはずである。
視聴率にこだわらずに良い番組を、低俗番組の排除を、などと徒に叫ぶよりはもっと視聴者を信頼して(日本国民の民度を信頼して)みるべきではないだろうか。低俗テレビ番組の跋扈を批判するということは結局国民をバカにするのと一緒である。あたかも政治家を批判することがその政治家を選んだ選挙民への政治意識の批判となるように。低俗な番組は最初は視聴率は高いかもしれないが、必ず飽きられてきてそれは低下してくるものと思うし、よい番組はやはり必ず国民が支持して視聴率も必ずアップしていくものではないかと思う。
結語:テレビ番組の視聴率は日本国民全体の文化レベルの指標である。どんなテレビ番組の視聴率が高いかで日本人の知的レベルは測られる。いたずらに番組批判をするよりは日本人の文化レベルを信頼しよう。
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