ドクターショッピングとセカンドオピニオンの違い

地域医療のページへ

＜ドクターショッピングとは＞
　主婦がより安いものを買い求めてあちこちのスーパーマーケットなどを回るように、患者さんがよりよい医療を求めていろいろな医療機関を訪ね歩くことを「ドクターショッピング」と言う。

　たとえばＡ医院にかかった人が、そこでの診察には満足できず、次にＢ医院を受診し、同じ症状を訴える。さらにそれでも満足せず、Ｃ医院を受診し、そこでもまた同じ症状を訴える。こうしてあちこちの医療機関を受診し、どこへいっても満足しないまま終わる。青い鳥を探し回ったチルチルとミチルのようなものである。

　主婦がより安いものをもとめてあちこちのお店をさがすことは合理的なことであるが、患者さんのドクターショッピングにははっきりいって、利点はひとつもない。

　よほどひどい病院は別として、ふつうの病院であれば、だいたいやっていることはどこも大して変わらない。病気を診断し、治療する、という医療行為は普遍的であり、世界中どこをさがしても「青い鳥」病院は存在しないのである。

＜ドクターショッピングの問題点＞
　患者さんがドクターショッピングをすると、だいたいが同じような検査がなされ、同じようなクスリをもらってくる。今の医療はだいたい標準的な診断法、治療法があるから、同じ症状の患者さんがくれば、同じような検査をしたり、同じようなクスリが出されるのは当然である。したがってマクロの眼で見れば、医療費の無駄遣いが生ずる。

　患者さんの中には、すでに自分の病気の診断がついている人もいる。そして「その病気は治らないから」と言われて、「いやそんなことはない。どこかに自分の病気をきちんと治してくれる名医がいるはずだ」との自己信念のもとにドクターショッピングをする人もいる。

　このことは、次にご説明するセカンドオピニオンにも通じる、積極的な望ましい態度と言えなくもないが、多くの場合、無駄な努力をしていることが多い。

　たとえば腰痛をかかえて、すでに必要な検査なども受けており、診断名も決まっていて、大方の治療方針は決まっているのに、どこかで画期的な治療ができる病院があるに違いない、と信じているような患者さん。

　自己判断であてもなく病院を変えたところで、何もプラスにはならない。前述の如く、多くの病院では腰痛症に対しては同じような治療しかやっていないのだから。

＜セカンドオピニオンとは＞
　ドクターショッピングと似て非なるものにセカンドオピニオンがある。近年では「セカンドオピニオン外来」なるものが表われたり、とにかく注目されている概念である。

　セカンドオピニオンとは読んで字の如く、現在かかっている医師とは別の医師の意見を聞いてみる、ということである。

　たとえば前述の腰痛持ちの患者さんの場合、かかりつけの医師に「どこかに画期的な治療法を行なっているような病院はないか」とたずねてみる。

　良い医師ならば、それでいやな顔をすることは決してない。そして、もしも患者さんに有益な情報を持っていれば、「それじゃあ、○○病院の△△先生をたずねてみてください。紹介状を書きますから」ということになるだろう。こうした形で他の病院を受診すれば、それはもはやドクターショッピングではなく、セカンドオピニオンを求めての受診、ということになる。

　あるいは、ある医師から手術を勧められたとする。しかし、その手術が本当に必要なものなのかどうか、患者さんの知識では判断できない。

　そのような時、主治医に断って、あるいは無断で、他の医師を受診し、本当に手術が必要かどうかを尋ねてみることは決して悪いことではない。むしろ奨励されるべきものだ。

　もしも複数の医師が同じ手術を勧めたなら、これはやはりその手術が必要なのだ、と考えてよい。一つの医療機関だけに身をあずけるよりは、よほど安全な医療が受けられると思う。

　要するに、ドクターショッピングは勧められないが、セカンドオピニオンは大いに勧められる、ということである。その場合、前述のように必ずしも医師の勧めによらなくとも、独断でそれを求めてもかまわない。但し、独断で他医の意見を求める場合、あくまでもドクターショッピングではない、ということを認識していただきたい。あてどなく病院をさまようのではなく、しっかりした信念のもとで、異なった医師の意見を聞くのである。

＜セカンドオピニオンを求めた方がよい例＞
①直腸がんで、永久人工肛門をつけなければいけない、と言われた。
→病院によっては、かなりぎりぎりまで頑張って、人工肛門を回避しているところがある。

②乳がんで手術をすると乳首がなくなり、おっぱいもぺったんこになると言われた。
→できるかぎり乳首を温存し、また放射線療法を併用しているところもある。

③子どもが腹痛を起こし、近所の医者に見せたら単なる腸炎と言われて点滴をしてもらった。だけどぜんぜんよくならない気がする。
→腸重積などの命にかかわる病気かもしれないので、他の医師の意見を聞くべき。

④食道がんで大手術が必要と言われた。
→内視鏡的切除ができるか、あるいは化学療法などで対処できる可能性もある。

⑤膵臓がんで大手術が必要と言われた。
→手術しても本人が苦しむだけかもしれないので、姑息的手術なども含めて他医の意見をきくべき。

⑥脳ドックで動脈瘤が見つかり、手術を勧められた。
→この場合の手術の後遺症は無視できない。他の治療法（血管内手術）や放置という手もあるので、他医の意見を聞くべき。

⑦腎臓が悪くなって、透析を勧められた。
→透析をするかどうかは、医師の意見が分かれる場合が多いので、他医の意見を聞くべき。但し、透析を進めた医師が悪い医師、というわけではない。

⑧風邪をひいて受診したら、馬に喰わせるくらいの量のクスリをくれた。
→ほとんどは必要ないクスリなので、他医の意見を聞いたほうがよい。

⑨胆石があるので取った方がいい、と言われた。
→通常、痛くもない胆石は取る必要はないので、他医の意見を聞いたほうがよい。

地域医療のページへ