| 年金未納問題とリクルート問題 |
| マイエッセイのページへ戻る |
国会議員の年金未納が問題となっている。政府与党の幹部は言うまでもなく、野党の民主党や社民党や共産党議員までに問題は波及し、福田官房長官を始め、管民主党代表も辞任に追い込まれた。 それにしてもこの年金未納問題、マスコミがあんなに大騒ぎするほどのことなのであろうか。(もっとも火付け役は菅氏そのものともいえるが） 確かにちょうど年金問題が国会に取り上げられていた矢先であり、年金の保険料も払っていない人間にその議論をする資格があるのか、といった問題はある。しかし年金未納とされた国会議員たちは確信犯的に保険料を支払わなかったわけではない。要するについうっかりか、管氏の奥さんが記者会見で言っていたように役所の職員の言うがままに手続きをしていたつもりが未納になっていた、というようなことである。（この”うっかり”の原因は現在の複雑な年金制度にある。今の年金制度は複雑すぎておそらく専門家でも全貌を細部まで把握している人はほとんどいないのではないか。私はかねがね年金改革と称して議論を重ねている国会議員たちははたして現行制度をどこまで理解しているのか、と疑問に思っていた。専門家でもすべての把握が困難な年金制度を忙しい議員たちがきちんと細部まで理解しているとはとても思えないからである。議員は制度の問題点を抽出するに足る知識さえ持っていれば良いのであり、細かい年金の知識はいらないのである。しかしそうした知識がなかったからこそ”うっかり”年金保険料を払い損ねたといえるのではないか） 現在のマスコミの報道の仕方などを見ていると国会議員のこうした”うっかりミス”と国民年金の保険料を意図的に支払わない”確信犯たち”とを混同しているようにしか見えない。江角マキコさんが保険料未納で問題になったときにも思ったことであるが、彼女はあくまでもCMで（というか社会保険庁が彼女を通じて）”確信犯的に保険料を納めないヤツ”を問題にしたのであって、うっかりミスで未納であった彼女自身の問題とは本来別物であったところが、世間ではこれらがごっちゃにされてしまったことが不幸であったのである。 要するに”うっかりミス”をよってたかってあれだけ叩いたところでなんになるの？といいたいのである。福田内閣官房長官や管代表のそれぞれの職の辞任は日本の政治にとっては大きな打撃である。うっかりミスだけで日本の政治の要となる職を辞さざるを得なくなる、という日本の風土は何かおかしい気がする。 ここで思い出すのが今から１６年前に起こったリクルート事件である。この事件ではリクルートコスモス社の新規店頭公開株が有力政治家や高級官僚などに”譲渡”され、これが事実上の”わいろ”であると認定された。（新規公開株は上場にあたり多額のキャピタルゲインが見込めるため）しかしこの事件に関わったとされる政治家たちの多くはおそらく意図的にというよりは知らないうちに受け取ってしまったのであろうと思う。あれだけの短期間にあれだけの人数（約８０人）の政治家たちがすべて確信犯的に関与していたとは考えられないからである。（但し贈賄側は別。なお、収賄側で有罪となったのは政治家２名、官僚３名のみである） リクルート事件で灰色とされた高官は数多くいたが、当時の竹下内閣は竹下首相自らが収賄容疑を受けて崩壊してしまった。当時はリクルート事件で灰色とされるだけで政治の表舞台には出られなくなり、結局江副浩正氏の贈賄の対象にもならなかった小粒の政治家が跋扈するようになった。宇野宗佑、海部俊樹といった小物が総理となり、政界は混迷を深めた。結局、リクルート事件によるマスコミの”政治家狩り”が政界を不安定とさせ、その後の日本の”失われた１０年”を作るきっかけとなったと言えなくもないのである。 今回の年金未納問題はリクルート事件のような贈収賄ではないし（したがってこの手の事件につきまとう陰湿さはない）、複雑すぎる制度を理解していなかった単なる”うっかり”が原因である。それなのにまるでリクルート事件の時並みのこのマスコミの騒ぎはいったい何なのだろうか。 リクルート事件で将来の日本を担うであろう有能な政治家が世間からパージされてしまい、無能なる政治家の跋扈によって日本全体がその後混迷に陥ったことを忘れてはならない。年金未納問題でリクルート事件の時のようなことを繰り返してこれから日本を支えるべき政治家の首をしめてはならない。そもそも自らの年金保険料をうっかり忘れた議員が無能で忘れていなかった議員が有能といえるのか。身辺のすべてのことがらをすべてまちがいなく行いうる人間などいるのだろうか。いたとしてもそんな人間は面白くないだろう。何かをなすような人物に限ってヌケているところが多いものである。 今回の年金未納問題で有能な議員が（リクルート事件の時のように）パージされないことを願いたい。「うっかりして納め忘れました。ごめんなさい」でいいではないか。それよりも一般国民であっても確信犯的に年金保険料を納めようとしない連中の方がよほど問題だと思う。（こちらがマスコミの追求を受けることはほとんどない。今のマスコミは水戸黄門的発想だから） 5/16補遺；米国のラムズフェルド国防長官はイラクの人質虐待問題で世界中から非難されているが、それでも米国世論の６−７割は辞任の必要なし、と答えている。今ラムズフェルド長官が解任されれば米国の対外政策が大混乱するであろうということを国民が知っているからである。しかし日本ならば即刻辞職ものであろう。このあたりに成熟した民主主義の国とまだまだ泥臭い民主主義の国の差を見るような気がする。 |
| マイエッセイのページへ戻る |