| 制限選挙も悪くはない |
| ＜普通選挙の弊害＞ 今の選挙はカネがかかる。なぜカネがかかるかといえば結局は選挙権を持つ人間が多すぎるからだ。候補者は要するに当該選挙区の２０歳以上の男女に自分の名前を覚えてもらうためにカネを使う。 選挙というのはとどのつまりは人気投票と同じだ。確固たる政策を持った人間よりは知名度の高い人間の方がはるかに当選しやすい。タレント議員、二世議員が横行するのは今のような普通選挙では当然の結果といえる。 なぜ選挙＝人気投票となってしまうのか。理由は簡単で、選挙権者がいちいち候補者の政策など聞きもしないし、関心を持とうともせず、「あ、あの人知ってる、有名じゃん、じゃあ、あの人にしよう」レベルでしか投票しないからだ。（知事選のような大統領型選挙の場合特にそれが顕著）だから立候補者も心得ていて面倒な政策の説明よりはとにかく知名度アップ＝人気者になろうと、選挙カーでの名前の連呼に走る。 こうした選挙＝人気投票ではだから往々にして失敗が起こる。青島幸男氏が都知事に当選したのがその典型である。今から考えればあの時の東京都の知事選は青島氏ではなく、彼と争った石原信雄氏が当選すべきであったろう。青島氏の政策はまったく非現実的なものだったし、実際彼は一期勤めただけで早々と逃げ出してしまった。東京都が青島都知事を持ったおかげでこうむった損失は莫大なものだったはずである。なにより（官僚の最高峰であった）石原信雄でダメなら、と官界から都知事を目指す人間の意欲を失ったマイナスはとてつもなく大きい。 二期目までいったとはいえ、大阪府の横山ノック前知事もまた失敗選挙の典型である。結果的にハレンチ行為で辞職した人間をただ有名なだけという理由で知事にしたことは大阪府民の末代までの恥として残るだろう。 結局２０歳以上の男女すべてに平等に一人一票づつを与えるという現行選挙制度があるかぎり、選挙＝人気投票となることは避けられないのだ。「二世でなくて政治家になりたければまず有名人になれ」とマジで書いてある本さえある。 現行制度が続く限り、いくら制度をいじくろうと選挙でカネがかかるのは当然のことだ。結局カネがかからず、政策本位の選挙を、というのであれば昔の制限選挙の時代に戻るしかないだろう。 ＜制限選挙は悪か？―天気が政策を決める普通選挙＞ もしも今の選挙制度を明治期のように制限選挙にして、たとえば納税額ン百万円以上の人、あるいは一定以上の社会的地位にある者のみに選挙権を与える、としたらどうなろうか。あるいはよくビートたけしが書いていたように「六本木のねえちゃんと高額所得者のオレが選挙で同じ一票なんざ納得できぬ」で、所得に応じて選挙人一人当たりの票数を変える、などとしたら。 ここで問題にしたいのが投票率である。本来選挙というものは選挙権を持っている人すべてが参加すべきものである。１００％とまではいかなくとも９割以上の選挙権者が投票に行くというのが本来の姿であるはずだ。 しかしながら最近の地方選挙などではところによっては投票率２０％台などといったところもある。こうなるともう普通選挙制度は事実上崩壊しているといってよい。5人のうち4人近くが投票に行かない選挙なんて無意味だろう。（あんなおっかないイラクでの選挙でさえ6割が投票に行ったのに） ちなみに戦前の制限選挙の時代、その投票率は高かった。http://www.promised-factory.com/100years_after/house/turnout-r.htmlをごらんいただくとおわかりのように、議会制度が始まった当初の選挙はほとんどが8割から9割以上の投票率である。しかし選挙権が拡大していくにつれて投票率は下がり、完全普通選挙となった戦後はもはやよくて7割台しかないことが理解される。 少数の富裕者のみが選挙権を持っていた時代、選挙権者たちは自分達の投票が国家を左右するという強烈な危機意識を持っていただろう。むろんいろいろ悪いことも行われたではあろうが、基本的には彼らの高い使命感が高い投票率となって現れていたと思う。候補者もまた大衆に迎合する必要もなく、少数の選挙権者にていねいに自らの政策を訴えることができただろう。 民主主義の名のもとに20歳以上の男女には誰もが選挙権を与えられている現代、もはや選挙権者が多すぎて半分がその権利の行使をすれば御の字、という時代だ。また雨で投票率が下がれば自民党、晴れたら投票率が上がって民主党、なんていう時代だ。なんかおかしくないか？選挙の勝敗は天気が決めるんだろうか？結果的に国家の政策が天気によって決まることになってしまう。 普通選挙＝善、制限選挙＝悪、という決めつけを再考してもよい時代なのではないか。無論制限選挙の昔に戻ることは不可能であるが、投票率が一定以下の場合は選挙を無効にするとか、選挙前にテストをして合格者のみに選挙権行使権を与えるとか、やってみたっていいのではないだろうか。 |