leftmargin="150"３年後は民主党の時代になる　

フッ素洗口中止に思う

保育園でのフッ素洗口中止
　先日私の子供が通っている保育園でフッ素による洗口は行わない、との決定がなされた。父母にアンケートを取り、最終的にはフッ素洗口に反対の父母が多かったためにこういう措置となったらしい。フッ素洗口を行うかどうか、という判断をすべき時期になぜかフッ素反対派によるフッ素の弊害についてのパンフレットが配られており、これに影響を受けた父母が多かったものと思われる。

　私は一医師として、あるいは父親として子供がフッ素による洗口をしたり、フッ素入りの歯磨きをしたり塗布をしたりといったことは虫歯予防には有効であると信じている。フッ素の虫歯予防への有効性に関してはたいていの歯科医に聞いてもそう言うし、おそらく現代科学においては定説といえると思う。実際先進国の殆どは上水道をフッ素入りとしてある。

　ところが前述のようにこのフッ素の虫歯予防の有効性に疑問を投げかけ、さらにフッ素の発癌性だの腎障害などの危険などを前面に出してフッ素洗口や塗布をやめさせるように働きかけている人たちがいる。

昭和３０～４０年代の公害事情
　こういった一派はおそらくは昭和３０～４０年代に多発した左翼勢力による公害反対運動の残滓であろう。昭和３０～４０年代の日本は高度経済成長のひずみともいうべき公害が全国に多発した。公害は大企業が引き起こす。国はそれに対して有効な手立てが取れず、公害被害者が全国に拡大した。サリドマイドによる両腕のない子供、先天性水俣病による脳性麻痺の子供の姿などがテレビで放映されたりして公害に対する全国的な関心が高まっていた時代であった。

　公害はまさに国＋大企業V.S.地域住民という対立構図であり、これが当時は元気がよかった日本の左翼運動（要するにマルクス＝レーニン主義）と利害が一致した。マルクス＝レーニン主義は国＋大資本V.S労働者という対立構図をとり、これと公害の対立構図がそっくりだったのである。公害は昭和３５年の安保闘争、三井三池闘争後の左翼運動の格好の運動材料となった。

　しかし昭和４０年代後半あたりより国も環境問題に積極的に取り組むようになり（昭和46年に環境庁ができている）あらたな大規模な公害の発生は少なくなり、全国の公害裁判も峠を越え、公害問題は発生防止や環境問題から被害者の補償問題などがメインとなっていった。したがって日本の公害問題はすべて解決しているわけではないが、大きな峠は越えたと言ってよかろう。

　こうした公害問題に対する左翼運動の力は大きかったと思う。その力が国を動かし、日本の公害問題解決への原動力となったことはまちがいなかろう。つまり当時の左翼運動には社会的価値があったのである。

社会への影響力を失った左翼
　しかし特に昭和５０年代以降、日本の左翼は長期凋落傾向を辿らざるを得なくなっていった。これにはさまざまな原因があるが、やはり世の中が安定して、日本人全体が保守的になり、また公害問題や大きな労働争議（昭和５０年の旧国鉄のスト権スト以後大きなストもなくなった）などがなくなってきたことから左翼がターゲットとする社会問題もまた小粒となっていったこともその一つと思う。

　そのために反権力を旗印とする左翼運動は常に細かな国家の瑕疵を探しつづけてきた。しかし左翼運動の拠りどころとする社会主義自体の瑕疵が目立つようになり、特に１９９１年のソ連崩壊以後は誰の目にも社会主義の敗北は明らかになり（それでも当時日本共産党は社会主義の優位性を強調していたが）国家的問題に対する左翼運動の役割は現代ではもはや終わっているといえよう。

　こうした社会の変化の象徴ともいえるのが何年か前に問題となった、かの非加熱血液製剤によるAIDS問題である。あれは明らかに旧厚生省の瑕疵であるが、これを正面切って取り上げたのは当時厚生大臣であった管直人氏であり、左翼運動ではなかった。かつての左翼ならあのような重大な問題を看過するはずがない。昔ならば左翼が暴れるほどの問題が政府部内で解決されてしまったのである。

細々と生き続ける左翼
　こうしてもはや存在感を失った左翼勢力がraison de'tre（存在理由）を示すために見つけた問題の一つがフッ素洗口の是非である。フッ素は当初は虫歯予防の効果が定かではなかったが、前述のように現在ではその効果は確実とされている。

　ところが左翼勢力の一部は今だにこの効果に？を持ちつづけ、その害ばかりを強調してやたら不安を煽っている。幼稚園生の父母としてはこうした勢力から「フッ素は危ない」「腎臓が悪くなる」「フッ素は虫歯予防の効果はない」などと脅されれば「そんなに危険なものならやめておこうか」という風に思う人が多くなるのももっともだとは思う。

国民の健康より自らの勢力保持が大事な左翼
　結局かつての左翼勢力の残滓たちは「国のやることはすべて悪い」「自分たちの意見が絶対に正しい」というかつての教条主義的思考から抜け出せないのだ。いくら歯科の専門医が「フッ素は虫歯予防に有効である。副作用はないとは言わないがそれをはるかに上回る利益がある」と言っても「少しでも副作用があるのなら使うな」と言って聞かない。

　しかしこうした教条主義の犠牲になるのは結局一般国民である。保育園でフッ素洗口をし、できれば上水道にフッ素を添加してくれたら虫歯になる子供はかなり減るだろうに、せっかくのこうした国民の利益を自らの勢力保持のためにつぶしているのが左翼勢力なのである。
　
　かつては「進歩派」などと称された左翼勢力は現在ではガチガチの保守である。彼らはオフィスのOA化に反対し、旧国鉄の分割民営化に反対し、有事法制に反対しetc、世の中の歯車を逆転させようとばかりしている。

　フッ素洗口の問題は小さな問題ではあるかもしれないが、何とかわが子が虫歯にならずに育ってほしいと願う一父親としてはそうした子供の健康よりも自らの勢力の温存のためにフッ素洗口に反対する連中にはがまんがならない。

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